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#1346 John Berberian & The Middle Eastern Ensemble / Middle Eastern Rock (1969)

 2009-12-30
1. Oud & The Fuzz
2. Tranquility
3. Chem-Oo-Chem
4. Iron Maiden
5. Flying Hye
6. 3/8+5/8=8/8
7. Magic Ground

Middle Eastern Rock

ジャケットに写るベリーダンサーのおへそになんとなく魅了されて買ってしまった1枚。バーバリアンだかバーベリアンだかベルベリアンだか、正確な呼称がなんだか判らないのだが、一応ジョン・ベルベリアンと書いておく。今回取り上げるのは本来ならロック好きな私の様な人間が取り上げる作品ではないかもしれない。今回紹介するジョン・ベルベリアンという音楽家は1941年、米NY生まれのアラブ系アメリカ人。彼の主たる楽器はウード(Oud)、 アラビア語では عود と書く。なんて読むのか知らないので原語をそのまま書いておいた。ウードというのは西アジア、つまりアラブ音楽で使われる民族楽器のことだそうだ。見た目はルネサンス期やバロック期のクラシック音楽でよく使用される古楽器リュートとよく似ている。リュートとはいえばほらあれだ、元ポリスのベーシスト、スティングがクラシック作品集「Songs From The Labyrinth」で使用した楽器である。クラシック音楽を聴かない人にとっては殆ど馴染みのない楽器だ。

アラブ音楽の世界では通称「楽器の女王」とも呼ばれているウードの見た目はなんとなくリュートに似てる。が、それと同時に私達日本人からすれば東アジアを代表する有棹弦楽器、琵琶にも似ているが当らずも遠からず。楽器の変遷を遡るとウードやリュートと共通の起源を持っているそうでルネサンス期やそれ以前の時代から大陸を跨る様に各地に伝えられたらしい(西アジアのウードがヨーロッパに伝わってリュートとなったらしい)。で、今回紹介する演奏家、ジョン・ベルベリアンはその筋の第一人者。調べた所日本にもこの楽器の第一人者がおるようだが、ある理由があって今回はジョン・ベルベリアンの作品を取り上げる事にした。ジャケに惹かれたのは勿論、このアルバムがかつてレココレのサイケデリック特集号(2002年7月号)にてそのジャケが紹介されたというのも理由の一つでもある。あの特集で紹介されたから、というミーハーな理由で2002年以降、実は随分と買ったもんだ。
ジョン・ベルベリアンは1941年米NYの生まれ。両親はアルメニア(黒海とカスピ海の間にある小国)からの移民。ちなみにアルメニアという国は19世紀末と20世紀初頭の二度にわたり不幸な人権迫害問題が起こっているが、ジョン・ベルベリアンの両親の年齢を想像すると、恐らくは第一次世界大戦後のロシア軍やトルコ軍の攻撃を逃れる様に国外逃亡を図ったのだろう。で、そのジョン・ベルベリアンが両親の生まれ故郷である西アジアの古典的な楽器ウードに興味を持った。それもその筈で彼の父親がウードの演奏家であり楽器の作製者でもあったからだ。父親の歴史は詳しくは判らないが世界各国からジョン・ベルベリアンの父親の元にウードの演奏家がよく訪ねてきたらしい。まあこんな理由だからジョン・ベルベリアンがウードを手にするのは当然といえば当然。1950年代にコロンビア大学に進学した時点で既に Reuben Sarkisian というヴァイオリン奏者とクラシカルなウード音楽をレコーディングするまでに至っていたというから本物である。

彼の作品にも触れてみる。正確な年が不明だが1964年頃から1960年代末にかけて「Expressions East」「Oud Artistry」「Impressions East」という作品を Mainstream Records から、「Music And Gibran」という作品を Verve Forecast(1967年に設立されたMGM系のレーベル) から、「Music of the Middle East」という作品を Roulette Records からそれぞれ発表。この時期、ポピュラー音楽の世界ではビートルズがインド音楽の要素を取り上げたり、ドノヴァンやジミー・ペイジ、ブライアン・ジョーンズといった人達がシタールを使用したりと、なにかとアジアの音楽や楽器が注目され出した時期でもある。そんな時代背景があったからこそレコード会社が西アジアの古典楽器ウードの演奏能力に秀でたジョン・ベルベリアンの音楽を世に送り出そうと考えのかもしれない(時代考証からすると当然ジョン・ベルベリアンの方がロックの連中よりずっと先なんだけど)。まあ今じゃ彼の音楽も”オリエンタル・グルーヴ” なんて言葉で持て囃される時代である。時代の流れというのも恐ろしいものである。

■ John Berberian - Oud, Leader
■ Chet Amsterdam - Fender Bass
■ Souren Baronian - Clarinet, Tenor & Baritone Saxophone
■ Bill LaVorgna - Drums
■ Steve Pumilian - Dumbeg Goblet Drum
■ Joe Beck - Amplified Rock Guitar, Fuzz Effects
■ Ed Brandon - Rhythm Guitar
■ Bob Tashjian - Percussion, Vocals

