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#1285 Brainchild / Healing of the Lunatic Owl (1970)

 2008-06-15
01. Autobiography
02. Healing of the Lunatic Owl
03. Hide From the Dawn
04. She's Learning
05. A Time to Place
06. Two Bad Days
07. Sadness of a Moment
08. To "B"

Brainchild / Healing of the Lunatic OwlBrainchild / Healing of the Lunatic Owl(B)

いつだったかは忘れたが、私がまだ若い頃、ロック雑誌か何かでジャケットを見てから以来、是非入手してみたいと長年思い続けてきた、ある1枚のアルバムをようやく入手。そのアルバムとは「Healing of the Lunatic Owl」、イギリス出身のブラス・ジャズ・ロック・バンドが1970年に発表した作品である。手首から先の人間の腕が足となった合成のフクロウが描かれたグロテスク極まりないもの。見る者に対するインパクトという点ではトゥ・ファットの指頭ジャケやウェブの鳥腕ジャケにも匹敵する奇抜極まりないジャケットである。モノクロ描写だがジャケットの裏も凄くて人間の脳を手で抱える人間の手首、だがその手首の先には鳥の首が生えているという代物。デザインを担当したのはピンク・フロイドやアージェント、バッド・カンパニー、ブランドⅩ、クライマックス・シカゴ、フラッシュ、ジェネシスらのジャケットのデザインを担当したヒプノシスではなく Picture Post。

(CDだが)トゥ・ファットの指頭ジャケもウェブの鳥腕ジャケも既に過去入手した。私はアナログ・レコード1枚に大枚叩いて購入する性格の人間ではないので、世界の何処かの復刻系レーベルで再発してくれないものかと密かにじっと期待していたのだが、2008年になって米レーベル?の Second Harvest がデジパック仕様にてリシューしてくれた。それを入手して今回の記事を書いているのだが、なんだかジャケの上下と左右の比率がおかしく、リサイズする際に縦横比が無視されてしまったらしい。折角の腕フクロウが上下から押し潰された印象に見えてしまっている。ジャケが魅力の一つなので一体なんてこったい、と嘆きの声の一つでもあげたい程である。内容が目当てではなくジャケットが目当てで買ったのだからね。まあいずれ、エアメイルやアルカンジェロやストレンジデイズといった日本のインディ系のレコード会社がオリジナル・ジャケットに忠実な紙ジャケを発売してくれる事だろう。その時は改めで買い直してもいいよ。
”創作品”とか”人の考え”といった意味を持つブレインチャイルド(Brainchild)という名前のバンドが発表したのは1970年のアルバムが最初で最後。所謂幻のバンドという奴でメンバーのブレインチャイルド以前、ブレインチャイルド以降の足取りも良く判らない。デビュー作品とは到底思えない流麗な演奏から察するに、1969年から1970年頃にかけて結成されたセッション・ミュージシャン中心の急造バンドだったのかもしれない。あとはプロデューサー。彼等が唯一残した1970年の作品を手掛けたのはレニー・ライト(Lennie Wright)という人物なのだが彼は実は音楽家でしかも、あの鳥腕ジャケのウェブのオリジナル・メンバーだった人でもある。なので、ブレインチャイルドはプロデューサーのレニー・ライトの手によるウェブの番外編と捕らえた方が彼等の音楽性を理解するには近道となるかもしれない。ちなみにウェブは1960年代から1970年まで活動していたイギリスのジャズ・ロック・バンド。

当初のバンドのリーダー格はジョン・L・ワトソン(John L. Watson)というアメリカからやってきた黒人ソウル歌手。彼のバックを務める形で結成されたジョン・L・ワトソン&ザ・ウェブというバンドがウェブのオリジナル。バンドはデッカ傘下のサブ・レーベルであるデラムと契約を結んで「Fully Interlocking」というモンド系作品をマイク・ヴァーノンのプロデュースを受けて1968年に発表。1970年早々にはクリームのカバー曲を含む「Theraphosa Blondi」を再度マイク・ヴァーノンのプロデュースを受けて発表する。当時のイギリスで流行していた、ジャズとブルースのエキスを盛り込んだサウンドを内包した作風を糧に音楽活動を展開するが、バンドに黒い路線の音楽を齎していた黒人歌手のジョン・L・ワトソンが脱退。残されたウェブの残党の一人レニー・ライトは新たにデイヴ・ローソンというメンバーを迎え入れて移籍先のポリドールにて上記の鳥腕ジャケ、「I Spider」を1970年に発表している。

