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#1283 Roy Wood / Boulders (1973)

 2008-06-10
01. Songs of Praise
02. Wake Up
03. Rock Down Low
04. Nancy Sing me a Song
05. Dear Elaine
06. Medley: All the Way Over the Hill/Irish Loafer (And His Hen)
07. Miss Clarke and the Computer
08. When Gran'ma Plays the Banjo
09. Rock Medley: Rockin’Shoes / She's Too Good for Me / The Locomotive

10. Dear Elaine (Rough Mix) [Bonus Track]

Boulders ボールダーズ(紙ジャケット仕様)

所謂、天才。近頃は《天才》という言葉が至る所で安易に使われる様になり、天才という言葉がなんだか有り難みのないレベルにまで陥ってしまった感がない訳でもないが、この男、1946年英バーミンガム出身の音楽家、ロイ・ウッド(Roy Wood)は間違いなく正真正銘、本物の天才として認知されるべき人物だろう。だが日本でのロイ・ウッドの評価は著しく低い。何故だろう。トッド・ラングレンにも匹敵するポップの魔術師と言ってもいい才能を誇りながらロイ・ウッドが日本の音楽雑誌やメディアなどで堂々と取り上げられる機会は殆どないと言ってもいいだろう。紙ジャケが出た時にはレコード会社のタイアップの関係上ロイ・ウッドの音楽が紹介される事もあるが、それも単発的。見た目が悪いのか? ああ、それも要因の一つかも。彼のバンド、ウィザードの音楽が紹介される時には大方決まって派手で(ある意味笑ってしまう程の)大袈裟な化粧を施したロイ・ウッドの画像が紹介されるのがお決まりの定番コースとなっている。あの画像は本当によくないよね。

それにだ、天才ならではの気紛な活動も紹介し難くしているかもしれぬ。1970年代だけでもロイ・ウッドはムーヴ、ELO、ウィザード、ウィゾに在籍、更にソロ活動も展開してきた。どのバンドも微妙に音楽性が異なるから聴く方も厄介。聴く人間が厄介なのだから紹介する立場の人間だってロイ・ウッドの記事を作り難い。1980年代以降、表立ってソロ活動やバンド活動を継続してこなかったのも影響しているだろう。1980年代以降発表されたロイ・ウッドのソロ作は同年代半ばに発表された「Starting Up」のみ。つまりロイ・ウッドはCDの時代になってから然したる新作を製作していないのだ。キツイ言い方をするなら、ロイ・ウッドはマスコミ風の言い方で言えば過去の人なのだ。つまり旬ではないと。ジェフ・リンが1980年代以降にプロデューサーとして活路を見出したのとは対照的と言えば対照的。だがそれじゃいかん、と過去のロックの隠れた名作群がCDで復刻される気運に沿ってロイ・ウッドの才能も改めて再評価しよう、という動きがここ十年位の間に活発、と感じられる今日この頃。
ロイ・ウッドは1962年にバーミンガムで結成されたマイク・シェリダン&ザ・ナイトライダース(Mike Sheridan & The Nightriders)に一時在籍した後(ロイ・ウッドは1964年から1966年まで在籍。ジェフ・リンも1966年の一時期同バンドに在籍している。)、ザ・ムーヴを結成。当初のメンバーはロイ・ウッド、カール・ウェイン、トレヴァー・バートン、エース・ケフォード、ベヴ・ベヴァン。1968年にエースが脱退した後はギタリストのトレヴァー・バートンがベーシストに転向(1969年にリック・プライスと交代)、またアイドル・レースからジェフ・リンを引き抜いた事はアイドル・レースの紹介記事で触れた通り。ザ・ムーヴは1968年から1971年までの間に「The Move」「Shazam」「Looking On」「Message From the Country」というアルバムを発表する傍ら、シングルも多数発表している。実はザ・ムーヴは1960年代末から1970年代初頭の英シングル・チャートの世界でも大きな成功を収めている。

