FC2ブログ

#1369 Rebekka / Phoenix (1982)

 2010-12-18
1. Swan song
2. Lithphas
3. Odyssee
4. Phoenix
5. Iris (Imaginary Regards of an Irish Sea)
6. Floating Dawn

7. Lotos (Bonus Track)

Phoenix

1980年代に2枚のアルバムを発表しただけで音楽シーンから忽然と消えてしまったドイツ産バンドの一つ、レベッカ(Rebekka)。そう、キュートな女性ヴォーカリストのNOKKOやギタリストの木暮武彦らによる日本の1980年代の人気バンド、、、じゃないや、あちらとはスペル違いです。このドイツ産バンド、レベッカの音楽スタイルは当時としては既に旧態依然のシンフォニック・ロック。彼等がアルバムを発表した1980年代前半というのは、既にブームとしてのプログレッシヴ・ロックが衰退していた時期で、プログレの主たる生産地イギリス出の同ジャンルのバンドが生み出した作品の数々は(作品の出来不出来に関わらず)市場から無視される事の多かった時期でもあった。それと同時にイギリス産のプログレシッヴ・ロック以外のユーロ圏の音楽、例えばフランスとかドイツとかスペインとかベルギーといった国のプログレシッヴ・ロックが世界に広く知れ渡り初めていった時期でもあった。

個人的な話で恐縮ですけど、私の場合1970年代の時点でもカンとかアンジュ、ゴング、マグマといったバンドのレコードを買い求めたり、耳にしたりした機会はあったけれども、ユーロ圏出のプログレをちゃんと聴き始めたのは1980年代以降の事だと記憶している。ドイツ産のプログレに関しても(昔はカンもアモン・デュールIIもファウストもタンジェリン・ドリームもひっくるめてプログレッシヴ・ロックに属する音楽として認識していました)、カン、ノイ、タンジェリン・ドリーム、クラフトワーク、ノヴァリス、クラスター、ラ・デュッセルドルフといったバンドを除けば、皆1980年代以降順次聴き始めたものです。1970年代当時十代だった私の様な世代の人間はまあ大体こんな感じて1980年代以降、きちんとユーロ圏の音楽を聴き始めたんじゃないだろうか。勿論、レベッカという名前のドイツ産のバンドなんて、当時の私は知る由もなかったし、日本で当時彼等のレコードが発売されたかどうかも判らない。判るのは、1980年代前半の時点で彼等の様な古臭いスタイルのプログレッシヴ・ロックは既にリアルで受けなかったという事である。
年代からしてポンプ・ロック世代のバンドかと思いきや、彼等の結成は1971年の時点にまで遡る。結成の中心となったのは1952年生まれのギタリスト、Hubert Schneider。彼に1950年生まれのベーシスト(Joachim Zscheile)、更にドラマーが加わったトリオ編成となった彼等はプログレッシヴ・ロック・スタイルの音楽を演奏し始めた、、、訳ではなくて当初はクリームやローリング・ストーンズの様なブルース・ロック・スタイルの音楽を演奏していたというから驚きだ。結成の時代からして初期ルネッサンスやカーヴド・エアの様な、女性ヴォーカリストをフロントに立てたバンドを参考にしたと想像していたのだが、活動当初はそんな事はなかった模様。ドラマーの固定はうまくいかずに何人か代わっていたそうだが、時代が進むにつれ、彼等の興味はインド音楽に移っていったという。ギタリスト君はインドの古典的音楽であるタブラの演奏も習得していったというが、それにしてもなんだか世間の流行からワンテンポ、ツーテンポ遅れていた連中だったようだ。

1975年の終盤に一旦解散を遂げるものの、1977年に Hubert Schneider と Joachim Zscheile の2人は装いも新たに新生バンド結成を計画。まずはキーボード奏者の Peter Laubmeier(1959年生まれ)を獲得、このキーボード奏者の友人だったドラマーの Christoph B. Imler(1959年生まれ)も加わってバンドらしい体裁は整った。更に Hubert Schneider は弟の Martin Schneider-Weldert(1956年生まれ)にも声を掛けて参加を要請。Martin はサックス奏者としてレベッカに参加するが、この時、妻の Marion Weldert(1959年生まれ)もバンドに引き込んだ。この時点で Martin の妻(Marion)にはロック・ソングを歌った経験が全くなかったという。しかしながら結果としてレベッカの母体がこれで揃った訳になる。ギタリストにはクラシックの素養が、ベーシストにはジャズの素養があり、更にメンバーのプログレシッヴ・ロックや東洋音楽に対する興味もあって、バンドの目指すべき方向性はエキゾチックでクラシカルな要素を含むシンフォニック・ロック・スタイルの音楽の再現に向う事になる。

