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#1151 P.L.J Band / Armagedon (1982)

 2007-05-08
01. Intro
02. I see people
03. Ezekiel
04. Oye
05. Armageddon I
06. Armageddon II
07. The Void
08. Theme
09. Star wish

P.L.J Band / Armagedon

バルカン半島の最南端部に位置する古代文明の発祥地ギリシャ。紀元前の昔に栄えたギリシャ帝国は政治や経済の分野だけでなく文化の面でも多大な影響を及ぼしてきた。”ヨーロッパ文化のゆりかご”と呼ばれたギリシャの文化。特に古代西洋音楽の源を遡ると古代ギリシアの音楽に到達すると言われているだけあって、古代時代のギリシャの音楽を復元した音楽作品には21世紀を生きる私達現代人を驚かせせる部分もあったりする(疑問に思う人は是非グレゴリオ・パニアグワの「古代ギリシャの音楽」を参考に)。勿論ギリシャ文明以前にも音楽は存在したろうが、演劇や文字による譜面を生み出したりしたギリシャ文明が現在の西洋音楽の源であると解釈する方が(ロマンがあるという感情的な意見も含め)なんとなくしっくりくる。さて、時代を現代まで巻き戻してみる。ギリシャのロック・ミュージックと言われて一般の洋楽ファンの方が思い浮かべるバンドやアーティストの名前はそう多くはない。

ロック・ファンに最も著名な存在といえばヴァンゲリス。彼がかつて在籍していたアフロディテス・チャイルドの名前はプログレ・ファンにはお馴染みだが、映画のサントラやサッカーのワールドカップのテーマ音楽まで手掛けたヴァンゲリスの世界的な知名度には遠く及ばない。これ以外にもデミス・ルソス、アクリタス、ソクラテス、スタマティス・スパノダキス、近年ならタニア・ツァナクリードゥ、アネモス、エレフセーリア・アルヴァニタキ、クリスティー・スタシノポリュー、サヴィナ・ヤナトゥー、ハリス・アレクシーウ、マリア・パパドポリュー、ルドヴィコス・トン・アノギオン、レナ・プラトノスといった名前がその筋のファンには知られているようだが、世界的な知名度という点で何れもヴァンゲリスには遠く及ばないだろう。今回紹介する、P.L.J Band という名前のバンドも昔から比較的プログレ・ファンの間で知られてきたのだが、彼等に関する詳細な記事はあまりみかけることも多くないし、それに日本では入手するのも困難な状態が長らく続いてもいた。
かつて”ヨーロッパ文化のゆりかご”と呼ばれたギリシャであるが、ギリシャのロックと言うと一般的なイメージとして米英のロックよりも大きく立ち遅れているといったイメージが付きまとう。ギリシャは西洋音楽の源だった筈なのにこれは一体そうした事か。これを私の昆虫程度の乏しい頭脳で考えてみる。ギリシャの近代史をちょっと眺めてみよう。地中海に位置する美しい国という外面的なイメージとは裏腹にギリシャの歴史は戦争の歴史と言い換えてもいい位、古代ギリシャの時代から血にまみれてきた。近代史だけに限っても1821年のギリシャ独立戦争から始まり、希土戦争(1897)、バルカン戦争(1912-1913)、第一次世界大戦(1914-1918)、希土戦争(1919-1922)、第二次世界大戦(1939-1945)、そして幾多のクーデターや内戦。1967年に軍事独裁政権が成立して1974年に軍事政権が崩壊して新民主主義党(ND)政権になるまでの間、ギリシャでは軍事政権が続いていた。1967年から1974年である。

この期間、ロック・ミュージック・ファンならこの期間がロックが進化を遂げるのに非常に重要な時期であった事は誰もが知っている。モンタレー・ポップ・フェスティヴァルからウッドストック・コンサート。サイケデリック・ミュージック、ブルース・ロック、ハード・ロック、プログレシッヴ・ロック、グラム・ロック、ジャズ・ロック、クロスオーヴァー等々。こうしたジャンルの音楽のリアル・タイムな動きをなんの制限もなく誤差なく享受する事が軍事政権時代には恐らく出来なかった筈で、事実この1967年から1974年の間に活動していたアフロディテス・チャイルドも五月革命以降のフランスを活動の拠点としていた位である。それともう一つ、ロック・ミュージックの源と呼べる音楽は黒人音楽であるブルースである事は今更いうまでもない事だが、こうした音楽を生み出してきたのはアメリカに入植してきた白人の移民が入植の際に一緒に連れてきた奴隷、つまりアフリカ系の黒人たち。

