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#1165 Metabolist / Hansten Klork (1980)

 2007-07-08
01. Curly Wall
02. Alien on Sunday
03. King Quack
04. Lights
05. Hoi Hoi Hoi
06. Merchandise
07. Hansten Klork

08. Dromm (Bonus Track)
09. Slaves (Bonus Track)
10. Eulam's Beat (Bonus Track)
11. Identify (Bonus Track)
12. Tiz Hoz Nam (Bonus Track)
13. Le Grand Prique (Bonus Track)

Hansten Klork

まさに奇跡のCD化。日本でこの作品及びバンドの事を知っている人は1980年前後に青春時代を過ごした私と同世代の洋楽ファンのみだろう。メタボリスト「Hansten Klork」は1980年に発表された作品でメタボリスト名義の作品としてはこれが唯一の作品。今、検索エンジンで”メタボリスト”と入れてみるとメタボリック・シンドローム関係の記事ばかりが目についてなんとも疎ましいのだが、彼らは1970年代の後半から1980年代初頭にかけて確かに、この地球上に存在したロック・バンドの一つだった。1980年と言えば私は当時大学生で都内・新宿に住んでいた。1970年代後半からパンク・ロックに夢中になりだした私はその後ニューウェーヴやインダストル・ミュージックに夢中になり、当時はストラングラーズやポップ・グループ、PIL、キャヴァレー・ボルテール、スリッツ、ワイヤー、トーキング・ヘッズ、ディーヴォ、ジョイ・ディヴィジョン、バウハウス、ヒューマン・リーグ、ペル・ウブ、クローム等々。

もう挙げたらキリがない。ピンク・フロイドなどのモンスター級ロック・バンド、当時で言う所の所謂”オールドウェーヴ”に対抗する形で登場したパンク・ロック・バンドの幼いながらも過激なアジテーションに当時10代の私はすっかり魅了され、セックス・ピストルズ登場以前に購入していた”オールドウェーヴ”クラスのレコードを大量に処分してしまった事もある。その中には今となってはお宝級の日本盤レコードもあったし、思えばなんと勿体ない事をしたもんだと随分後になって後悔したものだが当時は全く後悔していなかった。パンク・ロックやニューウェーブの尖ったサウンドにロックの未来を信じていたからである。私のような人間はオールドウェーブからニューウェーヴに趣味の対象を鞍替えしただけだが、セックスピストルズ以下数多のパンク・ロック/ニューウェーヴのサウンドに刺激を受けてプロの世界を目指した人も多かった筈だから、1980年前後が自分にとって最も音楽が刺激的な時代であったと懐かしく思う人は少なくない筈である。
今風の言い方で言うところのポスト・パンク・ロック・バンド、メタボリストの母体となる前身バンドが結成されたのが1976年。当時のメンバーはマルコムとダンカンのレーン兄弟に後にバンドのマネージメントを担当する事になる女性ジャクリーヌ・ベイリー、サックス奏者のアントン・ローチら。当時の彼らが一体どんな音楽に影響を受けて結成されたのかは定かではないが、当時は紛れもなくイギリスの音楽シーンが変わろうとしていた時期。前年の1975年にはニューヨーク・ドールズのマネージャーを担当していた事もあるマルコム・マクラーレンが元スワンカーズのメンバーを中心にセックス・ピストルズを立ち上げた。1976年早々にはストラングラーズやダムドの前身バンド、クラッシュの前身バンドなどが活動を開始して若い音楽ファンの支持を少しずつ獲得していく。そんなバンドのギグの観客側にメタボリストのメンバーがいた可能性だってあるだろう。兎に角彼らは動き出した。