当時のメンバーはデイヴ・ローソン、トム・ハリス、トニー・エドワーズ、ジョン・イートン、レニー・ライト、ケニー・ビヴァレッジ。この後、管楽器奏者のトム・ハリスが脱退してしまったがバンドはサムライ(Samurai)と名前を変え、トニー・ロバーツやドン・フェイといった管楽器奏者を新たに迎え入れて「Samurai」を1971年に発表している。この1枚を最後にサムライは解散、デイヴ・ローソンは元コロシアムのデイヴ・グリーンスレイドと共にグリーンスレイドというギターレスのツイン・キーボード体制によるプログレッシヴ・ロック・バンドを結成する事になるのだが、その話はさておき、ウェブとサムライ。黒人ソウル歌手をフロントに敷いていた時代にはマイク・ヴァーノンのプロデュースが施されていたのだが、ジョン・L・ワトソン脱退後はレニー・ライトの手に主導権が握られている。曲作りの面においては第二期ウェブもサムライもデイヴ・ローソンの存在は無視出来ないのであるが、実は「I Spider」も「Samurai」も レニー・ライトのプロデュース作品なのだ。

1960年代末から1970年代にかけて、イギリスではジャズとブルースの要素を盛り込んだロック・サウンドの構築が一時流行していた。シカゴやBS&Tといった、アメリカ発のブラス・ロック・バンドの存在も多かれ少なかれ英音楽シーンに影響を及ぼしたと思われるが、イギリスでは実はアレクシス・コーナーの時代からジャズとブルースは垣根なく当地の音楽家によって演奏されてきたのである。ロック・バンドに管楽器奏者を盛り込むアイデアも当地の音楽家によって積極的に(特にジャズの素養を持つ音楽家によって)行なわれてきた。ジャズとロック、双方のジャンルに属するアーティスト達による交流も積極的に行なわれてきた。マイク・ウエストブルック、ジョン・サーマン、マイク・オズボーン、アラン・ジャクソン、アラン・スキッドモア、イアン・カー、ハリー・ベケットといったイギリスのジャズ・メンはロック・ファンにもお馴染みだし、幾多のバンドの例を出すまでもなく、当時はジャズ、ロック、ブルースの垣根を取っ払ってしまおうという野心を持ったアグレッシヴな音楽家が沢山存在したのである。

Theraphosa BlondiI Spiderサムライ(紙ジャケット仕様)

■ Bill Edwards - Lead Guitar, Vocals
■ Harvey Coles - Bass, Vocals
■ Dave Muller - Drums
■ Chris Jennings - Organ, Piano
■ Brian Wilshaw - Saxophone, Flute
■ Lloyd Williams - Trumpet

レニー・ライトもそんな当時のイギリスの音楽事情に影響を受けていたのかもしれない。特に「I Spider」と今回の主役ブレインチャイルド「Healing Of The Lunatic Owl」、共に1970年の作品だ。「I Spider」はドイツを本家とするポリドールからの作品で「Healing Of The Lunatic Owl」は米LAを発祥地とする A&M Records からの作品と、両者は異なるレーベルから発売されたにも関わらずプロデューサーが同じという事もあって両アルバムの間には共通点が多く見受けられる。カーペンターズやハーブ・アルバートなどの存在が余りにも有名な A&M からこんな奇抜なジャケのイギリスのジャズ・ロックが、と不審がられる音楽ファンも多いかもしれないがウィスパー系レーベルの A&M でさえ当時の音楽シーンにおけるプログレシッヴな動きは無視出来ない存在となっていたのだろう。特にイギリスではEMI、デッカ、パイ、フィリップスといった大手レコード会社が音楽シーンの動きを察知してプログレシッヴ・レーベルを設立、遅ればせながら米レコード会社のRCAもネオンというサブ・レーベルを設立している。

