#1097 Etta James / Etta James Rocks the House (1963)

 2006-10-01
1. Something's Got a Hold on Me
2. Baby, What You Want Me to Do
3. What'd I Say
4. Money (That's What I Want)
5. Seven Day Fool
6. Sweet Little Angel
7. Ooh Poo Pah Doo
8. Woke Up This Morning

9. Ain't That Lovin' You Baby (Bonus Track)
10. All I Could Do Was Cry (Bonus Track)
11. I Just Want to Make Love to You (Bonus Track)

Etta James Rocks The House

ゴロゴロ転がり続けてウン十年。世界最高のロックンロール・バンド、ローリング・ストーンズ。現在彼等は2006年秋のツアーの最中で順調に行けば11月のハワイ公演で全日程を終了する予定である。これまで沢山のアルバムやツアーをこなしてきたバンドだが、長い音楽活動全てが順風満帆だった訳ではない。彼等のファンなら先刻ご承知の通りだと思うが、彼等の歴史上、最も危険な出来事の一つと言われているのが1977年のカナダでのキース・リチャーズの逮捕劇。1977年のライヴ・アルバム「Love You Live」にも収録されている、エル・モカンボでのコンサートの為にカナダはトロントに向かったキース・リチャーズがヘロイン不法所持で逮捕されてしまったのだ。結成以来、キースにとってもバンドにとっても最大の危機が訪れた時期でもあったが、ミック・ジャガーや仮釈放中のキースら、ストーンズのメンバーは迫り来る新人バンドやパンク・ロッカーの勢いに触発されるように、ガッチリとスクラムを組んで素晴らしい作品を制作する。

1977年から1978年にかけて制作された作品は「Some Girls」と名付けられ、1978年初夏に市場に投入される。EMIフランスのスタジオで収録された楽曲が詰まった、その作品は全英2位、全米1位を記録して、迫りくるパンク・ロッカー達に『どうだ』とばかりに健在ぶりを見せ付けたのだった。この作品発表を受けてバンドは短期間ながらも1975年以来3年ぶりの北米ツアーを敢行する。ニッキー・ホプキンスやリンダ・ロンシュタッド、エディ・マネーといったアーティストをゲストに迎えたツアーは6月から7月までと、今の彼等の大規模なツアーに比較すれば控え目な規模のツアーだったが、バンド内に渦巻くキースを中心とした不協和音を考えると、これでも精一杯のツアーだったに違いない。さて、ローリング・ストーンズのツアーといえばオープニング・アクト、つまり前座に人気アーティストや大物、旬な新人アーティストなどが起用される事でも知られている。スティーヴィー・ワンダーやボブ・ディランでさえ、彼等の前では前座扱い。
ちなみに1978年の北米ツアーではプリンス、フォリナー、ピーター・トッシュ、パティ・スミス、サンタナといった人気アーティストがストーンズの前座を務めた。あと1人、黒人女性歌手もストーンズの1978年の北米ツアーの前座を務めていた。彼女の名前はエタ・ジェームス(Etta James)。起用は彼女のファンでもあり、ブルースやR&B大好きなローリング・ストーンズならではといったローリング・ストーンズの粋な計らい。エタ・ジェームスはリズム&ブルース/ソウルの女王として1950年代から足掛60年にも渡る音楽活動を展開してきた正真正銘のディーヴァ。ルックスは兎角(失礼)、男性R&B/ソウル・ヴォーカリストもたじたじの、ド迫力溢れる歌声で多くの音楽ファンを魅了してきた女性歌手で、一般の音楽ファンのみならず、肌の色を越えて同業他者からも熱い支持を得てきた人。1度でも彼女の歌を聴けば、心に染み渡る強烈無比な歌声が貴方の心に焼きつく事必至の情熱的な歌手である。

1938年、米カリフォルニア州LA出身。本名はジャメスタ・ホーキンス(Jamesetta Hawkins)。貧しい黒人家庭に生まれ育った環境故、若い頃から麻薬などに手を出すなど、実はかなり荒れた人生を送ってきた人。だが歌手としての活動も早く、10代にして曲を吹き込むなど、若い頃からショービジネスの世界に身を投じてきた女性でもある。僅か5歳で聖歌隊に属してゴスペルを歌ってきたという早熟な天才少女は1950年にサンフランシスコに家族と共に移り住み、そこで当時の彼女の友人らと音楽活動を展開する。1950年代半ばにはプロとして初めて曲を吹き込むが、ソロ名義ではなくグループ名義(ピーチズ)。「Roll With Me Henry」(Modern Records)という曲がそれで収録はLA(タイトルに問題がある、との理由により後に「The Wallflower」に改題)。グループは直に崩壊するものの、エタは暫く Modern Records に身を置いて活動を継続する。「Good Rockin' Daddy」はこの時期に生まれたヒット・シングルだ。

