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#1122 Mr. Brown / Mellan Tre Ogon (1977)

 2007-02-04
1. Suicide
2. Recall The Future
3. Reason Till Ixtlan
4. Universe
5. Kharma 74
6. Liv I Stad Utan Liv
7. Tornet
8. I'll Arise

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過去にCD化された事があるのかどうかは知らないが、北欧シンフォの中にあって比較的初期の頃からその存在が知られていたスウェーデン出身のプログレッシヴ・ロック・バンド、ミスター・ブラウン(Mr. Brown)が1970年代に唯一残したアルバムを入手した。作品のタイトルは「Mellan Tre Ogon」といい、オリジナル・レコードは1977年に発表された物だ。スウェーデンは知る人ぞ知る音楽大国で、ポップスの世界ではかつてアバというスーパー・グループを生み出した国としても知られているが、プログレの世界に限ってもボ・ハンソン、エルヤーナス・トレッスゴード、カイパ、サムラ・マンマス・マンナ(1970年代)、イシルドゥス・バーネ(1980年代)、アネクドン、フラワー・キングス、パル・リンダー・プロジェクト(1990年代)、パートス、リキッド・スカーレッド、カープトゥリー(2000年代)といったバンドが各時代に飛び出してプログレッシヴ・ロック・ファンの熱い支持を獲得してきた。
勿論、デンマーク、ノルウェー、フィンランド、アイスランド当りの他の北欧区域の国からも無視する事の出来ない素晴らしいバンドやアルバムも沢山あろうが、やはり質・量の観点からいって、”北欧最大のロック王国はスウェーデン”(注;ロックに限る)という認識で誤りとはならないであろう。このミスター・ブラウンが1970年代に唯一残した作品も、(シンフォニック・ロックの歴史に残る一世一代の傑作なんていう大風呂敷を広げるつもりはないが)北欧プログレッシヴ・ロックの良作の一つとして紹介するに足りる作品といっても過言ではないだろう。で、このミスター・ブラウンであるが、これまで音楽雑誌等で彼等の足跡が語られる事は殆どなったとは思うが、輸入CDに彼等の足跡が簡単に紹介されているのでそちらから引用する形で簡単に紹介してみたい。まずミスター・ブラウンの起点であるが、Hakan Andersson と Bo Carlberg という共にギタリストの2人が10代の頃から身を置いていたローカルなバンドが出発点となっている。
1970年代前半に彼等2人の他、Almhult Rovert Svensson(ベース)、Kjell Johnsson(ドラムス)というメンバーが参加してバンド然となった彼等は日夜ジャム・セッションに明け暮れるようになる。メンバーが集まってきた当時、彼等の音楽的趣味はサンタナ、レッド・ツェッペリン、ジミ・ヘンドリックスといったサウンドだったようだが、プログレッシヴ・ロックの追い風を受けて直に彼等の趣味趣向も変わっていったという。特にピアノやハモンド・オルガン、シンセサイザーを駆使するキーボード奏者の Anders "Tocken" Nilsson やフルート奏者の Jan Peter Strahle が参加してからが顕著だったようで、彼の加入によりリターン・トゥ・フォエヴァー、ピンク・フロイド、ジェネシス、キャメル、イエス、マハヴィシュヌ・オーケストラといったジャズ・ロック/プログレッシヴ・ロック・サウンドのエキスが自らの音楽性に注入される事になる。バンドの動き出し当初、メンバーはまだ10代だったようだから、興味を覚えた音楽のエキスを貪欲に吸収していった筈だ。
この布陣で彼らはツアーも行う。彼等の女友達4人をバック・コラースに従えたギクも行った模様だが、1970年代前~中期の段階ではまだアルバムを発表する機会は得られなかった。この後大学に進学する者もいてミスター・ブラウンの活動は不定期になるが、1976年の夏にようやくアルバムの制作に入ることになる。実はこの時点でメンバーはまだ大学生だったり、他の職業に就いている身分だったらしい。なのでアルバムの制作は休日であったり週末に行われる事が多かったという。友人や家族のサポートを受けて制作された作品は難産の末、1977年の末には完成を見た(彼等がミスター・ブラウンと本格的に名乗るようになったのもこの録音期間中)。作品のタイトルは最終的に「Mellan Tre Ogon」と名付けられた。センスがよいのか悪いのか、一見評価に困るジャケットのデザインを担当したのは Jan Hesseldahl という人物。完成されたデモテープは彼等の手によってレコード会社に持ち込まれるものの、当時既にプログレッシヴ・ロックの時代は終わりを遂げていたのである。

■ Hakan Andersson - Acoustic & Electric Guitars, Mandoline, Vocals
■ Bo Carlberg - Acoustic & Electric Guitars
■ Lars Meding - Electric Guitar
■ Rovert Svensson - Bass
■ Kjell Johnsson - Drums
■ Anders Nilsson - Piano, Hammond B3 Organ, Logan Strings, Arp Synthesizers, Bells, Tabla
■ Jan Peter Strahle - Flute

■ Mats Bengtsson - Congas
■ Bengt Karlsson - Saxophone
■ Bruno Nilsson - Saxophone
■ Lennart Schander - Harmonizer
■ Marie Swantezon - Vocals