メンバーはオリジナル・メンバーのマルコム・レーン(ギター、シンセサイザー、ヴォーカル)、ごく初期の頃バンドに参加していたマルコムの弟ダンカンに代わって参加したサイモン・ミルワード(ベース、ヴォーカル、シンセサイザー)、演奏を止めたジャクリーヌに代わって参加したマーク・ローラット(ドラムス、パーカッション)の3人。この3人による最初のレコードが発表されたのが1979年で3曲入りEP「Dromm / Slaves / Eulam's Beat」がそれ。同年にはカセット・オンリーの形で「Goatmanaut」なる3曲入りミニ・アルバムを発表。翌1980年にはシングル「Identify / Tizhoznam」を発表、そして唯一のフル・アルバムである「Hansten Klork」の登場である。1981年にはメタボリストがA面(1曲)、Die Form がB面(2曲)を担当した変則シングルを発表、更に同年には「Stagmanaut!」なる6曲入りカセット・アルバムを発表しているが、これが最後。仮に彼らがファクトリーやラフ・トレードといった当時旬のレーベルと契約を結んでいたら、と思うと残念でならない。

DrommIdentifyMetabolist / Die Form

■ Malcolm Lane - Guitar, Synth, Vocals
■ Simon Millward - Bass, vocals, Synth
■ Mark Rowlatt - Drums, Percussion

■ Jacqueline Bailey - Promotion, Artwork

私が当時よく読んでいた雑誌にミュージック・マガジンの4月増刊《年鑑 '80》という音楽読本があった。特集1がパンク編で特集2が河村要助氏や中村とうよう氏を中心にしたサルサ音楽編。この特集1では「72枚のパンク・シングル」「106枚のパンク・アルバム」というページがあってタイトル通り72枚のシングル、106枚のエキセントリックなアルバムが紹介されていた。この「106枚のパンク・アルバム」で初めて知ったアルバムも少なくなく、暫くはこのロック読本は私のバイブル的な役目を果たしていたものだった。メタボリストのシングルやアルバムもこの雑誌で紹介されていた。この読本で紹介される前にメタボリストの名前を知っていたか或いは読本のお陰で存在を知ったのか、今となっては既に記憶にないが、この雑誌で紹介されていたディス・ヒートやスロッピング・グリッスル、ポップ・グループ、PIL、クローム、コントーションズ、フライング・リザーズ、ペル・ウブといった新進気鋭のアーティスト達と対等の扱いを受けていたのがメタボリストだった。

2006年12月にマックス&マルコムというスプリット盤を発売したヴィニール・ジャパンの更なる大偉業。今回はメタボリスト唯一のフル・スタジオ作品にして幻のエクスペリメンタル・ロック作「Hansten Klork」の奇跡のCD化だ。まさかこんな日が来ようとは。更に今回はオリジナル作品に収録されていた7曲に1979年と1980年にそれぞれ発表された2枚の7インチシングルに収録されていた「Dromm」「Slaves」「Eulam's Beat」「Identify」「Tizhoznam」の5曲、及び1981年に発表されたフランスのインダストリアル・バンド、ディー・フォーム(Die Form)とのスプリット盤に収録されていた「Le Grand Prique」という曲、計6曲がボーナス・トラックとして収録された決定盤。残念ながら1979年の3曲入りカセット「Goatmanaut」と1981年の6曲入りカセット「Stagmanaut!」、以上2つのカセット作品は収録が見送られたが、いずれCDとして復刻されて一般の洋楽ファンの耳に届く日が来る事を期待する。いずれにせよ、レコードを持っていない人はこれを買うしかないのだ。

さて簡単に個別の曲に触れてみる。「Curly Wall」は一応はパンク・ロックの形態を装っているプリミティヴなナンバーだが、クールなサックス(演奏担当者の名前は未クレジット)が挿入されるなど、ワイヤーなどと同様のアカデミックな匂いが感じられるポスト・パンク・ロックでもある。淡々と繰り返される呪術的なリズムとビートは彼ら以前の米英のクラシック・ロック・バンドからの流用ではなく、明らかにジャーマン・ロックからの引用だろう。「Alien On Sunday」はプリミティヴなビートをバックに時折エキセントリックでノイジーなギターが絡み合う風変わりな曲。引用元はハンマービートのノイ辺りか。「King Quack」はエクスペリメンタルな旋律が特徴のズタボロ呪術ソング。同時代のディス・ヒートにも似たエキセントリックな曲だ。「Lights」はカンやファウストの実験ソングを思わせる展開にデュルッティ・コラム張りのリヴァーブの聴いたギターが加えられるという作風。今聴くと少々退屈。

