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#1036 Rip Rig + Panic / God (1981)

 2006-01-31
1. Constant Drudgery Is Harmful To Soul Heath And Spirit
2. Wilhelm Show Me The Diagram ( Function Of The Orgasm)
3. Through Nomad Eyeballs
4. Change Your Life
5. Knee Deep In Shit
6. Totally Naked (Without Lock Or Key)
7. Try Box Out Of This Box
8. Need (Deschool You)
9. Howl Caged Bird
10. Those Eskimo Women Speak Frankly
11. Blue Blue Third
12. Shadows Only There Because Of The Sun
13. Beware (Our Leaders Love The Smell Of Napalm)
14. Miss Pib
15. It Don't Mean A Thing

16. Go Go Go! (This Is It) (Bonus Track)
17. The Ultimate In Fun (Is Going To The Disco With My Baby) (Bonus Track)
18. Bob Hope Takes Risks (Bonus Track)
19. Hey Mr E! A Gran Grin With A Shake Of Smile (Bonus Track)

620.jpg

1970年代末から1980年代初頭にかけて、当時の私のお気に入りのバンドといえばニュー・ウェーヴ系(個人的には当時存在しなかったポスト・パンクという言葉には実感が湧かないし、どいういう場面で使っていいのか判らない)やインダストリアル系のバンドばかり。ディス・ヒート、キャヴァレー・ボルテール、ワイヤー、ポップ・グループ、ストラングラーズ、パプリック・イメージ・リミテッド、スリッツ、レインコーツ等々。その中で特に注目していたのがパプリック・イメージ・リミテッドとポップ・グループだった。ポップ・グループはファンクやフリー・ジャズの要素をパンク・ロックのフォーマットに持ち込んでダブでかき混ぜたようなサウンドを真骨頂とし、さらに左翼的な思想をも持ち込んだ過激な音楽活動にまい進したのだが、過激さ故にバンドを安定継続させる事は長く続かなかった。バンドは「For How Much Longer Do We Tolerate Mass Murder?」「We Are Time」とアルバムを発表するも、1980年の終わり頃にはバンドの姿形は見る影も無くなってしまった。

私は解散後のメンバーの作品も全てコレクションする事に決め、程なく当時の音楽雑誌などを頼りにポップ・グループの元メンバー達の作品を買い集め出した。元メンバー達の解散後の足取りについてはリード・ヴォーカルのマーク・スチュワートは企画バンドのニュー・エイジ・ステッパーズを経てマフィアという自己のバンドを率いてソロ活動、ギタリストのギャレス・セイガーとドラマーのブルース・スミスはリップ・リグ+パニック、ギタリストのジョン・ワディントンはマキシマム・ジョイ、ベーシストのサイモン・アンダーウッドはピッグバグという具合に分散した。この中で商業的に最も成功を収めたのがピッグバグで、ジェームス・ブラウンのヒット曲を捩った「Papa's Got A Brand New Pigpag」は英国は勿論、この日本でも当時ヒットを記録した。私が個人的に当時一番注目していたのはマーク・スチュワートだったのですが、彼は On-U のニュー・エイジ・ステッパーズという寄り道をしてしまったお陰でデビューは元メンバーの中で一番後れてしまったのだった。

マーク・スチュワート&マフィアを除外すれば、ポップ・グループの元メンバーによる作品は1982年の時点で全て揃った。この時点で私が最も高い評価を与えていたのがギタリストのギャレス・セイガー(当時はガレス・セイガー表記)とドラマーのブルース・スミスを中心に結成されたリップ・リグ+パニックである。結成当初は影が薄かったドン・チェリーのまま娘ネネ・チェリーの存在が大きくなるに従って個性が薄くなってしまった(と当時の私は感じた)が、彼等のデビュー作「God」(1981年)と2作目「I am Cold」(1982年)は稀に見る傑作だった。音質に拘る余り、PILの地雷型金属缶ケースに習って45回転12インチの2枚組としてレコードを発表した事も当時の私を大いに刺激してくれた。いや、私だけでない。ポップ・グループを好きだった音楽ファンは当然のようにリップ・リグ+パニックの音楽を求めたし、更にコメディ集団スネークマンショーの1981年作「死ぬのは嫌だ、恐い。戦争反対!」でリップ・リグ+パニックの曲が取り上げられた事で彼等の知名度アップに拍車がかかった事も記憶に懐かしい。

元よりYMOも関わっていたスネークマンショーにリップ・リグ+パニックの曲が元カンのホルガー・シューカイやクラウス・ノミの曲に混じり取り上げられた事は一般の音楽ファンだけでなく、リップ・リグ+パニックの音楽が当時の音楽業界関係者からも高い注目を集めていた事を意味する。だが、こんな素晴らしいバンドであったにも関わらず、待てども待てどもCD化にはならなかった。1990年にようやく「Knee Deep in Hits」というベスト作品集が発表されたが、シングル・ヒットを持つバンドではなかったので、こんな物には何の魅力もなかったが、オリジナル・アルバムがCD化されない状況では「Knee Deep in Hits」がリップ・リグ+パニックの音楽をCDで聴く唯一の方法だった。「Knee Deep in Hits」から5年、10年と経過しても一向にCD化される気配は感じられなかった。だが「Knee Deep in Hits」から15年後の2005年、突如としてリップ・リグ+パニックがCD化されたのである。しかも3枚の作品全て。

