#1289 Accolade / Accolade 2 (1971)
02. The Spider to the Spy
03. Baby, Take Your Rags Off
04. Cross Continental Pandemonium Theatre Company
05. Snakes in a Hole
06. The Time I've Wasted
07. Sector Five Nine
08. If Only I'd Known
09. William Taplin
10. Long Way to Go

中世の時代におけるナイト(騎士)の爵位授与式を意味する Accolade。日本語に直せば叙任の儀式という奴だ。中世の時代を舞台にした映画などの劇中で時々登場すると思うが、叙任の儀式とは一人前の騎士として認められた騎士の肩を主君が剣の平らな部分で軽くで叩くというもの。これにより一人前の騎士として認められた新人騎士は以降、騎士道精神に則って模範的な行動を行なう事を終生の糧とする訳だね。さて今回は、この叙任の儀式を意味する単語、アコレード(Accolade)をバンド名としたイギリスのバンドの音楽を取り上げたい。1970年代初頭の一時期存在していたバンドでジャンル的にはブリティッシュ・フォークの範疇に属するバンド。かつて EMI Columbia と Regal Zonophone からそれぞれ1枚ずつオリジナル・アルバムを発表した事のあるバンドで初期の頃にはあのゴードン・ギルトラップ(Gordon Giltrap)も在籍していた事でも知られているバンドでもある。
ゴードン・ギルトラップは1948年、イングランド南東部のケント州出身のギタリスト。ジャンル的には一応フォーク畑の人だが、ブルースやフォーク・ロック、古楽、トラッド、ポップス、クラシカルなど多岐に渡る音楽活動を展開してきた人でもある。シンフォニックな路線の音楽にも挑戦を試みてきた人なのでプログレッシヴ・ロックの好きな人にもある程度知名度のある人だと思う。ちなみに彼の「Peacock Party」というソロ作品のジャケットはエルトン・ジョン「Captain Fantastic and the Brown Dirt Cowboy」のファンタジックなジャケも担当したアラン・オルドリッジ。さて、ゴードン・ギルトラップは18歳の時に Transatlantic Records と契約を結んで「Gordon Giltrap」「Portrait」という2枚のアルバムを発表する事になるのだが、この後彼は1960年代の半ばから英国のフォーク・サーキットで音楽活動を展開してきたドン・パートリッジ(Don Partridge)なる人物らとアコレード結成に走る。
1968年から1969年にかけて幾つかのヒット・シングルを飛ばしていたドン・パートリッジはヒット・シングルの勢いを借りてロンドンのオデオン・シアターやロイヤル・アルバート・ホールなどで歌と演奏を披露するが、シングル・ヒット歌手という立場に満足する事なく自らのバンド結成に動く事になる(それともドン・パートリッジの更なる売り込みを画策するレコード会社側からの働きかけか?)。1969年、こうしてアコレードは結成された。メンバーはドンの他、年下のゴードン・ギルトラップ、ロン・ウッドの兄アート・ウッドやジョン・ロード、キーフ・ハートリーらがかつて在籍していたアートウッズの元ベーシストのマルコム・プールらが参加した。まあ、ちょっとしたスーパー・グループという訳だな。1970年、彼等は最初のシングル「Natural Day / Prelude to a Dawn」とアルバム「Accolade」を発表する。カタログ・ナンバーは SCX 6405。ケニア(ナイロビ)生まれのSSW、Roger Whittaker「I Don't Believe in If Anymore」の直ぐ後に発表されたアルバムだった。
この後アコレードから両輪の一人であるゴードン・ギルトラップが脱退、更に所属レーベルもEMI Columbia から Regal Zonophone に移行(といってもEMI系列に変わりはない)。このレーベルは戦前から存在していたリーガル(Regal)とゾノフォン(Zon-O-Phone)という2つのレーベルが合体して出来たEMI系のレーベルでロック/ポップス系の作品を発表する様になったのは1960年代半ば以降。プロコル・ハルム、ムーヴ、ジョー・コッカー、ティラノザウルス・レックス、ジュニアーズ・アイズ、マスターズ・アプレンティンス、アイドル・レースなどの作品をカタログとして揃えている事から、マイナーなレーベルでありながらもブリティッシュ・ロック・ファンの認知度は高いレーベルだ。元々 Regal Zonophone はデニー・コーデルという人物が率いていた音楽プロダクションの積極的な仕事振りで息を吹き返した様なレーベル。デニー・コーデルが手を出す前の Regal Zonophone は正直 EMI にとっては有名無実な死に体レーベルだった。




■ Don Partridge - Vocals, Acoustic Guitar, Vibes
■ Malcolm Poole - Contrabass, Fiddle
