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#1378 Zingale / Peace (1977)

 2011-01-15
01. Heroica
02. Help This Lovely World
03. Carnival
04. Love Song
05. 7 Flowers Street
06. One Minute Prayer
07. Lonely Violin Crying For Peace
08. Stampede
09. Soon The War Is Over

Bonus Tracks
10. Lama Lo Zachiti BaPa'is (Why Didn't I Win The Lottery)
11. Hakol Yihe Beseder (Everything Will Be OK)
12. Bereshit (Genesis)
13. Kedai Lihiot Beyachad (Good To Be Together)
14. Mesiba Bifnim (Party Inside)
15. Toostoos Yarok Baderech Le'Asia (Green Scooter On The Way To Asia)

Zingale / Peace (1977)

今回紹介するのはロックの世界では辺境も辺境、日本でも古くから名盤との評価を得てきた、なんとイスラエル出身のプログレッシヴ・ロック・バンド、ツィンガーレ(ZINGALE)であります。ちなみにこのバンド、イスラエルとその占領地などで話されるヘブライ語では זינגלה と書くそうです(注:ヘブライ語を書く時は右から左へ)。なんて発音するのか、知性の乏しい私にはサッパリ判りませんが、このバンド、滅多に紹介される事のないイスラエルのロック・バンドの中では比較的昔から紹介される機会の多かったバンドでもある。なにせジャケットが意味深だ。ご承知の通り、中東のパレスチナに位置する国家イスラエルは非常に深くて悩ましい諸問題に長い間直面してきた。中東なんてこれまで生きてきて1度も足を踏み入れた事のない私の様な人間からすると、年がら年中、戦争やっている血生臭い区域というのがイスラエルに対する率直な感想。多分大方の人の感覚もこんな感じなのではないか。

古代から中世、近代から現代に至る複雑な歴史問題もあって、同国には宗教や文化、更に社会的背景の異なる多様な人々が住んでいる。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、そしてその他の少数派の宗教徒が狭い国土の中で暮らしている。人種も複雑だ。国民の大半はイスラエル生まれのユダヤ人だが、他の国からの移住者も多い。アラブ人も入れば少数派の民族もいる。地理的に見ても西洋諸国から東洋諸国から様々な文化が流れ込んで複雑な文化を形成してきた国と言われている。近代は勿論、起源前の昔から争いの絶えなかった地域という知識は世の誰もが持っている、イスラエルという国に対するステレオ・タイプな反応だと思うが、それだけに、《イスラエルのロック》と言われても、今イチぴんと来る物がない、というのが正直逸話ざる本音である。まあそれででもイスラエルという国は先進国だったから、こと音楽の分野でもイギリスやアメリカの若者向け音楽の殆どが同国に輸入されて若者の耳に届いていたであろう事も、よく考えれば想像に難くない。
ツィンガーレが世に残したアルバムは僅か1枚、、、、ではなくてこのバンド、実は近年オリジナル・メンバーを中心に再結成されて驚くべき事に新作を発表している。BEST MEDIA というレーベルから登場した「The Bright Side」というタイトルの2008年作品がそれだ。世のプログレ再認識ブームに触発され、彼らの様な超マイナーな知名度のバンドまで、再結成ブームの恩恵に与れ、ウン十年ブリに新作まで発表出来た様だが、今回はそちらの最新作の方は取り敢えず置いといて(持っていないので)、1970年代の唯一作品の方である。さて、ツィンガーレの出身はイスラエルの中心都市テルアビブ。結成は日本赤軍がテルアビブ空港で銃乱射事件を起こした1972年の2年後に当たる1974年。結成の中心を担ったのは Yonathan (Johnny) Stern と David (Hofesh) Bachar。 彼らの元にスタジオ・ミュージシャン上がりの Efrayim Barak(ギター)、Ehud "Udy" Tamir(ベース)、David Shanan(ドラムス)といった演奏家が集結してバンドの屋台骨が出来上がる。

この時期の音源としては「Lama Lo Zachiti BaPa'is (Why Didn't I Win The Lottery) 」「Hakol Yihe Beseder (Everything Will Be OK) 」といった2曲が現存する。結成当初は殆ど世間から注目されなかったらしい。だが当時のバンドのマネージャーだった Jacob Bachar はツィンガーレの音楽的才能を信じ、新たに2人の演奏家、即ち Tony Brower(ヴァイオリン、マンドリン)と Ady Weiss(キーボード)を参加させる。これで随分プログレッシヴ・ロック・バンドらしい体制が整った。マネージャーはバンドの英語圏での成功を信じ、テルアビブのスタジオ(Kolinor Studios)を押さえて英語歌詞によるインターナショナルなアルバムをメンバーに制作させる。プロデュースも Jacob Bachar 自身が担当した。1975年の終わり頃には制作も完了、更に欧州地域でのツアー成功を計画していた Jacob Bachar は欧州デッカのサポートを得て、彼らをヨーロッパ・ツアーの武者修行に生かせるつもりだったという。だがこの計画は(CD付属の冊子にもある様に)デッカ社内の諸般の事情などによって中止となってしまった。

