#1260 Fiona MacKenzie / Elevate (2008)
02. In Between
03. Bye Bye
04. A Little While Longer
05. An Roghainn
06. At the Bottom of the Sea
07. Elevate
08. Lots of People
09. Duisg Mo Chridhe
10. Hi o He
11. Everybody Knows

影響を受けた音楽はスティーナ・ノルデンスタム、ケイト・ブッシュ、トレイシー・チャップマン、ニック・ケイヴ、メタリカ、ビョーク、トム・ウェイツ、エミルー・ハリス、ホットハウス・フラワーズ、ニック・ドレイク、パオロ・コンテ、ドリー・パートン、スティーヴ・アール、ニック・カーショウ、トム・ヨーク、コクトー・ツインズ、ミューズ、キュア、そしてアイルランドやスコットランドのトラディショナルな音楽、ハンガリーの民族音楽等々。カンツォーネからエスニック・ロック、エレクトロニカ、ポップス、メタル、カントリー、フォーク、オルタナティブ・ミュージック等々、実に幅広い趣味を持っておられる。今回紹介するアーティストの名前はフィオナ・マッケンジー(Fiona Mackenzie)。2008年、初めてのソロ・アルバムを発表したばかりの女性歌手だ。とはいえ、突然登場してきたウブな新人歌手ではなく、エルダ、ジリアン、そしてフィオナのマッケンジー姉妹による”マッケンジー”というグループで音楽活動を長らく継続してきた女性である。
マッケンジー(Mackenzie)は1990年代半ばから音楽活動を展開してきたゲール語によるグループ。これまで恐らく2枚のアルバムが存在する。フィオナはそのトラッド・バンドに在籍してきた訳だが、ネットで検索しようとして間違えてはならないので触れておくが、実は同姓同名 Fiona Mackenzie というもう一人の女性歌手も存在する。こちらもなんとゲール語を主体としたトラッド歌手。こちらのフィオナ・マッケンジーは今回紹介する方のフィオナ・マッケンジーとは異なり、見た目まるっきりのオバサン(失礼)なので見間違える事はないだろうが、ソロ歌手としての実績はこのオバサンの方が上。見た目から想像もつかない天に昇る様な透き通る美声の持ち主で、これまで「Astair」「Seinn o ho ro Seinn」「Orain nan Rosach」「Duan Nollaig A Gaelic Christmas」といった作品を発表している。彼女の子供3人も音楽家の卵で娘ケイティは母親の近作に既に参加するなどプロの道に進んでいる模様だ。まあ、機会があればこっちのフィオナ・マッケンジーの作品もいずれ紹介してみたい。
Seelyhoo はアコーデオン奏者の Sandy Brechin を中心にした男女3名ずつ、計6人による音楽集団。同バンドは1995年に「The First Caul」、1998年に「Leetera」という作品を発表しているが、フィオナはその双方のアルバムに参加したらしい。そして家族グループのマッケンジーであるが、子供の頃から歌が好きだったという姉妹3人が一緒に音楽活動を展開する事になったキッカケはあるテレビ番組(ゲール語による音楽番組)だったという。これがキッカケで姉妹3人は一緒に音楽活動を展開する様になる。グループの名前は勿論、ファミリー・ネームの”マッケンジー”。彼女達は1996年に「Camhanch」、2002年には「Fama Clamosa」という作品を発表している。コンサート活動も盛んに行なった。1999年から2002年にかけてスコットランドやフランス、スペインで開催されたケルト系の音楽祭に参加している。更にフィオナは Anam(クラナドに「Anam」というタイトルの作品があるが、それから名付けられた?)というバンドの活動にも関わっている。