「Hoi Hoi Hoi」はジョイ・ディヴィジョンを思わせる根暗な耽美サウンド。まるでアインシュテルツェンデ・ノイバウテンを思わせるインダストリアル・ノイズな「Merchandise」を経て最後に登場するのはタイトル曲「Hansten Klork」。ジャーマン・ロック(またはクラウト・ロック)の好きな方ならすんなり受け入られそうなコスミッシェ・ミュージック的なアプローチ。シングル・デビューから最後まで自主制作に拘ったバンドだけあって、流石にメジャー志向性は皆無。『オールドウェーヴなんか』と唾を吐くフリをしながら、その実従来の米英の既存のロック・ミュージックの焼き直しでしかなかった幾多のメジャー・デビュー組のパンク・ロック・バンドとは異なり、(当時)一部の熱心なカルト・ロック・マニアだけが知る存在に過ぎなかったジャーマン・ロック(またはクラウト・ロック)にシンパシーを抱きながら作り上げた彼らなりの自家製ロック、それがメタボリストであり「Hansten Klork」であったのだ。

今回は更にボーナス・トラックが6曲。「Dromm」は1979年のデビュー・シングルから。アルバムに収録された曲と比較すると更に実験性に富んだアグレシッヴなインプロヴィゼイション。コラージュ風作品「Slaves」ではファウストやごく初期のクラフトワークからの直接的影響か、あるいは更に遡って戦後の独電子音楽からの間接的な影響も読み取れる。「Eulam's Beat」は前2曲とは異なり、ロック的なビートが登場する作品だが、PILが目指した”踊れそうで踊れないダンス音楽”を彷彿とさせるカオス・ロック。「Identify」「Tizhoznam」の2曲は「Hansten Klork」と同年の1980年に発表された作品だけに本編と似た味わいが感じられる革新的なサウンド群。「Le Grand Prique」は1981年に発表された作品で、フランスのインダストリアル・バンド、ディー・フォームとのカップリングで世に送り出された曲。インダストリアル・ノイズなエレクトロニクスはプリミティヴなビートを多様した「Hansten Klork」とは少々趣を異にする作風。
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コメント
おお・・・メタボリスト!
名前を知っているだけで、当時地方都市に住んでいた(今もですけど・・・)僕は当時この自主制作盤を見た事すらありませんでした。確かに奇跡の再発ですが、今になって聴くのもちと怖いような・・・。
【2007/07/09 05:20】 | 不明 #- | [edit]
このCD、本当に現物を店頭でみてびっくりしましたよ。まさかこんな作品までCD化されるとは思ってもみなかったので。
【2007/07/09 19:55】 | Cottonwoodhill #- | [edit]
こんにちは。今日amazonからCD届いて検索かたがた、たどり着きました。多分私も同世代だと思います。全くもってMMの80年の年鑑は自分にとってもバイブルでした。いやー、metabolist、ディスヒートの1stと並ぶくらい自分にとっては大事なアルバムでした。シングルも持っておりました。まさにパンク死亡以後から1981年あたりまでは出るもの全て新鮮で興奮しましたね。次はレモン・キトゥンズあたりのCD化を個人的には待ってます。そういえばpop groupのブートが最近ビニールジャパンから出ましたが、大好きだったマークペリーのfire from heavenもCD化するそうです。ああ、重箱の隅がまた。。。w じっくり他もこれから読ませていただきます。それでは。
【2007/07/12 15:04】 | ymst #uuXqeTdQ | [edit]
コメントありがとうございます。このアルバムに反応する ymst さんも私と同じ、昭和30年代生まれの洋楽ファンでおられるようですね。

しかし本作のCD化には本当に驚かされました。
【2007/07/12 20:02】 | Cottonwoodhill #- | [edit]












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