#1412 Fear Itself / Fear Itself (1969)

 2011-05-06
01. Crawlin' Kingsnake
02. Underground River 【YouTube】
03. Bow'd Up
04. For Suki 【YouTube】
05. In My Time of Dying
06. The Letter
07. Lazarus
08. Mossy Dream
09. Billy Gene
10. Born Under a Bad Sign

Fear Itself

音楽の世界における定説の一つに(誰が最初に言い出したのは知らないが)、”馬ジャケ作品に外れなし”というのがある。私もこれまで度々ジャケットに馬が登場した作品を取り上げてきたが、確かに大きく外したアルバムに遭遇した事は(年のせいかもしれないが)記憶がない。という訳で今回は再び馬ジャケ作品の紹介である。今宵の主役、バンドの名前は(バンドの名前らしくない感じだが)フィア・イトセルフ(Fear Itself)という。1990年代前半に同名のスラッシュ・メタル系ロック・バンドが存在していたが、今回は1960年代に存在し、アルバム1枚を最後に消えてしまったバンドの方である。サウンドは時代が時代であるが故、サイケがかったブルース・ロック。バンドのリード・ヴォーカルを担当したのはエレン・マキルウェイン(Ellen McIlwaine)という女性歌手。バンドとしての活動よりもソロとしての活動の方が長い人で、実は彼女のソロ時代の作品が近年の日本でも、フリー・ソウルのファンに愛されているという実績もあるそうだ。

元来、ホワイト・ブルースとかブルース・リヴァイヴァルといったジャンルの音楽はブルースに影響を受けた白人青年達が起こしたもの。イギリスではヤードバーズとかアニマルズ、ローリング・ストーンズといった連中がアメリカ人が一時見捨てた黒人ブルースに注目して自身のサウンドに取り入れて人気を獲得、そして彼らイギリスのビート・グループを通じて、アメリカ人の白人達はブルースという音楽を再認識していく。1960年代半ば頃からアメリカの西海岸を起源とするサイケデリック・ロックなる音楽が立ち上がると、本来、本物志向というか、黒人ブルースに深い造詣を抱く連中によって盛り上げられていたブルース・ロック・シーンにサイケデリックなエッセンスが盛り込まれていくと、本物志向という言葉を使うのには少々抵抗のあるブルース・ロック・バンドが台頭してくる。所謂、ニュー・ロックと呼ばれた連中だ。クリーム、ジミ・ヘンドリックス、初期スティーヴ・ミラー・バンドとか。今回紹介するフィア・イトセルフも遅まきながら、1969年に登場したサイケがかったブルース・ロック・バンドだった。
フィア・イトセルフの結成は1967年でアルバムは1969年のセルフ・タイトルによるアルバム1枚限り。バンドは女性ヴォーカルのエレン・マキルウェイン、そして彼女をサポートする男性3人、計4人というありふれた構成。バンドの主役はヴォーカルだけでなくハープやギターも担当するエレン・マキルウェイン。実は彼女、デビュー以前に日本に住んでいた経歴を持つ女性なのだ。1945年、米テネシー州ナッシュヴィル生まれ。父は南長老教会の牧師(教師?)William McIlwaine。2歳、つまり戦後まもない1947年の日本(神戸)にやってきて15年間もの間、日本で生活していたというのだ。1947年から1962年。当時はカナダ系のインターナショナルスクールに通学していたという。音楽の世界に魅了されたのも、この日本にいた時代だという。5歳の時からピアノを習い初め、そして(父親の影響だろうか)じきに聖歌隊で歌う様にもなったのだという。少女時代、彼女が魅了されたのはレイ・チャールズ、ファッツ・ドミノ、プロフェッサー・ロングヘアといった黒人音楽。

彼女は白人だが日本在住時代に米軍の放送から流れてきた、こうした黒人音楽に魅了された事で後のスタイルが固まる事になる。その後、両親と共に米国に帰国、テネシー州にある学校に一旦編入した後、アトランタ州ジョージアにある DeKalb College(現ジョージア・ぺリメタ・カレッジ)に進学。ギターを買って演奏し始めたのもこの時期からだったという。大学には2年程在籍していたというが、その後ドロップアウト、やがてプロの歌手としてアトランタ州ジョージアのクラブで歌う様になったのだという。そんな彼女に目を付けたのがSSWのパトリック・スカイ。ジョージアでの公演先で偶然彼女の歌を聴いたパトリック・スカイは彼女にNYに来て歌ってみないか、と誘いをかける。彼女は一路NYのグリニッジ・ビレッジに。1966年の事だ。そこではまだ無名時代のジミ・ヘンドリックス、更にマディ・ウォーターズ、ソニー・テリー、ジョン・リー・フッカー、ブラウニー・マギー、ビッグ・ジョー・ウィリアムズなどが出演していたという。

