#0848 Anyone's Daughter / Piktors Verwandlungen (1981)
2. Erstes Vorspiel
3. Erster Teil Der Erzahlung
4. Purpur
5. Zweites Vorspiel
6. Zweiter Teil Der Erzahlung
7. Der Baum
8. Dritter Teil Der Erzahlung
9. Sehnsucht
10. Vierter Teil Der Erzahlung
11. Piktoria, Viktoria
12. Funfter Teil Der Erzahlung
13. Der Doppelstern

通常ジャーマン・ロック(或いはクラウト・ロック)と言えば電子音楽や現代音楽、サイケデリック、フリー・ジャズ、アヴァンギャルドなどの影響下にある個性的なバンド群を指すのが常でありますが、叙情的な音色のシンフォニック・サウンドを得意とするバンドも少なからず存在します。1970年代を代表するジャーマン・シンフォ系といえば、ある程度ジャーマン・ロックに知識のある人ならノヴァリス、グローブシュニット、ヴァレンシュタインの3つのバンドの名前がすんなりと挙がると思います。
今回の主役、エニワンズ・ドーター(Anyone's Daughter)は上記3大ジャーマン・シンロニック・ロック・バンドの知名度には及ばないものの、その実力は昔から高く評価されてきた事が知られています。彼等の活動期間は1979年から1986年までと(2001年に復活)、プログレッシヴ・ロックというジャンルが既に衰退して過去のものであるという認識を一般の洋楽ファンに持たれていた時期に活動していた為、今尚マニアックなジャーマン・ロック・ファン以外には殆ど知られていないのが実情でしょう。
アルバム・デビューは1979年。結成された年に関しては1978年とか1975年とか1974年とか、いろいろあるようだが、エニワンズ・ドーターのベースとなったバンドは1970年代の前半にギタリストの Uwe Karpa とキーボード奏者の Matthias Ulmer によってシュトゥッツガルトで始まっているようだ。アルバム・デビューの前年、1978年の時点ではこの2人の他、ドラマーの Kono Konopik、ヴォーカル/ベース担当の Harald Bareth の4人で構成されている。ニュー・ウェーヴ系バンドの活躍が華々しい時期であった1979年にデビュー作「Adonis」を発表、翌1980年に「Anyone's Daughter」を発表しています。
1981年にライヴ録音の3枚目「Piktors Verwandlungen」を発表しますが、ドラマーが脱退。1982年には新ドラマーの Peter Schmidt を迎え入れて「In Blau」を発表しています。その後も「Neue Sterne」(1983年)、「Live」(1984年)と発表、2年後の1986年には「Last Tracks」を発表していますが、これを最後に解散しています。2001年には世の再結成ブームに乗り遅れてはなるまいとエニワンズ・ドーターも再結成、2001年に15年振りとなる「Danger World」を発表しています。更に最近、「Wrong」なる新作も発表しています。
■ Uwe Karpa - Guitar
■ Harald Bareth - Bass, Vocals
■ Matthias Ulmer - Keyboards, Vocals
■ Kono Konopik - Drums
1981年発表の「Piktors Verwandlungen」はエニワンズ・ドーターにとって通算3枚目となる作品。ドイツの作家/詩人で1946年に『ガラス玉演戯』などの作品でノーベル文学賞を受賞したヘルマン・ヘッセ(1877-1962)の短編小説「ピクトルの変身」を題材としたトータル・コンセプト・アルバム。演奏は前作、前々作にも参加した4人のメンバーが参加していますが、次作ではドラマーが脱退しているので、オリジナル4人による作品はこれが最後となります。ニュー・ウェーブやエレ・ポップ/シンセ・ポップなどのサウンドが幅を利かせていた時代である1981年に発表された作品だけに、当時一体それだけの人が本作をリアル・タイムで評価したのであろうか。
ヘルマン・ヘッセの短編小説の朗読とエニワンズ・ドーターの演奏がだいたい交互に並べられた内容(短編小説の朗読部分にもキーボードのBGMあり)。いつも書く事だが、文学の世界に全く疎い私なので「ピクトルの変身」の意味する所は全く判らないが、サウンドの方はファンタジー系ブリティッシュ・シンフォニック・ロックやフュージョン・サウンドからの影響を垣間見て取る事が出来る。1970年代のシンフォニック・ロックとしては後発に位置付けされるバンドだけあって、サウンド構築の面などで、随分と手馴れたものを感じる。
柔らかて刺激臭の少ない甘味なメロディアス・シンフォニック・サウンドは例えて言えばキャメルやジェネシスのようなバンドが持つ田園風ロマンティシズムを大いに感じる。ジャズ・ロック的なアプローチもあるが叙情的なサウンドはシンフォニック・ロックの好きな日本の洋楽ファンの琴線を充分刺激するだろう。ライヴ録音という事だけあって、多重録音によるスタジオ録音盤とは違った瑞々しさを感じる事が出来る。当然一発取りの筈だが、それを全く感じさせぬ演奏は流石だ。アルバムの製作コンセプトを考えると既発の楽曲を演奏したコンサート・アルバムというよりは実況録音による新作アルバムと見なしてもよいだろう。
40分にも満たないアルバムですが、短編小説の朗読部分にも時間が割けられているので、全編を通して聴くと、少々物足りなさを感じてしまう。テキスト無しの演奏だけで物語を見事なまでに構築してしまったキャメルの「Snow Goose」には遠く及ばないが、ジャーマン・シンフォの好きな人なら「Piktors Verwandlungen」を購入リストから外す理由は存在しないように思える。なお、本CDのジャケットはオリジナル仕様だが、2002年に新たなジャケットを用いてヘルマン・ヘッセ生誕125周年記念の特別限定盤として再発されている。
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