fc2ブログ

#1287 Merrell Fankhauser & H.M.S. Bounty / Things (1968)

 2008-06-21
01. Things (Goin' Round in My Mind)
02. Girl (I'm Waiting for You)
03. What Does She See in You
04. Lost in the City
05. Your Painted Lives
06. Drivin' Side Ways (On a One Way Street)
07. In a Minute Not Too Soon
08. Visit With Ashiya
09. Big Gray Sky
10. Rich Man's Fable
11. Ice Cube Island
12. Madame Silky

13. I'm Flying Home (Bonus Track)
14. Everybody's Talkin' (Bonus Track)
15. Tampa Run (Bonus Track)

Merrell Fankhauser & H.M.S. Bounty / Things

日本のメジャーな音楽雑誌で紹介された事が過去あるのかどうかは知らないが、1960年代から今日に至るまで手を替え品を替え音楽活動を継続し続けている人が今回の主役。実は私はつい最近アルバムを入手したばかりの人間なので1960年代から今日に至るまで彼の音楽がどの様に聴かれていたのかを全く理解していないのだが、まあ要するにカルト的な扱いを受けている事には違いないのだろう。彼の名前はメリル・ファンクハウザー(Merrell Fankhauser)。1943年、米ケンタッキー州の工業都市ルイビルの生まれ。主に1960年代から1970年代にかけて複数のバンドに在籍して問題作や怪作を発表してきた人のようだ。しかもこの人、1973年には米本土からハワイに引っ込んでしまって現地で音楽活動を継続したらしい。なんでもケンタッキー州からカリフォルニア州サンルイスオビスポに引っ越して多感な10代を過ごした経験があったかららしいのだが、それにしても意思強固というか行動力のある人だったようだ。

カリフォルニア移住後、ほどなくしてギターを弾き始めたメリルは10代の内から音楽の世界に身を投じる事になる。最初に参加したのは地元カリフォルニアのバンド、インパクツ(Impacts、1960-1664)。「Wipe Out!」という当時のアルバムのタイトルが物語る様に、このバンドはベンチャーズの影響を受けたバンド。メリルはここでリード・ギターを担当する。このバンドでの活動の後、メリルはカリフォルニアの内陸部ランカスターに両親と共に移住。そこで後にキャプテン・ビーフハートのバンドに参加する事になるギタリストのジェフ・コットンと出会いメリル&ザ・エグザイルス(Merrell and the Exiles)というバンドを結成した。ちなみにこのランカスター時代、メリル・ファンクハウザーはフランク・ザッパやキャプテン・ビーフハートと出会っている。フランク・ザッパもキャプテン・ビーフハートもまだ音楽の世界で名声を獲得していない時代だったが、さぞや才能溢れる2人の若き才人に大いに感化された筈。想像するだけでもゾクゾクする。
ちなみにこのエグザイルス、1990年代前半に「The Early Years 1964-1967」というコンピ盤が登場している事から察するに、活動は多分1964年頃から1967年頃まで。この間、「Don't Call On Me / Send Me Your Love」「Please Be Mine / Too Many Heartbreaks」「Can't We Get Along / That's All I Want From You」といったシングルを発表している。バンド崩壊後、再びカリフォルニアの海岸沿いに引っ越してきたメリルは今度は改めてメリル&ザ・エグザイルス(Merrell and the Xiles)と名乗って活動を展開、最終的にファパドクリー(Fapardokly)という名前で「Fapardokly」というアルバムを1967年に残している。当時のメンバーはギターのメリル・ファンクハウザーの他、Dan Parrish(ベース)、Bill Dodd(ギター)、Dick Lee(ドラムス)という構成。もう、この頃には彼の好みは初期のサーフ・サウンドから完全にサイケデリックに移行してきている。折角制作に漕ぎ着けたバンドだったが、成功を収める事は出来ずに解散。

この後メリル・ファンクハウザーが元ファパドクリーのギタリストと共に新たにロスで結成した新バンドがメリル・ファンクハウザー&H.M.S. バウンティ(Merrell Fankhauser & H.M.S. Bounty)。ちなみに”H.M.S. Bounty”とは18世紀のイギリスに実際に存在した軍艦の名前。18世紀だから勿論帆船だ。1789年に船の乗組員が起こした反乱(バウンティ号の反乱)で知られる軍艦で、その当時のエピソードは過去何度か映画化されている。”H.M.S.”は国王陛下(若しくは女王)の船という意味。英語で書くと”His(Her)Majesty's Ship”となる。バンドはMCA系列の Uni Records(Universal City Records)と契約を結んで1968年にシングル「Things (Goin' Round in My Mind) / Rich Man's Fable」、そして「Things」というアルバムと作品を発表するが、これまた失敗。翌1969年にもシングル「I'm Flying Home / Girl (I'm Waiting for You)」を発表するが、バンドは結局アルバム1枚をもって解散の憂き目に。しかしこれでもメリルはまだめげない。

