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#1152 Skip Spence / Oar (1969)

 2007-05-13
01. Little Hands
02. Cripple Creek
03. Diana
04. Margaret/Tiger Rug
05. Weighted Down (The Prison Song)
06. War in Peace
07. Broken Heart
08. All Come to Meet Her
09. Books of Moses
10. Dixie Peach Promenade (Yin for Yang)
11. Lawrence of Euphoria
12. Grey/Afro

13. This Time He Has Come (Extra Tracks)
14. It's the Best Thing for You (Extra Tracks)
15. Keep Everything Under Your Hat (Extra Tracks)
16. Furry Heroine (Halo of Gold) (Extra Tracks)
17. Givin' up Things (Extra Tracks)

18. If I'm Good (Unissued Tracks)
19. You Know (Unissued Tracks)
20. Doodle (Unissued Tracks)
21. Fountain (Unissued Tracks)
22. I Think You and I (Unissued Tracks)

Oar
Oar
posted with amazlet on 07.05.13
Skip Spence
Sundazed (1999/07/20)
売り上げランキング: 135352


1946年、カナダはオンタリオ州ウィンザーで生まれ、1999年、米カリフォルニア州サンタクルーズにて死す。紫の煙漂う1960年代にドラッグ過多で体調を崩して入院、やがて精神までもが冒されて療養生活送り。晩年は肺炎や心不全、癌に苦しみ、そして最後には肺癌で倒れた男。男の名前はアレキサンダー・スキップ・スペンス。スキップ・スペンスは自制心を保てずに悲劇の最後を遂げた男であるが、彼の生き様は2006年に残念ながら亡くなってしまった元ピンク・フロイドのシド・バレットの人生とダブって見える。くしくもスキップ・スペンスとは同い年であるシド・バレットがピンク・フロイドのリーダーとしてデビューを飾ったのは1967年。時代を一歩も二歩も先取りした斬新な音楽を作り上げたシドを中心としたピンク・フロイドは僅かデビュー作1枚で時代の寵児となったのだが、LSD過多で自分を見失ってしまったシドはバンドを追われるように脱退、その後精神不安定な状態でソロ作品を2枚仕上げるも、これを最後に音楽の世界から姿を消してしまった。

喧噪の世界から身を引いたシド・バレットは1970年代以降長きに渡り静養生活を送る事になる。インターネットを利用して近年の彼の様子を調べる事が可能になった近年は兎も角、それ以前は彼の消息はまったく不明で、病魔に冒されて既に死亡しているのでは、といった憶測記事が飛び交う時代もあった。残念ながらシドは2006年7月に合併症のため亡くなってしまったが、ドラッグで身を滅ぼして人生の大半を棒に振ってしまった、という経歴に関してはシド・バレットとスキップ・スペンスは同じ。共にサイケデリック・ミュージック全盛の時代に生き、そして生前に発表した作品は神格化されて今では共にカルト的な人気を獲得するに至っている点も同じ。彼等2人を含め、個人的にはドラッグで人生を棒に振ったような自制心のない人間を英雄視する風潮は好ましくないとは思うが、彼等がこの世に残していった音楽の数々は時代を超えて尚、輝かしい光を放ち続けている。正に《狂ったダイヤモンド》である。
まずはジェファーソン・エアプレイン。1960年代の所謂”サマー・オブ・ラヴ”を代表する米サンフランシスコ出身のサイケデリック・ロック・バンドが産声を上げたのが1965年。元タウン・クライアーズのマーティ・バリンがサンフランシスコで出会ったポール・カントナーと共に立ち上げたフォーク・ロック・バンドが始まりで、ヨーマ・カウコネン、ジャック・キャサディ、シグネ・トリー・アンダーソンらが当初のメンバーでスキップ・スペンスもオリジナル・メンバーとして参加している。スキップ・スペンスはジェファーソン・エアプレインにドラマーとして参加したが実は彼は元来ギタリスト。だがマーティの発案で半ば強引にドラムを担当させられる事になる。バンドは1966年夏に最初のアルバム「Jefferson Airplane Takes Off」を発表するが、発表をまたずにスキップ・スペンスはバンドを脱退してしまった(彼の代わりにはスペンサー・ドライデンが加入)。まあ無理もない。

ジェファーソン・エアプレインを去ったスキップ・スペンスがソングライター/ギタリストとして新たに結成したのがモビー・グレイプというバンド。日本では細野晴臣がかつて在籍していた はっぴいえんど の元ネタの一つとしても知られるバンドでもある。1966年夏に結成されたモビー・グレイプの高い音楽性はメジャー・デビュー以前から口こみで評判を呼びレコード各社からの争奪戦となるが最終的にコロンビアと契約を結ぶ事になる。翌1967年にモビー・グレイプは最初の作品「Moby Grape」を発表。ブルース、フォーク、カントリーなどの音楽要素を駆使した彼等の音楽は玄人筋から高い評価を受ける。翌1968年にも「Wow」を発表、前作同様にレベルの高い作品であったが商業的な成功はさっぱり。コロンビアが企画した宣伝効果もさっぱりでおまけにリーダーのスキップ・スペンスがドラッグ中毒で入院騒ぎを起してしまう有様。どうにもこうにもならなくなったモビー・グレイプの活動は必然的に終止符を迎えてしまった。


