#1067 Rebekka & The Mysterybox / Good and Goodbye (2005)

 2006-05-21
1. Giant
2. Chemistry
3. Machine
4. Castle in the Sky
5. Little Battlefish
6. Black Dog
7. If the Sky Should Fall
8. Everlasting I
9. Everlasting II
10. The Collector
11. Gasoline
12. Superman
13. Wishing Well

Good Or Goodbye
Good Or Goodbye
posted with amazlet on 06.05.21
Rebekka
Kkv (2006/02/06)


何度も取り上げるようで申し訳ないが、またしても北欧の音楽シーンで気に入った作品を取り上げる。ジャズやクラシックの世界では既に良質な音楽の一大産地として認知された北欧の音楽大国ノルウェー王国。プログレ・ファンにも認知度の高いヤン・ガルバレクやテリエ・リプタルといったジャズの巨人からクラシック音楽の分野ではオスロ・フィルハーモニー管弦楽団、ベルゲン・フィルハーモニー管弦楽団といった世界的に有名な楽団を世に生み出している事は北欧の音楽シーンの動向に目敏い音楽ファンなら先刻ご承知の事だと思う。音楽祭も盛んだ。メタルのファンならノルウェーが知る人ぞ知るメタルの産地である事もよく知られた事実らしい。なによりも国を挙げて芸術家を支援しようとする姿勢が素晴らしい。レベルの高い音楽家が絶え間なく世界の音楽市場に向けて排出される音楽大国ノルウェーの現状は今だに洋楽のコピーばかりが蔓延るどこかの国の音楽市場とは雲泥の差である。
さて今回の主役はネットの輸入CDの通販サイトで偶然みつけたアルバム。雰囲気たっぷりのジャケットになんとなく惹かれる所があって迷った結果最終的に購入を決断したが、山積みとなっている紙ジャケCDを日夜聴いてばかりで、暫くの間未開封だったCDを今宵は紹介する。レベッカ&ザ・ミステリーボックス(Rebekka & The Mysterybox)。ネットで検索しても殆ど該当記事にぶつからないが、現在北欧はノルウェーの首都オスロに在住の女性歌手レベッカ(Rebekka Karijord)が主人公。骨太の骨格はいかにも姉御肌といった感じで、一見感性の研ぎ澄まされたアーティストには見えない(失礼)。彼女自身の為のプロジェクトであるミステリーボックスを率いて現在北欧の音楽圏で活動中なのが現況のようだ。検索の結果彼女自身が myspace.com にフォルダー・スペースを持っているのを発見したが(勿論サイトの運営はスタッフが担当しているのだろうが)、そこの記事を元に彼女のアルバムを紹介してみる。

1976年ノルウェーはロフォーテン出身。デビュー作以前のレベッカのキャリアは判らないが(演劇のキャリアがあるようです)、彼女のデビュー作は2003年に KIRKELIG レーベルから発売された「Neophyte」。こちらは未入手だがビョークやケイト・ブッシュのサウンド世界をイメージさせるファンタジックでドリーミングな作風が真骨頂の凝った作品らしい。見た目からして結構トシを重ねている女性歌手のようにも思えるので、ソロ・デビュー以前になにかしらの音楽活動を経験していた可能性もある。ちなみに母国ノルウェーの公用語はノルウェー語だが彼女は英語で歌詞を書き、英語で歌う。英語圏での成功も彼女の視線の先には最初からあるのかもしれない。この後オスロでレベッカは優れたドラマーであると同時に作曲家/プロデューサーでもある Peder Kjellsby という男性と出会っている。彼と意気投合したのは彼が自分の好みと会うレコードを持っていた、というのがキッカケだったらしい。なんか微笑ましいが、兎に角こんな事が縁で2人は活動を共にする事になる。
ちなみにこの片割れ Peder Kjellsby はノルウェーのジャズ・シーンで現在注目される逸材との事。これまでスールヴァイグ・シュレッタイェルというノルウェーの女性歌手のアルバムにも作曲家として曲を提供している。また、Friko や Jon Klette Kvartett というバンドの一員として同バンドの作品に参加した他、プロデューサーとしても「Sommer Hele Aret: 96-04」(2003年)、「Burglar Ballads」(2003年)、「In the Kingdom of Kitsch You Will Be a Monster」(2005年)といったアルバムを手掛けている。これからのノルウェーのジャズ・シーン、ノルウェーのコンテンポラリー・ポップスの未来を切り開いていくと思われる才能溢れる2人による未来派ポップス=ジャズ・バンドがミステリーボックスなのだろう。レベッカ&ザ・ミステリーボックスとしてのギグも2006年早々に地元オスロで行われたそうだが、これがミステリーボックスとしては最初のギグだったらしい。注目度のアップもこれからの両名だろう。

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■ Rebekka Karijords - Lead Vocal, Perfomed
■ Peder Kjellsby - Perfomed