1970年、今度は MU という名前のバンドを結成。ネーミングの引用元は今から約1万2000年前に太平洋にあったとされる幻の大陸、(日本人の大好きな)ムー大陸から。MU は録音を敢行、旧友ジェフ・コットンも再び参加して完成に漕ぎ着けた「Mu」は1971年に発表された。1973年、なにを血迷ったかバンドはハワイに移住(ムー大陸と名乗るからには太平洋に住まなくちゃ、と思ったのだろうか)、当時で通算2作目となる作品を録音するが、日の目を浴びる事なくバンドは崩壊(1980年代に入って「The Last Album」のタイトルで正式発売となる)してしまった。この後はソロ活動を展開。1976年に最初のソロ「Maui」を、1980年代にも「A Day In Paradise」「Doctor Fankhauser」といった作品を元クイックシルヴァー・メッセンジャー・サーヴィスのメンバーらの手を借りて制作するが、1987年には心臓発作に見舞われるアクシデントを経験するが、その後復活を果たして「End of an Era....」「Flying to Machu Picchu」「Jungle Lo Lo Band」「Further on up the road」「Return to Mu」といったアルバムを発表し続けてきた。

FapardoklyMauiDoctor FankhauserReturn to Mu

■ Merrell Fankhauser - Guitar, Sitar, Vocals
■ Doctor Billy Dodd - Organ, Guitar, Vocals
■ Jack Jordon - Bass, Vocals
■ Larry Meyers - Drums, Tabla

ロックの発展進度が勢いを増す1970年代に米本土を離れてハワイに引っ込んでしまった事でメジャーな知名度を獲得する事に失敗してしまった人と言えなくもないが、ここ10年程の間に地味ではあるが彼の過去作品が見直される傾向にあるらしい。さて、今回の作品「Things」は1968年発表のメリル・ファンクハウザー&H.M.S. バウンティ(Merrell Fankhauser & H.M.S. Bounty)名義の唯一の作品。メリル・ファンクハウザーにとっては前年のファパドクリー名義の作品に続くアルバムという事になる。メンバーは上の4人。内、ギターのビリー・ドッドは高校生時代から付き合いのある盟友。ファパドクリーもそうだがバウンティ結成も彼の協力無しでは成り立たなかったらしい。更にベースのジャック・ジョーダンはメリルもかつて在籍していたサーフ・ミュージック・バンド、インパクツの元メンバーでドラマーのラリー・マイヤーズはクリーム(当時)のジンジャー・ベイカーを心の師と仰ぐブルース・ロック・ドラマーだったそうだ。

また、プロデュースには Jack Hoffman、Glen MacArthur、Norman Malkin の3人がクレジットされている。オリジナル全曲全てメリルのオリジナルでアレンジもメリル自身の手によるもの。CDは1997年の米Sundazed Music製。CD化に際して3曲のボーナス・トラックが追加収録されている。フレッド・ニールのカバー曲も収録。まあこの人、ロックの生き証人みたいな人でカリフォルニア界隈で音楽活動を展開していた時期にはフランク・ザッパやキャプテン・ビーフハートのメンバー達、ニルソンらと面識があったそうだし、ビートルズのメンバーがニルソンに電話を掛けてきた有名なエピソードの時、メリル・ファンクハウザーはニルソンの傍にいたらしい。そんなメリル・ファンクハウザー&H.M.S. バウンティなんだが、当時は所属レコード会社が積極的にプロモートしてくれなかった事情もあってシーンに浮上する事なくバンドはあえなく散ってしまったらしいが、肝心の内容は当時としては結構レベルが高い。

サーフ・サウンドに取り付かれて最後にはハワイを定住の地としてしまったメリル・ファンクハウザーの音楽は、例えるならば13thフロア・エレベーターズの様なカルトなガレージ・ロック風情の音楽ではなく、ポップなエッセンスが随所に刻まれた聴き易い音楽なのが特徴。簡単ではあるが個別の曲にも触れてみたい。「Things (Goin' Round in My Mind)」は太陽燦燦のカリフォルニア、といったイメージが連想されるカラフルなポップ・ナンバー。イントロは何処と無くロイ・オービソン風。曲を聴く限りにおいてはクスリのイメージを連想させる様な曲ではない。「Girl (I'm Waiting for You)」も同様。メンバーのコーラスと初期のブリティッシュ・インヴェイジョンを彷彿とする安っぽいギターを背にしたライトなポップ・ナンバー。ソフト・ロックの好きな人にも是非聴かせてみたい。「What Does She See in You」はガレージ・ロック風情の曲だが、アングラ臭は薄め。日本のかつてのGSサウンドを思わせる軽やかさが感じられる曲だ。