その彼等黒人達が厳しい生活の中から生み出してきたのがブルースで、更にブルースから派生して生み出されていったリズム・アンド・ブルースやロックン・ロールをイギリスの白人達が巧い具合に調理した結果、ブリティッシュ・インヴェイジョンが生まれ、やがてそれらの動きはクリームやジミ・ヘンドリックスという時代の寵児を生み出していく事になる。聊か簡単に纏め過ぎてしまったが、こう書いてみると判る様に、戦後のブルース全盛時代からロック誕生の時代まで、ポピュラー音楽の主戦場となっていたのは英語圏であるアメリカでありイギリスであった訳でギリシャ語を公用語とするギリシャの【ギ】の字もポピュラー音楽の歴史に絡んでこない。勿論、ギリシャにもライカという大衆音楽があるが、軍事政権時代によって他国の音楽との自由な交流は阻害され、ライカが英語圏の最大にして最高の代表的音楽であるロックと融合するようになるのも1974年の軍事政権以降からと断言してしまってもあながち暴言ではなかろう。

■ Lavrendis Macaeritsas - Lead Vocals, 12-String Guitar, Keyboards
■ Anthony Mijelos - Lead Guitar, Acoustic guitar
■ Paul Kikrilis - Rhythm & Classical Guitar
■ Jimmy Vasalakos - Bass, Background Vocals
■ Tolis Skamajouras - Drums, Percussion

上でも触れたように P.L.J Band はギリシャ出身のロック・バンドが紹介される機会の少ない時代からプログレッシヴ・ロック/ユーロ・ロック・ファンから比較的よく知られてきたバンドだが、彼等の足取りが詳細に伝えられてきた事はこれまで殆どなかったと思う。本作「Armageddon」は1982年にヴァーティゴ(ギリシャ)から発表された作品で恐らく彼等のデビュー作。発表当時は専属のキーボード奏者抜きの5年編成で彼等は翌1983年にも「ΤΕΡΜΙΤΕΣ」というアルバムを発表した後に2作目の作品のタイトル〔テルミテス〕をバンド名として音楽活動を継続、1980年代から1990年代にかけて「ΤΣΙΜΕΝΤΕΝΙΟ ΚΟΝΣΕΡΤΟ」「ΤΣΙΜΕΝΤΕΝΙΑ ΤΡΑΙΝΑ」(1986年)、「ΠΕΡΙΜΕΝΟΝΤΑΣ ΤΗ ΒΡΟΧΗ」(1988年)、「ΤΑ ΚΑΛΥΤΕΡΑ ΤΡΑΔΟΥΔΙΑ」(1994年)、「Η ΑΜΑΡΤΩΛΗ ΜΑΡΙΑ」(1994年)といった作品ヴァージンやユニヴァーサルに残している。
P.L.J Band ~テルミテスが現在も尚活動中の現役バンドであるかどうかは判らないが、2000年代に入ってEMI(ギリシャ)から旧作が再発されている所を見ると地元ではそれなりの知名度を持っているのかもしれない。さて、本作「Armageddon」はタイトル名からして人類の世紀末をテーマにしたコンセプト作品である事はギリシャ語が判らなくても容易に想像が付く。これまで多くのロック・ミュージシャンが作品製作の種としてきた題材でもある。顔が焼け爛れ、性別も全く判断できないジャケの人物は私達人類の来たるべき姿なのだろうか。アルバムを手にする全ての人に対して『悔い改めなさい、さもないと罰を受けるぞ』とでもいいたげな人物。それもその筈、本作は旧約聖書中の三大預言書でエリート階層出身のユダヤ人預言者エゼキエル(Ezekiel)が書いたとされるエゼキエル書(Book of Ezekiel)をテーマにした作品であるというのだ。この書の内容は主に堕落したイスラエルに警告を促すような内容であるという。読んだ事ないけど。