英語圏での成功を夢みていた彼らの目論見はスタート当初から挫折。やむなく彼らは地元イスラエルの Hataklit と契約。この後、1976年から1977年頃にかけて彼らは「Bereshit (Genesis)」「Kedai Lihiot Beyachad (Good To Be Together)」「Mesiba Bifnim (Party Inside) 」「Toostoos Yarok Baderech Le'Asia (Green Scooter On The Way To Asia) 」といった曲をヘブライ語で吹き込み、これらを地元の放送局に送るなどしている。結局彼らは国際舞台での成功の夢を諦め、地元イスラエルで英語歌詞で録音した音源を1枚のアルバムとして発表する事に決めた。1977年に発表された「Peace」という作品がそれである。録音から正式発表までタイムラグがあったのは、こうした理由があったからだった。レコードはひっそりと発表されたが、幸か不幸か、世に出回った枚数が圧倒的に少なかったお陰で後にアナログ・レコード市場で高値を呼ぶ事になる。なんとも皮肉なもんだ。アルバム1枚を限りに解散。

メンバーの中には別のバンド(Atmosphera)に在籍して、当時新たな音楽活動を模索する動きもあった模様だが、こちらのバンドも当時正式にアルバムを発表する機会を得られぬまま、崩壊している。ちなみに Atmosphera 名義の2002年のアルバム「The Lady of Shalott」は1977年当時の未発表音源を収録した発掘物。さて、今回紹介するCDはそのツィンガーレの1970年代当時の唯一作。発表当時は Krypton というレーベルから、そして1999年にはイスラエルのレーベル、The 3rd Ear Records(Earsay Records の傘下レーベル)からCDが登場した。この1999年物のCDの時点でヘブライ語によるボーナス・トラックが収録されていた。今回私が取り上げるCDは 2002年物。限定紙ジャケット、リマスター商品で再発売したのは、やはりイスラエルのレーベル、Earsay Records。地元のアーティストを支援しているレーベルの様で、ツィンガーレ以外にも、Midnight Peacocks、Amit Erez、Rockfour、The Unnecessary Revolution、Albert Beger といった人達のアルバムを発表している。

Bright Side
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Zingale
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■ David (Hofesh) Bachar - Vocals
■ Yonathan (Johnny) Stern - Vocals, 12-String Guitar
■ Efrayim Barak - Guitars
■ Ehud (Udy) Tamir - Bass
■ David Shanan - Drums
■ Ady Weiss - Keyboards
■ Tony Brower - Violin, Mandolin
■ David (Doody) Rosental - Synthesizer, Percussion, Effects

では肝心の音楽に触れてみたい。1974年の初期音源、英語圏での成功を意識した1975年音源、挫折後の1976年音源と、時期の異なる音源が網羅された作品集。個別の曲にも触れてみる。「Heroica」は本編の冒頭曲。美しいヴァイオリン、フュージョン・ブームに触発されたかの様な柔らかいエレピ、タイトで手数の多いドラミング、タイトなベース・ランニング、イスラエルのロック・バンドとしてのアイデンティティはなんだろうか、と考えてもさっぱり頭に浮かんでこないが、イスラエルからすればずっとロック先進地域だった筈の欧州区域の市場での成功を目論んで計画されたアルバムの冒頭曲だけあって、1970年代当時のプログレッシヴ・ロック・ファンなら満足出来る事必至のサウンドが展開される。1977年ではなく録音された1975年当時に市場に放出されていれば、市場は彼らに好意的な評価を与えたかもしれない。「Help This Lovely World」は冒頭曲から流れる様に奏でられるバラード・ソング。イスラエルのバンドという背景が、この曲に深い意味を与えている。

「Carnival」は5分程度の曲。ザ・フーの様な導入部からアメリカン・プログレ・ハードの様な、何処と無くキャッチーで根明な演奏が披露される。デヴィッド・サーカンプ(パブロフス・ドッグ)のヴォーカルが飛び出てくんじゃないのか、という様な進行具合。この後曲は後半部分にいくに従ってタイトなジャズ・ロック風のアレンジが施されていく。セッション/スタジオ・ミュージシャンの集合体だったバンドだけあって、演奏技量は上レベル。その為か、人によってはアルティ・エ・メスティエリ当たりと比較される御仁もおられる様だ。「Love Song」は Efrayim Barak & Yaacov Bachar 作。前半部はタイトル通りの、刺激性皆無な愛らしいナンバー。この後、イエス風の手数の多い演奏が披露されたかと思えば、ピンク・フロイド調のアンニュイな演奏、テクニカル重視のカンタベリー・シーン系列のジャズ・ロック風のアレンジなどが登場する。デビュー作の水準を遙かに凌駕したレベルの高い楽曲だ。

