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#1302 Focus / Focus III (1972)

 2008-08-17
01. Round Goes the Gossip
02. Love Remembered
03. Sylvia
04. Carnival Fugue
05. Focus III
06. Answers? Questions! Questions? Answers!
07. Anonymus II
08. Elspeth of Nottingham
09. House Of The King

Focus III フォーカスIII(K2HD/紙ジャケット仕様)

私が洋楽ロックを聴き始めたのは1970年代の前半。もっとも当時の小遣いでレコードを沢山購入する事は出来なかったので中心となったのはシングル盤だ。ビートルズやローリング・ストーンズ、ディープ・パープル、レッド・ツェッペリンなどのシングルを買ったもんだ。で、話は飛ぶのだが私よりもっと上、1950年代生まれの世代の人でロックを聴いていた人と時たま話をするとよく登場する名前がある。オランダのフォーカスというバンドの名前である。少なくとも1970年代の前半においては日本でもかなり人気があったらしい。私の場合は本当に後聴きでレコードの時代ではなく、CDの時代になってからフォーカスを、つまり全盛期が過ぎた後に聴いたのだが、イギリスのロック全盛の時代によくぞこまでレベルの高い作品ばかりを揃えたものだと感心させられた記憶がある。一口にオランダのロックと言ってもフォーカスが世界各国で紹介される様になった時期にフォーカス以上のネームバリューを持ったバンドやアーティストは存在しなかった。

例を挙げれば、アース&ファイアー、エクセプション、Alquin、フィンチ、フレアーク、ゴールデン・イアリング、カヤック、トレース、スーパーシスターなど、これまでオランダからは優秀なロック(プログレッシヴ・ロック)・バンドも数多く登場したが、オランダ国内でのセールスは兎も角(ゴールデン・イアリングやアース&ファイアーは母国でもかなり成功した)、英語圏でフォーカスより先に大きな成功を収めたバンドは存在しない。パンチのある女性歌手マリスカ・フェレスをフロントとして「Venus」という世界的な大ヒットを飛ばしたお馴染みのバンド、ショッキング・ブルーの存在もあるが(個人的には大好きなバンド)、ショッキング・ブルーをロックのジャンルに含めるのに恐らく抵抗を感じる人もいるだろうから除外。兎に角、1960年代末から1970年代前半にかけて多感な青春時代を過ごした世代にとってフォーカスは忘れる事の出来ないロック・バンドである事には間違いない。

結成は1969年アムステルダムにて。1948年生まれでクラシック音楽家の両親の元で生まれ育ったタイス・ヴァン・レーア(結成以前に「Zolang de Wereld Nog Draait / Jij Witte Nimf」というシングルをソロで発表している)、マーティン・ドレスデン、ハンス・クーパーの3人によるトリオ、Thijs van Leer Trio がフォーカスの母体で、これに同じく同1969年にやはりアムステルダムで結成されたブレインボックス(「Brainbox」「Parts」というアルバムが1969年から1972年にかけて存在)というバンドのメンバーだった1946年生まれのギタリスト、ヤン・アッカーマン(元Johnny & His Cellar Rockers、Hunters)がブレインボックスを脱退して加入した事でフォーカスの母体が出来上がった。1970年早々、正式にフォーカスと名乗る事になった4人は同年に最初の作品「In and Out of Focus」を発表する。だがしかし、ヤン・アッカーマンが突如として脱退を宣言してバンドは空中分解。

離脱後、ヤン・アッカーマンは昔の演奏仲間であるピエール・ファン・デア・リンデンと新バンドを結成するが、この新バンドにタイス・ヴァン・レーア、更にベーシストのシリル・ハーヴァーマンスが加わり新たにフォーカスと名乗る事になったのだからややこしい。その後彼等は気持ちも新たに「Moving Waves」を発表。ハード・ロックとプログレッシヴ・ロックの厳密な区分けがまだ存在していなかった時代に登場した「Moving Waves」は世界中で大きな反響を巻き起こした。それまでロックと言えばイギリスやアメリカしか想像しなかった音楽ファンに英米以外にも優秀なロックが存在していたのだ、と知らしめた意義は大変大きい。今でこそユーロ・ロックと言えばイタリアやドイツ、フランスなどの国を想像するのが普通だろうが、世界のロック市場で始めて認知されたのがフォーカスだった。特に「Hocus Pocus(悪魔の呪文)」における、ヨーデルと手数の多いギター・リフ、おまけに民族音楽の要素を組み合わせたユニークな音楽性は多方面で高く評価されたという。