普通なら1枚3000円の輸入盤など絶対に買わないのだが、リップ・リグ+パニックだけは例外である。デルタ5のレビューでも書いたが、リリースしたのは豪シドニーを本拠地とする Progressive Line というレーベル。生産枚数に限りがある、という事から日本の輸入洋楽ショップ関係者が委託して作らせたのかもしれない。正規版ではないかもしれないという一抹の不安もあったが、欲しい物は欲しい時に入手しておかないと後で欲しくなった時には入手不可能なんてのは世の常、入手の機会を逸したら2度と手に入らないかもしれないと思い、意を決して3枚共入手した次第であります。長くなりましたが、簡単に足跡を紹介します。元ポップ・グループの盟友サイモン・アンダーウッドのピッグバグが憧れたのがファンクの帝王ジェームス・ブラウンならリップ・リグ+パニックはフリー・ジャズ。バンドのサウンドに最もインスパイアを与えたのが、ポスト・バップ/アヴァンギャルド・ジャズ・シーンの異端児、盲目の天才ジャズ演奏家ローランド・カークだった。

実はリップ・リグ+パニックのバンド名もローランド・カークの1965年作品「Rip, Rig and Panic」からのまんま拝借だったが、勿論当時の青二才の私ではそんな重要な事実を知る由もなかった。兎に角フリーでファンクでイカレたサウンドに惚れていただけである。結成は1980年というからポップ・グループの崩壊後ほぼ間髪入れずに活動を開始した事になる。メンバーはギターのギャレス・セイガーとドラマーのブルース・スミスを中心に、ベース担当のショーン・オリヴァー、キーボード担当のマーク・スプリンガーという布陣。これにネネ・チェリーら準レギューラー扱いの演奏家数人が加わるという、ちょっとしたコンボ・スタイルを取っていた。バンドは1981年に「God」を、1982年に「I am cold」を、それぞれ45回転12インチの2枚組として発表、1982年には3曲入り12インチ仕様のシングル「You're My Kind Of Climate」も発表されている。1983年に3枚目のアルバム「Attitude」を発表するが、この後バンドは分裂してしまい結局解散。

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■ Gareth Sager - Guitar, Sax
■ Mark Springer - Keyboard
■ Sean Oliver - Bass
■ Bruce Smith - Drums

■ Neneh Cherry - Vocal
■ Ari Upp - Vocal
■ Flash

リップ・リグ+パニックは1983年に「Attitude」を発表した後に解散、この後フロート・アップ・CPというバンドへ変貌を遂げてはいるが、実質的にはリップ・リグ+パニックのアルバムは3枚。今回取り上げる作品はやはり衝撃度という点では一番だったリップ・リグ+パニックの最初の作品「God」(1981年)。ちなみに同年には12インチ・シングル「Bob Hope Takes Risks」、7インチ・シングル「Go Go Go! (This Is It)」が発表されている。当時は音質面での優位性からなのか、このような12インチでシングルが発表されるのが流行だった。余談だが1981年当時、ネネ・チェリーはまだ17歳。14歳で学校をとっととドロップ・アウトしちゃったというからとんでもない不良娘だったのである。後に彼女はブルース・スミスと結婚しているが離婚済み。さて、待望のリップ・リグ+パニックの「God」。45回転12インチの2枚組の片面にはそれぞれ、Red Side、Yellow Side、Green Side、Blue Side と名付けられていた。オリジナルのアナログ・レコードには計15曲収録。

更に特典音源として今回の Progressive Line 版、つまり2005年豪州盤のCDにはボーナス・トラックとしてなんと当時のアナログ・レコードには未収録だった前記の1981年発表のリップ・リグ+パニックのヴァージン・レーベルからのシングル2枚(計4曲)が追加収録された。特に彼等のデビュー・シングル「Go Go Go! (This Is It)」のB面曲の「The Ultimate In Fun (Is Going To The Disco With My Baby)」はスネークマンショー「死ぬのは嫌だ、恐い。戦争反対!」に収録されていながらオリジナル「God」には未収録だったので大変嬉しい計らいである。だが残念ながら既にこの豪州盤は廃盤!(ほうれ、やっぱり)、今後出回ると思われるスウェーデン盤にはこの4曲が収録されていない。「I am cold」も「Attitude」もボーナス音源テンコ盛なので、興味のある人は今の内に入手しておいた方がよさそうだ。某輸入CDショップの回し者みたいな書き方だが、多分こちらも直にそういう運命を辿るでしょう。

