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#1156 Hound Dog Taylor & The Houserockers / Hound Dog Taylor & The Houserockers (1971)

 2007-06-04
01. She's Gone
02. Walking The Ceiling
03. Held My Baby Last Night
04. Taylor's Rock
05. It's Alright
06. Phillips' Theme
07. Wild About You, Baby
08. I Just Can't Make It
09. It Hurts Me Too
10. 44 Blues
11. Give Me Back My Wig
12. 55th Street Boogie

Hound Dog Taylor & The Houserockers ハウンド・ドッグ・テイラー&ザ・ハウスロッカーズ(紙ジャケット仕様)

音楽の要はリズムと信じて疑わない人には信じられないかもしれないが、世の中にはベース奏者を除外した編成で音楽を演奏するユニットも存在する。近年ではジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンの存在がよく知られている。元プッシー・ガロアのギタリスト、ジョン・スペンサーは1992年に自身のバンド、ブルース・エクスプロージョンを結成する。パンク・ロック世代の若者がロック・ミュージックの源ブルースを実験的にアレンジした様は1990年代以降におけるブルースの新しい形態として大きく音楽メディア等で紹介される事になる。ブルースとエクスプロージョンの融合を試みたジョン・スペンサーの試みが成功したかについては彼等の作品を聴けば判る事なのでここでは触れないが、実は彼等が登場する遥かずっと以前、戦前~戦中~戦後のブルース・シーンでは特段珍しい事でもなかったのだ。戦前のブルース・シーンから活動してきたブルースの重鎮達はベースレスのスタイルなぞ、特段プログレッシヴなスタイルでもなかったのだ。

ところで、ブルース・ファンにはお馴染みのレーベルにアリゲーター・レコーズという会社がある。このレーベルはデルマーク・レコーズに勤めていた1947年米ミシガン出身のブルース・イグロア(Bruce Iglauer)が設立したブルース・レーベルで、ブルース・メン、そしてそのブルース・メンに群がる熱狂的なブルース・ファンが集結する、ブルース・バカ達の為のようなレーベル。このレーベルは実はブルース・イグロアがあるブルース・ギタリストの音楽に惚れて彼の作品を生み出す為に設立されたのだった。そのブルース・ギタリストの名前はハウンド・ドッグ・テイラー(Hound Dog Taylor)。戦前のシカゴ・ブルース・シーンではさして珍しくもなかったベースレスのスタイルを自身のバンド、ハウスロッカーズでも貫いた愛すべきブルース・バカの1人。ハウンド・ドッグ・テイラーのベースレスのスタイルは少なからず若手の音楽家にも多大な影響を及ぼして後のジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンのようなフォロワーをも生み出した。
ハウンド・ドッグ・テイラーは1915年(1917年説もあり)、米ミシシッピー州出身。本名はなんとセオドア・ルーズベルト・テイラー。”ハウンド・ドッグ”は後から付けられたステージネームらしい。ギターを弾き始めたのは遅くて20歳頃。1942年にシカゴに移住、暫くは生活の為音楽と非音楽の両方で仕事をこなす毎日を送っていたようだが、1957年頃からプロのブルース・メンとしてシカゴ界隈で本格的な活動を開始している。ハウスロッカーズが結成されたのは1959年頃でサイド・ギター担当のブルワー・フィリップス(Brewer Phillips、1924年生まれ)が参加したのはこの頃から、そしてドラム担当のテッド・ハーヴェイ(Ted Harvey、1930年生まれ)が参加したのは1965年頃だと言われている。ライヴ活動中心のハウンド・ドッグ・テイラーの初録音は1960年。なんと45歳の時。ファーマやチェスといった幾つかのレーベルに音源を残すものの、1960年代当時は大きな反響を残す事はなかったようだ。

