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#1300 Linda Lewis / Lark (1972)

 2008-08-10
01. Spring Song
02. Reach for the Truth
03. It's the Frame
04. Feeling Feeling
05. What Are You Asking Me For
06. Lark
07. Old Smokey
08. Gladly Give My Hand
09. More Than a Fool
10. Been My Best
11. Waterbaby
12. Little Indians

Lark ラーク

過去、当レビューでも何度か名前が出てきた事のあるブリティッシュ・ポップ/サイケデリック・ポップ・バンドのブロッサム・トゥズ。彼等は1967年と1969年に「We Are Ever So Clean」「If Only for a Moment」という優れ物のアルバムを発表した後に解散してしまったのだが、このバンドの中心人物だったのがジム・クリーガン(Jim Cregan)という、1946年イングランドはサマセット州ヨーヴィル出身の男。スタッドという、英フォーク・ロック・バンドの記事でも触れたのだが、ジム・クリーガンは1970年代の仕事としてはまずはスタッドのメンバーとしての仕事。スタッド解散後はファミリーというバンドに参加。あのジョン・ウェットンがキング・クリムゾン加入以前に参加していたバンドだ。更にファミリーの後にはストリートウォーカーズ(Streetwalkers)やスティーヴ・ハーレイ率いるコックニー・レベルを経て1977年にロッド・スチュワートのバック・バンドに参加。ここから随分長い間、ロッドの下で仕事をこなしていった。

おっといけない。ジム・クリーガンの1970年代の仕事で重要な部分を見逃してしまう所だった。英女性歌手リンダ・リイスのサポートである。ブロッサム・トゥズやファミリー、スタッド、コックニー・レベルなどのバンドの名前とリンダ・ルイスなんて、通常は接点なんかない筈なのだが、ジム・クリーガンは初期のリンダ・リイスにとって欠かす事の出来ない存在であった。それもその筈、リンダ・ルイスの売り出し当時、2人は恋人関係で後に夫婦にもなっている。さて、そのリンダ・ルイス。1950年、英ロンドンはウェストハムの生まれ。歌だけでなく作詞/作曲、ギターも演奏する。姉妹も存在。彼女の妹シャーリー・ルイスも歌手でエルトン・ジョンのバック・ヴォーカリストを務めていた人。1989年には「Passion in the Heart」というソロ作品も発表、当時「Realistic」「You Can't Hide」といったシングルをミニ・ヒットさせている。またディー・ルイスなる名前の妹も存在、1980年代の半ば以降だけでもかなりの数のアルバムにセッション参加を果たしているようだ。
ソロ歌手として本格的にデビューする以前の1964年にはビートルズの映画『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』に端役として出演。これ以前にも『A Taste of Honey』という1961年制作の映画にも出演。彼女の母親の希望や方針もあって子供の頃から芸能活動を展開してきた模様。ただ、映画の世界での仕事は彼女の希望ではなかったようで、歌の世界に感心のあった彼女は1967年に Ferris Wheel という名前のグループに参加。またこの時期、ソロ歌手としてもポリドールと契約を結んで「You Turned my Bitter into Sweet」というシングルを吹き込んでいる。私はこれまで聴いた事はないのだが、この Ferris Wheel はポップ、ロック、ソウルの要素を持つ人種混合の英サイケデリック・ソウル・グループで1967年には「Can't Break the Habit」というアルバムも残している。1970年にもセルフ・タイトルのアルバムが存在。だがこのグループが1970年に解散すると今度はソロ活動を企てるのだ。

ギターとキーボード演奏は独学で習得。スティーヴィー・ワンダーやジョニ・ミッチエルといったアーティストの音楽が彼女に多大な影響を及ぼしたそうだが、白人の音楽/黒人の音楽の区分けなく影響を受けた当り、アメリカの黒人歌手とは異なるルーツが感じられて実に興味深い。彼女がソロ活動以前に参加していた Ferris Wheel からの影響もありそうだ。1971年に彼女はワーナー(Reprise)と契約を結んで記念すべき最初のアルバム「Say No More」を発表。このデビュー作にはレイ・クーパー、テリー・コックス、クリス・スペッディング、イアン・マクドナルド、ショーン・フィリップスといった面々が揃っていた。この後も彼女は「Lark」「Fathom Deeps」「Heart Strings」といったアルバムをワーナー(Reprise)から、また1975年からは新設されたばかりの Arista Records に移籍して「Not A Little Girl Anymore」「Woman Overboard」「Hacienda View」といった作品を発表しているがチャート的にはそれほど大きな成功を収めていない。

