Dulcimer / And Turned As I Had Turned As a Boy (1971)
1. Sonnet To The Fall 2. Pilgrim From The City 3. Morman's Casket 4. Ghost Of The Wondering Minstral Boy 5. Glouchester City 6. Starlight 7. Caravan 8. Lisa's Song 9. Time In My Life 10. Fruit Of The Musical Tree 11. While It Lasted 12. Suzanne
近年日本国内でも紙ジャケ化され、知名度も以前より幾分アップしたと思われる英国のフォーク・ユニット、ダルシマー。英国産らしい気品と香りのよいサウンドでマイナーな存在ながらも昔からブリティッシュ・フォーク・ファンを中心に高い支持を獲得してきたバンド。このバンドが当時所属していたレーベルはネペンサといって大手フィリップスがブリティッシュ・ロックの名門との誉れ高いヴァーティゴ・レーベルとは別に設立した傘下レーベル(実際はラリー・ペイジが設立した弱小レーベルでフィリップスはディストリビュートのみだったようだ)。1971年にレーベルとして最初のアルバムが発表されているが、残念ながら僅かの期間で消滅してしまった。だが、少ない点数ながらも同レーベルから発表された作品は今ではマニアの羨望の的となっている。
ネペンサ・レーベルの第三弾アルバムとして世に登場したダルシマーのメンバーは3人でピート・ホッジ(Pete Hodge)、ジェム・ノース(Jem North)、デイヴ・イーヴス(Dave Eaves)という、ギターX2、ベースX1のドラマー不在の典型的なアコースティック・ユニット。この3人が手持ちの曲を持ち寄り、ネペンサ主宰者のラリー・ペイジのプロデュースを受けて録音された、限りなくアット・ホームなほんわかムードに包まれて発表されたアルバムが1971年の「And I Turned As I Had Turned As A Boy」。一応大手レコード会社フィリップスの配給を受けて制作・発表された作品なのだが、作品からかもし出される雰囲気は限りなく自主制作に近い匂いがする。勿論、このトーンこそがダルシマーの本領である事は本作を入手した人なら先刻ご承知の通りである。
ダルシマーはネペンサで1枚アルバムを発表した後、次の作品製作にも乗り出した模様だが、残念ながら5枚のアルバムと3枚のシングルを発表したのみでレーベルが閉鎖してしまった都合上、ダルシマーの次回作発表の場も失ってしまった。僅か1枚限りのバンドとなってしまった訳だが、時間の中に埋没させてしまうには非常に惜しいブリティッシュ・フォークの名作である。ちなみにバンド名の由来となったダルシマーとはピアノの祖先とも言われている板型チター。ノスタルジックな音色を醸し出す事で知られている古典民族楽器をバンド名としてしまった事から、メンバーがダルシマーというバンドを通じてどんなサウンドを生み出したかったのか、判るような気がする。しかしだからといってダルシマーが17~18世紀の音楽を再現するだけのサウンドに終始している訳ではない。
「And Turned As I Had Turned As a Boy」はブリティッシュ・トラディショナル/フォークが持つ気品を持っているだけでなく、米ルーツ・サウンド(カントリーやフォークなどのアコースティック・サウンド)の要素をも加えた米欧混在のアコースティック・サウンドに仕上がっているのが特徴。1970年代初頭から1970年代前半にかけてはこうした混在バンドの存在も少なくなかったが、このダルシマーもそうしたサウンドの特徴を内包している。こうした試みにより硬派一辺倒のガチなフォーク・サウンドにならずに民衆レベルで楽しめるようなファンタジー系アコースティック・アルバムとして仕上がっている。古楽的な要素とカントリー・タッチの曲調を同時に持ち込む事に拒否反応を示すフォーク・ファンもおるでしょうが、元来フォーク・ミュージックとは大衆主義スタイルの音楽であった事を思い出せば、この融合もおかしな出会いとは感じない筈である。
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