クエンティン・タランティーノ監督の出世作『パルプ・フィクション』の劇中で黒人俳優のサミュエル・L・ジャクソンがエゼキエル書の内容を引用するシーンがあるというのだが、預言書に対する記事はこの位にして肝心の作品の内容に触れてみる。本作には全部で9曲が収録、全てメンバーのオリジナル曲である。クレジットの記載からして Paul Kikrilis(ギター)と Lavrendis Macaeritsas(リード・ヴォーカリスト)がバンドのサウンド面における中心人物のようだ。録音は1981年のアテネにて。記載を見る限り、作品の制作はメンバーで行ったようだが、「Armageddon I」で M. Theodoridis という人物がナレーションを担当している。肝心の作品は1982年作品という時代を考えると時既に遅し、といった味わいの感傷的なプログレ・サウンド。エスニック/トラッド調のサウンドに当時はサード・イヤー・バンドとも比較されたそうだが、今聴いてみると呪術そのもの、といったサード・イヤー・バンド程のカリスマ性は感じられない。
それよりどちらかというとピンク・フロイド、そしてジャーマン・コズミック・サイケ、スペース・ロックに近い雰囲気を感じる。1982年発表作品という事から時流に乗り遅れたプログレとの評価を下す事も出来ようが、よく考えるとギリシャの軍事政権が崩壊したのが1974年。1982年といえばそれから8年後だ。1975年のフランコ政権崩壊後にロック・バンドの活動が目覚しくなったスペインのようにギリシャ出身の P.L.J Band にも査定の際にはその変のお国事情を差し引いて評価してあげないといけないだろう。メロディに捻った部分がある訳でもなく、更に曲やメロディに取り立てて目新しい部分がある訳でもないが、核戦争後の人類を連想させる不気味なジャケのインパクト、古代ギリシャの時代までトリップしそうな神秘的な民族音楽調の旋律、歴史番組のナレーターみたいな感情を抑えた歌(というより朗読に近い)、そしてなにより今から遥か数千年前に栄華を誇った国ギリシャに対する神秘的なイメージ等々、こうした要素が本作の重苦しさを見事なまでに演出してくれている。

私の持っているCDは2006年のデジタル・リマスター仕様のもの。ちなみに本作、歌詞の内容があまりに冒涜的との事で発禁となり回収の憂き目にあったとの事だが本当だろうか。
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コメント
Cotton様どうもありがとうございます。
もうコレだけ詳しくギリシャの背景を踏まえて
音楽について書かれている記事は読んだ事無いです。
なるほどこれは良くわかります。
確かに製作年数からすると、弱冠古めの音が・・・いやいや いたしかた無いわけですね。
このなんだかわけのわかんない音のとりこになって数年立ちます。。。
おどろおどろしいつぶやき風のヴォーカルがほんと耳に残るんですよ。
確かにT、YーBANDというよりは、'70年代初期のフロイドかもしれませんね。
音がかすかす隙間だらけの音なのが、私にとってのギリシャの特徴かも・・・です。
本当にありがとうございます。

最近アフロディーテス・チャイルド1STの1曲目聴いて
びびりまして・・・ギリシャに踏み込めません・・・
怖いところです・・・凄い所ですね・・・
【2007/05/08 23:15】 | evergreen #- | [edit]
なんとか最近になってようやく、このアルバムを入手することができました。それにしてもユーロ・ロックって奥が深いですよね。
【2007/05/09 19:11】 | Cottonwoodhill #- | [edit]
Youtubeでのプログレ動画を集めています。
http://progretube.blog105.fc2.com/
また遊びにきます~♪
【2007/05/26 19:18】 | progretube #- | [edit]
コメントありがとうございます。今後とも当ブログをご贔屓に。
【2007/05/27 20:30】 | Cottonwoodhill #- | [edit]












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  • 十三夜に・・・P.L.J.BAND”Armageddon”【Iron Rosary】
    P.L.J.BAND”Armageddon”1982年今宵は(正式には11月3日)、暦の上では十三夜だそうです。満月の夜には、やはり通常と違った気分になるというもの・・・(ほんとかな?)がお~~~!で、今日はこんなアルバムです。もう、出しました・・・とうとう
【2007/05/08 23:19】
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