#1222 Jaki Whitren / Raw But Tender (1973)

 2008-02-02
01. New Horizon
02. Oh Little Boy
03. Little Bit Extra Please
04. Country Life
05. To A Friend, Through A Friend (Let Your Feelings Burn)
06. But Which Way Do I Go?
07. Give Her The Day
08. Ain't It Funny?
09. I've Thought Hard About It
10. As That Evening Sun Goes Down
11. Human Failure
12. Running All The Time

Jaki Whitren / Raw But Tender

1981年にマーカス・ミラーやスティーヴ・ガッドなどのバックを受けて発売されたホイットレン&カートライトという男女デュオによるAOR作品「リズムのト・キ・メ・キ」(実際の制作は1980年)。なんとも安直なタイトルだが、1980年代前半当時、シャカタクとかメゾフォルテとかフルーツケーキとか、一部の音楽ファンから爽やかなメロディを真骨頂とするフュージョン・タッチの避暑地サウンドが持て囃されたものだった。根の浅いミーハーな私も当時はこうした音楽も聴いていたが、残念ながらホイットレン&カートライトの音楽は残念ながら当時耳にした事はなかった。女性ヴォーカリストのジャキ・ホイットレンと男性キーボード奏者のジョン・カートライトのコンビによるホイットレン&カートライト名義の作品で一番有名なのはこのアルバムだと思うが、実は彼等はこの後もホイットレン&カートライトとして活動を継続させていたらしい。

実力一流知名度は二流の英ヴォーカリスト、ジェス・ローデンのバック・メンバーを経てジョン・カートライトはジャキ・ホイットレンとコンビを組んで、上記の「Rythmn Hymn」を1981年に Electra Asylum から発表。その後 2人は Living Records に籍を移して「International Times」「Inner Fire」「Playground」「That will be that」「The cry」といった作品を1980年代のうちに残している。恐らくホイットレン&カートライトとしての活動は1980年代の後半までだと思うが、2000年に2人は新たにコート・オヴ・ミラクルズ(Court Of Miracles)と名乗って「Miracle Style」という新作を発表している。メンバーは2人の他、2人の息子ウィリアム・カートライト(ベース)とジョビー・ベイカー(ドラムス)。ジョン・カートライトとジャキ・ホイットレンとの間の子供なのか、それともそれぞれ別の伴侶との間の子供なのかまでは詳しく調べられなかったが、相変わらずスムースでジャジーなサウンドを演じている模様だ。

さて、今回の主役であるジャキ・ホイットレン(Jaki Whitren)。彼女は1954年生まれで英南部の港町サウサンプトン育ち。幼い頃から芸の世界に憧れていた彼女は14歳の時点でラジオやテレビ番組に出演するなどの経歴をも持つ。18歳でCBSと契約。当時は次世代のバーブラ・ストライサンドとして大いに期待されたのだという。翌1973年に19歳で「Raw But Tender」を発表する。なんとも美しいジャケットだ。当時CBSはジョン・マクラフリン率いるマハヴィシュヌ・オーケストラのツアーに彼女を同行させたというから驚きだ。余程当時のCBSは彼女に期待していたのだろう。大手レコード会社から期待されるなんて滅多にない幸運と言えるが、彼女のCBSでのソロ活動は実はここまで。CBS第二弾作品の計画にも乗らず、更にアイク&ティナ・ターナーの欧州ツアーの同行要請を拒否。彼女自身の子供と家族の為、がその理由だったのだという。21歳の時点で既に彼女は夫と子供を持つ身分だった訳だ。

