#1411 Bonnie Dobson / Bonnie Dobson (1969)

 2011-04-25
01. I Got Stung
02. Morning Dew 【YouTube】
03. Let's Get Together
04. I'm Your Woman
05. Time
06. Rainy Windows
07. Everybody's Talking
08. Bird Of Space
09. You Never Wanted Me
10. Pendant Que
11. Elevator Man
12. Winter's Going 【YouTube】

Bonnie Dobson

1977年12月13日、私は地元のレコード店である1枚のハード・ロック・アルバムを購入した。タイトルは「Truth」。アーティストはロック・ギタリスト、ジェフ・ベック率いるジェフ・ベック・グループ。ジェフ・ベック・グループはヤードバーズ脱退後のジェフ・ベックがソロ活動の後に結成したバンドで、後にスモール・フェイセズ(フェイセズ)に参加する事になるロッド・スチュアートやロン・ウッドが在籍していたバンドでもある。「Truth」はそのジェフ・ベック・グループの1968年の第一作。ジェフ・ベックは自作曲を作るのは苦手なタイプだった為、本作はブルース曲のカヴァーが中心という内容だったのだが、その中で異色とも言える曲が取り上げられている。(当時10代だった私はなんの抵抗なく聴いてしまったのだが)A面の3曲目に収録されていた、お馴染みのロッド・スチュアートの嗄れ声をフューチャーしたブルージーなアレンジのブルース・ロック・ナンバーである「Morning Dew」という曲がそれだ。

この曲、オリジナルはブルース歌手の元歌ではなくフォーク歌手の作った曲。作ったのはボニー・ドブソンという名前の女性フォーク歌手(と米SSWのティム・ローズ)。ボニー・ドブソンはカナダ出身のSSW。「Morning Dew」という曲は今の時節にぴったりなテーマの曲でもある。この曲、実は反核ソングでもある。航空エンジニアという肩書きをも持つ異色の英小説家ネビル・シュート(1899-1960)が1957年に発表した小説『渚にて(On the Beach)』。内容は1964年、第三次世界大戦にて核爆弾による放射能汚染で北半球が壊滅、その放射能で人々が被爆していく様を捉えた内容で、2年後の1959年にはスタンリー・クレイマー監督、グレゴリー・ペック主演で映画化もされている。公開当時は賛否両論を巻き起こすも、興行的には成功を収めて第32回アカデミー賞では劇・喜劇映画音楽賞と編集賞の2部門にノミネートもされている。この映画を見たボニー・ドブソンは内容にいたく感銘を受けて、この「Morning Dew」という曲を数年後に書いたのだという。
1940年11月13日、カナダはオンタリオ州の州都トロント出身。ボブ・ディランやジョーン・バエズ、フィル・オクス、トム・パクストン、ジュディ・コリンズ、フレッド・二ールらと同様、1960年代前半のNYのフォーク・シーンに飛び込んで音楽活動を展開していた一人でもあった。その彼女、1960年代の前半だけでなんと5枚ものアルバムを発表している。最初のアルバムは1960年(1961年?)に Prestige International から発表された「She's Like A Swallow And Other Folk Songs」。その後、「Dear Companion」、「At Folk City」(Prestige Folklore から再発された時には「Hootenanny With Bonnie Dobson」のタイトルで登場)、「A Merry Go-Round of Children's Songs」、「For the Love of Him」といった作品群を1964年までの短い期間に発表している。シングル盤が発表されていたかどうかは判らない。これら以外にオムニバス物として「Philadelphia Folk Festival 1962, Vol. 1」「Folklore Jamboree」といった作品に彼女の曲が収録されている。

Prestige 系列のレコード会社からアルバムを沢山発表していたにも関わらず、メランコリックなフォーク歌手ボニー・ドブソンのアルバムはあまり売れなかったという。その為、1964年のアルバムを最後に彼女はアルバム制作の舞台から一時遠ざかってしまう。その後彼女は1969年になってカムバックを果たすのであったが、そのキッカケとなったのが映画『渚にて』を見て作った「Morning Dew」という曲だった。この曲のオリジナルは1962年の「At Folk City」で初めて公式に披露されるのだが(著作権絡みの問題で彼女の歌詞に手を加えたティム・ローズが共同著作者としてクレジットされる事になったという)、この曲が1967年にグレイトフル・デッド、1968年にジェフ・ベック・グループという人気ロック・バンドにカヴァーされる事によって一躍彼女の名前が音楽業界で再クローズアップされる事になる。かくして売れないフォーク歌手に再デビューの話が舞い戻ってきたのだった。

Good Morning RainVive La CanadienneLooking Back

■ Bonnie Dobson - Guitar, Vocals
■ Ben McPeek - Arranger, Conductor
■ Jack Richardson - Producer
■ Dave Bird - Producer
■ Ian Jacobson - Engineer

