#1409 Living Sisters / Love To Live (2010)

 2011-04-11
01. How Are You Doing? 【YouTube】
02. Ferris Wheel
03. Blue 【YouTube】
04. Cradle
05. Good Ole Wagon
06. Hold Back
07. The Mountain Has Skies
08. Double Knots
09. (You Don't Know) How Glad I Am
10. Don't Let the Sun Go Down

Living Sisters / Love to Live

ある日ある時、日本の音楽業界人や権利関係者からすれば今やすっかり悪役として定着した YouTube で偶然耳(目)にした動画。白人女性歌手達によるグループらしいが、レトロでノスタルジックなサウンドに一変で魅了された。『一体いつの時代の歌手なんだろうか。昨今の復刻ブームのお陰で発掘された、恐らくは1960年代か或いは1970年代初頭のグループなんだろう。』正直、私は最初そう思いました。で調べたらびっくり。1960年代とか1970年代とかではなく、2010年にデビュー・アルバムを発表したばかりの新人さん達であった(後に触れるが実際にはズブの素人さんではなかったけど)。こりゃいい、と即座に決断した私。どう? 日本の音楽産業の舞台裏で働く皆さん、私はこうして YouTube 経由でCDを購入するケースがここ数年多いんですよ。もっと積極的に YouTube に PV を無料提供する事を邁進してみればいかがですか。私の様なオジサンが YouTube で動画を見て買うケースが増えますよ。だったほら、今時CDなんて買うのは私のようなオジサンばかりなんですから。

話はそれました。今宵の主役はザ・リヴィング・シスターズ(The Living Sisters)。2006年、米カリフォルニア州LAにて結成。ジャンル的には、She & Him、Secret Sisters、Ditty Bops、Langley Sisters と同様の、ノスタルジックなサウンドをモダンな解釈(グループによって解釈の濃さもいろいろ)によって再構築したコンテンポラリー・ガールズ・グループ。大雑把な例えだが、戦前から戦後の1950年代にかけて一世を風靡した、ラヴァーン、マキシン、パティのアンドリュー3姉妹によるアメリカの女性グループ、アンドリュー・シスターズを現代に蘇らせたと思えば当たらずとも遠からず。日本風に言えば昭和の時代の女性ポップ・ソングを現代的な解釈を用いて現れたと思えばいいかもしれない。知らない方なら彼女らのグループ名を見て、恐らくは誰もがうら若い20歳前後の乙女によるグループを想像するだろう。ここから種明かし。実は結構年のいったおねえさん(と書いておく)達によるコラボレーション的な意味合いのあるグループなのだ。もしかすると、この1枚限りで消滅してしまうかもしれない。
なので旬が廃れない内に紹介しておく。メンバーはイナラ・ジョージ(Inara George)、ベッキー・スターク(Becky Stark)、エレニ・マンデル(Eleni Mandell)の3人。実は既にプロの音楽家として既にある程度のキャリアを誇る女性達。まず一人目。イナラ・ジョージ(本名:Inara Maryland George)は1974年7月、米メリーランド州ボルチモアの生まれ。1996年、Lode「Legs & Arms」(ギターやヴォーカルを担当)を皮切りに音楽活動を開始。ソロ作品に「All Rise」(2005年)、「Accidental Experimental」(2009年)、ヴァン・ダイク・パークスの協力を得て制作した「An Invitation」(2008年)などがある。1998年結成の Merrick にも参加、同バンドの「Merrick」(2001年)にもクレジットがある。グレッグ・カースティンとの男女コラボ・ユニット、ザ・バード&ザ・ビー名義で2007年以降、「The Bird and the Bee」「Ray Guns Are Not Just the Future」「Interpreting the Masters Volume 1: A Tribute to Daryl Hall and John Oates」といった作品が存在。セッション参加も数多し。サントラ作品への参加もある。そしてなにより注目なのは彼女がローウェル・ジョージの娘だという事。

インディ/オルタナ・ポップ系のイナラ・ジョージに続いて次はベッキー・スターク(本名:Rebecca Ann Stark)。彼女は1976年、米カリフォルニア州カルヴァーシティの生まれ。2004年に結成されたラヴェンダー・ダイアモンドというポップ・ユニットのリード・ヴォーカリスト(こちらでは本名のレベッカ・スタークとして活動)として音楽の世界に足を踏み入れている。これまで「The Cavalry of Light」「Imagine Our Love」といった作品が存在。ベッキー・スタークのフェミニンな魅力を全面に押し出したドリーミー路線のインディ・ポップといったところだろうか。他に参加作品として Winter Flowers「Winter Flowers」、俳優アンソニー・ホプキンスの息子 Elvis Perkins「Ash Wednesday」「Elvis Perkins in Dearland」、The Decemberists「The Hazards of Love」、Fujiya & Miyagi「Ventriloquizzing」、Greyboy Allstars「What Happened to Television?」、マドンナのトリビュート・アルバム「Through the Wilderness」などが存在。

そして3人目。エレニ・マンデルは1969年10月、米カリフォルニア州LAの生まれというから、失礼ながら既に乙女という世代の年齢ではない。トム・ウェイツの影響下にある気だるい雰囲気のSSWとして「Wishbone」(1999年)で音楽の世界に足を踏み入れた人。これ以前に映画音楽作品への参加もある。トム・ウェイツ傾向の退廃的なサウンドを得意とする個性的な作風故、これまで商業的な成功とは無縁の世界を歩んできた人のようだ。ソロ作品として「Thrill」「Snakebite Space」「Country for True Lovers」「Afternoon」「Miracle of Five」「Artificial Fire」といった作品を世に放っている。バンドのメンバーの一員としての活動もあって、2005年に結成されたグラブス(The Grabs)のメンバーとして「Sex, Fashion, and Money」「Political Disco」といった作品に参加。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドみたいな、プロト・パンク的なサウンドを放出している。セッション参加作品としてチャック・E.ワイスやザ・ブロンズの作品に参加。クリス・コロンバス監督の青春ラヴ・コメ映画『愛しのベス・クーパー』にも曲を提供しているようだ。