学業や仕事の合間を縫って地道にコツコツと作り上げていった音源だったが、1977年といえば既に世界的な動向として残念ながらプログレッシヴ・ロックの時代は終わりを遂げていた時代である。アメリカに目を向けるとイーグルス、フリートウッド・マック、ピーター・フランプトン、アース・ウィンド&ファイア、スティーヴィー・ワンダー、ボストン、ボズ・スキャッグスといったアーティストの耳に優しい心地良いアダルトな音楽作品が売れに売れてロック産業が肥大化していた時代に突入していったし、イギリスに目を向ければセックス・ピストルズやダムド、クラッシュ、ストラングラーズなどを代表とするパンク・ロックの時代である。母国スウェーデンでも1974年のユーロビジョン・ソング・コンテストの優勝をキッカケに人気アーティストとなったアバが前年の1976年に「ダンシング・クイーン」をヒットさせ、スウェーデン産のポップスが世界中から注目を浴びるようになっていったのである。
そんな中、ピアノやハモンド・オルガン、アープ・シンセを中心にしたミスター・ブラウン産によるシンフォニックなロック・ミュージック。ミスター・ブラウンは大小様々なレーベルにデモ・テープを送ったそうだが、時代遅れのプログレッシヴ・ロックに興味を抱くレーベルはなかったそうだ。無理もない。仕方がないので彼等は身銭を切ってアナログ・レコードを自費出版する手段に訴える。Fly Khan と名付けられた自主レーベルからミスター・ブラウンのレコードが1000枚プレスされた。当時の彼等としては大変な金額だったに違いない。バンドのメンバーによってプレスされたレコードの大半を捌く仕事も行われたそうだが、残念ながらミスター・ブラウンとしての活動はここまでで終わってしまう。メンバーは学業に専念したり、元の職業に戻ったり、中には音楽の世界に更に足を踏み入れた人もいたようだ。メンバーにとっては若い時代の懐かしい思い出、といった感じで脳裏に残っているに違いない。

母国スウェーデンでミスター・ブラウンの過去の作品がどのような評価を受けているのは知らないが、日本では比較的昔からよく知られた作品として紹介される機会がある。1989年に元メンバーの Hakan Andersson の元に日本から電話が入り、日本のコレクターの間でミスター・ブラウンの作品が注目されている、との報を受けて急遽300枚が追加出版されたという経緯もある程。日本だけでなく世界各国のコレクターから注目を浴びるようになって元メンバーもならば、とオフィシャルCD化を目指すのだが、諸般の事情もあって、今日までCD化が伸びてしまったらしい。1976年の夏にスタジオ入りしてからおよそ30年。2006年にようやくCD化されて一般の洋楽ファンが手軽に聴けるようになった訳だ。さて、簡単に作品に触れてみるが、メンバーはギター3人、ベース、ドラムス、キーボード、フルートの7人だが、学生や社会人の身分でありながら片手間に録音作業を行っていた経緯から、完成の時点でこの7人がミスター・ブラウンに正式に在籍したからについては定かではない。
更に本作にはゲストとしてコンガ、サックス、ハーモナイザー、ヴォーカル、計5人が参加している。収録は全部で8曲。「Suicide」は北欧の国を意識させるに充分な、”冬”をイメージさせるリリカルなシンフォニック・バラード。冒頭にもってくるには聊かシンミリし過ぎていると感じるが、ピンク・フロイドをイメージさせる哀感たっぷりな旋律は日本人受けする事必至。「Recall The Future」は当初アルバム・タイトルの予定にもなっていた曲。冒頭のナンバーとは一転、激しいリズムの転調から入る曲だが、途中でトラディショナル・フォーク風のメロディに変わるなど、哀憐溢れる曲調へと様変わりする。「Reason Till Ixtlan」はネオ・クラシカル調のピアノのメロディが胸を突く情感溢れるバラード・ソング。リック・ウェイクマンや”鳥人王国”リック・ヴァン・ダー・リンデン当りからの影響があるのかもしれない。「Universe」もしっとりとした落ち着いたシンフォな曲だが、こちらはずっとポピュラリティを感じさせる曲調。ヴォーカルも入る。

「Kharma 74」は民族音楽的なアレンジが加わる曲。挿入されるフルートとピアノの演奏のお陰で、センチメンタルな情感が否が応でも心にこみ上げてくる。ミスター・ブラウンはメンバーの演奏技量で畳み掛ける類のバンドではなく、あきまでも楽曲本来が持つ美しいメロディをファンタジックに聴かせるのが持ち味。続く「Liv I Stad Utan Liv」ではそんな彼等の本領が発揮された曲。地味だが実に味わい深い曲だ。アルバムは1分程度の宗教音楽じみた「Tornet」を経てラストの「I'll Arise」へと向かう。アコースティック・ギターをバックにしたSSWライクなフォーク・ソングで、アルバムの最後を飾るに相応しい小品だ。以上、合計40分。あまりにもそっけなく、盛り上がりに少々欠ける事もあって、過度にドラマチックな展開を期待するのは禁物。メタルの要素も含む昨今のプログレとは殆ど接点もない古き良き時代の産物といった作品集。ジェネシスやピンク・フロイド、キャメル当りのシンミリとした色彩部分を好む人ならお奨め出来るだろう。コレクター向け。
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