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#1345 German Oak / German Oak (1972)

 2009-11-23
01. Airalert
02. Down In The Bunker
03. Raid Over Düsseldorf
04. 1945 - Out Of The Ashes

Bunker

エンツォ・G・カステラッリ監督の1976年イタリア映画『地獄のバスターズ』の2009年リメイクであるクエンティン・タランティーノ監督による戦争映画『イングロリアス・バスターズ』を見てまいりました。リメイク、とはいえ脚本はクエンティン・タランティーノのオリジナル。つまり『地獄のバスターズ』のまんまリメイクではなく実際には同映画を下敷きにしたクエンティン・タランティーノのオリジナル映画といった方が正しいような映画でした。この映画の舞台となるのが第二次世界大戦中のナチス・ドイツ占領下のフランス。オリジナル映画だから史実なんかどうでもいいだろ、とばかりクエンティン・タランティーノとやり放題の痛快極まりない映画で個人的には同監督作品中、1、2を争う出来栄えだと思う。ナチス・ドイツ、という事で映画は全篇に渡ってナチスが登場する。ユダヤ人の家系であり実際にナチスの迫害を受けた祖父を持つというメラニー・ロランの迫真極まりない最後の顔が今でも頭に焼きついて離れない、近年稀に見る面白い映画だった。

さて、今回紹介するドイツのロック・バンド、ジャーマン・オーク(German Oak)の経歴はとてもユニーク。とりあえずドイツ連邦共和国のノルトライン=ヴェストファーレン州の州都デュッセルドルフ出身という経歴があるのだが、とりあえず今回は彼等が作りあげた戯言にまずは乗ってみたい。時は1939年、独ソ不可侵条約締結後の同年9月1日 、ドイツ軍がポーランドへ侵攻した事から始まった第二次世界大戦は6年後の1945年に終結する。ドイツの場合、スターリングラードでの攻防戦やノルマンディー上陸作戦、同盟国の離反、バルジの戦いなどの出来事を経て1945年に全面降伏。この年、ヒトラーが総統官邸の地下壕において自殺、そしてゲッベルスが地下壕で自殺しているのだが(『イングロリアス・バスターズ』では前年の1944年にあれだが、、)、戦争が終結するまではドイツ軍の兵士だけでなく数多くの民間人が犠牲になったのだろう。実際第二次世界大戦においてドイツが優勢だったのは最初だけで徐々にドイツは連合国に追い込まれ、実際1940年から終戦間際の1945年まで連合軍による空襲を受けている。
例えば1942年のケルン市における大空襲。1943年のイギリスとアメリカによるハンブルク空襲、そして極めつきは1945年のドレスデン爆撃。こらの空爆によりドイツ市民に(ナチスのお陰で)多大な死者が出る事になる。そんな状況だったから第二次世界大戦中のドイツでは地下室や防空壕で時間を過ごすのが日課だったという。ちなみに私の母は戦前生まれで先の戦争体験者。アメリカ軍が東京大空襲を実施した時は東京在住ではなくて埼玉在住だったのだが、B-29戦略爆撃機の轟音、そして空襲警報は今でも忘れられないという。日本の場合、本土空襲は1944年から終戦までだが、ドイツの場合は1940年頃から行われていたというから悲劇という他ない。戦争を語る際、加害者も被害者もへったくれもない。いつの時代でも最大の被害は民間人が被る事になるのだ。で、1945年の終戦後、ドイツ国内では数多くの地下室や防空壕が用なしとなったと思うが、今回紹介するバンド、ジャーマン・オークはその怨念が漂う防空壕の跡地で録音を敢行したのだという。まあ、本当かどうかは判らない。

長々と書いてしまったが、ようするにドイツ人にとって忌々しい戦争の思い出を思い出すのが防空壕という訳だ。ジャーマン・オークは1970年代前半に存在していたバンドなので、恐らくメンバーは1950年代生まれ。そうすると彼等の両親は大方1920年代の生まれ。ずばり第二次世界大戦中の連合国の大空襲から生き延びた人達だ。恐らく子供の頃から両親に話を聞かされてきたと思うが、彼等がインスパイアされたと思われる前衛及び実験音楽を演奏するには防空壕の跡地はもってこいの舞台であると考えたのであろう。若者ならではの大胆かつ不敵な発想であるが、実際彼等はやってのけた。戦争を実際に体験していない私としてはこんな逸話を披露されたとて、いまいちピンとこないのだが、当時の彼等の周辺ではちょっとした話題になった事だろう。作品の背景が背景だけに本作の存在を政治的な問題と絡めようとする人もいるかもしれないが、まあ実際には『オドロオドロしいサウンドを演奏するにはもってこいの場所だぜ』程度の発想しかなかったと思うけど。

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■ Wolfgang Franz Czaika - Lead & Rhythm Guitar
■ Ullrich Kallweit - Drums, Percussion
■ Harry Kallweit - Bass, Voice
■ Manfred Uhr - Organ, Fuzz-Organ, Voice
■ Norbert Luckas - Guitars, Noises