■ Skip Spence - Vocal, Guitar, Drums

1960年代末に事実上崩壊してしまったモビー・グレイプであるが、実は崩壊後も何度か再結成を繰り返している。しかも最近まで悪名高いマシュー・カッツ(ジェファーソン・エアプレイン、モビー・グレイプ、イッツ・ア・ビューティフル・デイのプロデューサー)がミュージシャンでもないのに”モビー・グレイプ”の名前の権利を持っていた事もあって事態を複雑なものにしていた。近年のモビー・グレイプ関連ニュースと言えば2007年7月にカリフォルニア州パタルマとモンタレーで行わる予定の再結成コンサート。主謀者はオリジナル・メンバーの一人ジェリー・ミラーで他にピーター・ルイス、ボブ・モーズリー、ドン・スティーブンソン、そしてスキップ・スペンスの息子オマー・スペンスが加わる布陣だそうだ。しかもパタルマで行われるコンサートではジェファーソン・スターシップも参加する。日本から現地に飛ぶのは非常に難しいかもしれないが、当地に住む音楽ファンなら是非彼等のコンサートを訪れてやって欲しい。

さてスキップ・スペンス。ごく初期のクイックシルヴァー・メッセンジャー・サーヴィスに参加していた経歴を経て急造ドラマーとしてジェファーソン・エアプレインに参加、脱退後に今度は本業のソングライター/ギタリストとしてモビー・グレイプを結成するもドラッグで精神に異常をきたして引退を余儀なくされた悲劇の音楽家であるが、そんな彼もわずか1枚ではあるが生前にソロ・アルバムを発表している。タイトルは「Oar」で1969年にひっそりと発表されたもの。治療の為、NYにある総合病院ベルビュー・ホスピタル(Bellevue Hospital)で半年間に及ぶ入院生活を送った後に単身ナッシヴィルに向かいスリー・トラックの機材を使用して短期間で仕上げてしまった作品だ。オリジナルは12曲収録の計44分程度のアルバムだったが、1999年に米復刻系レーベルの Sundazed Records によってリマスターされた際、ボーナストラックを加えた全22曲仕様(65分)として再発された。これ以前に1995年盤のCDも有るようだがこれから買うならこちらだろう。

「Oar」は当時は殆ど話題にもならなかったそうだが今では評価はウナギ上り。当時のオリジナル・レコードはサイケデリック・ミュージック・コレクターの羨望の対象となっている有様で、多くの同業他者からリスペクトされるなのどの高い評価を得ている。今ではシド・バレット「The Madcap Laughs」「Barrett」、メイヨ・トンプソン「Corky's Debt to His Father」らと同様にカルト系アシッド・フォークの名作としての評価を獲得している。録音は1968年12月3日、5日、8日、12日にカントリーのメッカとして知られるテネシー州ナッシュヴィルで行われた。作詞/作曲は全てアレクサンダー・リー・スペンス名義。モビー・グレイプを去って療養生活を送っている合間を縫うように1人で録音を行った作品で作詞/作曲、プロデュースの他、ギター、ドラムなどの楽器演奏も自分で行っている。マーティ・バリンによって無理矢理ドラマーに仕立てあげられた過去が人生最後のソロ・アルバム制作の場で皮肉にも生きた訳だ。

ロック(サイケデリック)・サウンドだけでなくフォークやカントリー、ブルース、リズム&ブルースなど、米ルーツ・サウンドに根差したサウンドを展開していた実力バンド、モビー・グレープの中心人物であったスキップ・スペンスだけあって、モビー・グレープのサウンドのアコースティックな側面の一端が垣間見て取れるダイジェスト的な内容となっている。カントリーの聖地で録音を敢行した事から彼が指標とする音楽が一体なんだったのか、が判りそうな気もするがドラッグのお陰で精神を病んでいた人間が作り挙げた作品だけあって、音楽の向うから危うい精神状態が伝わってきそうなギリギリな作風として聴こえてるのも本作の特徴。1人で仕上げてしまった作品だけあって曲そのものはどれもシンプルな構成。ニック・ドレイクの最終作にも似た、静かで清々しさすら感じさせるのだが、この後長きに渡り精神病患者として残りの生涯を費やす事になる経歴を私達は既に知っている。それを考えると、この謎めいた歌と音楽が一掃不気味なものとして聴こえてくるのだ。

個人的には「Oar」はフォークやカントリーからの影響も勿論だが、ブルースからの影響も強く感じる事が出来る作品。スキップ・スペンスがフレッド・マクダウェル、ライトニン・ホプキンス、レッドベリーといったアコースティック・ブルース系アーティストの作品を日頃よく聴いていた事も想像出来るし、アシッド・フォーク・サウンドに遊び心たっぷりなギミックを加える様はジョン・フェイヒーからの影響も感じさせる。さらにドリーミーでグッド・タイミーな作風からはラヴィン・スプーンフルも充分に意識していた事も伺い知れるが、残念ながら彼の音楽を掘り下げるのはこれ以上は無理。ちなみに1999年にはロバート・プラント、ベック、トム・ウェイツ、ロビン・ヒッチコック、グレッグ・デュリ、アリステア・ガルブレイス、ディーゼル・パーク・ウエストらの演奏/歌によるトリビュート作「More Oar: A Tribute to Alexander "Skip" Spence」という作品も発売されている。
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