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#1406 Brenda Patterson / Brenda Patterson (1973)

 2011-03-21
01. Dance With Me Henry
02. The Crippled Crow
03. Hold An Old Friend's Hand
04. Southern Brown
05. Hope He'll Be Happier With Her
06. Jesus On The Mainline
07. End Of The Road
08. I'm Gonna Be Strong
09. Mine All Mine
10. Bury Me Down By The River
11. In My Girlish Days
12. Congratulations

Brenda Patterson

プレイボーイ・レコーズ(Playboy Records)って、知ってますでしょうか。まあ、名前から大方想像がつくように、このレーベルは男性向け雑誌「PLAYBOY」を発刊する Playboy Enterprise が1970年代の一時期、米カリフォルニア(LA)で運営していた会社。男性向けのエロいレコードを発売? いやいや、なかなかどうして本格的なレコード・レーベルとしてかなりの点数に及ぶレコードを発表していたレーベルなんだな、これが。あの世界的に有名なABBAのレコードを初期の頃に米市場で配給していたし(ベニー・アンダーソン&ビョルン・ウルヴァース名義のシングルも同様)、その他にはティム・ローズ、ジム・サリヴァン、ドック・カービー&カンパニー、レッドベリー、フィリップ・ウォーカー、シャロン・キャシュ、スミス・ヴィンソン、デヴィッド・リー・ダニエルズ、ミッキー・ギリー、アル・ウィルソン、ティミ・ユーロ、ジョーイ・ステック、ウィン・スチュワートといった人達も在籍していた。

あっといけない、50歳前後の人には懐かしい元プレイメイトのバルビ・ベントン(PB誌の創業者ヒュー・ヘフナー氏と恋仲にあった事からデビューを飾ったカントリー・ポップ・ガール)もこのレーベルからのデビュー組。これらのアーティストの名前を見ても、所謂イロモノ的なレーベルではなく、(レコード契約を求める)カントリーやブルース、フォーク、スワンプなどのジャンルに属するアーティスト達にとってはある意味救いの場(金にものを言わせて引っ張ってこられたのかもしれないが)でもあったようだ。このレーベルの話からどうして始めたかというと、これまでどうしても欲しいと思っていたアルバムがあって、それが今回目出度く入手できたから。作品の名前は「Brenda Patterson」。アーティストの名前もブレンダ・パターソン。彼女が1973年にプレイボーイから発表したスワンプ作品が遂にCD化されたのである。実はプレイボーイ・レコーズは隠れたスワンプ・サウンド系アルバムの宝庫だったのである。
出身は米南部に位置するアーカンソー州。正確な生年月日は判らないが、恐らく1950年前後だと思われる。ミシシッピ州やテネシー州、テキサス州、ルイジアナ州、ミズーリ州といった、米ルーツ・サウンドを語る際に欠かす事のできない地区に隣接した場所の生まれである事からも大方想像がつくように、子供の頃から音楽に目覚めてローカルな区域で歌を披露していたのだという。レコード・デビューのきっかけとなったのはテネシー州メンフィスのとあるクラブで歌っていた所を認められたからだという。1970年のエピック作品「Keep on Keepin' On」でアルバム・デビュー。ゲストにネイティヴ・アメリカンのパット&ロリー・ヴェガスを主体とするLA拠点のバンド、レッドボーン(Redbone)が参加。プロデュースはローレンス・コーン。アル・クーパーやボブ・ディラン&リック・ダンコの曲なんかがカバーされているのだという。これまで聴いた事はないのだが、綺麗な顔とは裏腹の迫力満点なヴォーカルが披露されているらしい。

この後、メンフィス生まれで、かつてスティーヴ・クロッパーやドナルド・"ダック"・ダンらとマーキーズというバンドを組んでいた、米南部サウンドの仕掛け人ドン・ニックスが結成したビック・バンド構成のアラバマ・ステイト・トゥルーパーズにマウント・ツァイオン・クワイヤ(The Mt. Zion Choir)のメンバーとして参加。1972年にエレクトラから発表された「Alabama State Troupers Road Show」という2枚組アルバムに収録中のトラッド・ナンバー「Jesus On The Mainline」で自慢の声を披露している(CDはボーナス・トラックを追加収録した「Live For A Moment」というタイトルで復刻済み)。この後、プレイボーイ・レコーズに移籍。そして1973年に発表された作品が「Brenda Patterson」である。同年の仕事としてはもう一つ、ボブ・ディラン「Pat Garrett & Billy The Kid」収録の「Final Theme」でバック・ヴォーカリストとして参加している。翌1974年には通算3作目のソロとなる「Like Good Wine」を DiscReet Records から発表した。