■ Ian Hoyle - Drums
■ Brian Cresswell - Alt Sax, Flute
■ Wizz Jones - Acoustic Guitar, Vocals
■ Mike Moran - Piano
そのデニー・コーデル率いる音楽プロダクションが契約満了という事で同社を去る事になり、これじゃいかん、誰かで穴埋めしなくては、とヒット・シングルを過去に持つドン・パートリッジ率いるアコレードの次回作が Regal Zonophone から発表される事になったのではないかね。察するに。「Accolade 2」はその Regal Zonophone から発表されたアコレード通算2作目にして最終作。1971年12月作。プロデュースは前作に引き続きドン・ポール(Don Paul)。アレンジは「Snakes In A Hole」を除きアコレード自身。その「Snakes In A Hole」のアレンジは Made In Sweden と記載されている。曲は確かにスウェーデンのロック・バンド、Made In Sweden のメンバー(Georg Wadenius & Tommy Borgudd)が書いた物なのだが、アコーレードやドン・パートリッジと当時どんな関係があったのだろうか。ちなみに私が持っているCDは2004年 Hugo-Montes 製。音質は悪くないが、2006年にヴィニール・ジャパンが「騎士爵位授与 II」の邦題で正規発売済みだから今から買うのなら当然こっちでしょうね。
ちなみに私はアコレードの1970年のデビュー作「Accolade」の方はこれまで1度も聴いた事はない。なので、デビュー作との比較検証は残念ながら出来ないので、そこの所宜しく。では簡単に個別の曲に触れてみる。冒頭の曲「Transworld Blues」はドン・パートリッジの曲。クールでジャジーな佇まいが魅力的なフォーク・サウンド。ブライアン・クレスウェルの牧歌的なフルートも実に魅力的。「The Spider To The Fly」もドン・パートリッジの曲。ジャジーでブルースやファンクの要素をも含む、リズミカルで躍動感が感じられる佳作。「Baby, Take Your Rags Off」もドン・パートリッジの曲。枯れたエッセンスと洗練された味わいが同居したムード溢れる曲。他所から借りてきた様な月並みな表現で恐縮だが、まさに英国の深い森を思わせる曲と言える。「Cross Continental Pandemonium Theatre Company」は11分を超える、前半最大の山場。メンバー全員の共作という形式を採っている。ジャジーな佇まいはこれまでの曲と同様。
複雑に構築されたプログレッシヴ・フォークな曲であるにも関わらず暖かみがあり、尚且つ人肌が感じられる程の等身大の演奏が感じられるのが特徴。ゴードン・ギルトラップ抜きの布陣に賛否両論はあるだろうが、アコレードはゴードン・ギルトラップのバンドではなく、ドン・パートリッジをリーダーとするバンドであった事を改めて確認出来る名曲と言えよう。「Snakes In A Hole」はスウェーデンのロック・バンド、Made In Sweden のメンバーの手による曲。アレンジも Made In Sweden。本作の中で唯一外部のロック・バンドの手を借りて制作された曲だけあって、他の収録曲とは何処と無く雰囲気の異なる味わいが感じられる。一応基盤ははアコースティックなんだが、ベースもドラムスも一応”ロック”風情に近い演奏を披露している。「The Time I've Wasted」はドン・パートリッジの曲。牧歌的な味わいが感じられるネアカなブリティッシュ・フォーク。皆で酒を飲みながらワイワイ騒いで楽しむ様な雰囲気が感じられる。
続く「Sector Five Nine」もドン・パートリッジの曲。身構える必要性皆無の楽しく軽快な曲。フォーク・ソングも元を辿れば民族音楽をベースにした大衆音楽が発祥であった事を再確認出来るような一品。「If Only I'd Known」はゲスト参加のウィズ・ジョーンズの曲。ウィズ・ジョーンズは1939年生まれの英フォーク・ブルース畑の人物であのエリック・クラプトンからも尊敬される人物。「If Only I'd Known」はウィズ・ジョーンズが1970年に Village Thing から発表した「The Legendary Me」に収録されていた曲のカバー。ヴォーカルもドンとウィズのデュエット。ハートフルな演奏と歌が堪能出来る、実に愛らしいアレンジが施されているのが特徴。「William Taplin」は脱退したゴードン・ギルトラップの曲。繊細でクールな味わいは流石、”らしい”曲と言えよう。「Long Way To Go」はドン・パートリッジの曲。本作の最終曲。本アルバムの総体的なイメージである、ジャジーで暖かみのある湿気溢れる曲調が展開される。
ジャジーな味わいが強すぎて伝統的な英トラディショナル/フォーク系サウンドのファンの方には薦めずらいが、ジャジーな要所を含むブリティッシュ・フォークがお好みの人なら絶対のお奨め。作品そのもののレベルはかなり高い。
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