世間の流行から周回遅れみたいなバンドだが、彼等は真剣だ。世の中なんでもかんでもニュー・ウェーヴの時代だった1980年に彼等は凡そ7~8年位前に流行していた様な古臭いスタイルの田園ロックを武器にライヴ活動を展開し始める。で、最初のアルバムは1982年。「Phoenix」がそれ。当時のオリジナルの初回プレスは僅か1000枚のみ。だがこれも完売とはいかず、ギグの際にミュージシャン自らの手によって結構な枚数が捌かれたという。また、ドイツのレコード店から日本、フランス、ブラジルなどの国のレコード店に送られた事実もあった模様。1980年代に入って以降、フライング・リザーズやラウンジ・リザーズ、ペンギン・カフェ・オーケストラ、GBH、オレンジ・ジュース、スクリッティ・ポリッティ、デュラン・デュラン、ノイバウテンといったバンドが登場して、それぞれ新たなシーンを構築していった時代に、レベッカの連中ときたら前近代的なシンフォニック・ロックときたもんだ。エイジアやイエス、ジェネシスでさえプログレシッヴ・ロックの新たな方向性を見出して1980年代を生き抜いていったというのに。

■Marion Weldert - Vocals, Tamboura
■ Hubert Schneider - Guitar, Flute, Tablas
■ Martin Schneider-Weldert - Saxophone, Variaphone
■ Peter Laubmeier - Keyboards
■ Joachim Zscheile - Bass, 12-String Guitar
■ Christoph B. Imler - Drums, Percussion

1984年には通算2作目となる「Labyrinth」を Ohrwurm から発表。この作品はこれまで聴いた事はないのだが、どうやら前作のサウンド・スタイルがあまりに当時の流行とかけ離れていた為に方針展開を行なったそうで、ルネッサンス・サウンドを彷彿とさせた前作から一転、当時の流行に合わせたポップなエレクトロニクス・サウンドに挑戦したのだとか。その方針転換が裏目に出てアルバムの全体的な印象が散漫な物になってしまった為、2作目の評価は著しく低い模様。どうやらこっちは買わなくていいかもしれない。この後の1985年にシングルを制作(制作枚数は500枚)するも成功を収める事は出来ず、最終的に彼等は1986年に解散。というか、1971年の結成から1986年までよくぞ活動ができたものだと関心する。この間アルバムは2枚。デビュー作の1982年の時点で主要メンバーは既に30歳越え。目指すべき音楽スタイルが見つからないまま、何年も経過してしまえば、普通ならアルバムを制作する前に空中分解してしまうのが普通だと思うが、本当に彼等は忍耐強かったのだろう。

さて、「Phoenix」は1982年に発表された、季節外れならぬ時代遅れのシンフォニック・ロック。当時の流行を考えるなら、差し詰め《周回遅れ》のアルバムと書くべきか。提供レーベルは Heute という、よく判らない会社。CDは1993年にフランスの Musea Records から。次回作「Labyrinth」は未だに何処の会社からも発売されていないらしい。アルバムのプロデュースは彼等自身の手により行なわれた。録音は1982年8月、ドイツ国内の某スタジオにて。このバンドのサウンド面において事実上統率を取っていたのは、アルバム発表時点で既に30歳を越えていたギタリストの Hubert Schneider。オリジナル収録6曲にボーナストラック1曲加えた計7曲の内、4曲が Hubert Schneider の手によるもの。残り3曲がそれぞれ Peter Laubmeier、Joachim Zscheile、Joachim Zscheile & Hubert Schneider とクレジットされている。アルバムのジャケット・デザインも Hubert Schneider が担当。

個別の曲にも触れてみる。冒頭「Swan song」は8分程度の楽曲。エロイ、ノヴァリス、グロープシュニット、そしてイギリスのルネッサンスやイリュージョン、キャメルらとの類似性を指摘されるバンドだけあって、それ風の叙情的でクラシカルな柔らかいサウンドが冒頭から飛び出してくる。女性歌手は平たく言ってしまえばアニー・ハズラム傾向のソプラノ・ヴォーカリスト。クラシカルなキーボードは初期ジェネシスを彷彿とさせる牧歌的な田園ファンタジー・サウンド。第2期ルネッサンスの様な、爽やかなサウンドの芯は実なタイトなリズム・セクション、といった雰囲気はない。演奏は至って平均的というか表面的。酷な言い方だがイギリスやドイツのシンフォニック・ロック・バンドの表面的なコピーの域を出ていない。「Lithphas」もまた、アコースティックな質感を巧みに取り入れたリリカルなサウンド。曲想や音響、まさにシンフォニック・ロックの王道というべき甘口な展開。苦節ウン年、下積みの長いバンドにしては演奏技量が平均並みなのが気にかかる。

「Odyssee」は旧アナログA面の最終曲。女性ヴォーカル入り。鳴きのギターはまるでキャメルのアンディー・ラティマー風。「Phoenix」はアルバムのタイトル曲。これまでの収録曲と大差ないリリカルなサウンド。リズム・セクションも精一杯頑張っている。これが10年前の1972年に発表されていたなら、彼等の評価や知名度は今日とは大きく異なっていたかもしれない。中間部分での展開はまるでピンク・フロイド「Wish You Were Here」の収録曲を彷彿とさせるよう。中間部から後半にかけて特に際立った盛り上がりもみせぬまま、曲は終わりを遂げる。「Iris (Imaginary Regards of an Irish Sea) 」は3分程度の曲。可愛らしい印象の、牧歌的なフォーク・ソング。ジョン・アンダーソンに是非歌わせてみたい様な曲だね。「 Floating Dawn」はオリジナル・アルバムの最終曲。陽炎の様な存在の、繊細なフルートとアコースティック・ギターの音色がたまらない。エンディングに相応しい透明感溢れるナンバーだ。