バンドはこの後も「Focus III」「Focus at the Rainbow」「Hamburger Concerto」「Mother Focus」と意欲作を発表し続けるが、1975年作の「Mother Focus」を最後にタイスとヤンの確執が表面化してしまい、ヤンの脱退という悲劇を招いてしまう。バンドはベルギー生まれのギタリスト、フィリップ・キャサリンを招聘して活動を継続。「Ship of Memories」という未発表曲集を経て「Focus con Proby」という新作を1978年早々に発表するが、スーパー・ギタリストのヤン抜きでは流石にバンドを維持できなかったのか、フォーカスはここで解散。1980年代半ばにはヤン・アッカーマン&タイス・ファン・レーア名義で「Focus(青い旅路)」を発表するが成功を収める事は出来ずに再びコンビ解消。時は進み、西暦21世紀になってからタイス・ヴァン・レーアを中心にフォーカスが再始動。2003年に久しぶりの新作「Focus 8」(未発表曲集の「Ship of Memories」とヤン&タイス名義の「Focus」はカウントから除外したのだろう)を発表して顕在ぶりを示してくれた。

ムーヴィング・ウェイヴス(K2HD/紙ジャケット仕様)フォーカス・アット・ザ・レインボー(K2HD/紙ジャケット仕様)ハンバーガー・コンチェルト(K2HD/紙ジャケット仕様)マザー・フォーカス(K2HD/紙ジャケット仕様)シップ・オブ・メモリーズ~美の魔術~(K2HD/紙ジャケット仕様)

■ Jan Akkerman – Guitar
■ Bert Ruiter – Bass
■ Pierre van der Linden – Drums
■ Thijs van Leer – Keyboards, Flute, Vocals

さて、今回紹介するアルバムは「Focus III」。1972年に発表された通算3作目のアルバム。俗に、プログレッシヴ・ロックの頂点の年と言えば1973年と言われているが、本作はその前年に発表された。発表当時はアナログ2枚組。全米最高35位。欧州各地では Polydor Records 配給だったが、米市場では Sire Records、またフランスでは disc AZ からも登場。インストゥルメンタルでありながら「Sylvia」がヒットを記録したお陰で前作同様フォーカスの名前を更にまた一歩音楽ファンに浸透させる事に成功したヒット・アルバムだ。プロデュースは前作同様マイク・ヴァーノン。そう、あの英ブルース・ブームの仕掛け人と同一人物。マイク・ヴァーノン率いるレーベル、Blue Horizon は英ブルース・ブームの衰退と共に CBS から見捨てられてしまったのだが、そのマイク・ヴァーノンに救いの手を差し伸べたのが独ポリドール。以外な組み合わせかもしれないが、両者の合体にはこんな事情もあったのだ。

簡単に個別の曲にも触れてみたい。「Round Goes The Gossip...」はタイス提供曲。イギリスのジェントル・ジャイアント同様、複雑なリズムをいとも簡単そうに演奏してしまうフォーカスの面々にまずは脱帽。ギターのヤン、キーボードのタイス共に演奏技量は流石に超一級。「Love Remembered」はヤン提供曲。キャメル「Snow Goose」に匹敵する気高い叙情性が聴き所の一つ。タイスの演奏によるフルートはまるで天上の響きの様だ。「Sylvia」はタイス作。キャッチーなメロディが実に清々しいフォーカスの定番曲。こんな曲が世界でヒットを飛ばしたのだがら、ロック・バンドにとっては本当にいい時代だったんだねえ。「Carnival Fugue」もタイス提供曲。クラシック音楽の世界における、対位法による楽曲のひとつであるフーガの要素とカーニヴァルのイメージを重ね合わせたユニークな発想による楽曲。ロック、クラシック、ジャズ、ラテンの要素が混在しながらも全く消化不良な面が感じられない様に彼等の並外れたセンスが感じられよう。

