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#1323 Chris Jagger / Chris Jagger's Atcha (1994)

 2009-03-08
01. Blow the Zydeco
02. Allons Joujette
03. Green Thumb
04. Will Ya Won't Ya?
05. Stand Up For the Foot
06. Whispering Wind
07. Cupboard Love
08. Snow on the Mountain
09. Cheatin' on Your Darlin'
10. Toad in the Hole
11. Rockin' All Night
12. Cream of the top (Bonus Track)
13. Steal the Time
14. What Should I Care?
15. Lhasa Town

Chris Jagger's Atcha アッチャ

ウィキペディアによれば”親の七光り”とは『力を持つ親を持った子供がその恩恵を受ける事』とある。最近、マスコミが執拗なまでに報じている中川前財務相は1983年に不可解な自殺を遂げた元衆議院議員中川一郎の息子。通常政治家の場合は特に世襲などという言葉を使うそうだが、親の七光りという言葉は世襲とは呼ばないケースに使う場合があるようだ。対して兄弟の場合は、ええと何と言うのだろう。兄の後光?それとも姉の?? まあいい。今回はロックの世界の話なのだが、ロックの世界にも偉大な兄の存在に四苦八苦して大変苦労した例が幾つか存在する。例えばポール・マッカートニー。この偉大なビートルズのソングライターにはマイク・マクギアという弟が存在する。彼は1960年代から1970年代にかけてスキャッフォルドやグリムズのメンバーとして活躍した、言わば裏ビートルズ・シーンの住人なんだが、一般の音楽ファンには裏ビートルズなんて言葉は通じない。マイク・マクギアなんて名前、ブリティッシュ・ポップの裏街道まで手を伸ばす奇特な音楽ファン以外には知られていないのが普通だろう。

ロックの世界における有名兄弟と言えば他にはアレックス&エドワード・ヴァン・ヘイレン、ブライアン、デニス&カール・ウィルソン、ジョニー&エドガー・ウィンター、ノエル&リアム・ギャラガー、ルドルフ&マイケル・シェンカー、レイ&デイヴ・デイヴィス、マルコム&アンガス・ヤング、デュアン&グレッグ・オールマンなんかの例が頭に浮かぶのだが、今回はローリング・ストーンズに関する話題。同バンドの二代目リーダーであるミック・ジャガーの弟の話。ミック・ジャガーは1943年7月、ジョー&エヴァ・ジャガー夫妻(父親ジョーは2006年に肺炎の為93歳のご高齢で死去)の息子として英ケント州ダートフォードにて生を受けたのであるが、ミックには5歳年下の弟がいる。クリス・ジャガー(Chris Jagger)だ。声はダミ声の兄とは余り似ていないのだが顔付きは兄によく似ている。彼もまたポールの弟マイクと同様に音楽の世界に足を踏み入れているのだが、マイクと同様に大変苦労したらしい。余りにも有名な兄とか父親を持つと親族は本当に大変だ。
クリスは1949年、英ケント州ダートフォードの生まれ。兄と同じく獅子座生まれの男。「冬のソナタ」でお馴染みチョン・ドンファンと同じ年同じ月日に生まれている。彼が音楽家として最初に発表したアルバムは1973年の「Chris Jagger」。有名な兄弟を持った人間の立場と心理状態を象徴するかのような、仮面を被ったジャケットがなんとも印象的。多分これまでCD化は1度もされていないと思う。クリスは1960年代から1970年代にかけて、生まれ故郷を離れてインドや中近東、ギリシャあたりを放浪したり、或いは役者としてイスラエルでミュージカル『ヘアー』の主役を演じたりするなどの生活を送ってきたそうだ。ポール・マッカートニーの弟マイク・マクギアと同様に『有名人の兄弟だから』という理由でマスコミに興味本位に追われる毎日を送っていたに違いない。また、ファッションのデザインにも興味を持ってブライアン・ジョーンズやエリック・クラプトン、更にジョン・レノンやジミ・ヘンドリックスの為に仕事を受け持った事もあったらしい。照明技術者としてロンドンのレインボウ・シアターで働いていた過去もあった模様。