さて肝心の音楽だ。ポップ・グループが1980年に解散した後に幾つかの分派が登場したが、(人により異論もあろうが)ファンク・ミュージックやフリー・ジャズ、現代音楽などの要素をパンク・ロックのフォーマットに大胆にも持ち込んでしまったポップ・グループの純粋音楽分だけを最も正統に引き継いだ感のあるのがリップ・リグ+パニック。ポップ・グループが持っていたポリティカルな側面に対するラディカルなアイロニー精神が純粋に音楽の部分だけに発揮された結果、類稀なる急進的なジャズ・ファンク・ニュー・ウェーヴ・ロック・アルバムに仕上がっているのが最大の特徴だ。アルバム発表毎にネネ・チェリーの存在が大きくなるに従い、徐々にデビュー当初の斬新さは薄れてくるのだが(これもこれでまた格別と言える)、デビュー作において発揮された野心的で実験的な試みは1980年代初頭のニュー・ウェーヴ・アルバム、全アイテムの頂点に立つと言っても過言ではないハイパー・フュージョン作品として日の目を浴びたのである。

ジャズやファンク、ロック、アフロ、レゲエ、実験音楽といったジャンルの音楽を一旦分子レベルまで解体・融合し、リズムやコードやフレーズといった諸要素を若さ故の勢いを頼りに新たに再構築してみせた、などと書くと余りに大袈裟に聴こえるかもしれない。ローランド・カークやサン・ラ、セシル・テイラー、アート・アンサンブル・オブ・シカゴなどの音楽を当時既に浴びる程聴いていたフリー・ジャズ・ファンからすれば音楽家としてはまだまだキャリアの浅いリップ・リグ+パニックが試みた実験的な側面も可愛いらしいレベル、頼りないレベルとしか見えなかったかもしれないが、当時の私には他に例を見ないインパクトのある音楽に聴こえたのである。まだロックしか知らなかった青二才の当時の私にはポップ・グループも分派リップ・リグ+パニックもロック界のミュータントにしか見えなかったのだが、既成の音楽の解体・再構築といった作業過程は実はロック界以外、特にジャズの世界では至極当り前の現象だったのである。

最後にシリアス一辺倒だけではなく英国ロックらしいユーモア精神も節々に感じられる事も付け加えておく。名作。今日まで生きてきて良かった。いつも大袈裟で甘口の作品レビューが今回は特に大甘な内容となっていると感じるかもしれないが、それだけ私にとってはリップ・リグ+パニックの「God」は思い入れの強い作品であった事をご理解して頂たい。ちなみに、CDのジャケットの表、「God」の 'D' の文字下に + とあるが、当時のオリジナル・レコードのジャケットには存在しない。本CDがボーナス・トラック入りである事を示すものである。


Knee Deep in Hits
Knee Deep in Hits
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Rip Rig & Panic
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コメント
なんとなくBlogサーフィン?してたら、このBlog見つけました、懐かしいです。ちょうど学生の時、JDをはじめFactory関連,POP G、PIL、国内のほうは、なぜかRoustersをよく聞いてました。いまも、マフィアは、時々聞いてます、禁色は最高
また、色々紹介してください。
【2006/03/29 00:22】 | たか #STQHBdlM | [edit]
ご訪問ありがとうございます。私も
この作品の時代が一番熱くロックを聴いておりましたよ。
【2006/03/29 20:11】 | Cottonwoodhill #- | [edit]
 管理者様、はじめまして、珍ブログをやっております行者と申します。リップ・リグ+パニックについて調べておりましたところ、本ブログに行き当たりました。

 詳細な情報ありがとうございます、たいへん参考になりました。ところで、リップ・リグ+パニックはブリストル出身でしょうか?ご存知ならお教えください。

 大変興味深い記事をたくさん書いておられますね!またお邪魔させていただきます。
【2007/04/21 14:27】 | 行者 #- | [edit]
お褒め頂き、ありがとうございます。 Rip Rig + Panic ですが、彼等の正式な結成地までは正確に把握していないのですが、ブリストル出身のポップ・グループのメンバーでもあった、ギャレス・セイガーとブルース・スミスを中心としたバンドだった為、彼等をブリストル出身のバンドと認識しても間違いではないかもしれません。ちなみにNeneh Cherryは北欧の生まれ(Stockholm)です。
【2007/04/21 23:29】 | Cottonwoodhill #- | [edit]
 丁寧なご回答、早速ありがとうございます!実はベン・ウェストビーチという今、流行のアーティストがブリストル出身ということで、マッシブ・アタックなども含めて独特の雰囲気の逸材を輩出する地区だなあと思いつつ、Rip Rig + Panicを思い出していた次第です。ありがとうございました。

(追伸)
 ポップ・グループ、rob a bankが好きです。
【2007/04/24 13:58】 | 行者 #- | [edit]
ご丁寧に返信までありがとうございます。最近のアーティストに関しては全くの認識なし状態なので私もこれから学んでみます。
【2007/04/24 20:08】 | Cottonwoodhill #- | [edit]












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  • Rip Rig + Panic【Monkey Dance on a "Rocking Horse"】
    印刷は終了したけど、まだ「手書きで一言」なるものが残ってる。これが面倒なんだよなあ。これがあるから、年賀状が嫌いなんだ。紅白、曲順決定。あれ?明日まで秘密なんじゃなかったの?あゆは例年の定位置あたり。CDL があるからねえ、この辺に入れとくしかないんだ。美嘉
【2006/02/01 00:30】
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