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#1368 Faithful Breath / Fading Beauty (1974)

 2010-12-13
01. Autumn Fantasia
a) Fading Beauty
b) Lingering Cold
02. Tharsis

Faithful Breath / Fading Beauty (1974)

シンフォニック・ロックからHR/HMへ、神に祈りを捧げる純粋無垢の少女から乱暴な男の匂いプンプンのヴァイキング野郎どもへ。1970年代と1980年代以降とでは180度音楽スタイルを方針転換させたドイツ生まれの異色のバンド、フェイスフル・ブレス(Faithful Breath)。プログレッシヴ・ロックの全盛時代にはシンフォニック・ロックを、NWOBHM(New Wave Of British Heavy Metal)の時代にはハードなロック・サウンドを、と見事なまでに節操のない活動を展開した異色のバンド。まあ、こういう大胆な方針転換を行なったのは何も彼らだけでなく、プログレの時代にはプログレ《風》な音楽を、プログレ・ブームが去った後にはあっさりと手のひらを返した様にサウンド・スタイルを変化させたアーティストの例なんて特段珍しくともなんともない。音楽活動履歴が10年、20年、30年と長期ともなれば時代の変化に合わせてスタイルを変貌させていったからといって、それ自体を非難する必要はないだろう。作品の出来が悪ければそれはそれで批評すればよい事。

1970年代と1980年代以降とではまるで別のバンドと言っても過言ではないバンドだが、まずは簡単にフェイスフル・ブレスの歴史を紹介してみる。結成は結構古くて1966年頃に存在していたというマジック・パワー(The Magic Power)という名前のバンドにまで遡る。ドイツ西部のノルトライン・ウェストファーレン州ウィッテン出身。1966年当時の結成時点でのメンバーは、Heinz Mikus(ヴォーカル、ギター)、 Reinhold Immig(ギター)、Walter Scheuer(ギター)、Horst "Piet" Stabenov(ベース)、Jürgen Fisher(ドラムス)の5人。ちなみに結成当初の中心を担った Heinz Mikus と Horst Stabenov は1952年生まれだから当時まだ14歳。当時の彼らの年齢からして、当初はアマチュアの粋を出ていないレベルの活動であったと想像する。余談だがフェイスフル・ブレスという名前は一時的にバンドに在籍していた Georg Grebe というベーシストの発案だという。詳細不明だが、Boggi Kopec という名前の人物も初期には参加していた模様。
1967年の終盤にはサックス奏者の Ulrich Bock が参加。1969年にギタリストの Reinhold Immig、ドラマーの Jürgen Fisher が脱退。ギタリストはバンドに複数人在籍していたので代役は探さなかったようだが、ドラマー不在ではロック・バンドとしては成り立たぬ。という訳で代役のドラマーを探す事になるのだが、代わりのドラマーを探すのに数年の時が経過してしまう。1953年生まれの Jürgen Weritz というドラマーが参加したのは1971年。前ドラマーが脱退してから2年後の事だった。バンドの体制はまだ固まらない。1972年には結成当初から在籍していたギタリストの Walter Scheuer とサックス奏者の Ulrich Bock が脱退、代わりにキーボード奏者の Manfred "Carl" von Buttlar が参加。サックス奏者からキーボード奏者へ。プログレ演じるならやはり鍵盤楽器は欠かせない。結成から紆余曲折5年、これでようやくプログレッシヴ・バンドらしくなった。1973年、ついにアルバム制作に突入。といっても自主制作だが。

当時はプログレッシヴ・ロック全盛の時代だが、実績皆無の彼等ではレコード会社と契約を結ぶ事は不可能だったという訳か。だがまあ、アルバムは完成。アルバム完成の為にヴォーカリスト(Renate Heemann)を招き入れ、マジック・パワー時代から彼等と交友のあった Boggi Kopec がプロデュースに回る。録音はケルンにあるスタジオ(Tonstudio am Dom)、1973年も押迫った12月の終盤(18日~23日)に僅か6日間で録音がなされた。だが、自主制作バンドではバンドの継続もままならず。第一次オイルショックという当時の世界的な状況もあって、彼等のアルバム制作は一旦終了。1977年、再びフェイスフル・ブレスは活動を再開。ようやく次作制作の為の資金が調達できたのだろうか。同年、シングル「Stick in Your Eyes / Back on My Hill」を発表。ヴォーカリストはゲスト扱いの Jürgen Renfordt。翌1978年にはアルバム「Back on My Hill」を完成させるものの、当時直ぐに発売されることはなく、録音完成から2年後の1980年に独Sky Records からようやく発売された。同年には2枚目のシングル「Die Mörderbiene / Keep Me Away」も登場。

だが、当時既にブームとしてのプログレッシヴ・ロックはとうに過ぎ去っていた。バンドの活動継続の為の経済的基盤もなかったのだろう、この2枚目をもってフェイスフル・ブレスは一旦解散。だが彼等はへこたれなかった。1970年代はプログレの時代だったけど、1980年代はデフ・レパードやアイアン・メイデン、サムソン、エンジェル・ウィッチといったバンド群が巻き起こしたNWOBHMの時代、ならば今度はこれ、と当時の彼等がこう思ったかは定かではないが、Heinz Mikus と Horst Stabenov の2人は新たに Uwe Otto というドラマーと共にフェイスフル・ブレスを復活させる。というか使い慣れたフェイスフル・ブレスという名前を拝借しただけで、実際にはまったくの別バンドと言ってもいい、新生フェイスフル・ブレスを発足させる。こうして出来上がったのが「Rock Lions」という1981年作品。レーベルは前作と同じ独Sky Records。シンフォニック・ロックの世界からハード&ヘヴィの世界に移行した彼等は「Hard Breath」「Gold 'n' Glory」「Skol」「Live」といった作品を1980年代に発表。