続く「Focus III」はアルバムのタイトル曲。発売当時の旧アナログ・レコードのB面の冒頭を飾っていた曲でタイス提供曲。彼等の既存の発表作収録作品の続編。複雑な構成を示す曲ではないが、日本人には受け入れ易い、ヤン・アッカーマンによる哀愁を帯びた泣きのメロディが実に印象的。続く「Answers? Questions! Questions? Answers!」はヤンと本作からシリル・ハーヴァーマンスに代わって新加入のベーシストのバート・ルイターによる共作曲。前曲「Focus III」から留まる事なく流れる様に演奏される為、イメージとしてはメロディ形式による後半部分といった印象だ。本曲だけで14分。ヤンのギター演奏、ベース&ドラムスのリズム・セクション、タイス奏でるフルートとキーボード演奏が時に激しく火花を、そして時に撓やかに絡み合う。印象としてはフュージョンの先駆け的な感覚も味わえる。ドタバタとモタついた面も多少感じられなくはないが、総体的に言って聴き応えのある演奏と言えるだろう。

「Anonymus II」はメンバー全員の共作曲。アナログ・レコード当時は「Anonymus II (Part 1)」(アナログC面全部、19分)と「Anonymus II (Conclusion)」(アナログD面1曲目、7分)に分かれていた曲。CDではこれが一緒に纏められた結果、26分を超える超大曲となった。オリジナルはデビュー作「In and Out of Focus」に収録されていた曲。オランダ語を公用語とするダッチ・ロック・バンドなのだが、あえてほぼインストゥルメンタルに徹する事で言葉の障壁を乗り越えた事で結果的に世界で成功を収めたバンド。後のイタリア勢がやった様に英語圏で成功を収める為には英語による歌詞が必須となる訳だが、彼等には演奏だけで世界を席巻するセンスと器量があった訳だ。26分を超える本作はまさに彼等の真骨頂というべき曲。ソロ・パートの導入に賛否両論はあるだろうが、1970年代前半のヨーロ・ロックを代表する名演奏の一つに数えられる事に異論を挟む人は少ないだろう。

「Elspeth Of Nottingham」はヤン提供曲。26分を超える怒涛の前曲で熱くなってしまった心を醒ますかの様な、中世ルネッサンス期の音楽牴牾のアコースティック・フォーク・ソング。勿論これもインストゥルメンタル。本作の翌1973年に「Gryphon」で Transatlantic Records からデビューを果たす、イギリス王立音楽院の卒業生によるイギリスのプログレッシブ・ロック・バンド、グリフォン(Gryphon)の登場を予感させる様な曲だ。続く「House Of The King」はアルバムのエンディング曲。これもヤン・アッカーマン提供曲。ヤンのギターとタイスのフルートが絡み合うナンバー。フォーキッシュな響きとブルージーな印象が合体したユニークなインストゥルメンタル・ナンバーだ。これでお終い。ちなみに同年ヤン・アッカーマンはソロ作「Profile」を、タイス・ファン・レーアもソロ作「Introspection」を発表。脱退したシリル・ハーヴァーマンスも1973年に「Cyril」を発表するなど、本当に忙しい毎日を送っていた訳だ。

多忙過ぎる毎日が彼等の心を蝕んでしまったのか、この後バンドには脱退劇が何度も行なわれ、最後にはヤンの脱退を引き金に解散してしまうんだね。活動がもっと長く続いていたら、プログレ5大バンドに匹敵する世界的評価を獲得していたかもしれないね。

Focus official website
Jan Akkerman music site ? Dutch guitarist ? Nederlandse gitarist
YouTube - focustheband さんのチャンネル

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