イギリスに進出していた米レーベルとしてはRCAの他にCBSやワーナー・ブラザースといった会社もあったが、こちらはEMIやデッカ、RCAの様にサブ・レーベルを設立せずに本家や既存の系列企業の中で対応を行なっていた。A&M の場合だと本拠地がカリフォルニアという関係上、どうしてもその手のネアカでお洒落な上品な大人向けの音楽を連想してしまうのだが、イギリスではそうもいかない。A&M も1969年から1970年にかけてフェアポート・コンヴェンション、スプーキー・トゥース、ジョー・コッカー、ハンブル・パイ、フライング・ブリトウ・ブラザーズ、スーパートランプ、フリー、ストローブス、プロコル・ハルム、ブロドウィン・ピッグといったロック系のアーティストの作品を発表している。アイランドの配給権を獲得した裏事情もあったのだが、まあ、ハーブ・アルバートとかセルジオ・メンデスとかトミー・リピューマとかニック・デカロ、ロジャー・ニコルスといった、爽やかMOR系のアーティストだけでは対応しきれなかったのが当時のイギリスという訳だ。

さて、「Healing Of The Lunatic Owl」。収録は全部で8曲。全曲メンバーのオリジナルでリード・ギターのビル・エドワーズ(3曲)、ブライアン・ウィルショー(3曲)、ハーヴェイ・コールズ(2曲)という内訳になっている。メンバーは当時の A&M に関わっていたセッション系のスタジオ・ミュージシャン達だという。ようするに当時のイギリスの音楽シーンの動きを察知したレコード会社によって結成されたレーベル主体の急造バンドだった訳だ。個別の曲にも簡単に触れてみよう。冒頭の「Autobiography」はリード・ギターのビル・エドワーズ作。ブラスを導入した、実にジャズ・ロック。黒っぽいイメージを持つ歌も結構巧いし曲の水準も高し。スター不在のバンドだけあって、個性の欠如や微妙なB級感が欠点と言えば欠点。続く「Healing Of The Lunatic Owl」はタイトル曲。A&M のレーベル・イメ-ジを彷彿とさせるソフト・ロックな印象がまずは第一印象。その後曲は後半部分に行くに従ってロック色が強まり、ヘヴィなジャズ・ロックが展開されていく。

「Hiding From The Dawn」はジャジーなブルース・ロック。落ち着いた作風の曲でギターはジャズ・ギタリスト・タッチ。「She's Learning」はコロシアムを彷彿とさせるヘヴィなジャズ・ロック。ベース&ドラムスのリズム隊とブラス・アンサンブルとの演奏面における掛け合いも見事。「A Time A Place」は旧B面の冒頭曲。ベーシストのハーヴェイ・コールズの手によるエキゾチックな曲だ。9分近い曲だが、いかにもセッション・ミュージシャンによる曲といった雰囲気の淡白な演奏が繰り広げられる。これも A&M が抱えていたセッション・ミュージシャンの限界か。確かに演奏も曲も一級品なのだが、ロック・ファンの端くれとしては少々欲求不満が残ってしまう。「Two Bad Days」はビル・エドワーズの曲。出来の良いブラス入りのファンク風ジャズ・ロック・ナンバーだが、アングラ臭さは薄め。A&M だからね、仕方がない。「Sadness Of A Moment」はブライアン・ウィルショーのフルートをフューチャーした牧歌的な印象の曲。イメージとしては霧のかかった日曜の朝。

続く「To "B"」は本作の最終曲。これも前曲同様、ブライアン・ウィルショーのフルート演奏がフューチャーされる。ブリティッシュ・トラッドといった印象の導入部分から一転、アメリカのシカゴを思わせるブラス・ロック・サウンドが展開されるが派手さや重厚さは欠けている。流石はアメリアッチやソフト・ロック、MORのレーベルだ。途中、感情の抑制が外された様にブラスが暴走する場面も見受けられるが、曲のイメージ、アルバムの統一イメージを覆す程の衝撃までは至っていない。これ」でお終い。A&M レーベルの招聘を受けて制作された、所謂”企画作品”だけあって、ウェブ/サムライのレニー・ライトはプログレシヴ・ロック色を弱めてウェブの作品以上にポップな味付けを濃くしている。まあこれも仕方のない所であろう。ジャケがアレだけに、奇抜で凝ったアングラ・サウンドを誰もが連想するだろうが、実際にはジャケ程のカルト感やアングラ感は内包されていない。シカゴ程明るくはないが、ウェブ/サムライ程捻くれはいない。

明るいアメリカのブラス・ロックと深遠なイギリスのジャズ・ロックとの折半。主導権は A&M 側にある作品なのでバランス・メーターの指針はA&M 側。そんな感じかな。

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