ソロ歌手としての活動は実はこの時点でお終い。ブレンダ嬢はクーン・エルダー率いるバンドに参加して、同バンドの1977年作「The Coon Elder Band」制作に関わった他、1980年代ではライ・クーダーのサントラ作品「The Border」への参加、1990年代では Calvin Russell というSSW?の「Sam」というアルバムに参加している。2000年代以降では、Cooley's House、Willy DeVille、ノース・ミシシッピ・オールスターズ、ジム・ディッキンソンといった人達のアルバムで彼女の名前が見受けられるが、いずれにせよ結婚~出産~子育てという人生で音楽の世界からは足を洗ってしまった、というところだろう。後は今現在でCD化が遅れている「Keep on Keepin' On」や「Like Good Wine」当たりの作品を是非とも復刻して欲しい。昨今、CDが売れない、 とお嘆きの音楽業界だが、CDを買う世代の年齢層を考えれば、履いて捨ててしまってもいい消費音楽よりもこの手の1970年代ロックの復刻を真っ先に考えた方が得策だと思いますよ。

なお、インターネット上での記述では、彼女は Sam the Sham の異名を持つ米ロックンロール歌手、Domingo “Sam” Samudio(1937年、米テキサス州ダラス生まれ)と結婚していたという(今も夫婦かどうかは不明)。この人は1960年代に頭にターバンを巻いた、いかにも如何わしいいかさまアラブ人という風貌で The Pharaohs というバンドを率いて「Wooly Bully」(ストラングラーズのファンにもお馴染みの曲。ブライアン・フェリーやブルース・スプリングスティーン、バッド・マナーズなんかもステージで歌っている)や「Li'l Red Riding Hood」 といったヒットを飛ばして一躍時の人となった人。スワンプ・ロック・ファンにはバイクに跨った彼の1971年のソロ「Sam, Hard and Heavy」が裏名盤としてよく知られているとか(未聴)。実は彼はライ・クーダーの「The Border」制作にも深く関わっていたという事実がある。ライ・クーダー繋がりで、或いは夫の依頼でブレンダ・パターソンはライのアルバムに参加する事になったのだろう。

■ Brenda Patterson - Vocals
■ Jim Dickinson - Organ, Acoustic Guitar, Piano
■ Charlie Brent - Piano, Acoustic Guitar
■ John Kahn - Piano, Electric Bass
■ Ry Cooder - Electric Slide Guitar, Mandolin
■ Wayne Perkins - Electric Guitar
■ Rusty Young - Steel Guitar
■ Fred Burton - Electric Guitar
■ Rafael Garrett - String Bass
■ Gene Page - Conductor

※ Guitar - Arthur Adams, Louice Shelton, Beau Charles, Peter Swaidon
※ Bass - Chris Ethridge, Wilton Felder, Carol Kay
※ Drums - Allyn Robinson, Tont Dey, Johnny Barbata, Ed Greene, Paul Humphries
※ Piano - Rick Allen, Clarence McDonald, Michael Rubini
※ Organ - Merl Saunders, Peter Swaidon
※ Harmonica - Bobby Ray Watson, Bruce "The Creeper" Kurnow, Donna Weiss
※ Back-up Vocals - Lee Baker, Donna Weiss, Donna Washburn, Vanetta Fields, Clydie King, Vanetta Fields, Shirley Matthews, Jessie Smith, Bobby Ray Watson, Donna Weiss, Beau Charles, Robbie Montogomery, "Edna", Melissa McKay