「7 Flowers Street」は3分にも満たない短い楽曲だが、牧歌的でアコースティックな質感を重視した、とても良い曲だ。エンディング間際のジャジーな演奏も良好。続く「One Minute Prayer」はテープの逆回転を利用した、お遊び楽曲。「Lonely Violin Crying For Peace」はタイトル通り、Tony Brower のヴァイオリン演奏による、平和に捧げられた鎮魂歌。「Stampede」は雰囲気一転、ギター、ベース、ドラムス、キーボード、ヴァイオリンの各演奏者による手数の多い演奏を基盤にしたテクニカル・インストゥルメンタル・ジャズ・ロック。所謂、バカテク・ジャズ・ロックなんだが、平和を愛する彼らの熱い演奏の甲斐あって、クール一辺倒な雰囲気は余り感じられない。「Soon The War Is Over」は本編の最終曲。アルバムのタイトルと通じる、平和をテーマにした本作最大の聴き所。テルアビブとラマダンの出身者によって構成されたプログレッシヴ・ロック・バンド、ツィンガーレだが、本曲を作るに当たっては、彼らなりの深い思いがあったという。

1973年10月、イスラエルとエジプト、シリアなどの中東アラブ諸国との間で第四次中東戦争と呼ばれる戦争が勃発した。ユダヤ教を信仰する人達にとってはとても重要な休日であるヨム・キプール(贖罪日、10月6日)にアラブ側が奇襲を仕掛けるが如く、イスラエル軍に攻撃を開始、これにより両陣営の抗争が激化する。この戦争は僅かの間で停戦に至るのだが、多くのイスラエル人、エジプト人、シリア人、イラク人、ヨルダン人がこの紛争で死亡したと言われている。この1973年の紛争にツィンガーレのメンバーも駆り出された。友人や親族を失ったメンバーもいたという。こんな戦争はもういやだ。同じ人間なのに、出が違うだけで、信仰する宗教が違うだけで、肌の色が違うだけで殺し合うのは嫌だ、そんなメンバーの魂の叫びが吹きこまれた曲だという。イスラエル出身のバンドならでは、の重いメッセージが詰め込まれた楽曲であると言えよう。本編はここまで。この後の6曲はヘブライ語歌詞によるボーナス・トラック。

「Lama Lo Zachiti BaPa'is (Why Didn't I Win The Lottery)」は1974年録音。フォーク・ブルースとブルース・ロックを足して、ビートルズの「Ob-La-Di, Ob-La-Da」で割った様な、国籍不明な楽曲。それでいて、妙なポップ感覚もある。「Hakol Yihe Beseder (Everything Will Be OK) 」も1974年録音。日本人には余り耳慣れないヘブライ語によるイントネーションの響きとジャズ・ロック・タッチの演奏とのミス・マッチ感が妙。「Bereshit (Genesis) 」からは1976年録音。前2曲とは2年後という事だけあって、演奏にもアレンジにも磨きが掛かっている。基本はやはりジャズ・ロックなんだが、無理な英語歌詞から開放された事による開放感が、演奏に自然な伸びやかさを与えているのはなんとも皮肉。アフリカの音楽からの影響も感じさせる楽曲なんだが、アフリカや中東アラブ諸国とイスラエルの関係を考えたら、本来ならこれは画期的な出来事だった筈だ。ボートラだから、そんな事無視されるのが常なんだけど。

「Kedai Lihiot Beyachad (Good To Be Together) 」もアフリカの音楽からの影響を感じずにはいられないユニークな楽曲。欧州圏の市場で成功を得る為、(ある意味)媚びた演奏(とってもかなりハイレベルなんだが)を披露しなくてはいけなかった本編と異なり、非常にリラックスした、等身大の演奏が披露されている。これは一体どうした事か。「Mesiba Bifnim (Party Inside) 」「Toostoos Yarok Baderech Le'Asia (Green Scooter On The Way To Asia) 」も同様。私達日本人では到底想像もつかぬ複雑な歴史を持つイスラエルという国を母国とする音楽集団らしい豊かな音楽作品。底は非常に深い。この様な音楽はアメリカやイギリスの様な国から決して排出される事ははないだろう。彼らの魅力を満喫する為には、1975年録音のみで構成されたアナログ・レコードだけでは分からない。英語歌詞ではない、ヘブライ語歌詞による1975年前後の音源も一緒に鑑賞する事をお薦めする。ただ、このCD、市場では余り見つからない。店頭で見つけたら、辺境プログレ・マニアなら即ゲットだ。

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