そう、リアル・タイムでリンダ・ルイスの音楽に関心を持っていた人はそれ程多くなかったと思う。米市場でも「Not A Little Girl Anymore」がかろうじてチャートにランク・インして位。日本でもそうだ。1970年代における日本の洋楽市場で人気があった女性歌手と言えばオリヴィア・ニュートン=ジョンとかリンダ・ロンシュタッド、カーペンターズ。グラム・ロックの時代にはスージー・クワトロが人気があったし、ディスコの時代にはドナ・サマーなんかにも注目が集まった。だが、リンダ・ルイスなんて名前、当時は全く知らなかったなあ。まあ、こんな感じです。それよりも彼女はセッション歌手として各方面で大いに引っ張りだこだった。1970年代だけでも Pete Bardens、FamilyCat StevensChris Spedding、Al Kooper、David BowieHeads Hands & Feet、Streetwalkers、Steve Harley & Cockney RebelHummingbird、Rick Wakeman、Stomu YamashtaRod Stewart ら、数多くのアーティストに参加。

これらの多くが恋人(夫)のジム・クリーガン繋がり。録音に参加するだけでなく、これらアーティストのツアーにも参加していたのだから1970年代はかなり多忙な毎日を送っていたに違いない。だがこの傾向も1980年代に入ると失われていく。1983年にソロ「A Tear and a Smile」をエピックから発表するが、自身のソロ作制作は本作を契機に暫く遠ざかる。セッション活動も Rod Stewart「Tonight I'm Yours」、Chris Spedding「Mean and Moody」、Colin James Hay「Looking for Jack」、Pato Banton「Visions of the World」、そして妹シャーリーのソロ作参加が目立つ程度。女性歌手というのは長い人生の中でどうしてもこういう時期が存在するから仕方がない。その後、1995年「Second Nature」で再び彼女の人気に火がつく。特に日本では初めて彼女の人気に火が付いたと書いた方が良いかもしれない。この後「Born Performer」「Live In Japan」「Whatever...」「Kiss Of Life」といった作品を発表して健在ぶりを今日に至るまで発揮しているのはご承知の通り。

Fathoms Deepボーン・パフォーマーWHATEVER愛の妖精ライヴ・イン・オールド・スモーキー

■ Linda Lewis - Vocals, Guitar, Electric Piano, Tambourine, Wind Chimes
■ Jim Cregan - Guitar, Electric Guitar, Vocals
■ Paul Williams - Guitar
■ Peter Williams - Guitar
■ Pat Donaldson - Bass
■ Eric Oxendine - Bass
■ Gerry Conway - Percussion, Drums
■ Emile Latimer - Percussion
■ Jean Rouselle - Organ, Piano, Marimba, Electric Piano
■ Jean Roussel - Keyboards
■ Mick Eve - Saxophone
■ Poli Palmer - Flute, Marimba, Background Vocals, Vibraphone

さて、本作「Lark」は1972年に発表された彼女の通算2作目に相当する作品。黒人女性歌手の場合だとアルバムのジャケットに自身のポートレイトを持ってくるケースが多いのだが、本作のジャケットはそのパターンを踏襲していない。プロデュースはリンダ・ルイスとジム・クリーガン。録音はビートルズでお馴染みロンドンのアップル・スタジオ。フォザリンゲイのリズム・セクション(Pat Donaldson & Gerry Conway)も参加している。収録は全部で12曲。全曲彼女の手によるオリジナル作。では簡単に触れてみたい。実はこのアルバムを聴くのは今回が初めてである。「Spring Song」はリンダ自身のアコギをバックにしたオーガニックなナンバー。伴奏は他にエミール・ラティモアのパーカッションとジム・クリーガンのエレクトリック・ギター。曲のテンポは非常に早く1972年発表のアルバムとしては実に画期的。当時の女性歌手の多くは比較的ゆったりとしたリズムの音楽をバックに歌うのが一般的だったと思うが、このアレンジは今聴いても非常に印象的。

