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#1124 John Lennon and Yoko Ono / Unfinished Music No.2: Life with the Lions (1969)

 2007-02-10
1. Cambridge 1969
2. No Bed For Beatle John
3. Baby's Heartbeat
4. Two Minutes Silence
5. Radio Play

6. Song For John (Bonus Track)
7. Mulberry (Bonus Track)

「未完成」作品第2番~ライフ・ウィズ・ザ・ライオンズ(紙ジャケット仕様)
ジョン・レノン&ヨーコ・オノ
ビデオアーツ・ミュージック (2007/01/24)
売り上げランキング: 5071


ロックを長く聴き続けていると時々困った作品に出くわすことがある。自分がそれまで体験したことのないような、耳にしたことのないような音楽に出くわすと本当に困惑してしまう。1970年代の中盤から洋楽を聴き続けてきたので、今年で既に30年以上。アナログ・レコード/コンパクトディスク含めて(既に手元にないものも含めれば)既に4500枚近くも聴いてきたので、(年を取って刺激に慣れてきたせいもあるだろうが)流石に最近は音楽を聴いて面食らうという場面にでくわす事は殆どなくなったが、洋楽を聴き始めた1970年代時点は見る物、手に取る物すべてが皆初めてだったので洋楽との出会いが常に新鮮だった。今より遥かに洋楽に免疫がない年頃の10代で理解するのには不可能といった音楽にも沢山でくわした。ジャズやクラシック音楽、トラッド音楽なども全く知らない年齢だったのでプログレッシヴ・ロックやジャズ・ロック、エレクトリック・トラッドといった音楽も自分にとっては全くの未知の領域の音楽として映ったもの。
しかしこれらはまだいい。第一まっとうな音楽だ。1970年代のある日、私はルー・リードの「Metal Machine Music」を聴いて非常に憤慨した思い出があるが、リズムとメロディで構築される音楽の世界を大きく逸脱した音楽を理解するのには10代の私には早すぎた(今でも「Metal Machine Music」はクソなアルバムの筆頭である)。もうひとつ、10代の私を大きく悩ませた作品に初期アップル~ザップルから発表された一連のビートルズのソロ作品があった。ジョン・レノンが前衛芸術集団フルクサスの活動にも参加していた芸術家のヨーコ・オノと競作した3作、及びジョージ・ハリスンが「All Things Must Pass」以前に発表した2枚の作品がそれである。通称「赤盤」「青盤」をスタートとして1970年代中盤頃からビートルズのアルバムを聴き始めた私は、当然のようにビートルズのアルバムは勿論、メンバーがそれまで発表したソロ作品も調べるようになる。そこでぶち当ったのが上の5枚だ。ビートルズを聴き始める場合、多分誰でもこの5枚の存在に面食らう筈。
ジョージの「Wonderwall」「Electronic Sound」はさておき、ジョン・レノンヨーコ・オノ名義の初期作品3枚。オノ・ヨーコはよくも悪くも後期のビートルズに多大な影響を及ぼした人物の1人。ビートルズ解散から既に35年以降も経過しているのにも関わらず、今でもヨーコ・オノを”魔女”と蔑みビートルズ解散の張本人と未だに批判される女性でもある。彼女がこれまで音楽の分野を含むアートの世界で生み出してきた作品の数々(全部ではない)は、ポップスの頂点を極めたビートルズの音楽とは余りに違い過ぎるため、誤解と偏見の渦に巻き込まれて長い間ヨーコ・オノのソロ作品、並びにジョン・レノンとの連名名義の作品は誹謗中傷の的にされ過ぎてしまった感もある。1990年代以降のオルタナティヴ・ミュージック・シーン以降、ヨーコ・オノの過去のソロ作品が正当に評価されるようになったのは大変喜ばしいことだが、そんな今日であってもジョン・レノンヨーコ・オノの初期3作は評価に困る困惑の境地と言わざるを得ない。
1966年。フルクサクス運動の一環としてヨーコ・オノはロンドンにやってきた。同年11月、ロンドンで彼女は個展を開くがそこにやってきたのがジョン・レノンだった。この時の交流が元で2人が互いに惹かれあうようになり、交際を重ねるようになる。当時ジョンはシンシア、ヨーコはジャズ・ミュージシャンのアンソニー・コックスという夫がいたが、当初のジョンとヨーコの関係は最初から男と女の関係ではなく、アーティストとアーティストとしての交際レベルだったようだ。その後ジョン・レノンビートルズの作品の中で度々前衛的な手法を用いた曲を登場させるなど、”行動する芸術家”ヨーコの影響を少しずつながら受け始めていく。しかしながらそこはビートルズ。団体ビートルズとしてあまりに突拍子もない行動や創作活動はこれ以上は出来ない。そこでジョン・レノンはビートルズの活動とは一線を引いた、ジョン・レノン&ヨーコ・オノ名義の創作活動を展開する。いや、”創作”と書くと語弊を生むかもしれない。2人にとっては歴史そのものだからだ。

■ Yoko Ono - Vocal
■ John Lennon - Guitar, Feedback
■ John Tchicai - Sax
■ John Stevens - Percussion

