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#0187 Massacre / Killing Time (1981)

 2000-07-02
1. Legs
2. Aging with Dignity
3. Subway Hearts
4. Killing Time
5. Corridor
6. Lost Causes
7. Not the Person We Knew
8. Bones
9. Tourism
10. Surfing
11. As Is
12. After
13. Gate

Killing TimeKilling Time
(1994/09/29)
Massacre

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英国ロック史上稀に見る高い音楽性を武器に1970年代を駆け抜けた空前絶後のアヴァンギャルド・ロック・バンド、ヘンリー・カウ。1970年代の前半に靴下をあしらったジャケットで音楽シーンに登場して以来、英国は勿論世界中の先鋭な音楽家に影響を与えただけでなく、実力がありながらも世に注目されなかったバンドを世に注目させるための活動なども積極的に展開したバンドでした。彼等はその活動期間中に大勢の音楽家とステージ上で競演を重ねた事も知られています。デレク・ベイリー、ロル・コックスヒル、ロバート・ワイアット、モント・キャンベル、ケヴィン・エアーズ、ファウスト、フィル・ミントン、エルトン・ディーン、マイク・ウェストブルックら。ドイツの前衛ポップ・バンド、スラップ・ハッピーとの融合もそんな活動方針の一環として行われたが、最終的にバンドにただ1人残ったダグマー。クラウゼの処遇を巡ってバンド内で不協和音が発生してしまいます。

ヴォーカル依存の一風変わった歌物バンドにしたいフレッド・フリス&クリス・カトラーとそれに反対するティム・ホジキンソン&リンゼイ・クーパーとの対立です。この対立は最終的に1978年の解散という出来事で収束を見る。フレッド・フリス&クリス・カトラーはダグマー・クラウゼとブレヒト/アイスラーの世界を現代に蘇らせたアート・ベアーズを経由して3枚のアルバムを発表するが、この路線の音楽はやり遂げたと悟ったのか、アート・ベアーズ崩壊と前後してメンバーはそれぞれ独自の道を進むのである。欧州を活動の拠点としてカシーバーというバンドを結成したクリス・カトラーとは違い、ギタリストのフレッド・フリスが選んだ道は前衛のメッカ、NY。1980年に早々と米国に移住してしまったフレッド・フリスはカンタベリー業界の先輩デヴィッド・アレンをリーダーとしたニューヨーク・ゴングに参加していたビル・ラズウェル、フレッド・メヤーといった人達とマサカーというバンドを結成してしまう。
欧州アートお得意のデカダンを感じさせるアート・ベアーズのようなバンドを率いて活動していたフレッド・フリスのような欧州人にとってはニュー・ウェーヴとフリー・ミュージックが合体したようなNYの音楽に衝撃を受けたのだろう。アート・ベアーズの3枚目の作品「The World As It IS Today」が発表された時点で既に米国でマサカーを結成していたのだから、アート・ベアーズの一員として活動を展開している最中、既に心は米国のフリー・ミュージックに視線が向いていたのかもしれない。海を渡ったフレッド・フリスはズー・バンド~マテルアルのベーシスト、ビル・ラズウェルやドラマーのフレッド・メイヤーに自身のバンドへの参加を打診した。パンク・ロックやポスト・パンク、ニューウェーヴ、ノーウェーヴとは一線を画すサウンドを再現していた初期マテリアルを初め、当時のニューヨークのアンダーグランド・シーンに感銘を受けたフレッド・フリスは欧州人である自分が米国でどこまで通用するのか確かめたかった。その最初となったのがマサカーとなった訳。

めまぐるしくリズム・チェンジを行う斬新なサウンドを得意とするマサカーのサウンドは当時のユーロ・ロック・ファンや様式美追求型のプログレッシヴ・ロックを好むファンにも多大なインパクトを与えた事だろう。当時の私もマテリアルやゴールデン・パロミノスといったバンドと同様、このマサカーも聴いていたが、初めて聴いた時の衝撃は今でも忘れられない。しかしながらマサカーとしての活動は短期間で終わってしまった。ギタリストのフレッド・フリスは勿論、ビル・ラズウェル、フレッド・マーも忙しい身の上であった事からアルバムは1枚限りで終わってしまった。実験の要素が強い作風である故、長く続かなかったのも充分理解出来る。このサウンドを聴いて、こうしたジャンク・ロックに取り付かれた人達はフレッド・フリスやビル・ラズウェル、アントン・フィアといった人達の作品を追い求めて彷徨い続ける事になってしまう。ああ、あの時代が懐かしい。1980年代前半はこうしたロックしか聴かなかった。