「Reach for the Truth」はアレサ・フランクリンからの影響を感じさせるスウィートなナンバー。同時代のアメリカのソウル歌手の作品とは異なるクールで洗練された佇まいが実に清々しい。ヴォーカリストとしての彼女の声域も実に広い。異なる女性歌手によるデュエット?と錯覚してしまいそうだ。終盤のゴスペル調のアレンジもアメリカのソウル歌手ほど泥臭くならないのがいい。「It's the Frame」は当時のポップ/ソウル畑の女性歌手の作品には余り見られないタイプのアコースティック・ナンバー。イメージとしては後のフェアーグラウンド・アトラクションを連想すると当らずとも遠からず。キュートな歌声とブルース歌手を思わせる声域の歌い比べも味わい深い。乾いたブルージーなアコギ演奏をバックにした「Feeling Feeling」もやはり個人的にはフェアーグラウンド・アトラクションを連想してしまった。日本盤CDの解説書にはジョニ・ミッチェルの曲との接近ウンヌンの下りもあるようだが。

「What Are You Asking Me For」。どの曲も限りなくシンプルな編成で構築されている本作だが本曲も同様。ラテン・フレーヴァーな控えめな演奏が実に清々しい。こういうアレンジの曲をクレモンティーヌに歌わせてみたいよな。ケバケバしいアレンジは御免だよ。「Lark」はアルバムのタイトル曲。演奏はピアノとオルガンのみ。リズム・セクションすら存在しない曲だが、凛とした彼女の歌声には本当に魅了される。ロック畑のジム・クリーガンのプロデュース作でもあるだけあって、当時の米ソウル歌手の作品には余り見られないアレンジにも注目したい。ヴォーカリストとしての彼女の魅力を充分に判った上でモダン・ポップ・アルバムのコーラス・アレンジに見られる様なセンス溢れる手腕を発揮したジム・クリーガンの力量にも拍手を送ろう。「Old Smokey」はエレピをバックにした、ごくオーソドックスなアーバン・ソウル。ジャズのエキスを導入したスムース・ジャズ風のアレンジにも好感がもてる。

続く「Gladly Give My Hand」も前曲同様、ジャズとソウルの要素を含む都会的なナンバー。1972年という時代を考えればこれでもテンポは速かったと思う。それにしても本当に時代先取りなアルバムだったんだなあ、と思う。これが何十年も埋もれていたなんて。「More Than a Fool」はリンダのキュートな歌とアコギ、ジム・クリーガンのギター、ポリ・パーマー(ブロッサム・トゥーズやファミリーに在籍していた人。つまりジム・クリーガンの相棒)のマリンバ、フルート、ヴィブラフォンで構成される楽曲。可憐なリンダの歌声の影響か、本曲もどうしてもフェアーグラウンド・アトラクションを連想してしまった。「Been My Best」はリンダ自身のジャジーなピアノ演奏とジム・クリーガン&ポール・ウィリアムスのギター演奏を絡み合いが眩しいナンバー。エコーの効いたギターはまるでヴィニ・ライリー(デュルッティ・コラム)のようでもある。「Waterbaby」はファンク調のアレンジを基調としたジャジーなソフト・ロック。

「Little Indians」はエンディング曲。タイトル通り、ネイティブ・アメリカン、即ちアメリカ州の先住民インディアンをテーマにした曲。曲の最後で歓声が入る事から恐らくはライヴ演奏からの収録なのだろう。それにしても恐ろしいまでのハイ・トーン・ヴォイス。若き日のケイト・ブッシュを彷彿させる程。曲は勿論ネイティブ・アメリカンの民族音楽を彷彿とさせる土着的かつ呪術的なアレンジが盛り込まれている。これでアルバムはお終い。聴いてよかった。

Linda Lewis | | singer songwriter | | official website
MySpace.com - Linda Lewis - Pop / Jazz / Soul
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