今回紹介するアルバムは「Unfinished Music No.2: Life with the Lions」(邦題:「未完成」作品第2番~ライフ・ウィズ・ザ・ライオンズ」で1969年発表のもの。所謂”ジョン・レノン&ヨーコ・オノ”3部作の中間に位置する作品で3枚のアルバムの中では一番まともに音楽やっている(とはいえ、音楽はビートルズとはかけ離れたアヴァンギャルドなフリー・ミュージックで、それも片面のみ)。2007年1月にビデオアーツ・ミュージックから改めて紙ジャケット仕様にて再発されたので、久し振りに聴いてみるつもりで紹介してみたい。ちなみに本作以外の2作品も簡単に紹介するが、「Two Virgins」は”「未完成」作品第一番~トゥー・ヴァージンズ”の邦題で知られる作品。発表当時2人が全裸でジャケットに登場した事から世間を大きく賑わした作品で、発表当時ビートルズの他の3人すら困惑させた曰く付きの問題作。内容はサンプリングがない時代における現代音楽の手法の一つであった具体音楽(ミュージック・コンクレート)。
もう一つ、1969年に発表された「Wedding Album」はその名の通り、ジョンとヨーコの結婚を祝う目的で発表されたプライベート極まりない作品。『ジョン』『ヨーコ』とお互いの名前を呼び合うだけで終わる22分のA面(録音はなんとアビー・ロード・スタジオにて行われた)、そして1969年3月25日から31日まで、アムステルダムのヒルトン・ホテルで行われた”愛と平和を訴えるベット・イン”というイベントの中から3月26日に収録されたものを収録した24分のB面、という具合。「ベット・イン」といってもカメラの前で2人が男女の行為を行うのではなく、愛と平和をテーマに記者会見が行われただけ。ギターを持って曲を演奏する場面もあった。本来なら結婚式の会場で配布される非売品の類であると言っても過言ではないだろう。CD時代になってボーナス・トラックが挿入されて音楽作品らしくなってはいるが、熱狂的なコレクター以外は処置に困る作品である事には今も昔も違いはない。

「Unfinished Music No.2: Life with the Lions」は1969年に発表されたザップル・レコード名義のアルバム。ザップルはアップルの傘下におかれたレーベルの一つでジョン・レノン&ヨーコ・オノの「未完成作品第2番」やジョージ・ハリスン「電子音楽の世界」のような実験音楽やドキュメンタリー、詩人の朗読作品などを発表する目的で設立された非商業目的のレーベルであったが、ジョンとジョージの2枚の作品だけで閉鎖させられてしまった曰く付きのレーベル。「未完成作品第2番」は他の2枚同様、ポップなビートルズ像が好きな人にとっては評価に苦しむ作品であろう。A面は1969年3月2日、英ケンブリッジで行われたフリー・ジャズ・フェスティヴァルでのコンサートを収録したもの。「Cambridge 1969」は1曲26分にも及ぶフリー・ジャズ・ナンバー。ヨーコのパティ・ウォータースばりの魔女ヴォイス、ジョン・レノンによるフィードバック・ギター。これが中心。ジョン・レノンはビートルズのフレーズは勿論のこと、所謂ロック・フレーズなリフは全く弾かない。
曲の後半になってジャズ演奏家のジョン・チカイ、ジョン・スティーヴンスが参加してフリー・ジャズらしくはなるが、それ以前ではフリー・ジャズですらない。前衛音楽的手法が行き着いた2001年の今ならアヴァンギャルド・ミュージックも一種の音楽スタイルの一つとして認識出来ようし、ノイズ・ミュージックにも多くの固定ファンが既に世界中に存在する。メレディス・モンク、ディアマンダ・ギャラ、キャシー・バーバリアン、あるいは平山美智子といった新旧女性ヴォーカル・パフォーマーの作品が紹介される機会も少なからずある今日であるのなら、また違った紹介のされ方もあったろうが、今よりも遥かに前衛・実験音楽の類に世間の免疫が少なかった1969年当時に発表された事を考えると、当時の衝撃は計り知れないレベルであったと想像するのは難くない。

B面は1968年11月4日から25日までの間、妊娠中だったヨーコが入院していたロンドンのクィーン・シャーロット病院の一室で録音されたもの。ジャケットの写真はその当時の様子でヨーコに献身的につきそうジョンの姿が映っている。最終的にヨーコは流産してしまった事もあってか、この音源は相当生々しいものとして私達の耳に届くのである。郷愁を帯びたヨーコの歌がフューチャーされた「No Bed For Beatle John」のような曲らしい曲もあるものの、「Baby's Heartbeat」は胎児の鼓動を録音したもの、「Two Minutes Silence」はジョン。ケージじゃないが2分間の無音、「Radio Play」はラジオのつまみを動かす時に生じたサウンドを録音したもの、と相変わらず私的路線。音楽作品として呼べる代物ではないことは明らかだが、ジョン・レノンとヨーコ・オノの1968年から1969年までの、深い男女の仲となってから結婚に至るまでの2年間を3枚のアルバムにドキュメンタリー形式で録音したものがこの一連のシリーズなのである。

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