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(瑞西)Patrick Moraz / Story Of I (1976)

 2006-12-10
1. Impact 2. Warmer Hands 3. The Storm 4. Cachaca 5. Intermezzo 6. Indoors (a) Interaction (b) Imp's Dance 7. Best Years of Our Lives 8. Descent 9. Incantation (Procession) 10. Dancing Now 11. Impressions (The Dream) 12. Like A Child Is Disguise 13. Rise and Fall 14. Symphony in the Space 15. Bonus Tracks: Cachaca Variations 16. Cachaca's Children's Voices

i~ザ・ストーリー・オブ・アイ(紙ジャケット仕様)
パトリック・モラーツ
ディウレコード (2006/09/22)
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キング・クリムゾン、ピンク・フロイドらと共にイギリスを代表するプログレッシヴ・ロック・バンドとして長き活動を今日まで続けているイエス。活動歴が長いこともあって、バンドの活動にこれまで参加してきた演奏家の数も非常に多い。キーボード奏者だけに限っても初代キーボード奏者のトニー・ケイから始まり、元ストローブスのリック・ウェイクマン(2代目)、元リフュジーのパトリック・モラーツ(3代目)、更にジェフ・ダウンズやイゴール・コロシェフ、そしてトニー・ケイやリック・ウェイクマンが出戻りで元のサヤに収まったりと非常にややこしい歴史がある。そんな中、脱退後は潔くイエスの活動に関わらずに自らの信念を貫いて自己の求める音楽を完成させようとソロ活動や他のバンドの一員として活動した一人のキーボード奏者がいる。パトリック・モラーツだ。

パトリック・モラーツはイエスに参加する以前にはメインホースやリフュジーというバンドに参加している。メインホースは1972年に1枚のアルバムを発表した限りで解散、その後1973年に元ナイスのメンバーとリフュジーというバンドを結成、翌1974年にアルバムを発表しているがイエスに参加する為にバンドを脱退。丁度その頃イエスといえば1973年に3枚組のライヴ盤「Yessongs」や2枚組の大作「Tales from Topographic Oceans」を発表するなど、我が世の春を満喫していた時期であった。そんなバンドから中心人物の1人でもあったリック・ウェイクマンが脱退してしまった。代役としてギリシャ人演奏家のヴァンゲリスを推薦するジョン・アンダーソンの声もあったが結局、3代目キーボード奏者の座にはスイス人のパトリック・モラーツが収まることになる。

イエスは1974年に「Relayer」を発表するが、残念ながらこれが在籍唯一の作品。「Relayer」のセッションはパトリック・モラーツが参加する以前に既に始まっていたので彼の音楽的才覚が「Relayer」で100%発揮できたかと言えば疑問符が付くが、それでもジャズやラテン音楽という、彼好みのエキスが随所に導入されているのが興味深い。この後バンドは一時活動を休止してメンバーそれぞれがソロ作品を発表するという面白い試みを決断している。パトリック・モラーツも1976年に最初のソロ作品「Story Of I」を発表している。プログレにラテン音楽の要素が盛り込まれたユニークな作品として大いに世間の注目を引いたが、残念ながら彼は同年にイエスを脱退してしまった。イエスの求める音楽と自分がやりたい音楽との間に折半し難い深い亀裂が生じた事などが原因だろう。

個人的に思い出深いパトリック・モラーツのソロ作品と言えば「Out In The Sun」。これはイエス脱退後の1977年に発表された作品で、イエスの呪縛から開放された開放感からか、イエスの音楽とは可也かけ離れたラテン音楽の要素を大胆に取り入れてプログレ・ファンの度肝を抜いたものだった。当時私もレコードを購入したが、プログレとノリの良いラテンの要素が混在した異色の作品を随分と楽しんだ記憶がある。その後の作品は個人的にもプログレから興味の対象がパンクやニューウェーブに移ってしまったので、その後のパトリック・モラーツのソロ作品やムーディー・ブルース時代の彼の演奏には殆ど思い入れがない。あるのはやはり初期の2枚である。「Out In The Sun」は随分と昔に旧サイトで紹介したので今回は彼のソロ・デビュー作を紹介してみる。