Anam は1992年秋に結成された、これもやはりトラッド系のバンド。中心人物はアイルランド(ダブリン)出身のブリアン・オ・ハラ(Brian Ó hEadhra)という男性で彼がまだ学生の身分の時に結成したバンドだったらしい。実はこの男性、フィオナの夫。バンドは1994年に最初のアルバム「Anam」を発表、その後「Saoirse」「First Footing」と発表。1998年には「Riptide」という作品を発表しているが、この時点で4人編成。当時までバンドのリード歌手を務めていたのがオークニー諸島出身でバウロンというアイルランドの伝統的な民族楽器の使い手でもある女性歌手 Aimée Leonard。1998年のアルタン祭りで来日して日本の観衆の前で演奏も披露したそうだが、その後この女性が脱退。代わりに参加したのがフィオナという訳。新ヴォーカリストを招き入れた Anam は2000年に「Time Gheal: Bright Fire」というアルバムを発表している。これ以降はどうやら作品が登場していない模様。




■ Fiona MacKenzie - Vocals, Acoustic Guitar
■ Brian O hEadhra - Vibrato Guitar, Acoustic Guitar, Bodhran, Bouzouki
■ Stuart McCredie - Acoustic & Electric Guitar
■ Matt Backer - Vibrato & Wire Guitar
■ Cameron Malcolm - Harmonic Guitar
■ Quee McArthur - Bass
■ Dave Stewart - Drums
■ Calum Malcolm - Piano, Electric Piano, Bass, Accordion, Hammond Organ, Programming
■ Mairi Campbell - Strings
■ Julien Arguelles - Saxophone
マッケンジー3姉妹の内、他の2人についても少し触れておくが、ジリアンはマッケンジー以外のバンドに加入した経歴はないようだが演奏家としての経験やテレビ番組への出演歴があるらしい。恐らく3人の姉妹の中では一番上と思われるエルダは「Eideadh Na Sgeulachd (The Raiment of the Tale)」というソロ作を持つ他、Mac-talla という、やはりこれもゲール語ベースのトラッド・バンドの一員として「Mairidh Gaol is Ceol」という作品を発表している。いずれも姉妹グループ、マッケンジーのデビュー以前の作品のようだ。とまあ、余談はさておき、肝心のフィオナの話題の方に移る。「Elevate」は2008年に発表されたばかりのソロ・デビュー作。ディスクはCDとSACDのハイブリッド仕様。プロデューサーとしてカラム・マルコムの名前がある。かつて日本の遊佐未森の作品のプロデュースを務めた事もある人で Botany 5、It's Immaterial、Josef K、Capercaillie、Runrig、Magicdrive、Simple Minds、Fish といった人達のプロデュースやミキシングを担当した事もある。
リリースはスコットランドのグラスゴーを本拠地とするイギリスの高級総合オーディオ・メーカーで英王室御用達ブランドでもある、リン (LINN) 。オーディオのファンなら知らぬ人はいない有名海外メーカーだ。高級オーディオというと見た目など関係ないとばかり重量級のグロテスクな筐体に包まれたアンプやスピーカーを連想するのが普通だが、リンはこうした傾向を安易に追い求めずにデザイン重視の小型モデルを中心としてきた会社。小型スピーカーなんか私も一時入手を考えた事もあります。でもまあ、高級オーディオ・メーカーには変わりはないので、一般的な音楽ファンが容易く入手出来るメーカー品ではないのであるが。それに近年は小型モデルだけでなく他の高級オーディオ・メーカーに習って大型化される傾向にあるようだ。さて「Elevate」であるが、これまで Seelyhoo、MacKenzie、Anam といったバンドで活動してきた経歴、及び彼女の趣味趣向を前面に押し出された作品となっている。
フィオナはゲール語に深い拘りと畏敬の念を持つ女性だと思うが、古い伝統に拘る余り古典的な音楽スタイルに縛られる類の作品にはなっていないのが最大の特徴。彼女がこれまで関わってきたバンドも伝統的なスタイルのトラッド音楽をベースにしつつも、ロックやポップスなどの英語圏の音楽を大胆に盛り込んでいる。彼女の MySpace.com にはゲール語でトラッド音楽を歌う歌手というイメージを損なわない曲ばかりが並んでいるが、実際には冒頭で紹介した通り彼女の趣味は幅広い。アイルランドやスコットランドの伝統的な音楽からの影響は勿論の事、スティーナ・ノルデンスタム、ケイト・ブッシュ、ニック・ケイヴ、メタリカ、ビョーク、ホットハウス・フラワーズ、トム・ヨーク、コクトー・ツインズ、ミューズ、キュアなど、彼女の両親の世代では理解出来ない様なロック・ミュージックにも彼女は多大な影響を受けたと公言している。この辺の趣味趣向は流石に1990年代以降に音楽活動を開始した世代、伝統的な音楽も流行的な音楽も区分けなく聴く事の出来る世代のアーティストならではと言える。