いずれにせよ、行く先々でマスコミに追われる毎日を送っていたと思うから、定職に就けなかったのも当然と言えば当然。それに有名人の家族があそこにいる、と噂になれば興味本位で近づいてくる人間は洋の東西を問わず、沢山存在するだろうから。クリスはデビュー作の後もう1枚、1970年代に「The Adventures of Valentine Vox, the Ventriliquist」というソロ作を発表するのだが、この作品制作の後に制作者とトラブルになったとかで、暫くアルバム制作の舞台からは遠ざかってしまう。(時期は前後するかもしれないが)弟の面倒を見てやろうとローリング・ストーンズのモービル・スタジオで働いていた時期もあった様で、ストーンズのアルバム「Dirty Work」「Steel Wheels」ではスタッフの一員としてクリスも関わったという。こんな裏方稼業が続いていたのだが、1990年代に入って再び自身のアルバム制作の現場に舞い戻ってくる。今回紹介する「Chris Jagger's Atcha」がその復帰作。1994年のアルバムだが、内容はローリング・ストーンズの音楽とは近くて遠い、ルーツ・サウンドに畏敬の念を抱いた様な音楽。

ああ、そう。全くの余談だけど上で触れるスペースがなかったのでここで書いてみる。ブライアン・フェリー率いるロキシー・ミュージックのアルバム。同バンドのアルバムのジャケットはいつも美女の写真で構成されている事で有名だが、その最初となる彼等のデビュー作「Roxy Music」(1972年)のジャケットに写るのはカリ=アン・ミューラー(Kari-Ann Muller)という、イングランド南西部の地域コーンウォールからロンドンにやってきた女性(写真を撮影したのはカール・シュテッカーという人物で次作「For Your Pleasure」のジャケのモデルでサルバドール・ダリを始め、数々の有名人・著名人との関係で知られた問題女性のアマンダ・リアも撮影。)。モデルとして活動しているのをブライアン・フェリーに認められてロキシーの最初のアルバムに起用されたそうだが、実はこの人、クリスの奥さん。クリスと結婚した時に既に再婚だったそうだが、ロンドンの劇場で働いていた時にクリスと出逢ったのだという。モデルとお芝居の仕事はやめてしまって今じゃ5人の息子の母親らしい。勿論夫はクリス・ジャガー。

Roxy MusicAtchaRock the ZydecoChannel FeverAct of Faith

■ Chris Jagger - Acoustic Guitar, Percussion, Vocals

■ Ed Deane - Acoustic & Electric Guitar, Mandolin, Lap Steel Guitar
■ David Gilmour - Guitar
■ Dave Stewart - Acoustic Guitar
■ Robin McKidd - Acoustic Guitar, Fiddle, Harmony Vocals
■ Charlie Hart - Bass, Fiddle, Double Bass, Squeezebox
■ Constance Redgrave - Bass, Washboard, Harmony Vocals
■ Malcolm Mortimer - Drums, Bass
■ Fran Byrne - Drums
■ Jon Newey - Percussion, Tambourine
■ Geraint Watkins - Piano
■ Dick Heckstall-Smith - Baritone & Tenor Sax
■ Leo Sayer - Harmony Vocals
■ Mick Jagger - Background Vocals

1994年の「Chris Jagger's Atcha」でアルバム制作の現場に復帰したミックの弟クリス・ジャガーはその後も1995年に「Rock The Zydeco」、1999年にはアッチャ・アコースティック名義で「From Lhasa to Lewisham」を、2000年には「Channel Fever」をドイツのレーベル、Hypertension Music から発表した。2000年の Seagull Music からのオムニバス「Knights of the Blues Table」への参加を経て、最新作は2006年の「Act Of Faith」。音楽家としては既に高齢とはいえ、なんともマイ・ペースな音楽活動だが、ゴロゴロと死ぬまで転がり続けなくてはならぬ宿命を背負ってしまった兄とは立場が違う。勿論、兄が若い女の子に追いかけられていた1960年代や青少年から熱い視線を浴びていた1970年代の時代なら、有名人の家族という立場から必要以上にマスコミやファンに追いかけられて精神的なプレッシャーを受けたりストレスがたまったであろうが、ロックの熟成と共に兄ミック・ジャガーもローリング・ストーンズも周囲からリスペクトされる存在となってしまっては、もうそんな気苦労も必要なくなった。