なお、Musea 版のCDにはボーナス・トラックとして「Lotos」が追加収録。本作制作時の未発表曲らしい。当時のレコードには収まりきらなかった、オリエントな雰囲気たっぷりなエキゾ・サウンド。この曲のみ、他の曲とは印象が大きく異なる。本編は正直、なんの事はないリリカルな古典的シンフォニック・ロックなのだが、この「Lotos」は違う。印象としてはサード・イヤー・バンドとエンブリオを足して2で割ったような、これこそジャーマン・ロックというべき異端なドローン系エスニック・サウンド。Tamboura や Tabla といったインドの古典的な楽器を利用しつつ、コンテンポラリーなアレンジを加えて完成させた、これぞ正真正銘のプログレッシヴ・ロック。当時のアナログ・レコードの収録時間の都合上か、あるいは他の曲の印象と大きく異なっていたからのか、正式発表が見送られた曲だが、個人的には、このボーナス・トラックの出来が一番優れていたと感じた。なんと言うか、皮肉なものである。

ここから先は余談。ドイツの作家ラルフ・イーザウ(1956年、ドイツ・ベルリン出身)による歴史ファンタジー小説に【暁の円卓(Der Kreis der Daemmerung)】という作品がある。20世紀全般を舞台にした壮大な物語で、ドイツ語原作の全4巻の中では明治天皇、伊藤博文、トールキン、パチェッリ枢機卿、ヒトラー、マッカーサー、ルーズベルト、アイヒマン、アインシュタイン、ジョン・F・ケネディといった、実際に存在した人物が登場するのだが、この作中で、レベッカの中心メンバーである Hubert Schneider の名前が主人公デービッド・キャムデンの偽名として使われている。しかも、この主人公の妻となる女性の名前がレベッカ(Rebekka Rosenbaum)。いや、単なる偶然かもしれませんが、なんだか調べている内に少々気になったものでして。

ページ最上部へ
関連記事
FC2ブログランキング人気blogランキングへにほんブログ村 音楽ブログへブログランキング【くつろぐ】参加中
コメント
初めまして。
今朝は何を聴こうかとレコード棚を漁ったら、このLPが出てきました。
当時、新宿レコードで奥方に薦められ買ったものですが、中に白地に黒字のバンドロゴが書かれたステッカーが入ってました。余程、宣伝してもらいたかったのか。

出だしの歌の調子でずっこけますが、後はまあまあですね。2曲目が低音(バスドラ、ベース)が強調されてて驚きますが、後半のギターソロはなかなかいいです。
残りは午後に聴きますが、CD出てたんですね。よく出したな。アマゾンではMP3だけのようですが、用意されてるだけでも驚きです。ボーナストラックは12分くらいあるんですね。これはちょっとLPには入らないかも。

まあこのLP、買ってから数回しか聴いてませんし、何も思い出すようなメロディーもありませんので、新線な気分で聴けます。
ステッカーは質がアレだったので別にしておきましたが、案の定、10年くらいで糊が溶け出してベトベトになってしまい、捨ててしまいました。
【2018/08/07 12:02】 | 隠居爺プログレ版 #- | [edit]
>隠居爺プログレ版さま
こんな寂れたブログにコメント頂き、
真に恐縮です。当時リアルで聴かれた
のですね。1982年当時は私は大学生、
就職も頭にあり、だんだんとロックから
離れつつあった時期でもありました。
【2018/09/19 23:17】 | co #- | [edit]












管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
トラックバックURL:
http://cottonwoodhill.blog21.fc2.com/tb.php/6265-ea326f25
≪ トップページへこのページの先頭へ  ≫
FC2カウンター

プロフィール

はじめに

Author:Cottonwoodhill
未確認・不確定な事でも堂々と書いてしまう無責任洋楽ブログ。根は洋楽ミーハーCottonwoodhillは感覚派B型人間なので記事の整合性が欠ける場合多々有り。過去の記事への不快なコメントなどは問答無用で削除します。

RSSフィード
CalendArchive

最近のアルバム評
Powered by 複眼RSS

最近のアルバム寸評

今日のBGM
ゼン・プレイ・オン(紙ジャケット SHM-CD)

最近のコメント
最近のトラックバック
LIVE TRAFFIC MAP
Myスカウター

スカウター : Cottonwoodhill 別別館

FC2検索

タグランキング

トラックワード
FC2 SEO リンク
FC2 アクセスランキング

TopHatenar

フィードメーター
フィードメーター - Cottonwoodhill 別別館
あわせて読みたいブログパーツ

ブログ通信簿

サイト価格ランキング


サイト売買のサイトストック

アクセスランキング
[ジャンルランキング]
音楽
123位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
洋楽
33位
アクセスランキングを見る>>

フリーエリア
  1. 無料アクセス解析