#1426 Barbi Benton / Barbi Benton (1975)

 2012-05-07
01. Brass Buckles 《YouTube》
02. Dixie Girl
03. Deadeye
04. Smile
05. Jeremy
06. The Reverend Bob
07. He Used To Sing To Me
08. Movie Magazine Stars In Her Eyes
09. He Looks Just Like His Daddy
10. I've Got The Music In Me

Barbi Benton

多分、私と同世代の洋楽ファンには懐かしい名前である、バルビ・ベントン(Barbi Benton)。既に還暦を越え、今年62歳となった彼女の過去の作品が恐らく初めてCD化された。いや、実際には1988年には「Kinetic Voyage」という作品が Takoma からCD化されているので、今回のCD化が2枚目という事になるのだが、彼女の過去の作品のCD化を望んでいる大方の男性ファンは彼女の1970年代の作品の復刻化が願望だった筈だから、今回のCD化がなによりの朗報だった筈である。しかしなんだか、彼女の名前がバルビ・ベントンではなくてバービー・ベントンとなっている。マテル社のあの世界的に有名なバービー(Barbie)とひっかけたのであろうが、昔青少年世代、今親父世代の人間にとっては今更バービーと言われてもピンとこない。やはりバービー・ベントンではなくてバルビ・ベントンの方がしっくりくる。という訳で、今回は新規日本読みを無視して、オヤジ世代の呼び方であるバルビ・ベントンと書いておく。

彼女の名前を知らない世代の人に紹介するためには、まずは Playboy Records というレーベルを紹介せねばならぬ。バニーマークでお馴染みのレーベル、Playboy Records は1970年代前半に設立された音楽出版会社。Playboy Enterprises, Inc といえば世のまっとうな男性諸君なら知らない筈はない、ヒュー・ヘフナーらによって1950年代に設立された成人向け娯楽雑誌『PLAYBOY』を出版する会社だ。所謂、「ソフトコア」な男性雑誌の一つである。この出版社が起した音楽レーベルが Playboy Records。と書くとなにやら色ものやお色気路線の内容を想像してしまうが、実際の印象は大きく異なる。元々イリノイ州シカゴに本部を置く本家本元であるが、本格的に音楽レーベルを設立しようと、当時の音楽業界のメッカ、西海岸にレーベルは設立された。バルビ嬢が最初のシングルを発表する1974年までの間にもティム・ロス、ハドソン、ジム・サリヴァン、レッドベリー、フィリップ・ウォーカーといった人達が同社を通じて作品を発表している。金持ちの道楽ではなく本気だったのだ。
残念ながら同社は1978年に閉鎖されてしまうのだが、それ以前に同社を通じて発表された作品の数々は今ではアメリカン・ロック、SSW、スワンプ・ロック、ブルース、フォークなどのジャンルの音楽を愛する音楽ファンにとっては宝の山というべき幻のレーベルと化している。で、バルビ嬢の話だが、彼女は1950年米国生まれの米国人。出世時の本名は Barbara Klein。1969年から1976年までの間、彼女はヒュー・ヘフナーの恋人として、実際に彼と一緒に暮らしていた。だからまあ、彼女の抜擢はある意味、ヒュー・ヘフナーの公私混同という事になるのだが、今となってはそんな事どうでもいいだろう。彼女の芸歴の始まりは、まずは女優として。1968年に映画『L'uomo del colpo perfetto』に出演、またテレビ番組「Playboy After Dark」「Hee Haw」にも出演。まあ、どんな役柄だったのかは大方想像がつく。また、1970年、1973年、1975年には”Playmates of the Month(所謂今月のプレイメイト)”扱いではなかったものの、プレイボーイ誌でヌード姿を披露している。

1970年代に入っても映画『Naughty Cheerleader』、TV「The Midnight Special」「The Great American Beauty Contest」「The Third Girl from the Left」といった作品に出演しているが、歌手として最初のレコードが発表されたのは1974年。同年、シングル「Now I Lay Me Down to Sleep With You / If You Can't Do It, That's Alright」「The Teddy Bear Song / Put a Little Bit on Me」「Welcome Stranger / That Country Boy of Mine」、アルバム「Barbi Doll」が発表される。内容はエロティックな要素は皆無の、初期のオリヴィア・ニュートン=ジョンを彷彿とさせるカントリー・ポップ。歌も本格的で結構巧かった。プレイボーイでヌードを披露した事もある美貌の女性のデビュー、という話題性もあってか、このデビュー・アルバムはカントリー・チャートで最高17位を記録する事になる。前途洋々だったのだ。翌1975年には第二弾アルバムとなる「Barbi Benton」を発表、このアルバムも前作に続いてカントリー・チャート最高18位を記録する。