■ Jarle Bernhoft - Additional Vocals

「Good Or Goodbye」はレベッカ自身にとっては通算2作目、ミステリーボックス名義では最初の作品。2005年発表。収録は全部で13曲で全てレベッカとペデルの共作扱い。プロデュースも2人の連名でミキシングのみペデルが単独で担当している。センスのよさを感じさせるCDのブックレットはレベッカのデザイン。煌びやかなミステリアスさという点では最初の「Neophyte」に見劣りするが、本作でのジャケットもなかなか意味深で興味深い。向かって左側がレベッカ本人だが右側は誰だろうか。それと演奏者のクレジットも正確なものは記載されていない。さて、実際にレベッカ&ザ・ミステリーボックスの「Good Or Goodbye」の中身に触れたいが、一言で表現するのがなかなか難しい音楽。あくまでも表面的な例えで申し訳ないが印象としては声質は別としてケイト・ブッシュ、ローリー・アンダーソン、ビョークといった個性的な女性歌手を連想して頂くのが早道かもしれない。
更にダーク・ポップス系としてスティーナ・ノルデンスタム、ニーナ・ナスターシャ、エリージャン・フィールズのジェニファー・チャールズ、ヤン・ガルバレクの娘アニヤ・ガルバレク、フォーン・フェイブルズのドーン・マッカーシーといった女性歌手は? いや、やはりどこか違う。レベッカとペデルの2人が作り出す音楽から他の類似するアーティストやベースとなる音楽を見つけ出すのは非常に難しい。そこで彼女自身の myspace.com に掲載された、影響を受けたアーティスト欄から転載してみる。ペルゴレージ、ロバート・ワイアット、シュトックハウゼン、ジョン・ケージ、アストル・ピアゾラ、キース・ジャレット、ヴァシュティ・バニヤン、スティーナ・ノルデンスタム、アルヴォ・ペルト、ローリング・ストーンズ、マドンナ、アウグスト・ストリンドベリ、ヴィヴィアン・ウエストウッド、マシュー・バーニー、スティーブン・ソンドハイム、イングマール・ベルイマン、エラ・フィッツジェラルド、マーラ・カライユ、バズ・ラーマン、ベック、等々。

これでも一部だけだが、書いても彼女の音楽的感性というかルーツがよく見えてこない。コマーシャルなポップスからロック、アンビエント、更に現代音楽と彼女の趣味は幅広い。気になるもの、興味をひくものにこれまでの人生の中で偏見なく接してきた。そんな彼女の変遷が垣間見て取れる作品が「Good Or Goodbye」。冒頭の曲「Giant」からしてエスニック調のアレンジからフォーク・ロック、アンビエント・ポップスと卓越したアレンジが展開される。吸収出来るものは何でも分け隔てなく吸収してきた、そんな彼女の貪欲な精神が発揮された曲だ。「Chemistry」はエレクロニクスをバックに歌う彼女の悩ましい歌が印象的なナンバー。曲調は凝りに凝ったケイト・ブッシュ調。レベッカの好きなスティーナの作品にも当て嵌まるポップでアヴァンギャルドといった形容詞がここでも適切だ。「Machine」は感傷的なメロディをバックに切なく歌うレベッカの歌が魅力的。若干過度とも思われるバックのアレンジに負けていない。
「Castle in the Sky」はまたしてもエキゾチックな民族音楽のリズムが導入されるドリーミーなポップ・ナンバー。「Little Battlefish」では現代音楽ともポップスともエレクトロニカともつかぬ摩訶不思議なアレンジが展開される。彼女自身の言葉を借りるならば、《詩的で可愛らしいダーク・ポップ》という事になる。「Black Dog」も同様だ。映画『ナイト・メア・ビフォア・クリスマス』『シザーハンズ』のティム・バートン監督の不気味で可愛らしい映画にぴったり符合するようなイメージと言ってみたらどうだろうか。「If the Sky Should Fall」は本作の中では比較的控え目なアレンジのバラード・ナンバー。これまたティム・バートンの映画のイメージとぴったりとくるような作風である。「Everlasting」はパンチの効いたポップなナンバーで Span というバンドのヴォーカリスト Jarle Bernhoft がゲストで参加している。兎に角、最初から最後まで思いつく限りのアイデアをぶち込んでしまった、という凝りに凝った退廃的なダーク・ポップスが真骨頂。

兎に角、聴く人を限りなく選ぶ類の極めて個性的な作品だ。スティーナ・ノルデンスタムに抵抗のない人なら問題はないだろうが。若い世代の洋楽ファンに受けそうな、あらん限りのエレクトロニクスのエキスを詰め込んだ内容だが、次回作があるのなら、ピアノや弦、管といったアコースティックな楽器の音色をもっと大胆に加味してもらいたい。そうすればファン層も更に広がるだろう。期待しています。エンディングの「Wishing Well」のような静的なナンバーがもうちょっと適所に配置されていれば効果的なのだが。
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