fc2ブログ

#1278 Martha Velez / Fiends & Angels (1969)

 2008-05-29
01. I’m Gonna Leave You
02. Swamp Man
03. A Fool For You
04. In My Girlish Days
05. Very Good Fandango
06. Tell Mama
07. Feel So Bad
08. Drive Me Daddy
09. It Takes Alot To Laugh, It Takes A Train To Cry
10. Come Here Sweet Man
11. Let The Good Times Roll

Martha Velez / Fiends & Angels

以前からどうしても欲しいと願っていた1枚。マーサ・ヴェレズだかマーサ・ベレスだかは知らないが、かつてイギリスのロックの大物達がこぞって参加した事で有名な「Fiends And Angels」というアルバムを1969年に発表したアメリカ生まれ(米NY)の女性歌手が今宵の主役。年齢不詳だが1960年代前半から音楽活動を展開してきた人なので恐らく1940年代前半から半ばにかけての生まれだろう。本名は Martha Carmen Josephine Hernandéz Rosario de Veléz。やたら長い。トランペット奏者のキース・ジョンソンと結婚(後に離婚)してからはマーサ・ベレス=ジョンソン(Martha Velez-Johnson)。1980年代半ば以降は実は彼女は『パパと呼ばれて大迷惑!?』『SAFE』『187(ワン・エイト・セブン)』『Star Maps』などの映画に出演するなど、女優としての活動に主体を置いている様なので、残念ながら1989年に「Angels Of The Future Past」という作品を発表したのを最後に現在に至るまで新作アルバムは発表されていない(多分)。

プエルトリコ系のマーサ・ベレスが歌を歌い始めたのは5歳の時。メゾソプラノ歌手としてオペラの奨学金を得たのが12歳の時というから、少女時代から音楽的才能を発揮していた事になる。その後、High School of Performing Arts(NY)で3年間学んだ後に Antioch University(ワシントン州シアトル)で臨床心理学を学ぶ。その後は Pacifica Graduate Institute(カリフォルニア州)で文化神話学と深層心理学の分野で博士号を取得。また、Leigh Melander博士を中心にカルフォルニア州オーハイに設立された Imaginal Institute 発足にも博士の立場で協力している。頭の悪い私にはなんだかさっぱりな話だが、Imaginal Institute の公式サイトでの彼女の紹介記事を見る限り、恐らくは博士号を取得したり研究所発足に尽力を尽くしたりしたのは近年、つまり彼女は現在では歌や芝居といった分野での芸能活動に一区切りを付けて学問の分野で残りの人生を全うしようと考えているのではないか。
歌手としてのマーサ・ベレスの足跡を遡っていく。すると今回の主役であるアルバムより遥か以前、1960年代前半に存在したガスライト・シンガーズ(Gaslight Singers)というグループまで突き当たってしまう。ガスライト・シンガーズは男性3人(Earl Mann、Al Alcabes、Jeff Hyman)と紅一点であるマーサを加えた男女4人によるフォーク・グループ。1963年と1964年にそれぞれ「The Gaslight Singers」「Turning It On」という作品を発表している(共にマーキュリー)。この後、どんな経緯があったのかは知らないが数年の空白期間を経て1969年にとんでもない作品が登場する。それが「Fiends & Angels」という作品。このアルバムは彼女にとって記念すべき最初のソロ作品なんだが、兎に角ゲスト陣がやたら凄まじい。エリック・クラプトンやブライアン・オーガー、ポール・コゾフなど、当時のイギリスのロック界の精鋭達が大挙して参加しているのだ。正確な参加者の名前は改めて下で触れるが、一体当時の彼女にどれだけの業界コネがあったというのだろう。

シングル「Tell Mama / Swamp Man」とアルバム「Fiends & Angels」を発表した1969年だが、ちなみにこの時期、彼女はエレファンツ・メモリー(後にジョン・レノン&ヨーコ・オノが気に入ってバック・バンドに抜擢)の「Elephant's Memory」(1969年)やヴァン・モリソン「His Band and the Street Choir」(1970年)といった作品にゲスト・ヴォーカリストとして参加している。その後マーサ・ベレスは1970年にシングル「For Loving You / Good Bad Woman」、1972年にもシングル「Boogie Kitchen / Space King」と通算2作目となるアルバム「Hypnotized」を発表。ヴァン・モリソンの作品でのセッションで交友を持ったからなのか、John Platania、John Klingberg、Collin Tilton といった、ヴァン・モリソンの作品にも参加歴のある演奏家が録音に参加している。ちなみにコンガ奏者の Gerardo Velez はマーサのファミリー。翌1973年には1960年代後半の英ブルース・ブームの仕掛け人マイク・ヴァーノンのプロデュースによる「Matinee Weepers」を発表。

