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#1229 CMU / Space Cabaret (1973)

 2008-02-11
[Space Cabaret]
01.a) Space Cabaret
02.b) Archway 272
03.c) Song from the 4th Era
04.d) A Distant Thought, Point of Light
05. Doctor, Am I Normal?
06. Dream
07. Lightshine

08. Heart Of The Sun (Bonus Track)
09. Doctor, Am I Normal? (Single Version Bonus Track)

Space Cabaret スペース・キャバレー(紙ジャケット仕様)

昔はシャカタク、よく聴いたなあ。え?今でも現役?それは大変失礼しました。シャカタクは1980年に結成、1981年に「Drivin' Hard」でデビューを飾ったイギリス出身のフュージョン・バンド。ジャズの一種フュージョンは元々ずっと前から存在した音楽だったが日本でブームとなって多くの人に聴かれるようになったのは1980年以降だったと記憶している。勿論、ブームとしてのフュージョンだ。シャカタクは当時の日本でのブームを牽引していたバンドの一つ。何でも受け入れて聴いてしまう節操のない私も1980年以降、シャカタク、メゾフォルテ、フルーツケーキ、アール・クルー、ウェザー・リポート、エリック・ゲイル、クルセイダーズ、グローヴァー・ワシントンJR、ジョー・サンプル、ジョージ・デューク、ジョージ・ベンソン、スパイロ・ジャイラ、チャック・マンジョーネ、デイヴ・グルーシン、ドン・グルーシン、デイヴィッド・サンボーン、ハーブ・アルパート、ボブ・ジェームス、ラリー・カールトン、リー・リトナー、レベル42などの音楽を聴いていたものだ。

このシャカタクの中心メンバーの一人でドラマーのロジャー・オデル(Roger Odell)という人、シャタクを結成するずっと以前から音楽業界に身を置いて活動してきた事は熱心なファン以外には余り知られていない。彼が過去在籍していたバンドにCMUという名前のバンドが存在するのだが、このバンドはプログレシッヴ・ロックやカンタベリー・シーンのジャンルで語るべきバンド。一方シャカタクはメロディアスなフュージョン・バンド。方やフュージョン、方やプログレ、だから通常シャカタクのファンとCMUのファンが交錯する事は多くない。私のようにプログレもフュージョンも両方聴いてきた、なんて人間は余りいない筈だから両者を1本の線で結ぶ意味で今回はCMUを取り上げてみたい。以下は本人の談からだが、バンドの中心人物ロジャー・オデルは14歳の時からドラムを叩き始め、その後幾つかのダンス・バンドに在籍して演奏活動を開始している。高校生の頃には既にモダン・ジャズを演奏するバンドを結成してたというから、この人実は本格的なジャズ志向の人だったのだ。
この後、ベーシストのジョン・ホージーやカンタベリー・ファンにもお馴染みのジャズ・ピアニストのアラン・ゴーウェンとジャズ・トリオを結成して英ハーロー区域で演奏活動を展開したり、ジョン・ダンクワースの楽団に在籍して演奏活動を行なったりもしている。後にデリヴァリーを名乗る事にもなるフィル・ミラーやスティーヴ・ミラーに出合ったのもこの頃。CMUと名乗って活動を開始する以前からロジャー・オデルはケンブリッジ界隈を根城とするジャズ系ドラマーとして活動していたのだった。ちなみに1970年前後のイギリスと言えばブリティッシュ・ジャズが隆盛を極めていた時期。ロック・ファンならこの時期の英レーベル、例えばデラム、フォンタナ、ヴァーティゴ、ドーン、ネオン、CBS、コロンビア、リーガル・ゾノフォン、ポリドールといったブリティッシュ・ロック・ファンも注目するレーベルにジャズ系作品が可也多い事を知っている筈だ。レッド・ツェッペリンやピンク・フロイドのような音楽も旬だったが、ジャズも当時は英国では旬の音楽だったのだ。

1970年頃に活動を開始した当初のCMUはトリオ編成だったらしいが、その後ロジャー・オデルの妻ラレイン、更にギタリストや男性ヴォーカリストが加わってロック・ファンの好みにも耐え得る音楽性を持つバンドへと発展していった。最初の作品「Open Spaces」は1971年発表。英フォーク・ミュージックの総本山 Transatlantic Records から発表された。当時の Transatlantic レーベルのファンからは違和感のある音楽と聴こえた筈のスペイシーなジャズ・ロック作品に仕上がっている。ロジャー・オデルの妻ラレインをリード・ヴォーカルとした曲にかろうじて後のシャカタクを彷彿とさせる面もあるが、全体的にはプログレ/サイケ風味のあるジャズ・ロックに仕上がっているのがミソ。バンドは1972年にもシングル「Heart Of The Sun/Doctor Am I Normal?」、1973年にはアルバム「Space Cabaret」を発表しているが、ブリティッシュ・ジャズ・シーンそのものの停滞という面もありバンドは消滅。

解散後、ロジャー・オデルはロンドンでセッション・ミュージシャンを中心とした Northern Lights というバンドに参加。このバンドには歌手のティナ・チャールズやトレヴァー・ホーンも在籍していたという。この後このバンドには歌手のジル・セイワード、キーボード奏者のナイジェル・ライト、ベース奏者のスティーヴ・アンダーウッドなどが参加、一方ロジャー・オデルは Northern Lights での活動と並行する形で Tracks というジャズ・ロック・バンドを結成している。メンバーはロジャー、トレヴァー・ホーン(ベース)、ビル・シャープ(キーボード)、キース・ウィンター(ギター)ら。元CMUのイアン・ハムレットも活動に関わっていた時期もあったという。この後トレヴァー・ホーンの脱退やメンバー交代劇などを経て両者は一つのバンドとして合体。これが後のシャカタクとなったそうだ。この後のシャカタクの成功物語は本筋とは離れてしまうので触れないが、シャカタク結成までこんな経緯があったなんて、1980年代初頭当時は全く知らなかった。