家庭第一主義を貫く事を決意した為、この後の音楽活動は一時散発状態。ホイットレン&カートライト結成以前にはアラン・パーソンズ・プロジェクトの1977年のヒット作品「I Robot」に参加していた事が知られている程度。この作品で彼女は「Some Other Time」という曲をミュージカル俳優のピーター・ストレイカーと一緒にヴォーカルを担当している。この後は元ジェス・ローデン・バンドのジョン・カートライトと知り合って彼と2人でコンビを結成する事になる。ちなみにジョン・カートライトはジェス・ローデン・バンド参加以前にイグアナ(Iguana)というバンドに参加していたが、実はこのイグアナというバンドはジャキ・ホイットレンが少女時代を過ごしたサウサンプトン出身のロック・バンド。イグアナは1972年に1枚のアルバムを発表した後に崩壊、ベーシストのジョン・カートライト(当時はベーシストだった)はジェス・ローデンのソロ「Jess Roden」(1974年)やこの後のジェス・ローデン・バンドの作品に参加し続ける事になる。

I Robotリズムのト・キ・メ・キMiracle StyleJaki Whitren / Isis Unveiled

■ Jaki Whitren - Lead Vocals, Guitar, Banjo
■ Stuart Cowell - Guitar, Arragements
■ Mike Leslie - Guitar, Vocals
■ Albert Lee - Dobro Guitar
■ Gordon Huntley- Pedal Steel
■ Pat Donaldson - Bass
■ Brian Brocklehurst - String Bass
■ Gerry Conway - Drums, Congas
■ Frank Ricoti - Congas
■ Ivan Chandler - Electric Piano
■ Rob Young - Flutes, Rrrangements
■ Lindsay Cooper - Bassoon
■ Marie Goosens - Harp
■ Henry Vill - Jug
■ John Van Derrick - Violin
■ Harry Becket - Flugel Horn
■ Malcom Griffiths - Trombone
■ Stan Sulzmann - Tenor Sax

ジャキ・ホイットレンとジョン・カートライトによるAOR/フュージョン・プロジェクト、ホイットレン&カートライトの作品は日本では「リズムのト・キ・メ・キ」位しか知られておらず、その後の2作目以降の作品はオリジナルのレコードで入手して聴くしか方法がない様だ。コート・オヴ・ミラクルズの曲ならネット上で聴く事が可能だが、ジャキ・ホイットレン=ブリティッシュ・フィメール・フォーク、と鮮やかに連想する人はイメージが崩れてしまうのでいっその事聴かない方がよいだろう。更にジャキ・ホイットレンは2007年、久しぶりのソロ作「Isis Unveiled」を発表している。彼女の公式サイトにおけるサンプル音源を聴く限り、フォーク歌手ジャキ・ホイットレンのソロ作ではなく、ホイットレン&カートライト/コート・オヴ・ミラクルズのリード・ヴォーカリストのソロ作品という認識で聴くべきサウンドを呈している。なので、今回は過去の作品「Raw But Tender」を紹介する事でブリティッシュ・フィメール・フォーク物のファンの溜飲を下げて頂く事にする。

「Raw but Tender」は発表当時まだ20歳にも満たない女性が制作したとは到底思えない非凡な力作。今なら『十代の天才女性現れる』なんてキャッチ・コピーが使われる筈だ。内容は簡単に言ってしまえばフォーク、トラッド、ブルース、カントリー、ロック、ジャズのエキスがそこはかとなく混在した物。まるで音楽キャリア20年のベテラン歌手による作品であるかのような重心の低さを感じさせる落ち着いた雰囲気だが、実際に作ったのは19歳。流石にCBSが期待しただけの事はある。次世代のバーブラ・ストライサンドとはなんともピントの外れた意見だが、実力を見抜いた会社の着眼は流石と言わざるを得ないだろう。そんな彼女の為に沢山の実力派のアーティストが結集。フォザリンゲイのジェリー・コンウェイやパット・ドナルドソン、コーマスのリンゼイ・クーパー、マシューズ・サザン・コンフォートのゴードン・ハントリー、更にハリー・ベケット、マルコム・グリフィス、アルバート・リー、マイク・レスリー等々。よくぞここまで集まったものだ。