シングル盤も「Brass Buckles / Put a Little Bit on Me」「Movie Magazine Stars in Her Eyes / He Looks Just Like His Daddy」と発表、更にジェリー・リー・ルイスとは従兄弟同士のミッキー・ギリーとの共作という形で「Roll You Like a Wheel / Let's Sing a Song Together」というシングルも発表している。ちなみにこのシングルは1977年発表のプレイボーイ・レーベルのオムニバス「Playboy Records Artists」に収録されている。当時の同社にとっては彼女はドル箱的存在だったのだ。1976年には通算3作目となるアルバム「Something New」を、そしてシングル盤も「Ain't That Just the Way (That Life Goes Down) / The Reverend Bob」「Needing You / In the Winter」「Staying Power / San Diego Serenade」と多数発表する。日本での人気がピークだったのもこの頃で、日本公演も実現させ、おまけに日本独自のライヴ盤「The Best Live In Japan」も売り出してしまった。心地良い、何処となくオーガニックな響きが特徴のバルビ嬢の音楽は当時日本で人気者だったオリヴィア嬢のそれとイメージがだぶったものだった(アダルト・コンテポラリー路線へのシフト変更も追従している)。

しかし、人気のピークはここまで。1977年にはシングル「Take Some and Give Some / I Don't Know If I'll Ever Love Again」のみ、1978年にはおよそ2年ぶりとなる新作「Ain't That Just the Way」を発表するが、プレイボーイ・レコーズのレーベル・カラーでもあった、アーシーなアメリカン・ルーツの色濃いスタイルの音楽は当時の音楽シーンでは既に廃れた古臭い音楽と化していた。1978年のレーベル閉鎖と共に彼女の歌手としてのキャリアにも終止符が打たれてしまう。1977年に東京で開催された第6回東京音楽祭にエントリー、アメリカ代表として銅賞(グランプリはマリリン・マックー&ビリー・デイヴィス・ジュニア)を獲得しているが、再度音楽シーンの波に乗る事は出来なかったのである。事実上、歌手生命が絶たれた彼女は女優として『カーニバル殺人事件』『新白バイ野郎ジョン&パンチ・スペシャル/ハイウェイ・エンジェル』『X線/悪魔が棲むホスピタル~連続殺人』、そしてストーカー・シリーズ第一弾『勇者ストーカー』などの作品に出演するも、日本では既に過去の人扱いと化していた。

YouTube - Barbi Benton / Morning,Noon And Night-Time 
YouTube - Barbi Benton on Charlies Angels ('80)
YouTube - Barbie Benton in Fantasy Island Bikini Contest

■ Barbi Benton - Lead Vocal

※ Acoustic Guitar – Bobby Thompson, Dave Kirby
※ Steel Guitar – Russ Hicks, Stu Basore
※ Electric Bass – Bobby Dyson
※ Drums – Larry London
※ Piano – Jerry Whitehurst
※ Fiddle – Buddy Spicher
※ Harmonica – Charlie McCoy
※ Backing Vocals – Lea Jane Singers
※ Leader – Bobby Dyson

私生活の話をすると、彼女はヒュー・ヘフナーと別れた後の1979年に不動産業を営む George Gradow という男性と結婚、1986年と1990年にそれぞれ出産を経験している。2006年には夫がアメリカ合衆国内国歳入庁の摘発によって脱税で逮捕されるという悲劇も味わったようだが。日本では1970年代の中~後期に一時的に活動していた女性カントリー・ポップ歌手という印象しかないのだが、実際には1970年代から活躍の主戦場はテレビであったようで、1970年代、1980年代、そして子育てが忙しくなる1990年代の前半位まで数多くのテレビ番組に出演している。まあ、個人的にはどれも見た事はないけれども、性格の良さそうな風貌から察するに、使い易いタレントとして長きに渡り重宝されたのであろう。さて、今回紹介する作品「Barbi Benton」は1975年(1976年?)に発表された、彼女にとって通算2作目となるアルバム。ちなみに同時期のオリヴィアの作品には「水の中の妖精」「たそがれの恋」といった作品が存在する。

今回のCDは韓国のBIG PINC MUSICというレーベルから発売。当時の日本での人気を考えると、1970年代のアルバムの初CD化は日本の会社にこそやって欲しかったが、まあ今回は韓国、よくぞやってくれたと書いておく。内容はごく一般的なアメリカ人にとっては親しみ易い形態の音楽である、カントリー・フレイヴァーのポップス。オリヴィア・ニュートン=ジョン、ジュース・ニュートン、キム・カーンズ、ニコレット・ラーソン、リンダ・ロンシュタットといった人達の音楽が連想されるが、ロックやアダルト・コンテンポラリー、ニュー・ウェーヴ、エレクトロニクスに接近していった同系の女性達とは異なり、本作での彼女の音楽はあくまでもプレイボーイ・レコーズのレーベル・カラーでもあった、アーシーなアメリカン・ルーツの色濃いスタイルに基盤が置かれている。女レオン・ラッセルこと、シャイ・コルトレーンを彷彿とさせる曲もある事から、カントリー・ポップ・ファンだけでなく、スワンプ・ロックの好きな方にもお奨め出来る内容にも仕上がっているのがミソ。