Marsupilamiオープン・スペーシズ(紙ジャケット仕様)アリーナ(紙ジャケット仕様)ベスト・オブ・シャカタクThe Blue Window

■ Larraine Odell - Vocals, Guitar
■ Richard Joseph - Acoustic Guitar, Vocals
■ Ian Hamlett  - Acoustic & Electric Guitar
■ Steve Cook - Bass
■ Roger Odell - Drums
■ Leary Hasson - Keyboards

さて、CMU。彼等の作品は2枚存在するが、インパクトという点ではなんといってもバカ丸出しの「Space Cabaret」だ。ジャケットも選択の基準とする当サイトでは当然の事ながら「Space Cabaret」を選択する。「Space Cabaret」でのメンバーはロジャー&ラレイン・オデル夫妻、イアン・ハムレットの3人以外は一新。前作でキーボードを担当したテリー・モティーマーの代役は元マースピラミ(1970年と1971年にトランスアトランティックからレコードを発表)のリアリー・ハッソン、ベーシストはエド・リーの代わりにスティーヴ・クックがそれぞれ就任。また男性ヴォーカリストのジェイムズ・ゴードンが抜け、代わりにリチャード・ジョセフというギタリストが参加。主要メンバーが大幅に変わった影響だろうか、作品の雰囲気は随分と異なる。前作はブリティッシュ・ジャズの視点で語っても良かったが、本作ではヴォーカルを強調した憂いのあるプログレ/カンタベリー系の音楽に変身。だが安心して聴く事の出来る音楽へとシフト・チェンジされたかについてはどうかな?

「Space Cabaret」は4部構成による組曲形式。作曲者は新参者のリチャード・ジョセフ。彼が本作収録曲の殆どを手掛けているため、良くも悪くも結果的に彼の音楽性が反映される結果となった。[Space Cabaret]はそのリチャードの生ギターの弾き語り風の楽曲からラレインのヴォーカルが被さる、男女ヴォーカルによる哀愁感漂うジャズ・ナンバー。[Archway 272]はなんとなくフィフス・ディメンションを思わせる印象的なフレーズが特徴のナンバー。プログレ的なアレンジも登場するが、悦に浸って切実に歌い上げる”熱唱”リチャードの目立ちたがり精神ばかりが露見する曲でもある。後半になりキャラヴァン風の演奏になってロック・ファンは一安心。[Song From The 4th Era]はタイトなベースをクローズ・アップさせたプログレッシヴ・ロック・ナンバー。なんだかやっぱりこれも♪アク~エ~リア~ス♪風だぞ。[A Distant Thought, A Point Of Light]は組曲形式の最後の曲。

最後位プログレ風に演奏してもらいたいものだが、やはりこれもロック風”フィフス・ディメンション”プラス・カンタベリーな演奏に終始。「Doctor, Am I Normal?」はシングルのB面曲。これもリチャード・ジョセフの曲。リードも彼だ。もうなんだか彼のソロ・アルバムみたいでCMUは彼のお抱えのバック・バンドみたいな雰囲気だ。曲はジャジーなポップ・ソング。「Dream」はオリジナル・メンバーのイアン・ハムレットの曲。フィフス・ディメンション風のコーラスは相変わらずだが、(クレジット上)リチャード・ジョセフが曲作りに参加していないせいか、かろうじて硬派な前作のイメージを思わせるミステリアスなジャズ・ロックに仕上がっている。中間部分のポップなアレンジを介して後半部分で狂った様なハモンド・オルガンの演奏の響きと共に繰り広げられるゴスな展開は想定外。最終曲は「Lightshine」。新参加のリアリー・ハッソンの曲。プログレシッヴ・ロックともジャズともブルース・ロックともフュージョンとも就かぬ奇妙なアレンジ。

一筋縄ではゆかぬ癖のあるサウンドにリスナーの多くは通り一遍の解釈を施す事が出来ずに苦労するに違いない。そんなアルバムだ。本作のプロデュースを担当したのは元フォー・ペニーズのフリッツ・フライヤ。ブルース・ロック・バンドのスティームハマーやジャズ・ロック・バンドのスキン・アレイ、田舎のビートルズことスタックリッジ、英ジャズ・ギタリストのレイ・ラッセル、フォーク/トラッド系のプレリュード、ヘヴィメタルのモーターヘッド、プログレとフォークを混合させたアイルランドのホースリップスなど、フリッツが手掛けた作品はかなりバラエティに富んでいる。そんな彼の許容範囲の広さがあってこそ、の「Space Cabaret」と言えるのかもしれない。ロックからジャズまで、ブルース・ロックからプログレッシヴ・ロック、ソフト・ロック、フュージョンまで、フィフス・ディメンション風のコーラス・ミュージックからカンタベリー・シーン系のジャズ・ロックに至るまで、兎に角掴み所のない作品と言える。

♪バカもアホウも踊らにゃ損♪ 訳の判らない意味不明なジャケの印象通りの作品と言ってしまえば実も蓋も無いのだが、最初から最後まで通して聴いてみても切り口の在り処が見えなかった。これが感想。彼等の2枚ある作品の内、評価が容易いのは明らかに1枚目。だから彼等の作品を購入しようかしまいか、悩んでいる御仁には1枚目を買う事をお奨めする。

Drumatack
... SHAKATAK - The Official Website ...

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