この後暫くの沈黙の後、1976年には「Escape From Babylon」を発表するが、またしてもここで有名人登場。プロデュースはボブ・マーリー、バックの演奏もボブ・マーリー&ザ・ウエイラーズ。更にザッポー・ホーンズ、リー・ペリー、アイ・スリーズといった、レゲエ・ファンからすれば信じられない面々が彼女の作品の為に参加している。1960年代後半の英ブルース・ブームの中心人物が勢ぞろいした「Fiends & Angels」も凄いが、こっちも凄い。察するに、頼まれると嫌と言えない様な雰囲気を持つ姉御肌の、日本の芸能界で例えるなら和田アキ子みたいなオーラを持った女性だったのだろうか。翌1977年には再び雰囲気を変えて「American Heartbeat」を発表。レゲエの前作から一転、今度は売れっ子のセッション・ミュージシャンらを従えたAOR風情のヴォーカル・アルバムを完成させてしまった。1980年代の半ば以降は女優としての活動を主体とした為、1980年代に発表されたアルバムは1989年の「Angels of The Future Past」1枚限り。これが今の所最新作となっている。

Fiends & Angels(UK)Fiends & Angels Again(Blue Horizon 1970)HypnotizedAngels of Future

■ Martha Velez - Vocals

※ Guitar - Eric Clapton, Stan Webb, Paul Kossoff, Rick Hayward, Spit James
※ Bass - Jack Bruce, Andy Silvester
※ Drums - Jim Capaldi, Mitch Mitchell, Dave Bidwell,
※ Keyboards - Christine McVie, Blue Weaver
※ Organ - Brian Auger
※ Saxophone - Johnny Almond, Chris Mercer, Chris Wood
※ Horn - Jeff Condon, Terry Noonan, Bud Parkes, Derek Wadsworth
※ Harmonica - Duster Bennett

さて、今回取り上げる「Fiends & Angels」は1969年発表のソロ・デビュー作。フォーク、ブルース、レゲエ、ポップスと時代によって全く異なる顔を持つ女性歌手。歌手としての顔だけでなく女優としても数々のテレビや映画に出演、更に学問の分野でも博士号を取得して、今では立派な文化人となってしまったマーサ・ベレス。レゲエのファンなら最初に注目すべきはボブ・マーリー&ザ・ウエイラーズが参加した「Escape From Babylon」だろうが、英ブルース・ロック・ファンなら最初に注目すべきは「Fiends & Angels」の方だろう。レコードは米ではワーナー・ブラザース系列の Sire Records から、英ではLondon Records からそれぞれ発売された。CDはワーナー/アトランティック系音源の復刻に命を燃やすリイシュー系レーベルの Wounded Bird Records より。ちなみに米盤と英盤とではジャケのデザインは異なるが、今回のCDにはその両方を収録。表が米盤、裏が英盤だという。更に本作はマイク・ヴァーノンのブルー・ホライズンからもジャケ違い(顔アップ)で発売されているとか。

まずはゲスト陣。エリック・クラプトン、ジャック・ブルース、ブライアン・オーガー、クリスティン・マクヴィ、ジム・キャパルディ、ミッチ・ミッチェル、スタン・ウェッブ、ポール・コゾフ、キーフ・ハートリー、リック・ヘイワード、ダスター・ベネット、アンディ・シルベスター、デレク・ワッズワース、クリス・ウッド、ジョニー・アーモンド、デイヴ・ビッドウェル、スピット・ジェイムス、クリス・マーサー、テリー・ヌーナン、バド・パークス、ブルー・ウィーヴァー。彼等が活動に関わったバンドの名前を挙げてみる。クリーム、ブラインド・フェイス、トラフィック、マーク=アーモンド、ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズ、サヴォイ・ブラウン、フリー、チキン・シャック、フリートウッド・マック、ブライアン・オーガー&トリニティ、ジェフ・コンドン、コロシアム、マンフレッド・マン、キーフ・ハートリー・バンド、ジューシー・ルーシー、ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス、ロック・ワークショップ、ストローブス、ビー・ジーズ。

プロデュースはマイク・ヴァーノン。録音は1968年7月。長く洋楽聴いてきたが、不特定多数の有名なロック・バンド(それも当時皆旬のバンドばかり)の中心人物がここまで参加した作品、例がないと思う。強いて挙げるなら元クリームのジンジャー・ベイカーがクリーム崩壊後に結成したジンジャー・ベイカーズ・エアフォース当りだと思うが、それでも「Fiends & Angels」の豪華さには遠く及ばない。スワンプ・ロックの範疇で語っても良いが、参加者の面々を考えればやはりブルース・ロックの範疇で語るベき作品であると言える。個別の曲に簡単に触れてみたい。気持ちアップテンポなリズムで登場する冒頭曲「I'm Gonna Leave You」からしてイキナリのご機嫌なブルース・ロック。ギターとホーン・セクションが絡み合うサウンドは間違いなく1960年代後半のイギリスにおけるブルース・ブームを象徴するサウンドだ。ブルース・ハープはダスター・ベネット。誰がどの曲に参加しているのか明記されていない不親切なCD冊子が恨めしい。