では個別に簡単に「Elevate」収録の曲に触れてみたい。「When the sunny sky has gone」はジャケットのイメージとタイトルが示す通りの陽だまりソング。アコースティック・ギターと霧の向うで鳴っている様なピアノを中心したフォーク・ソングだ。しかし「In Between」では雰囲気一変。アンビエントな空間が感じられるエレクトロ・スペーシーなポップ・ソング。他方、柔らかい弦の響きを導入する当り、人としての彼女の優しい良心を感じさせる。「Bye Bye」は少々ロリが入った可愛らしい歌声が聴けるアコースティック・ソング。「A Little While Longer」は伝統的な音楽の要素とエレクトロニスの要素が巧く合致したドリーミィなポップ・ソング。こういう音楽って、どちらかに偏っても酷く未消化な曲になってしまいがちなんだが、既にベテランの域に達しているカラム・マルコムは清楚な彼女のイメージと曲の根底に潜むトラディショナルなイメージをを損なう事なく新旧のエキスを上手に融合している。
「An Roghainn」はゲール語による曲。英語一辺倒でもゲール語一辺倒でもなく、英語とゲール語による歌詞を適所にアルバムの中で配置する当り、現代人としての彼女のバランス感覚を感じさせる。彼女を含むケルト民族の深くで長い悲しい歴史を感じさせる曲だ。「At the Bottom of the Sea」は女性アーティストならでは、のフェミニンな雰囲気たっぷりのポップ・ソング。「Elevate」はアルバムのタイトル曲。悲しい旋律が特徴のフォーク・ソング。ギターに夫のブリアン・オ・ハラ、ピアノにカラム・マルコム。イメージとしては雨の午後に聴く音楽。「Lots of People」もまた優しい音色が響き渡る。エディ・リーダーのソロ作当りをも連想させる女性らしいフォーク・ソングだ。「Duisg Mo Chridhe」の歌詞はフィオナと姉エルダが担当。歌及びアレンジもフィオナが担当。これぞまさしくケルト語派に属する人達の魂の叫びといった厳かな雰囲気が感じられる曲。
「Hi o He」も歌詞は姉エルダが担当、フィオナは作曲のみ。歌詞はゲール語なのだが、音楽はスタジオ技術を駆使したエレクトロニクス・サウンドといった有様。「A Little While Longer」同様、古い伝統的な音楽の要素と新しいエレクトロニスの要素が巧く合致したドリーミィなポップ・ソング。「Everybody Knows」は冒頭の「When the sunny sky has gone」や「Bye Bye」といった曲とセットで聴きたいアコースティック・ソング。これでお終い。姉エルダの音楽は聴いた事はないのだが、スコットランドはアウターヘブリディーズ諸島の一つ、ルイス島出身であるフィオナであるが、コテコテのトラッド歌手というよりは、ケルト系の音楽を根底に置きつつも現代のロックやポップス、アダルト・オルタナティブといった要素を盛り込む現代っ子らしいアーティストであるというのが「Elevate」を通して聴いた後の私の率直な感想。伝統的な音楽スタイルに縛られた音楽作品の場合だと、どうしても聴く人を選ぶ傾向に陥るとは思うが、フィオナの「Elevate」の様な音楽ならポップス全般、万人にお奨め出来ると思うね。
MySpace.com - Fiona Mackenzie - Inverness, UK - Acoustic
Mackenzie Music
MySpace.com - Mackenzie - UK - Acoustic / A'cappella
MySpace.com - Brian O hEadhra - Inverness, UK - Acoustic / Folk
MySpace.com - Anam - Inverness, UK - Folk / Acoustic
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