InvitationBird & The Beeイマジン・アワ・ラヴAfternoonSex Fashion & Money

■ Inara George - Vocals, Acoustic Guitar
■ Eleni Mandell - Vocals, Acoustic Guitar
■ Becky Stark - Vocals

■ Jeremy Drake - Electric Guitar
■ Aaron Embry - Synthesizer, Sounds
■ Sheldon Gomberg - Bass
■ Joshua Grange - Pedal Steel
■ Steve Gregoropoulos - Synthesizer
■ Barbara Gruska - Drums
■ Don Heffington - Drums
■ Danny McGough - Synthesizer
■ David Ralicke - Saxophone

オルタナ系、ドリーミー系、退廃系、三者三様、個性も年齢も違うが、それぞれの立場やスタイルでアメリカン・ルーツ・サウンドに深い造詣の念を抱く3人の女性(イナラ・ジョージ、ベッキー・スターク、エレニ・マンデル)が集まって結成されたプロジェクトがリヴィング・シスターズ。どんな内容なのかはジャケットを見れば判る。ジャケットを一目見れば判る通り、刺激的なブリティッシュ・ビートが米音楽界を席巻する以前の古き良き時代、例えば20世紀のアメリカを代表する画家の一人であるノーマン・ロックウェルが活躍していた、1940年代から1950年代位までの懐かしい時代を連想するかのようなオールド・タイミーな音楽を目指した、擬似 '50年代ガールズ・ポップス・ユニットがリヴィング・シスターズの正体だ。ジャケットに映る写真はまるで彼女達の母親の世代の女子学生のようでもある。デジパック製CDのジャケを開くとやや(これまた失礼)シスターズと呼ぶにはうーんちょっと、といった容姿の女性3人が写っている。まあ、いいじゃありませんか、おばさんがうら若き乙女を演じても(更に失礼)。こういうサウンド・コンセプトのしっかりした企画物は面白いもの。

兎に角、どこから聴いてもノスタルジックでチャーミングでキュートな癒される音楽。ドゥーワップやヴォーカル・ジャズ、ハーモニー・ポップ、フォーク、カントリーなどのクラシカルなスタイルの音楽がここには詰まっている。3人の女性のうち、ラヴェンダー・ダイアモンドのベッキー・スタークの個性が一番リヴィング・シスターズのコンセプトに近いと思われるが、反対にインディ/オルタナ・ポップ系のイナラ・ジョージやトム・ウェイツの影響下にあるエレニ・マンデルの個性はかなり薄められた印象だ。実際にはイナラ・ジョージはバンドのリーダー的な存在を演じ、エレニ・マンデルは(彼女の個性を考えると以外だが)収録されている曲の大半を手がけている。ベッキー・スタークはリヴィング・シスターズのコンセプトを象徴する存在としてキュートな役割を思う存分に演じている。レトロなエキスの音楽に比重を置きながらも、現代的なアレンジによる調味料もごく控え目ながらも投入されているので、古臭いだけの懐古趣味的な作品とも違う。3人のセンス、そして彼女達と共にアルバムのプロデュースを担当した Sheldon Gomberg の手腕にも拍手喝采といった所だろう。

ちょっと簡単に個別の曲にも触れてみる。「How Are You Doing? 」はアルバムの冒頭曲。『ヒューマン・ネイチュア』 『エターナル・サンシャイン』などで知られる現代の鬼才ミシェル・ゴンドリーが彼女達のコンセプトに魅了されたのか、久々にPVを担当した曲でもある。ジャケットのイメージを裏切らないネオ・ノスタルジア・サウンド。「Ferris Wheel」はけだるいペダル・スティールが印象的なエレニ提供曲。この後も「You Make Me Blue」「Cradle」とアルバムのコンセプトに沿った曲が続く。「Good Ole Wagon」は戦前の米ポピュラー音楽を代表する黒人女性歌手、ベッシー・スミスの曲。戦前の曲が3人の女性達のオリジナル曲と並んで登場しても全く違和感が感じられない。こういう時代の曲を彷彿とさせる音楽の復刻がリヴィング・シスターズのコセンプトなのだから相性は抜群の筈である。「Hold Back」はエレニ曲。リード・ヴォーカルも彼女。嗄れ声のエレニの声は彼女には悪いがリヴィング・シスターズのコセンプトには似合わない。

「The Mountain Has Skies」はベッキー・スターク提供曲。カントリー・タッチのアレンジが実に清々しい。「Double Knots」「(You Don't Know) How Glad I Am」といった曲に続いてアルバムはベッキー・スタークの手による「Don't Let The Sun Go Down」で幕を閉じる。これでお終い。仕事に負われてストレスがたまった様な状態で聴くと効果があるかもしれない、居心地の良い極楽音楽。実際には妊婦もおばさんもいるのだが(最後にきてこれまた失礼)、アラサー、アラフォーのマジックに掛かって時を忘れてしまうのもいいかもしれない。地震、津波、原発事故、放射能汚染、電力不足による計画停電。そして長引く経済不況。2011年という時を過ごす私たち現代人の頭の上には苦難と困難がのしかかっている。そんな疲れた頭を癒すのには本当に最適な音楽であるといえる。これは間違いなく断言できる。テレビを見るだけで、もううんざりする、という人には是非1度リヴィング・シスターズの音楽を聴いてみたらいががだろうか。

The Living Sisters |

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