マスコミやミーハーなファンの存在を気にせずに音楽活動がようやく出来る。そんな空気がクリス自身の身の上に出来上がったのが1990年代に入ってからなのだろう。ストーンズはストーンズ、兄は兄、そして自分はやりたい音楽をやる。そんな姿勢が今日まで貫かれている。よっぽどのストーンズのファンでもない限り、クリス・ジャガーの名前なんて誰も知らない。でもそれでいいのだ。まあ、たまにはパブで酔っ払いに絡まれてストーンズのナンバーでもやれよ、なんて言われるかもしれないが、そんな言葉にも余裕で対応出来る大人の年齢に既に達している。自由きままに演奏活動を展開して、曲がたまれば新作を発表。インディ・リリースだからセールスなんて知れたものだろうが、そんな事は当人にとってはどうでもいい事だ。で、肝心のアルバムに触れてみる。弟クリスがやりたかったのはルーツ・ミュージックの探求。ケイジャン、ザディコ、ロックンロール、リズム&ブルース、カントリー等々。勿論、ストーンズも本来ルーツ・ミュージックには造詣の深いバンドなんだが、いついかなる時でもエンタテインメントに徹しなくてはならない立場であるが故、ルーツ・ミュージックを前面に押し立た活動なんか出来る筈もない。

個別の曲にも触れてみる。冒頭「Blow the Zydeco」からイキナリのルーツ色。アコーディオンをバックにしたテンポのよいアコースティックな演奏が実に小気味いい。兄のダミ声とは随分と異なる弟クリスの歌声からは何かを吹っ切った様な印象が感じられる。ちなみに”Zydeco”と書いてザディコと書く。ザディコはルイジアナ州のクレオール系黒人の人達によって生み出された音楽でボタン式若しくは鍵盤式のアコーディオンやラブボードと呼ばれる板などを主体として演奏される。ケイジャンとリズム&ブルースを混ぜた様な形態の南部色豊かな音楽で、ルーツ好きな人にはたまらない音楽だ。ルイジアナ州にはケイジャンもザディコも存在するのだが、一時白人のケイジャン、黒人のザティコと住み分けがなされるも、1990年代以降はそんな垣根もとっぱられてしまったらしい。2曲目「Allons Joujette」も実に軽快なナンバーだ。こちらはフィドル入りのケイジャン風(通常ケイジャンの演奏にはフィドルが使われてザディコにはフィドルが使われないらしい)。「Green Thumb」はアコーディオン抜きでギター、フィドル、ドラムス、ベースで構成されたカントリー・タッチのナンバー。

「Will Ya Won't Ya?」ではピアノ入り。歌は兄ミック・ジャガーとクリスとの共演。ローリング・ストーンズの例えば「Exile on Main St.」当りに入れてみたいニューオーリンズ風ナンバー。「Stand Up For the Foot」はジェリー・リー・ルイスを思わせるカントリー風ロックンロール。元来カントリーとロックンロールは相性がいいからね。続く2曲、「Whispering Wind」「Cupboard Love」は南国・楽園志向のトロピカルなナンバー。ライ・クーダーかYMO結成以前の細野晴臣か、といった心洗われる様な長閑なナンバーだ。続く「Snow on the Mountain」ではサックス奏者のディック・ヘクトール=スミスの名前が見られるが、彼の存在感は薄い。フィドル入りのシンプルなカントリー・ナンバーだ。「Cheatin' on Your Darlin'」はリゾネーター・ギターやコントラバス、フィドル、ギターなどを主体とした暖かみのあるブルーグラス調。「Toad in the Hole」もカントリー調。続く「Rockin' All Night」はストレイ・キャッツ風のロカビリーなリズムとザティコを掛け合わせた様な楽しいナンバー。

「Cream of the top」は恐らく本作品中、最もロック色の強いナンバー。日本盤CDのライナーによれば日本盤のみのボーナス・トラックだという。曲自体は悪くないがルイジアナ州のルーツ・ミュージックをベースにした音楽作品集という性格を考えると、余計な挿入と言えなくもない。続く「Steal the Time」ではピンク・フロイドのデイヴ・ギルモアやポップ・シンガーのレオ・セイヤーの名前が。曲自体はブルースやカントリー、ロックンロールを混在させたかの様な雰囲気。「What Should I Care?」はなんだかダイアー・ストレイツ風。「Lhasa Town」はエンディング曲。マンドリン、コントラバス、そしてデイヴ・スチワートが弾くアコギで構成された、凛とした清々しいフォーク・ナンバー。これでお終い。ルーツ、ルーツと書いてきたが、実際にはルーツの定型に拘る事なく、クリス・ジャガーの個性が吹き込まれた内容となっている。イギリス人は流石にアメリカの古典的な音楽を料理するのが巧いね。そのまま模倣するだけでなく、しっかりと自分のスパイスを加えて自分流のルーツ・ミュージックに仕上げてしまう。これを邪道を思うかどうかは、聴く人の気持ち次第。以上。

Chris Jagger and Atcha!,
Chris Jagger's Atcha! - MySpace

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