本作の登場は1972年。自主制作によるコピー枚数は僅か213枚。ジャケットもメンバーの自家製だったという。当時は僅か11枚しか売れなかった。そんな状況だから当時のオリジナル盤は現在入手難な状態で世界中のレコードマニアを日夜悩ませているのだという。CDは1991年にドイツのレーベル、Witch & Warlock から。1972年当時、たった11枚しか売れなかった自主制作盤をよくぞ出すもんだ、と思って調べてみたらなんの事はない、この Witch & Warlock なるレーベルはジャーマン・オークのメンバーだった Manfred Uhr が設立したレーベルだったのである。どうりで。ちなみにこのレーベル、1989年から1992年までの間に Bodkin「Bodkin」、Soho Orange「Soho Orange」、Tentacle「The Angel of Death」、Dom「Edge of Time」といった、知名度C級、1970年代のマニアックなアルバムを発売した後にあえなく崩壊してしまっている。同レーベルの最終盤はジャーマン・オーク「Niebelungenlied」(1992年)。これはジャーマン・オークの再結成アルバムではなく、1972年当時のの発掘音源物だという。

アイデアと勢いだけでアルバムを作ってはみたが、作曲能力と演奏能力に秀でていた訳ではなかったのだろう、アルバム1枚を自主制作しただけで終わり。こんなホームレコーディングな時代、あったなと思い出したのが1980年前後のノイズ&インダストリアル・サウンドの時代。あの時代、スロッピング・グリッスル、キャバレエ・ヴォルテール、SPK、ホワイトノイズ、テスト・デプト、アインシュテュルツェンデ・ノイバウテン、ナース・ウィズ・ウーンドといったバンドが既存の音楽形態に縛られる事のない無定型で特異なノイズ&インダストリアル・サウンドを生み出していったのだが、このジャーマン・オークを聴くとあの当時のノイズ&インダストリアル・サウンドとの類似性を感じられずにはいられない。CDは2004年、Radioactive Records によって目出度く再発を遂げたのであるが、1980年前後から一部のリスンナーに支持され始めたインダストリアル・サウンドの源流の一つとしてジャーマン・オークの過去のアルバムが評価されたからに他ならない。

こんなアルバムの個別の曲にまで触れてみても意味がないように思えるがざっと書いてみる。収録は全部で4曲。Witch & Warlock 盤ではこれに加え、合計20分に及ぶ3曲のボーナストラックが収録されていたが、著作権の問題なのだろう、Radioactive 盤ではそっくりカットされている。冒頭の曲「Airalert」は2分に満たない曲。単調なメロディながらもドイツ産ロックらしい無機質な響きが印象的。オルガン演奏は Manfred Uhr。続く「Down In The Bunker」は18分に及ぼうかというアンダーグランドなサイケデリック・ロック。いや、ロックという言葉も使いたくないような原始的なリズムのみを基調とした退廃的なインダストリアル・サウンド。既存の大衆音楽へのアンチテーゼとして1970年代後半に登場したのがインダストリアル系のサウンドだったのであるが、当時の音楽を支えていた連中の多くは芸術志向の若者達。ジャーマン・オークの連中が本作を制作するに当り、お手本とした教材はなんだったのであろうか。まさかナチス・ドイツではあるまい。

初期のタンジェリン・ドリームやアモン・デュール、クラフトワークの前身バンドであるオルガニザツィオーンといったジャーマン・ロック創世記に見られた様な混沌としたアングラ臭の強いサウンドと同傾向の雰囲気が感じられる事から、彼等もまた当時のジャーマン・ロック・シーンにおける新しい動きに符合したバンドの一つだったと書いても過言ではなかろう。ただ、彼等の場合、察するにあまりにも活動の基盤が狭すぎた(と思う)。アルバム1枚、自主制作のみで活動が停止してしまった事は大変残念。続く「Raid Over Düsseldorf」も16分を超える長尺ナンバー。作曲能力に秀でていた訳じゃないから単調なメロディとリズムのまま曲は一気に突き進む。だが、《ジャーマン・ロックだから》という聴き手の思い入れの助長作用が幸いして、この反復基調な呪術的なサウンドがジャーマン・ロック・コレクターの五感を刺激してくれる。どうせこんなアルバム、ドイツ産ロックのコレクターしか買わないからね、きっといい様に購入者が解釈してくれる筈だ。

「1945 - Out Of The Ashes」はエンディング。冒頭のプロローグ「Airalert」と対をなすエピローグ。これでお終い、まあ、ブルースとかフォークとかトラッドとかロックンロールとかジャズ、そうしたジャンルの音楽を基盤とした真っ当な音楽ではない事は確かなので絶対的に聴き手を選ぶ音楽ではある。ノイズとかアヴァンギャルド、エクスペリメンタル、インダストリアル、そして初期のジャーマン・ロックに免疫のある方ならコレクションの一部として推薦出来るが、そうでない方は絶対に手を出してはいけない麻薬の様な音楽だ。

German Oak - MySpace

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