作品のプロデュースはギタリストの一人としても参加している元スウィート・ペイン/タイタス・グローンのスチュアート・カウエル。収録は全部で12曲。マイク・レスリー提供による1曲を除外すれば、全てジャキ・ホイットレンのオリジナル(一部の曲で共作扱い)。ソングライターとしても比類なき才能を発揮していた訳だ。作品はフォザリンゲイや(マシューズ)サザン・コンフォートのメンバーが参加している為、ダウン・トゥ・アースなフォーク・ロック作品に仕上がっている、と一言で済ます事の出来ない多様性を誇っているのが特徴。では簡単に曲に触れてみたい。冒頭曲「New Horizon」はアルバート・リーのドブロがカントリー・ロック調の楽曲によくマッチしたナンバー。イキナリの米南部系サウンドにブリティッシュ・フィメール・フォークを想像していた人はあっけにとられるだろう。「Oh Little Boy」は落ち着いた雰囲気のフォーク・ソング。口の中に食べ物を含ませたまま、歌っているのでは、と思わせるような篭った声が彼女の特徴だ。

「Little Bit Extra Please」はジャキ自身のバンジョー、ヘンリー・ヴィルのジャグ、ジョン・ヴァン・デリックのフィドル、以上3人によるジャグ・バンド・サウンド。19歳でこんな音楽を演じてしまうなんて驚きだ。「Country Life」はサザン・コンフォートのゴードン・ハントリーのペダル・スティールをバックにしたジャキ・ホイットレンのオリジナル。アコースティック・ギターを手に歌う彼女の歌からは実際の年齢を感じさせない余裕が感じられる。「To A Friend, Through A Friend (Let Your Feelings Burn)」はジャキ・ホイットレン渾身の1曲。アコギ1本、たった一人で歌う彼女からニック・ドレイクを連想してしまった。「But Which Way Do I Go?」はフォザリンゲイのメンバーやホーン・セクションをバックにブルージーに歌い上げられる感傷的な逸品。ソウルフルな雰囲気もたっぷりだ。例えるならば黒人女性歌手のコーラス隊でも加えれば完璧に仕上がった筈だろう。

「Give Her The Day」は旧B面の冒頭曲。基本はジェイムス・テイラーのような都会的なアコギの弾き語り曲だが、ロブ・ヤング指揮による軽いオケが控え目に導入されている。「Ain't It Funny?」はジャズ畑のべテラン・ベーシスト、ブライアン・ブロックルハーストの演奏をバックにした作品。ローラ・ニーロみたいな雰囲気が感じられる、実に可愛らしい小品。「I've Thought Hard About It」はフォザリンゲイの2人をバックした地味なフォーク・ロック・ナンバー。「As That Evening Sun Goes Down」は、『あれ?キャロル・キングの作品にこんな曲、なかったっけ?』と感じずにはいられない、キャロル・キングからの影響大な一品。彼女も「Tapestry」は真剣に何度も聴いた事だろう。「Human Failure」はブリティッシュ・フォークの一般的なイメージとは遠くかけ離れたR&Bタッチな作品。「Running All The Time」はアルバムのエンディング曲。「To A Friend, Through A Friend」同様、アコギ1本による弾き語り曲。

アメリカン・ルーツへの憧憬を感じさせるダウン・トゥ・アースなフォーク・サウンドを芯として、そこにそこはかとなくブルースやジャズ、ソウルなどのエキスを鏤めた内容。アルバム1枚通して聴くと、やはり本作はブリティッシュ・フィメール・フォークの世界で語るべき作品であると感じるが、個別に1曲ずつ聴いていくと。、随所に彼女自身の独特な個性が感じられる内容に仕上がっているのが特徴。オーソドックスのようでいて実は個性的。今日も素晴らしい1枚聴いたなあ。

MySpace.com - jaki whitren - - Other / Folk Rock / Soul
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コメント
なんと今月お二人とも亡くなりました。ジョンが先で2週間後にジャキさんが。
【2016/11/30 01:02】 | firebleeder #mQop/nM. | [edit]
>firebleeder さま
コメントありがとうございます。なんとそうだったのですか。
今、初めて知りました。大物の死去報道もいたましいですが、
バイプレーヤー達の訃報も同じようにさびしいですね
【2016/12/27 22:26】 | cottonwoodhill #- | [edit]












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