続く「Swamp Man」はマーサも曲作りに関与したヘヴィな印象のブルース・ロック。レイ・チャールズ作「A Fool For You」はスタン・ウェッブに歌わせてもピッタリきそうなチキン・シャック牴牾のブルース・バラード。ソウルフルな印象も実に心地よい。「In My Girlish Days」はリル・サン・ジョー(本名はアーネスト・ロウラーズ)の曲。初期のシカゴ・ブルースを支えた功労者の一人。本アルバムでは初期のフリートウッド・マックを彷彿とさせる重心の低いアレンジを施した。「Very Good Fandango」はマーサの手による、1分にも満たないアカペラ曲。クラシック音楽のオペラをおちょくった様なアレンジだ。「Tell Mama」はジャニスも歌った、あの曲。エタ・ジェームスが「Tell Mama」(1968年)で披露した曲を1968年に録音が敢行された「Fiends & Angels」で既に着眼している点に注目。「Feel So Bad」は戦後のテキサス・カントリー・ブルースを代表する偉大な音楽家ライトニン・ホプキンスのカバー。煌びやかなホーン・セクションとエレキ・ギターを前面に推し出した派手なロック・ミュージック仕立てのアレンジに賛否両論あろうが私は気に入った。

「Drive Me Daddy」、もうこれは誰が聴いても直ぐに判る。オルガン演奏はブライアン・オーガーだろう。オリジナルの書き手は1913年、米ケンタッキー州ルイスヴィル出身の女性歌手で、過去カウント・ベイシーの楽団にも在籍していた経験を持つヘレン・ヒュームズ(Helen Humes)。実に選曲がいいねえ。スウィングの時代に活躍したヘレン・ヒュームズの曲をジミー・スミスのオルガン演奏に惚れてオルガニストとして生きる事を決断したブライアン・オーガーが演奏。歌うは男勝りのマーサ・ベレス。ゾクゾクするねえ。そして次は注目するのはブルースだけじゃないよ、とボブ・ディランの、というより1960年代の全ロック・シーンを代表するウルトラ級の名作「Highway 61 Revisited」に収録されていた「It Takes A Lot To Laugh, It Takes A Train To Cry」をカバー。実力は全く問題無しのバックの演奏の力量の甲斐もあってか、何年も前からマーサの持ち歌であるかの様な手馴れた歌が披露される。

「Come Here Sweet Man」はマーサ・ベレスの自作曲。むせび泣く様なギターのフレーズと哀愁を誘うフルートが感傷的なメロディとよく似合う。泣きのギターはポール・コゾフだろうか。マーサの歌はまるでジャニス・ジョプリンの様でもある。演奏は他にサックスやピアノも参加。次なる最終曲「Let The Good Times Roll」はニューオーリンズ出身の黒人男女R&Bデュオ、シャーリー&リー(Shirley & Lee)が1957年に放った大ヒット曲のカバー。真っ当なポップス・ファンなら誰もが知っている有名な曲でもある。ロックンロール色の強い原曲をマイク・ヴァーノンはソウル色をも織り交ぜたブラス・ロック風のアレンジを施して見事に成功させた。ホーン・セクションのアレンジを担当したテリー・ヌーナンの貢献度高し。これでお終い。時間にして僅か38分程度。復刻に際して未発表音源などはなかったのであろうか。もっと長く聴いてみたいと思わせるフィメール・ブルース・ロックの名作、いや傑作。ブルース・ロックのファンなら「Fiends & Angels」は絶対に買うべき。

The Imaginal Institute: Imagination, Creativity, and Culture

ページ最上部へ
関連記事
FC2ブログランキング人気blogランキングへにほんブログ村 音楽ブログへブログランキング【くつろぐ】参加中
コメント












管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
トラックバックURL:
http://cottonwoodhill.blog21.fc2.com/tb.php/4401-80216514
【2008/05/29 08:17】
≪ トップページへこのページの先頭へ  ≫
FC2カウンター

プロフィール

はじめに

Author:Cottonwoodhill
未確認・不確定な事でも堂々と書いてしまう無責任洋楽ブログ。根は洋楽ミーハーCottonwoodhillは感覚派B型人間なので記事の整合性が欠ける場合多々有り。過去の記事への不快なコメントなどは問答無用で削除します。

RSSフィード
CalendArchive

最近のアルバム評
Powered by 複眼RSS

最近のアルバム寸評

今日のBGM
ゼン・プレイ・オン(紙ジャケット SHM-CD)

最近のコメント
最近のトラックバック
LIVE TRAFFIC MAP
Myスカウター

スカウター : Cottonwoodhill 別別館

FC2検索

タグランキング

トラックワード
FC2 SEO リンク
FC2 アクセスランキング

TopHatenar

フィードメーター
フィードメーター - Cottonwoodhill 別別館
あわせて読みたいブログパーツ

ブログ通信簿

サイト価格ランキング


サイト売買のサイトストック

アクセスランキング
[ジャンルランキング]
音楽
75位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
洋楽
17位
アクセスランキングを見る>>

フリーエリア
  1. 無料アクセス解析