「Lost in the City」はここまでの曲で最もロック色の強いナンバー。ファズを効かせたギターは当時の音楽シーンにおける潮流に沿ったアレンジだろう。曲はビートルズのジョン・レノンが作った様な雰囲気を感じさせる。「Your Painted Lives」はバーズを思わせるフォーク・ロック調。「Drivin' Side Ways (On a One Way Street)」は妖しい雰囲気のサイケ寄りのフリーク・ビート。「In a Minute Not Too Soon」はサイケ調の雰囲気とメリル・ファンクハウザーが作るポップなエンセンスが見事なまでに調和した曲。シタールが挿入された「Visit With Ashiya」は当時のメリルのお気に入りの曲。ビートルズにおけるジョージ・ハリスンのインド調の曲にも当時多いに感化されていたのか、何処と無くメリルの歌い方もジョージ・ハリスン風。当時の彼等のプロデューサーは本作のアレンジが奇抜過ぎると言っていたそうだが、本曲の様な曲をアルバムに挿入するのにも色々一苦労あったらしい。

続「Big Gray Sky」は1960年代初期のビート・ポップスを彷彿とさせる軽快なポップ・ソング。コーラスはビーチ・ボーイズ風。本作はモンタレー・ポップ・フェスティバルの翌年に発表されたカリフォルニア生まれの作品なのだが、そんな事情を連想しながら最後の「Rich Man's Fable」「Ice Cube Island」「Madame Silky」当りの曲を聴くと、彼等もやはり当時の米西海岸のロック・シーンから大きな影響を受けていたんだなあ、と伺い知る事が出来る。最後にボーナス・トラック曲3曲。このうち、「Everybody's Talkin'」は映画『真夜中のカーボーイ』の主題歌に使われたハリー・ニルソンの代表曲としても知られる曲だが、オリジナルはフレッド・ニール。ハリー・ニルソンに先んじて1968年の時点で取り上げていた事が凄い。これでお終い。サーフ・サウンドやビートルズ、フォーク・ロック、ガレージ、フリーク・ビート、サイケデリックなどの要素がたんまりと詰まった力作。世間一般での注目度は限りなく低い作品だと思うが、1960年代後半の米西海岸発の音楽をコレクションしている人は是非本作も加えて欲しい。

Merrell Fankhauser's Official Web Site
MySpace.com - Merrell Fankhauser - ARROYO GRANDE, California

ページ最上部へ
関連記事
FC2ブログランキング人気blogランキングへにほんブログ村 音楽ブログへブログランキング【くつろぐ】参加中
コメント
密かに贔屓にしているミュージシャンです、Merrell Fankhauser!
本作も『Fapardokly』も意外とイケますよね。ジャケット・デザインがショボイですけど。
特に本作は爽やかでポップですらありますし。
『Maui』がこれまたトロピカルな趣で極楽気分を味わえます!
とか何とか言ってる割にはブログで取り上げたことがないので今度エントリしてみま~す。
【2008/06/23 00:36】 | chitlin #- | [edit]
「Maui」は聴いた事はないんですよ。ですがなんとなく音楽の方は想像が付くような気がします。
【2008/06/23 01:23】 | Cottonwoodhill #- | [edit]












管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
トラックバックURL:
http://cottonwoodhill.blog21.fc2.com/tb.php/4518-02d2f106
≪ トップページへこのページの先頭へ  ≫
FC2カウンター

プロフィール

はじめに

Author:Cottonwoodhill
未確認・不確定な事でも堂々と書いてしまう無責任洋楽ブログ。根は洋楽ミーハーCottonwoodhillは感覚派B型人間なので記事の整合性が欠ける場合多々有り。過去の記事への不快なコメントなどは問答無用で削除します。

RSSフィード
CalendArchive

最近のアルバム評
Powered by 複眼RSS

最近のアルバム寸評

今日のBGM
ゼン・プレイ・オン(紙ジャケット SHM-CD)

最近のコメント
最近のトラックバック
LIVE TRAFFIC MAP
Myスカウター

スカウター : Cottonwoodhill 別別館

FC2検索

タグランキング

トラックワード
FC2 SEO リンク
FC2 アクセスランキング

TopHatenar

フィードメーター
フィードメーター - Cottonwoodhill 別別館
あわせて読みたいブログパーツ

ブログ通信簿

サイト価格ランキング


サイト売買のサイトストック

アクセスランキング
[ジャンルランキング]
音楽
75位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
洋楽
17位
アクセスランキングを見る>>

フリーエリア
  1. 無料アクセス解析