■ Joe Foster - Producer, Synthesizer
■ Nick Robbins - Synthesizer

ボニー・ドブソンは今度は RCA Records と契約、そして '60年代も押し迫った1969年に自身にとっても久々となる新作「Bonnie Dobson」を発表する。垢抜けないフォーク歌手という従来のイメージを一新する、サイケデリックの時代らしいジャケット・デザイン。デザインを担当したのはカナダのロック・バンド、ゲス・フーの「Wheatfield Soul」のジャケットを担当した Nick Speke。録音は1969年3月、カナダはトロントのスタジオにて。プロデュースは Dave Bird、Jack Richardson。オケの指揮者はベン・マックピーク(Ben McPeek)。この人は作曲家、アレンジャー、ピアニストの肩書きを持つ音楽家で、ソフト・ロック/ポップスのファンの方ならご承知の人らしいが、甘口のソフトな音楽を監修させたらカナダ国内では定評のある人らしい。ミューチュアル・アンダースタンディングというカナディアン・ソフト・ロック・バンドでの仕事ぶりでも知られる人物だそうだ。なお、本CDはこの手の女性物の復刻に関しては定評のあるチェリーレッド系列の Rev-Ola Records(2006年製)。

女性フォーク歌手として知られるボニー・ドブソンであるが、本作はむしろカナダ産のアシッド・フォーク作品としての認知度が高い作品だ。彼女にとってはカムバック作ともいえる本作だが、随所で軽妙なシタールの音色が導入されたり、彼女の歌やメロディに合わない大衆向け仕様のオケの導入があったりして、一風変わった色彩のフォーク作品として仕上がっているのが特徴でもある。のどかなフォーク・ロックといった雰囲気も少々。そしてシタールとオーケストラの微妙なバランスさ加減。RCAは本作制作にあたっては、大衆向けのフォーキーなポップス作品に仕上げようとしたのかもしれないが、このアンバランスな感覚は人によってはカルトな内容に聴こえてしまう人もいるだろう。冒頭のナンバーは彼女の自作による「I Got Stung」。フォーク歌手の、というよりは日本の昭和40年代の歌謡曲みたいな、かなり安っぽいアレンジが気にかかる。当時、サイケデリック・サウンドを構築するのには必須のアイテムであった筈のシタールも、ここではなんだか炭酸の抜かれたサイダーみたい。

「Morning Dew」は彼女自身の手によるセルフ・リメイク。清潔感のある彼女のハイトーン・ボーカルにベン・マックピークの指揮/アレンジによる甘口で大袈裟なオケが被さってくる。「Let's Get Together」はクイックシルヴァー・メッセンジャー・サーヴィスの中心人物であり、以前はグリニッジ・ヴィレッジのフォーク・シンガーでもあったディノ・ヴァレンテのカヴァー。サイケなメロディを奏でるオケのアレンジがなんだか変。一見毒のない清涼飲料水みたいな曲だが、聴き込むとなんだか妙な気分に陥ってしまいそうだ。「I'm Your Woman」は本作における彼女の代表曲の一つ。フォーク歌手が作る曲らしい旋律だが、ここでも甘口で大袈裟なオケが被さってくる。これを邪魔と感じるか、それともいい調子と感じるかは人それぞれだろう。「Time」は Hal Shaper & Jean-Pierre Bourtayre 作。これもねえ、なんだか昭和の時代の日本の歌謡ポップスにもよくあった様な雰囲気。

ボニー・ドブソンの柔らかい歌声に癒される「Rainy Windows」に続いて登場するのはフレッド・ニール作「Everybody's Talking」。日本ではニルソンがカバーした曲としても有名。本アルバムではロックンロール調の軽いアレンジが施されている。フォーク・ロックというよりは、軽音楽調。「Bird Of Space」はベン・マックピーク提供曲。ソフト・サイケな雰囲気が堪能出来るポップス・ナンバー。「You Never Wanted Me」は日本では認知度の低いアメリカのフォーク歌手ジャクソン・C.・フランクの曲。オリジナルは1965年に発表された「Blues Runs The Game」収録曲で、あのサンディ・デニーも愛した曲だ。バート・ヤンシュやジョン・レンボーン、ニック・ドレイクも彼の歌を歌っている。本アルバムでのアレンジは何処と無くサイモン&ガーファンクル調。というか、ポール・サイモンもアート・ガーファンクルもジャクソン・C.・フランクから影響を受けたのであるが。

続く一風変わった「Pendant Que」はシャンソンの世界の住人ジル・ヴィニョーの曲。フォーク歌手とシャンソン。そして例によってシタールの導入とベン・マックピークの指揮によるオケの導入。本人がこういう奇妙奇天烈なアレンジを望んでいたのは今さら知る由もないのだが、サイケデリックな時代だからこういうのもアリだ。例えは悪いかもしれないが、不似合いなポップスを歌わされていた歌姫メアリー・ホプキンのアップル時代の初期作品となんだかダブってしまった。続く「Elevator Man」は元Chad Allan & The Expressions の、というよりゲス・フーのチャド・アレンの曲。フォーク・ロックやサイケデリック・ロックの世界よりむしろ、ソフト・ロックの世界で論じるべき雰囲気の楽曲。「Winter's Going」はエンディング曲。なお、本編でシンセサイザーとクレジットされているものは2006年のCD化の際に Rev-Ola Records によってリ=クリエイションされたもの(ジョー・フォスター、ニック・ロビンス)。

本作の後、ボニー・ドブソンは1970年に「Good Morning Rain」、1972年に「Bonnie Dobson」を発表。この後、暫く沈黙した後、1976年に「Morning Dew」(またしてもセルフ・リメイク)を発表するも、この後今日に至るまで新作を発表できずにいる。

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