Back on My Hill
Back on My Hill
posted with amazlet at 10.12.13
Faithful Breath
Atm (2008-09-22)


■ Heinz Mikus - Guitar, Acoustic & 12-string Guitar, Lead Vocals
■ Horst Stabenow - Bass, Acoustic & 12-string Guitar, Vocals
■ Jürgen Weritz - Drums, Percussion, Vocals
■ Manfred Von Buttlar - Organ, Mellotron, Synthesizer, Piano, Guitar, 12-string Guitar, Vocals
■ Renate Heemann - Backing Vocals

この後、1980年代フェイスフル・ブレスは新たにリスク(Risk)と改めて活動を継続していくのだが、個人的にこの世界の音楽は興味の範疇じゃないので彼等の紹介はここまで。 さて、今回紹介する作品「Fading Beauty」は1973年録音/1974年発表の自主制作盤。CD化はこれまで2回。1991年にプログレやメタル、サイケデリックの分野を得意とする米The Laser's Edge から1度、2005年に独Garden of Delights から1度、と計2回行なわれた。米The Laser's Edge盤は1991年物という事で2005年に再発されるまでに入手難という時代が続いていたから、オリジナル・マスターから再発された独Garden of Delights盤の登場は当時の嬉しいニュースだった、と手放しで書きたい所だが、聊か問題もある。レコード発表当時、A面は「Autumn Fantasia」という2部構成の作品が収録されていて、それぞれ12分と10分の曲が収録。B面は20分を越える大作が収録されていた。米The Laser's Edge盤はオリジナルに準じて「Fading Beauty(12:08)」「Lingering Cold(10:25)」「Tharsis(21:38)」という構成だったものが、独Garden of Delights盤では出だしの1&2曲目が1つの曲「Autumn Fantasia」として一緒になってしまった。

オリジナル・マスターから2005年版として新たに再発される際のメンバーの意向が反映された結果だったのかもしれないが、これって結構重要だったりする。まあ、余談はさておき、個別の曲にも触れてみる。冒頭は「Autumn Fantasia」。旧アナログ・レコード時代の片面(A面)を占めていたインストゥルメンタル2曲(「Fading Beauty」「Lingering Cold」)が一緒になってしまった結果、旧B面の大作に匹敵する、22分を超える大作となってしまった。まあ、元はと言えば 「Autumn Fantasia」という名前の組曲の全篇と後編なのだから、本来ならば1曲として扱うべき物だったのかもしれない。冒頭のクラシカルな印象の旋律から曲は枯れた味わいの叙情的なリフへと突入。ブリティッシュ・ロックの影響下にあるドイツ産のロックというと、ハード・ロックであってもプログレッシヴ・ロックであっても何処となくB級の匂いが感じられるのだが、本作でもその傾向は感じられる。

大陸国家アメリカからは到底出てくる事のない、陰湿で田舎臭い哀愁感溢れる奥ゆかしいシンフォニック・ロック。これが冒頭からずっと続くのだからシンフォニック・ロック・ファンにはたまらない。リズム隊の活躍しない旋律が続くが、11分過ぎでようやく、ロック・ミュージックらしい旋律が飛び出してくる。12分過ぎからは2部構成の後半部分。前半が”静”なら後半は”動”とも言うべき活発なアレンジが登場する。どろんとしたサイケデリックじみた演出は初期のピンク・フロイド当りからの影響か。個人的には映画『未来惑星ザルドス』のエンディングで登場した、ベートーヴェンの交響曲第7番第2楽章当りを参考にしたと思われるアレンジが心を惑わせる。続くは、というか、もうエンディング曲だが、これも20分越えの「Tharsis」。あまり聴き慣れ単語だが、火星に存在する知名、若しくは旧約聖書にも登場する知名(地域)の事。旧A面は歌詞無しのインストゥルメンタル作品だったが、本曲は歌詞付き。やはりこちらもメロトロン(ソリーナ?)やオルガン、シンセサイザーの音色を中心にした構成だ。

多種多用な鍵盤楽器が活躍する構成の曲だが、シンプルに無機的な演出を醸し出す鍵盤楽器、動の部分を演出する鍵盤楽器を上手に使い分けて、複雑な構成とは言い難い単調な楽曲に工夫をこらしてマンネリにならぬ様、配慮がなされている。ジャーマン・ロックらしい、屈折した根暗なアングラ・ロックじみたアレンジが16分過ぎから登場するのはご愛嬌。アモン・デュールやファウストみたいな初期ジャーマン・ロック風の実験的要素も飛び出してくる。以上。テクニカルな演奏もメリハリのあるメロディやリズムも登場しない田舎臭いシンフォニック・ロック。湿気くさくて自主制作らしい手作り感がたんまりだ。プログレッシヴ・ロックらしい複雑な構成による楽曲も登場しない。陰湿で哀愁の感じられる旋律をバックに作ってしまいました、的なホーム・レコーディング作品。正式デビュー前の未完成のデモ音源みたいなサウンドがいかにも自主制作。なにはともあれ、他のジャーマン・シンフォ関連作品を押しのけて真っ先に買うべき作品でない事は確かだが、熱心なジャーマン・シンフォのコレクターの皆さんなら、いずれ1枚は入手したい。

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