■ Fred Frith - Guitar, Cassiotone, Voice
■ Bill Laswell - 4 & String Bass, Pocket Trumpet
■ Fred Maher - Drums, Percussion

■ Martin Bisi - Engineer
■ Jean-Marc Foussat - Engineer

2000年7月2日に自分の掲示板で最初の記事を投稿したマサカーの記念碑「Killing Time」(1981年)だが、改めて聴き直してみた。当時の作品がリマスターされて再登場したからである。しかもディスク・ユニオンからは初回発売時のレコードのジャケットを再現した紙ジャケ仕様で発売されている。さて、彼等の名前は1990年代後半にチャールス・ヘイワードを伴った再結成劇で再びシーンに登場したが、アレは正直【マサカー】ではなかった。だが、こちらの作品は20数年前に当時の若者を熱狂させた作品の再発である。リマスターされただけでなく、当時僅かしか行われなかったというマサカーの貴重なギグから収録されたライブ音源も収録されている。これにより当時は13曲収録だったものが、今回の再発では19曲構成という形式になった。真偽の程は判らないが『マサカーは(ヘンリー・カウにも一時在籍していた)ピーター・ブレグバードのリクエストにより結成されました』という言葉もちゃんと記載されている。

「Killing Time」のオリジナル収録曲はパリの Rue Dunios(フリスの師匠デレク・ベイリーのライヴ盤「Outcome」もここでの収録) でライヴ録音されたものや、ブルックリンでスタジオ録音されたものが主。今回のボーナス・トラックには結成まもない1980年のCBGBでのライブ、前記の Rue Dunios での音源、サン・フランシスコやニューヨークでのライブ音源などが追加収録された。ライヴ録音とはいえ、拍手の類は全て消されているのでスタジオ録音の音源との差異は殆ど感じされない。この作品が発表された当時と言えば1970年代後半にデビューしたニューウェーヴ勢がデビュー当初の勢いを無くして息切れ状態であった。ネタ切れした多くのバンドは解散や自然消滅を余儀なくされたのだが、マサカーのようなバンドにはそうした心配は必要なかった。ジャズやプログレシッヴ・ロック、フリー、現代音楽といったジャンルの音楽に感化されて音楽家の道を選んだ本物のプロの演奏家達である。

現象としてのパンク・ロックに影響を受けて勢いにまかせてデビューしてしまった稚劣な同世代の若いバンドとは一桁も二桁も違うテンションの高い演奏を聴く事の出来た、当時の米NYの最先端のロック・ミュージックを確認するには絶好の資料と言っていいだろう。今の感覚からすれば可愛らしい側面もないではないが、1970年代のハード・ロックやプログレッシヴ・ロック、産業ロックの類、AOR、パンク・ロックといったジャンルのサウンドを過去の物と一掃してしまう程のパワーを秘めていたアルバムだった。なにを大袈裟な、というかもしれないが、当時は本当にそう感じたものです。フレッド・フリス、ビル・ラズウェル、フレッド・メイヤー(当時はフレッド・マーと発音)によるマサカーだけでなく、ゴールデン・パロミノスやマテリアルといった所謂セルロイド系サウンドは当時が旬。1980年代前半にはセルロイド系のサウンドは日本のTVコマーシャルにも起用されていた位だからね。

肝心のサウンドであるが、パンク・ロック、ニュー・ウェーヴ/ノー・ウェーヴやフリー・ジャズ、ファンク、アヴァンギャルド、インプロヴィゼイションといったサウンドが混在した、所謂ジャンク・ロック。ロックのフォーマット上でフリー・ミュージックの要素が繰り広げられる、こうした形態のサウンドはロックのフィールドから眺めると極めて異例。1970年代後半のNYにおけるノー・ウェーブ勢や英国のポップ・グループのようなバンドの台頭も微妙に影響を与えたに違いない。だが、演奏能力の高さはノー・ウェーブ勢やポップ・グループとはまるで比較にならない。エッジの尖ったスリリングなジャズ・ファンク・ロックは当時を知る往年のファンだけでなく、1980年代前半当時の米NYの最先端の音楽を知りたい世代の若い音楽ファンには格好の資料である。今回のボーナス・トラックも魅力的。特にパリ(Rue Dunios)でのライブ録音が特典音源を含めると作品のかなりの部分を占める事になるが、ステージ上ではかなりインプロヴィゼイションに興じた演奏を繰り広げていた事が確認出来た。

【修正加筆:2005/12/31】

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