そして時代は1969年。当時ハウンド・ドッグ・テイラーが根城としていたクラブ”フローレンス”でハウンド・ドッグ・テイラー&ザ・ハウスロッカーズの演奏を当時デルマークのブルース・イグロアが聴いた事で事態は急変する。当時既に50歳を過ぎていた時ハウンド・ドッグ・テイラーの演奏に惚れ込んだイグロアはデルマークをやめてアリゲーターというレーベルを作ってまでハウンド・ドッグ・テイラー&ザ・ハウスロッカーズのアルバムを売り出そうと画策するのだった。1971年、遂にブルース・シーンの最終兵器ハウンド・ドッグ・テイラー&ザ・ハウスロッカーズのデビュー作が発表された。創業社長のイグロア自身の地道な活動もあってハウンド・ドッグ・テイラーのレコードは好評を以って迎えられ、1973年には通算2作目となる「Natural Boogie」を、1974年にはライヴ録音も行うが、1975年に肺癌の為死去。アルバム・デビューから5年という余りに短い期間ではあったが、彼にとってこの5年間は自分の人生に対する最後のご褒美と考えていたに違いない。


■ Hound Dog Taylor - Guitar, Vocals
■ Brewer Phillips - Guitar
■ Ted Harvey - Drums

チェス音源を含め、1960年に幾つかのレーベルで吹き込んだ音源。そしてアリゲーターと契約を結んで発表したハウンド・ドッグ・テイラー&ザ・ハウスロッカーズ名義の2枚のオリジナル・アルバムと1枚のライヴ盤「Beware of the Dog」。これがハウンド・ドッグ・テイラーの全て。1975年の彼の死去以降、2枚のスタジオ作品「Hound Dog Taylor and the Houserockers」「Natural Boogie」の未収録曲を網羅したアウトテイク集「ジェニューイン・ハウスロッキン・ミュージック(Genuine Houserocking Music)」が1985年に発表、これ以外にも1972年のマサチューセッツ州におけるライヴ「Freddie's Blues」、同じく1972年のライヴ「Have Some Fun」「Live at Joe's Place」、1970年代のライヴ音源アーカイヴ集「Release the Hound」、コンピ盤「Houserockin' Boogie」「Live at Florence's」「ベスト・オブ・ナチュラル・ブギ・ギター・マスター~デラックス・エディション(Deluxe Edition)」「Live in Boston」といった没後の作品も存在する。

僅か2枚のスタジオ・アルバムと1枚のライヴ・アルバムで当時のブルース・シーンに衝撃を与えたハウンド・ドッグ・テイラー。本作「Hound Dog Taylor and the Houserockers」は記念すべき彼等の最初のオリジナル・アルバム。フル・タイムのプロのギタリストとなったのが1957年で当時42歳。それから14年後の1971年に発表されたのが本作という訳だ。当時既に彼は50歳も半ばを過ぎていたし、音楽家としては既に峠を降りていたと思われるが、それでもブルース・イグロアに衝撃を与えるには充分だったパワフルなブルースが本作では繰り広げられている。ブルースにエクスプロージョンを持ち込もうと悪戦苦闘したジョン・スペンサーの遥か以前の先駆者がハウンド・ドッグ・テイラーという訳だ。1970年代のブルース・シーンと言えばフレディ・キングやアルバート・キングなど、数多のブルース・メンがファンク・ブルースへ走った時代でもあったが、ハウンド・ドッグ・テイラーの音楽はファンクやブルースのファンによりも、ロック・ファンに広くアピールできる芯を持つ音楽でもある。

ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンとのジョイント・ツアーで若い音楽ファンの知る所となったディープなオヤジ、R.L.バーンサイドやご存知爆発系ブルースの元祖バディ・ガイなど、オルタナなグランジをリアル体験した近年の若い洋楽ファンからエクスプロージョン系のロック色の強い歪んだブルース・サウンドが近年高く評価される傾向にあるが、ハウンド・ドッグ・テイラーもあと10年遅く生まれて、そして60歳とは言わず、せめてあと10年長生きしてアルバムの5~6枚も余計に発表してくれていたら、ブルースの歴史、いやロックの歴史も今とは少々毛色の異なった状況におかれていたかもしれぬ。彼等やジョン・リー・フッカーのようなブルース・メンの音楽が好きな人ならきっと判ってくれるだろう。個別の曲に触れるスペースが無くなってしまったが、簡単に触れてみたい。さて、本作「Hound Dog Taylor and the Houserockers」はたった2日間で録音が完了してしまった作品。