イエスは「Tales From Topographic Oceans」「Relayer」という作品を1973年から1974年にかけて制作した後、一時バンド活動を休止してメンバーそれぞれがソロ作品を発表するという時期を迎える事になる。一番最後にイエスに参加したパトリック・モラーツの出番は1976年だった。彼は「Story Of I」という作品を発表した。メインホースやリフュジーというバンドは一般の洋楽ファンが気安く聴いていたメジャーなバンドではなかったし、「Relayer」に参加していた時点で既に曲は出来上がっていたから彼の作曲能力を一般の洋楽ファンが確認するのは「Story Of I」が初めてだったと言っていい。前任のリック・ウェイクマンは「The Six Wives of Henry VIII」「Journey to the Centre of the Earth」「Myths & Legends Of King Arthur & The Knights Of The Round Table」というソロ作品を発表して演奏能力だけでなく、作曲能力にも長けていた事が既に証明されていた。

ではパトリック・モラーツのソロ作品はどうだったかと言うと、プログレ・ファンがあっと驚くラテン音楽の要素が盛り込まれた作品として私達の前に届けられた。昔はメインホース以前の彼の経歴は殆ど謎だったが、今では彼の公式ホームページを除くと彼のメインホース以前の経歴を調べる事が出来る。それによれば彼は幼少の頃にヴァイオリンやピアノの演奏を学んだり、クラシック音楽の理論を学んだりした、いわば英才教育を受けた天才少年。その後ジャズに興味を持ってスイス国内のジャズ・フェスティヴァルに出場するなどの音楽活動を展開していた事が今では公になっている。「Story Of I」にはなるほど確かに彼が辿ってきたクラシック音楽やジャズ・ミュージックのエキスが所狭しと導入されている。だが、プログレの世界ではジャズやクラシックの要素をロックのフィールドに持ち込むのは日常茶飯事。

それよりも驚かされたのがブラジル音楽を初めとする大胆なラテン音楽の導入だ。本作がブラジル録音だったせいもあるのか、本作にはロックしか知らない人には馴染みの薄い、ジャズやラテン音楽の世界の人もしくはそれに近い演奏家が沢山参加している。10代の頃、クラシック音楽やジャズの世界にいた人が一体どこの時代でブラジル音楽を初めとするラテン音楽に触れたのは知らないが、1960年代はボサノヴァを初めとするブラジル音楽が世界中に知れ渡った時期でもある。メインホースを結成する以前にジャズの世界にいたパトリック・モラーツが1960年代のジャズ・シーンに少なからず多大な影響を及ぼしたブラジル音楽の素晴らしさに感化されたのも、ロックのフィールドに足を踏み込む以前だったと推察するのが妥当であろう。それにしても「Story Of I」は非常にユニークな作品だ。

ブラジル音楽の要素やブラジル音楽でよく使用される伝統的な楽器をプログレッシヴ・ロックのフィールドに積極的に導入してみせた例は、音楽がジャンルの垣根を越えてボーダーレスの時代に突入した今ならいざ知らず、今から30年も前の1976年の時点でここまでやってみせた例が他にあっただろうか。イエス在籍中に培われた複雑でスピード感溢れる展開に加え、時にはロックのフィールドを越えてジャズ・ロック、或いはラテン・ジャズそのものといった展開を見せる場面もあって、あっと言う間にアルバム1枚が完走してしまう。凡百なキーボード奏者ではとても太刀打ち出来ない演奏テクニックを見せながらも、ラテン音楽に内包されている陽気さといった部分が本作に相乗効果を齎して他に例をみないボーダーレスなロック・アルバムに仕上がっている。「Story Of I」の先進性は発表から30年を経過した今聴き直しても色褪せない事から明らか。傑作。

メインホース(紙ジャケット仕様)アウト・イン・ザ・サン(紙ジャケット仕様)パトリック・モラーツIII(紙ジャケット仕様)コエキシステンス(紙ジャケット仕様)

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