1960年にはブルースの名門チェスと契約。ここから彼女の全盛期が始まる。1961年「At Last!」発表。今もって彼女の代表作の一つと呼ばれる女性R&Bヴォーカル物の永久の傑作アルバム。同年にはもう1枚「The Second Time Around」というアルバムも発表されているが、1960年から始まる彼女のキャリアは凄かった。「All I Could Do Was Cry」「If I Can't Have You」「My Dearest Darling」(1960年)、「At Last」「Don't Cry, Baby」「Fool That I Am」「Spoonful」「Trust In Me」(1961年)、「Next Door To The Blues」「Something's Got A Hold On Me」「Stop The Wedding」(1962年)、「Pushover」「Two Sides (To Every Story)」(1963年)等々。これらの曲は黒人チャートだけでなく白人向けポップ・チャートでもそれなりのヒットを記録した。さらにポップ・チャート独自のスマッシュ・ヒットさえ生まれた程だった。1964年以降は暫く低迷するが、1968年「Tell Mama」で見事エタは復活を遂げる。

「Tell Mama」はシングル、アルバム共にヒットを記録する。タイトル曲はジャニス・ジョプリンが取り上げた事でも知られる代表曲の一つ。1970年代に入って薬物依存体質から逃れる為に療養生活を送ったりするブランク期間などもあって歌手として作品を発表する機会が激変してしまうが、それでも「Come a Little Closer」(1974年)、「Deep in the Night」(1978年)といったアルバムを発表して健在ぶりを見せ付けてくれた。1980年代以降の作品に関してはどれがオリジナル作品なのかよく判らないので触れる事は割愛するが、近年は新世代のディーヴァ、クリスティーナ・アギレラから崇拝される事もあって彼女経由でエタの存在が若い音楽ファンに知られる機会も多いようである。R&B、ソウル、ゴスペルといった分野で長く活動してきた実績を持つため、ブラック・ミュージック・シーンで高い評価を獲得してきた事は当然としても、彼女がロックの殿堂入りしている事実から、彼女のロック界における評価の高さをも伺い知る事も出来よう。

At Last!The Second Time AroundTell Mama: The Complete Muscle Shoals SessionsCome a Little Closer

■ Etta James - Vocals

■ David Walker - Guitar
■ Marion Wright - Bass
■ Freeman Brown - Drums
■ Richard Waters - Drums
■ Vonzell Cooper - Organ
■ Gavrell Cooper - Tenor Sax

麻薬に依存した私生活や外国人特有の肥満体という問題もあってか、長いキャリアの割にはエタ・ジェームスのソロ・アルバムは実はそんなに多くないようだ。全盛時代の1960年代でも、更に1970年代でも作品を発表するまでの空白期間もあったし、最近はステージに立つのもままならない状態らしい。そんな状況なのだが、本作は1960年代に発表された作品の中でも極めて異色の作品。人気絶頂だった1960年〜1963年の彼女に対する世間の熱狂ぶり陶酔ぶりが時の壁を超えて確認出来るライヴ盤だからだ。21世紀の歌姫クリスティーナ・アギレラの恐らくは愛聴盤である筈の「At Last!」も素晴らしい出来だし、更に1990年代以降はジャズの世界で高い評価を受けている模様なので、1990年代以降の作品にも注目すべき作品があろうかと思うが、純粋R&B/ソウル・ファンではないロック・ファンの私からすれば、注目すべきはやはりこれ。「Etta James Rocks the House」。兎に角凄い。全11曲(オリジナルは8曲)、全て聴き応えがある。捨て曲一切なしの問答無用の名作。