ジョン・ベルベリアンは1969年に今回取り上げる「Middle Eastern Rock」を Verve Forecast から発表。そして時代は変わり1970年代に入ってからも米レーベルの Olympia Recordsから「A Mid Eastern Odyssey」「Echoes of Armenia」「The Dance Album」といった作品を発表している。1970年代中盤にはMainstream Records 時代の音源を中心にした「Ode to an Oud」というコンピ盤も出した。1980年代以降は商業音楽シーンの世界とは一線を引いている模様で、これ以降のオリジナル作品はないようだがウード演奏家としては今なお健在ぶりを発揮しているらしい。ちなみに現在は米マサチューセッツ在住とのこと。現在、日本では一部のグルーヴ・サウンド好きなマニアの間で彼の昔のアルバムが持て囃されているそうだが、遠く離れた異国の地で自分の音楽が密かに支持されている状況をどのように感じているのだろう。古典に傾き過ぎていないサウンド形態が今の人には受け入られるのだろうが。

さて本作「Middle Eastern Rock」は1969年作品。CDはB級復刻物好きな人にはお馴染みのレーベル、Rev-Ola Records から。これとは別に Acid Symposium というギリシャ?製レーベル物もあるそうだが、こちらは怪しげな類のレーベル?らしいので購入の際にはご注意を。「Middle Eastern Rock」の演奏陣に目を向けてみるとジャズ・ギタリストのジョー・ベックの名前がある。ジョー・ベック以外の名前を見ても、Souren Baronian、彼はトニー・スコットやカーラ・ブレイ&ポール・ハインズの作品に参加したジャズ系の人で、Chet Amsterdam は Spanky & Our Gang「Like To Get To Know You」、John Davidson「John Davidson」、Lotti Golden「Lotti Golden」といった、ソフト・ロック、ソウル、フォークといったジャンルの作品で演奏を披露した人。Bill Lavorgna はジャズのフィールドを中心にした人。Val Valentine はブルース・ロック・アルバムの参加歴あり。 

主役はトラディショナルな西アジアの音楽に造詣の深い音楽家。そして脇を固める面々はジャズ、フォーク、ソウルといった幅広い音楽シーンで活躍してきた凄腕達。本作ではザ・ミドル・イースタン・アンサンブルと命名された。そして時代はサイケデリック。ジョン・ベルベリアン自身、アルメニアで生まれ育った両親とは異なり大都会NYで生まれ育った世代の子。飛び出てくる音楽はトラディショナルな西アジアの音楽とジャズ、ジャズ・ロック、サイケデリック・ロックが融合した、極めて特殊な音楽に仕上がっている。ウードという、あまり馴染みのない民族音楽楽器とロックやジャズといった若者や大人向けの音楽との融合。時代が時代と言ってしまえばお終いだが、サイケデリックな時代はこうした素晴らしい異種配合を生み出したのだ。今聴いても色褪せる事はない。まあ当時でさえ場違いな音楽であった事には間違いないだろうが、レア・グルーヴとかサイケデリック・グルーヴ、モンドといった今の言葉を持ち出すまでもなく、本当に価値のある音楽だと思う。

個別の曲に触れる事なくここまできてしまった。収録は全部で7曲。冒頭「The Oud & The Fuzz」からして極めて独創的。前半部分でアラビアンな雰囲気たっぷりのウード演奏とグルーヴ感溢れるリズムが違和感なく合体するかと思えば、中盤部分でタイトル通りのファズなエフェクトが登場、そして後半部分ではウード(ジョン・ベルベリアン)とギター(ジョー・ベック)の凌ぎあい。「Tranquility」はタイトル通りの静かで平安なトラッド・ナンバー。だがここでもジャズ・フィーリングは失われてはいない。「Chem-oo-Chem」は作者不詳のトラッド・ナンバーをジョン・ベルベリアンがアレンジ。続くは「Iron Maiden」。タイトルがなんだかアレだが、エキゾチックかつオリエンタルな異国情緒とジャズ・フィーリングが一体化したユニークな作風。「Flying Hye」もトラッド・ナンバーのアレンジ。これもまた西アジアの音楽の要素と西洋の音楽(ジャズ、ジャズ・ロック)の要素が見事なまでに融合。

普通こうした異ジャンルの音楽を一つの入れ物の中に混在させた場合、なんだか胡散臭い物に仕上がってしまうのが普通だが、そもそもジョン・ベルベリアン自身にジャズやロックといったジャンルの音楽に対する拒否や拒絶の意識がなかったのだろう、なんだか本当にすっきりと融合してしまっているのである。まあこれもボーダーレスでミクスチャーな音楽に慣れ親しんだ現代人だからこその感想と言えるかもしれない。このアルバムが制作・発表されたのは今から40年も前の1969年なのだが、当時としては非常に奇抜で不思議な音楽であった事には間違いない。まあ、ジャズ・レーベルの Verve Forecast から発表された作品だけあって、作品の本質はやっぱりジャズ。そこにウード演奏家が加わって更に当時の若者にも受けるよう、ロック(ジャズ・ロックやサイケデリック・ロック)の要素を加えてみました。という見方をするのが本作を理解する早道なのかもしれぬ。

John Berberian

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