ザ・ムーヴは1967年から1971年迄の間に「Night of Fear」「I Can Hear the Grass Grow」「Flowers in the Rain」「Fire Brigade」「Blackberry Way」「Curly」「Brontosaurus」「Tonight」「California Man」といったシングルをチャートの上位に送り込んでいる。私達日本人が考えている以上に、ロイ・ウッドの名前は(恐らく今でも)イギリスの音楽ファンの心に深く根付いているのだろうね。さて、この後はエレクトリック・ライト・オーケストラ、通称ELOの登場だ。ロックとクラシックの融合という壮大なテーマを実現すべく、ロイ・ウッドはジェフ・リン、ベヴ・ベヴァンらを誘って新たに新バンドを立ち上げた。1971年、ザ・ムーヴが「Message From the Country」を発表した同年に早くもELO名義の「The Electric Light Orchestra」を発表するのだが、天才ならではの気紛れか、ロイ・ウッド君の興味は別の物に移行しまうのである。今度のテーマはロック(ロックンロール)とビック・バンドの融合だ。

ロイ・ウッドはロック(ロックンロール)とビック・バンドの融合を図った新バンド、ウィザードを元ザ・ムーヴのリック・プライスやELOからの引き抜きに成功したビル・ハントらと共に1972年に結成。ザ・ムーヴ時代から人気ロック・スターとしての地位を既に獲得していたからなのか、1972年に発表したウィザードとしての最初のデビュー・シングル「Ball Park Incident / The Carlsberg Special」は 全英最高6位を記録。この後もウィザードの勢いは衰えず、1974年までの間に「See My Baby Jive」「Angel Fingers」「I Wish It Could Be Christmas Everyday」「Rock 'N' Roll Winter」「Are You Ready to Rock」といったヒット曲を次々と生み出していった。特に「I Wish It Could Be Christmas Everyday」(邦題:毎日がクリスマスなら)。日本じゃクリスマスの定番ソングと言えばジョン&ヨーコ、山下達郎、マライア・キャリー、ワム、松任谷由実といった人達の曲が例年の定番となっているのだが、イギリス国内ではウィザードの1974年のヒット・シングルも定番らしい。

Wizzard Brew ウィザード・ブリュウ(紙ジャケット仕様)Mustard マスタード(紙ジャケット仕様)On the Road AgainStarting Up スターティング・アップ(紙ジャケット仕様)

■ Roy Wood - Vocals, Voices, Guitar, Bass, Drums, Cello, Sax, Wood Winds, Keyboards, Instrumentation
■ John Kurlander - Harmonium

ウィザードの話、そしてその後のウィゾ(Roy Wood's Wizzo Band)の話はその内取り上げる(つもりの)ウィザードのアルバム・レビューで触れるとして、今回はロイ・ウッドのソロ作の話。1971年から1973年までの間にロイ・ウッドはザ・ムーヴ、ELO、ウィザード名義の作品を発表しているが、これらの作品とは別に自身のソロ作も発表している。それが「Boulders」という作品だ。これが彼にとって最初のソロ名義の作品という事になる。ウィザードのデビュー作「Wizzard Brew」同様、1973年に発表。イギリスではロイ・ウッド関連の前2作(「Message From the Country」「The Electric Light Orchestra」)がハーヴェストから発売されたのだが、本作「Boulders」も英での発売はハーヴェスト(米では United Artists から提供)。母国イギリスでは最高15位と健闘したが、海の向うの米国では最高176位止まり。また、イギリスではアルバムからシングル・カットされた「Dear Elaine」が最高18位を記録した。

