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#0815 Fusioon / Minorisa (1974)

 2004-03-20
1. Ebusus
2. Minorisa
3. Llaves del Subconsciente
I Parte: Mente
II Parte: Cerebro

Fusioon / Minorisa

1970年代の前半に音楽活動を展開していたスペインはバルセロナ出身のプログレッシヴ・ロック・バンド、フシオーン(Fusioon)。1972年から1974年の間に3枚のアルバムを発表した後に解散してしまったバンド。 太陽、フラメンコ、闘牛(最近再び脚光を浴びる同国ラマンチャ地方出身の映画監督ペドロ・アルモドバルの最新作『トーク・トゥ・ハー』でも闘牛が舞台の一つとして登場)といった言葉が誰でも想像してしまう情熱の国。そして最近ではスペインの首都マドリードで発生、200人近い犠牲者を出した連続列車爆破テロ事件の惨劇が生々しい。政治、文化、テロ、と最近なにかと話題の上る国でもあります。

そんな情熱の国スペイン出身のプログレッシヴ・ロック・バンド、フシオーン。バンドの名前のスペルからはどうしてもフュージョン(Fusion)を連想してしまうため、彼らが活動していた時期(1970年代前半)からして、同時代のリターン・トゥ・フォーエヴァーのようなエレ・ピアノを全面に押し出したジャズ/フュージョン・サウンドを連想してしまいがちですが、ジャズ・ロックをベースにしながらもアヴァンギャルド、エスニック、クラシック(シンフォニック)などの要素をフュージョン(融合)させる事に挑んだ、言葉本来の意味が持つ通りの《フュージョン・バンド》でありました。
ギター、ベース、ドラムス、キーボードの構成による4人組。1971年にシングル「Ciclos」でデビューを飾り、翌1972年の「Fusioon」(または「La danza del molinero」)でアルバム・デビューを飾ります。2年後の1974年に通算2作目となる「Fusioon」(または「Concerto Grosso」)を発表していますが、どちらもタイトルが「Fusioon」なので非常に紛らわしい。溶鉱炉に溶けた鉄?が放り込まれているようなジャケットの方が最初の作品で、ワニが描かれたジャケットの方が2枚目の作品らしい。更にその後フシオーンは通算3枚目となるアルバム「Minorisa」(1974年)を発表するのでありますが、残念ながら彼らの活動はここで終止符が打たれています。

解散後のフシオーンのメンバーの足取りについてはよく把握しておりませんが、バンドのサウンド面における実質的なリーダーであったと思われるキーボード奏者のマヌエル・キャンプ(Manel Camp)はソロ・アーティストとして現在まで活躍中。1980年代の中盤以降に自身のソロ作品の発表を重ねているマヌエル・キャンプは1970年代の後半から映画音楽の作曲家としてビセンテ・アランダ監督の『ファニー 紫の血の女』(1984年)、キング・ヴィダー監督『群衆』(再上映版?)、など、いくつかの映画やTVドラマの仕事をもこなしておる模様です。

■ Marti Brunet - Guitar, Synthesizer
■ Jordi Camp - Bass
■ Santi Arisa - Durms, Percusion
■ Manel Camp - Piano, Organ

最初の作品から最後まで不動の4人で音楽活動を展開したスペインのプログレッシヴ・ロック・バンド、フシオーンの最終作にして完結編。収録曲はキーボード奏者のマヌエル・キャンプの手による2曲とギタリストのマーティ・ブルネットの手による1曲、計3曲とやや寂しい感じが致しますが、収録された曲のレベルが高いので物足りなさは然程感じません。キーボード・サウンドを中心にしたジャズ・ロック・サウンドというのが通り一遍の評価でありましょうが、メンバーそれぞれの音楽的素養が影響しているのか、様々なジャンルのサウンド形態が登場するなど、なかなか聴き応え充分の力作でもあります。フシオーンに参加するまでのメンバーのバイオなどが詳しく判れば、更にフシオーンの音楽性に突っ込めるかもしれませんが。

スペインという国自体、古くより様々な民族と文化の交流によって非常に個性的な文化を生み出してきた歴史を持つ国。ピカソやミロ、ダリ、ガウディといった歴史に残る個性的な芸術家を生み出してきた風土を持つ国であるからして、独自の芸術精神を用いて様々なジャンルの音楽を融合させる事にフシオーンの連中が抵抗感を持つ訳がありません。ジャズやロックをベースに時に古楽、民族音楽、アヴァンギャルド、電子音楽など、異なるリズムや旋律を巧みに使いこなした結果のポリ・リズム。知名度という点では哀しいレベルであると言ってもよいフシオーンですが、1970年代前半のユーロ・ロックを代表する隠れた名作として高く評価したい。

既にブームとしてのプログレッシブ・ロックが成熟の域に入りつつあった1974年という時期だけあって、キング・クリムゾンやELPといった時代を先取りする英国プログレッシヴ・ロック勢やカンタベリー系ジャズ・ロック・サウンドからの影響も充分垣間見て取れるが、異なるジャンルの音楽形態を流用する事によって複雑に構築させた楽曲、ポリメトリックを多用した彼らのオリジナルティ溢れる部分は高く評価したい点であります。同時期のブリティッシュ・ジャズ・ロックにはハットフィールド・アンド・ザ・ノースというバンドが存在していましたが、フシオーンがエクスペリメンタルな精神を内包しているという点もあって、本質的な部分で比較の対象とはなり得ません。

異なる文化の交流によって独特の芸術を生み出してきたスペインのバンドらしいプログレッシヴ・ロック・バンド。アヴァンギャルドな精神を持つフシオーンに対して北欧のサムラ当たりと比較する向きもあるが、こちらの方が的を得ていると思いますが、あちら程エスニックな部分に比重がおかれている訳ではありません。ヘヴィ・シンフォ的な部分、フュージョン・ロックを思わせる軽快な分もあるにはあるがフレーズの一節として利用されているだけに過ぎず、気持ちよい気分になっていると、途端に全く違うフレーズや異なるリズム・パターンが登場するので要注意。最後の電子音などは、純然たるシンフォ・ファンなどはついてこれまい。

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