オリジナルは1963年発表。プロデュースはラルフ・ベース(Ralph Bass)。ジェームス・ブラウンの発掘人として知られている。収録は当時レコードに収録されなかった3曲を含め全11曲。ウィリー・ディクソン、ジミー・リード、B・B・キング、レイ・チャールズと、この手の音楽にはお馴染みの面々による曲が並ぶ。収録は1963年9月27日と28日の両日、カントリー・ミュージックの本場としても知られるテネシー州ナッシュビルにあるクラブ(New Era Club)でライヴ録音されたものだ。今から33年も前のライヴ音源だが、CD化の際のリマスタリング処理のおかげなのか、音質はかなりいい。さて、エタのチャート面における成績だが、そこそこ売れたシングルとは裏腹にアルバムの方は「Tell Mama」が1960年代最高の成績を収めたものの、それでも黒人チャートで最高21位。一般的に全盛期と言われている1960年代よりも、アルバム・セールスの面では実は1990年代の方が好調なのだ。

「At Last!」から1980年代の後半まで、彼女の作品が母国のアルバム・チャートのベスト10位以内にランク・インされる事は1度もなかったのだが、1987年に「Early Show, Vol. 1: Blues in the Night」がジャズ・チャートで10位にランクされた以降はブルースやジャズのチャートで彼女の作品が上位にランク・インするという状況が続くようになる。「Blue Gardenia」(2001年)はジャズ・チャートで1位、「Burnin' Down the House: Live at the House of Blues」(2002年)、「Let's Roll」(2003年)がブルース・チャートで共に1位、「Blues to the Bone」も同チャートで4位、彼女の旧作を中心にした2006年の最新ベスト盤「The Definitive Collection」はブルース・チャートで堂々1位を獲得している。ブルースやジャズのマーケットがポップスのマーケットより小さいというハンデがあるとは言え、近年の彼女に対する熱狂ぶりは尋常ではない。デビュー50年を越えてようやく彼女に対する評価が彼女の本来の才能に追い付いたといっても過言ではない。

「Etta James Rocks the House」は1963年の12月に発表されたライヴ盤。ヒット・チャート的にかなりの成績を収めた作品ではないのだが、本作でのエタの音楽に対する観客の熱狂振りは尋常ではない。ジェームス・ブラウンの発掘人がプロデュースした作品という事もあってか、ブルースやR&Bナンバーを歌うエタのハイ・テンションは凄まじいの一言。R&B/ソウルのファンは勿論、コレ、是非ロック・ファン、特にローリング・ストーンズのファンに是非聴いてもらいたい。ジミー・ミラーやウィリー・ディクソン、B・B・キングなどのナンバーが取り上げられている事もあって、ブリティッシュ・ロック・ファン、特に1960年代のブルース・ロックが好きな人ならそう違和感を感じる事もない筈だ。ストーンズの前座にかつて起用された事もあるエタ・ジェームスだが、ミック・ジャガーのヴォーカル・スタイルの模倣先はひょっとしてエタなのではないか、と錯覚してしまう場面すらある程の入れ込みよう。

はっきりいって、この作品の前ではエリック・バードンもロジャー・ダルトリーもスティーヴ・ウィンウッドもロッド・スチュワートもポール・ロジャースも形無し。1960年代のミック・ジャガーの歌声など子猫のように聴こえてしまう程だ。ジャケットを見よ。『かかってこい』と言いたげな、柔な男ではケンカしても負けてしまいそうな迫力溢れる”女版ジェームス・ブラウン”エタ姉御が眼を飛ばしているのだ。騙されたと思って是非1度聴いてもらいたい。カントリーの本場ナッシュビル録音である事がにわかには信じられない、ゴリゴリの傑作R&B/ブルース・ライヴ作品。強烈過ぎ。CD冊子の裏には多分当時のステージ写真と思われるがあって壁には時計が掛けてある。時間は2時10分だ。昼間の2時過ぎとは到底思えないので恐らく深夜の2時過ぎだろう。だとするとこのエタのハイ・テンションと観客のノリの凄さは何だ。聴かないと貴方は一生損をする。これ、本当の話。

《YouTubeで観る/聴くエタ・ジェームス》
Etta James - Something Got A Hold On Me
Etta James, Cuck Berry, Keith Richards - Rock n' Roll Music
Precious Lord Take my Hand - Etta, Chaka and Gladys


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コメント
トラックバック失礼致します。
【2006/10/10 17:12】 | toshiki #emXmKJzE | [edit]
コメント、及びTBありがとうございます。
【2006/10/10 21:44】 | Cottonwoodhill #- | [edit]












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