ポップ・ソングを書く事に関してはジェフ・リンにも匹敵する才能を持ち合わせているロイ・ウッドは若い頃からありとあらゆる楽器の演奏をマスターしてしまった天才肌の職人でもある。こういう職人気質の天才音楽家って、得てして一人で多重録音を駆使して自作自演によるアルバムを作ってしまうケースも多々あるもんだが、このロイ・ウッドもそうだ。「Boulders」は実はロイ・ウッドのほぼ一人によって成し遂げてしまった作品(注;一部の曲でハーモニウムを担当したゲスト奏者あり)。更に収録された曲の作詞/作曲、プロデュース、アレンジは勿論、アルバム・ジャケットのアート・ワークまで一人で手掛けてしまっている。エンジニアには流石にアラン・パーソンズの手を借りているのだが、いずれにせよロイ・ウッドのマルチプレイヤーぶりを充分に確認出来る作品である事には間違いない。更にもっと驚く驚愕の事実、実は本作は1968年の秋から録音に取り掛かり、1969年末には既に完成していたという。

天才の称号の他、奇人・変人という有難くない呼称まで定着しているロイ・ウッドであるが、「Boulders」に詰め込まれている曲は正真正銘どれも粒揃いの一級品。ロックンロールの楽しさを追求したウィザード・スタイルの音楽を1968年~1969年の時点で既に実現していた事が確認出来る歴史的な作品。ブリティッシュ・ポップの歴史に永久に名を残すべき問答無用の特印の傑作であり超一級品。これはもう誰が何と言おうと断言出来る。スペースが無くなってきたが、個別の曲はサラリと簡単に紹介する。アルバムの冒頭ソング「Songs of Praise」は後の軽妙洒脱なウィザード路線を思わせるロックンロール。「Wake Up」は後期ビートルズの名品にも匹敵する凝ったポップ・ソングだ。「Rock Down Low」はバブルガム・ポップ染みた、ご機嫌で楽しいロックンロール。どうやら本人のお気に入りの曲のようで、ウィザードのステージ上でも度々取り上げられる機会もあったのだという。

続く「Nancy Sing me a Song」はビートルズ、というよりはなんだかスタックリッジ(田舎のビートルズの呼称で有名なブリティッシュ・ポップ・バンド)みたいな長閑なビートルズ路線。洒落た弦の導入の仕方も見事。当時シングル・ヒットを記録した「Dear Elaine」はフォーク感覚を加味させた哀愁感漂う名バラード・ソング。続く「All the Way Over the Hill/Irish Loafer (And His Hen)」は本作に収録された2曲のメドレー・ソングの最初の一つ。1970年代前半から同中期にかけて存在した、ビートルズの遺伝子を感じさせる前半のポップ・ソング部分が華やかだ。アコギの音色がなんだか実に可愛らく微笑ましい「Miss Clarke and the Computer」ではジャズ・タッチのアプローチも見せてくれる。歌詞やタイトルに登場する言葉から察するに、「Boulders」制作当時の世間の注目を集めていたアーサー・C・クラーク原作「2001年宇宙の旅」から何かしらの影響を受けた曲なのかもしれない。

「When Gran'ma Plays the Banjo」ではあっと驚くカントリー・ソング。それ風なのではなく、まったくのカントリー・ソング・スタイルの曲をもってくるのだから凄い。ソロ作、自演作であるか故の、『なんでもやってやれ』的なアプローチの結果なのだろう。最終曲もメドレー形式による一品。ハワイアン風のリズムを効かせたロカビリー風の1曲目、何処となくパブ・ロック風の2曲目、ブラスを背にしたグラム・ロック風の3曲目といった構成が実に楽しい。基本はロックンロール。この人、本当にロックンロールが好きだったんだなあ。この後ボーナストラックが1曲。ヒット・ソング「Dear Elaine」のラフ・ミックス版が追加収録されている。これでお終い。ちなみにロイ・ウッドは本作発表後、ウィザード~ウィゾでの活動と併行してソロ活動も継続、「Mustard」(1975年)、「On the Road Again」(1979年)といった作品を発表しているが、本作を含め、ウィザード名義の作品同様、マニアックな洋楽ロック・ファン以外には殆ど認知されていないのが逸話ざる現状だろう。

THE OFFICIAL ROY WOOD WEBSITE
The Move Online
The Official Electric Light Orchestra Site

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