一応はアルバム・デビューだから、とベーシストを導入する事をけなげにも提案したハウンド・ドッグ・テイラーに対してレーベルの創始者にしてハウンド・ドッグ・テイラーを見出した男ブルース・イグロアは、『今まで通りベースレスのスタイルで演奏しろ、その為に会社やめてお前の為に会社作ったんだぞ』と言ったかどうかは判らないが、これまで通りの”ハウスロッカーズ”スタイルで演奏を行わせた。「She's Gone」は冒頭のナンバーにしてイキナリの聴き所の一つ。ワンコードの単調な曲なのだが、ギター2本とドラムという、シンプルな構成から叩き出される重厚なサウンドはそんじょそこらのロック・バンドなら裸足で逃げ出す程のパワフルなナンバーだ。「Walking The Ceiling」は歪んだテイラーのスライド・ギターが疾走する粋なブギ小曲。「Held My Baby Last Night」はボトルネックの神様エルモア・ジェイムスの曲。ほぼ1発撮りとも思える荒々しい演奏が小気味良い。「Taylor's Rock」はどこかで聴いたようなメロディ。

フレディ・キングの1961年のヒット曲「Hide Away」がそれだ。だが生前のフレディが「Hide Away」はテイラーからのパクリと認めている発言を残しているので、恐らく1961年以前からテイラーがステージで演奏していた曲の一つだったのだろう。「 It's Alright」はバンドとしての一体感が感じられる曲。2人のギタリストが時に共にリズムを刻み込むなど、ドラマーを含めた3人の一体感が感じられる曲。「Phillips' Theme」はタイトル通り、サイド・ギター担当のブルワー・フィリップスにスポットを当てた曲。年下のフィリップスにも花を持たせる意味合いで作られた曲なのだろう。ギターは例によって歪みまくり。まるで”ノーウェーヴ”サウンドを彷彿とさせる程尖った質感を放っている。「Wild About You, Baby」も一聴して判る通り、エルモア・ジェイムスの曲。ヘヴィ・ロック・バンドのエルモア・カバーと錯覚してしまう程のロック・フィーリングを放っているのが凄まじい。

「I Just Can't Make It」はアップテンポのブギ・ナンバー。ベースレスだが、1人がリズムを、1人がまるでベースを演奏しているが如く芯を刻んで楽曲のグルーヴ感を維持しているのが特徴だ。「It Hurts Me Too」もエルモア・カバー。レッド・ツェッペリンのようなハード・ロック・バンドがエルモアのブルースをカバーしているのでは、と一瞬錯覚してしまう程。「 44 Blues」も古典的なブルース・ナンバーのカバーだが、こちらもロック・バンドによるブルースのカバーと見間違えてしまう程の勢いのあるロック的なイメージをリスナーに与えてくれる。最年長のテイラーが56歳、最年少のテッド・ハーヴェイでさえ当時40歳を過ぎていたとは到底思えない若々しい熱気を感る程だ。作品は残り2曲「Give Me Back My Wig」「55th Street Boogie」で幕を閉じるが、こういう作品を聴くと青二才の白人ロック・バンドなんぞバカバカしくて聴いていられないという心境に陥ってしまう程。未聴の人は『ブルースなんて』と思わずに是非どこかで聴く機会を持って頂きたい。マジで。
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  • HOUND DOG TAYLOR AND THE HOUSEROCKERS / DELUXE EDITION【TODAY'S MUSIC !!】
    なんかうるさくていい。元々は名前に惹かれて聴いて気に入った。ルックスもいいし、指が6本?!ってのも惹かれる。ベースレスだからちょっと軽いけど、安っぽいディストーションで歪ませた独得の音がスライドバーでもんのすごい迫力を帯びてる。本物の音楽って、スタ....
【2007/08/24 11:33】
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