■ Ellen McIlwaine - Vocals, Harp, Rhythm Guitar, Organ
■ Chris Zaloom - Lead Guitar
■ Paul Album - Bass
■ Bill McCord - Drums

1967年になって彼女は再度アトランタに舞い戻り、そしてソロ活動を、ではなくまずはサイケデリック・ブルース・ロック・バンド、フィア・イトセルフを結成する。こうしたサイケとブルースの入混ざったバンドを結成したのも時代の後押し、そしてNY時代での武者修行が影響を及ぼしたのだろう。彼女のスライド・ギターの演奏スタイルもブルースの演奏家達の生きた演奏を自分の目で見て、そして耳で聴いたNY時代に習得したものだと思えば理解し易い。結成の翌年となる1968年、彼女ら一行はNYに行き、そしてそこで1枚のアルバムを収録する。1969年、ようやくというか、エレン・マキルウェインの最初のバンドであるフィア・イトセルフのデビュー作「Fear Itself」が Dot Records(Gulf & Western's Famous Music Group 系列)から発表される事になる。同年、フィア・イトセルフはシングル「Mossy Dream / Bow'd Up」も発表した。今回紹介する作品はその唯一作。CDは2006年リマスター仕様の World in Sound Tonträgerverlag(独レーベル)から。

プロデュースは1950年代からプロデューサーとしての経歴を残してきたトム・ウィルソン。ロック/ポップスのファンにはボブ・ディラン、サイモン&ガーファンクル、フランク・ザッパ、アニマルズ、エリック・バードン、ヴェルヴェット・アンダーグランド、ニコ、ソフト・マシーンのプロデューサーといった方が解り易いか。ようするに当時引手数多のプロデューサーだった訳だ。その割にはチャート的には成功を収められなかったようだ。収録は全部で10曲。エレン・マキルウェインの手によるオリジナル曲と他人の曲などがバランス良く収録されている。では個別の曲の紹介。冒頭はジョン・リー・フッカー「Crawlin' Kingsnake」のカバー。冒頭の男まさりのハープ演奏はNYでの修行時代にソニー・テリーに感化されたものだろうか。曲はいかにも、といった感じの当時のブルース・ロックの定番スタイルらしいアレンジが施されている。プレ・ハード・ロックというか、ブルースの影響から未だ抜け出せないフィーリングが大。

「Underground River」はエレン・マキルウェインの手によるオリジナル曲。これまた、いかにもといった感じの西海岸サイケデリック・ブルース・ロック。「Bow'd Up」もエレン・マキルウェイン作。気だるい感じの粋なアコースティック・ブルース。スワンプ臭も多少あり。続く「For Suki」もエレン・マキルウェイン作。ブルージーな響きが格好良いプレ・ハード・ロックだ。垢抜けない演奏がバンドが持つワイルドさを助長している。続くは「In My Time of Dying」。トラッド・ナンバーをエレン・マキルウェインがアレンジ。自作曲みたいに上手にアレンジされているのはプロデューサーのトム・ウィルソンの手腕による所が大きいだろう。「The Letter」は旧アナログB面の冒頭曲。ボックス・トップスが1967年に米英でヒットさせた曲。作詞作曲は W.C.Thompson。アーバーズやジョー・コッカー、日本ではモップス/沢田研二がカバーした曲だ。本アルバムではなんだか崩れたドラッキーなショッキング・ブルー風アレンジが施されている。

続くトラッド・ナンバー「Lazarus」は「In My Time of Dying」同様、エレン・マキルウェインがアレンジ。「Mossy Dream」はエレン・マキルウェインの手によるオリジナル曲。まるでプロコル・ハルムのお蔵入りになった未発表曲、といった感じのまとまりの欠けたナンバーだ。「Billy Gene」もエレン・マキルウェインの手によるオリジナル曲。後のソロ活動時代にファンキー・フォーク路線で新境地を見出す人なんだが本作では未だ1960年代風情のサイケなブルース・ロック路線から抜け出せてはいない。だか、これはこれでまた乙な路線でもある。ヴォーカル・アレンジで実験的な要素も盛り込まれている。「Born Under a Bad Sign」はアルバムのエンディング曲。ブルース・ギタリストの3大キングの一人、アルバート・キングのスタックス時代のファンキー&ソウル路線の有名なアルバム「Born Under A Bad Sign」収録曲。オリジナルにちょいブルース・ロック風のアレンジを加えたスタイル。

この作品の後、彼女はソロ活動に転じて音楽活動を継続。そちらの話は後ほど。

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