さて、「Brenda Patterson」。1973年作品。かねてからCD化が待ち望まれていたスワンプ・ロックの隠れた名品。CDは韓国の BEATBALL MUSIC のサブ・レーベル である BIG PINK から。収録は全部で12曲。プロデュースは Jim Dickinson、Larry Cohn、Geoge Tobin、Charlie Brent、John Kahn、Brenda Patterson と曲によってまちまち。録音は2箇所。CBSのスタジオ(1, 5, 6, 7, 10, 11, 12)、BULLET RECODERS(2, 3, 4, 8, 9)となっている。録音にジム・ディキンソン、ライ・クーダー、ウェイン・パーキンス、ラスティ・ヤング、ヴァネッタ・フィールズ、クリス・エスリッジ、アーサー・アダムズ、ドナ・ワイス、マール・サンダース、ジョニー・バーバタ他。見ての通り、曲によってかなりの人数の演奏家が参加している。ジャケットに映る綺麗なお顔の横顔とは全く不釣り合いの、パワフルかつソウルフルな歌声を披露する実力派。では個別の曲にも触れてみる。「Dance With Me Henry」(Johnny Otis作)はライ・クーダーのスライド・ギターがフューチャーされた、いきなりの油濃いスワンプ・ロック。もう最初の曲だけでKO状態。女ロッドという、今更ながらの冠言葉がよく似合う。

続く「The Crippled Crow」(Donna Weiss作)はスモーキー・ロビンソンやジョン・ヴァレンティなどを手がけた George Tobin の手によるもの。彼のプロデュース作品がここから数曲続いていく。ピアノ、ハーモニカなどをフューチャーした軽快なカントリー・ロック。「Hold An Old Friend's Hand」(Donna Weiss作)も比較的大人しめのアレンジ。嗄れ声のせいか、印象はまるで女ロッド・スチュワート風。「Southern Brown」(Ronnie Wilkins & Ed Simmons作)でも、やっぱり、の濃厚な仕上がり具合。1度聴いたら耳に焼き付いて離れない個性的な歌声がたまらない。「Hope He'll Be Happier With Her」は【クリスタルの恋人達】の邦題で一世を風靡したグローヴァー・ワシントン・ジュニア「Just the Two of Us」でヴォーカルを担当したビル・ウィザースの1971年のソロ・デビュー作に収録されていた曲。クールな歌声のビル・ウィザースのイメージとは裏腹のジャニスばりのパワフルな歌声がたまらない。

「Jessus On The Mainline」は例のアラバマ・ステイト・トゥルーパーズに収録されていた曲。作者不詳のトラッド・ナンバー。米南部サウンドの真髄というべき、ゴテゴテのゴスペル調スワンプ・ロック。「End Of The Road」は火の玉ロックンローラー、ジェリー・リー・ルイスのカバー。ファンキーで泥臭いアレンジは1970年代前半のクラシック・ロックを好む人にも愛されるだろう。「I'm Gonna Be Strong」はここまでの収録曲とは少し毛色の違う、バリー・マン&シンシア・ウェイル夫妻の手による、それらしいストリングス入りのバラード・ソング。だがやっぱり、濃い、濃い。「Mine All Mine」はハロルド・ビーティの手による、まるでフェイセズ牴牾の泥臭い酔いどれロック。この手の曲もよく似合う。こういう曲を聴くと、彼女もマギー・ベルやエルキー・ブルックス、インガ・ランプの様にロック・バンドのリード・ヴォーカリストの座に収まって活動した方がよかったんじゃないか、とさえ思えてくる。個人的にはベスト・テイク。

「Bury Me Down By The River」は彼女にイメージには不似合いのビー・ジーズのカバー。あのスコットランド出身の女性歌手ルルが米南部サウンドに憧れて制作したアルバムにも収録されていた曲。オリジナルはビー・ジーズらしからぬ米南部サウンドのエキスを内包した曲だったのだが、この曲に目をつけた制作サイドの着眼点もなかなかのもんだ。「In My Girlish Days」はミニー・ダグラス(メンフィス・ミニー)作によるブルージーなカントリー・ナンバー。こういう曲も彼女の真骨頂。ライ・クーダーのマンドリン演奏も聴き応えあり。「Congratulations」はいよいよ、のエンディング曲。オリジナルはポール・サイモンの1972年のソロ作品「Paul Simon」に収録されていた曲。ポール・サイモンもそうだが、ビル・ウィザース、バリー・マン、ビー・ジーズと、一見彼女のイメージに似合わないアーティストの曲を取り上げていて、一瞬場違いな気がしてしまいそうなんだが、曲を聴いてみると、まるで最初から彼女のオリジナル曲の様に聴こえてしまうから不思議なものである。

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