個別の曲にも触れてみる。「Brass Buckles」はオリヴィアの「Let Me Be There」「Let It Shine」に相当する様な、ちょいゴスペル風味のカントリー・ポップ調の曲。スティール・ギターがいい味を出している。「Dixie Girl」はキーボード奏者としてベンチャーズに在籍していた事もあるジョン・ダリルの曲。しっとりとした落ち着いた印象のセミ・バラード。「Deadeye」は冒頭曲同様、カントリー歌手の Bobby Borchers と Mack Vickery の手による曲。ヴォードヴィル・タッチの楽しいカントリー・ナンバーだ。「Smile」は20世紀最高の喜劇王、チャーリー・チャップリンが手掛けた曲。この曲は映画『モダン・タイムス』で当初インスト曲として紹介された曲だが、後に歌詞が付けられてナット・キング・コールが大ヒットさせた。後にマイケル・ジャクソンやエルヴィス・コステロもカバーしている。彼女のイメージに合う様に、カントリー調にアレンジされている。軽快なリズムが実に心地良い。

「Jeremy」は Chuck Woolery の曲。アルバムの適所にしっとりとしたバラードを配置する。1970年代のオリヴィアのアルバムの傾向をよく研究していた結果だろう。明るいタッチの曲もよく似合うが、こういうテンポの遅いしっとりとした曲も堅実に歌い上げる。歌手としての力量も確かなものだった。「The Reverend Bob」はナッシュヴィル出身のSSW/プロデューサー、Glenn Sutton 提供による曲。と書けば大体の想像が付くであろう。いかにも、といったアメリカン・ルーツ色豊かな曲。こういう曲を歌わせるのなら、オリヴィア嬢よりもバルビ嬢の方がよく似合う。「He Used To Sing To Me」は詩人や漫画家、シナリオライターとしても知られるシカゴ出身のSSW、シェル・シルヴァスタインの曲。子供向けの物語を書いていた人の曲だけあって、可愛らしい雰囲気が味わえる曲でもある。「Movie Magazine Stars In Her Eyes」は冒頭曲と3曲目を提供したコンビによる曲。ライト・タッチのスワンピーなカントリー・ポップ。こういう曲、1970年代の一時期、大好きでした。

「He Looks Just Like His Daddy」は Baker Knight の曲。ブルーグラス畑のフィドル奏者、バディ・スピチャーの控え目ながらも哀愁を帯びた演奏が印象深いバラード・ソング。「I've Got The Music In Me」はキキ・ディー・バンドやトゥリーズでの演奏で知られる Bias Boshell の曲。リズムといい、メロディといい、この曲がまさにシャイ・コルトレーン(Chi Coltrane)調。こんな感じのパンチのある曲が後1曲位あると、スワンピーな響きがより強調出来たと思う。以上。ここまで僅か30分足らず。今ならミニ・アルバム程度の収録時間だが、収録されている曲の粒が揃っているので、あっという間に時間が経過してしまう。初めて彼女の音楽を聴く若い世代の人はヌード・モデルのポップ・アルバム、といった色眼鏡で聴くのではなく、純粋に女性カントリー・ポップ畑の秀作として評価して欲しい。後、個人的な希望で恐縮だが、日本市場向けのライヴ盤を含め、彼女の残りの旧作も復刻化して欲しい。紙ジャケでなくても買います。

ページ最上部へ
関連記事
FC2ブログランキング人気blogランキングへにほんブログ村 音楽ブログへブログランキング【くつろぐ】参加中
コメント












管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
トラックバックURL:
http://cottonwoodhill.blog21.fc2.com/tb.php/6864-80c1fb20
≪ トップページへこのページの先頭へ  ≫
FC2カウンター

プロフィール

はじめに

Author:Cottonwoodhill
未確認・不確定な事でも堂々と書いてしまう無責任洋楽ブログ。根は洋楽ミーハーCottonwoodhillは感覚派B型人間なので記事の整合性が欠ける場合多々有り。過去の記事への不快なコメントなどは問答無用で削除します。

RSSフィード
CalendArchive

最近のアルバム評
Powered by 複眼RSS

最近のアルバム寸評

今日のBGM
ゼン・プレイ・オン(紙ジャケット SHM-CD)

最近のコメント
最近のトラックバック
LIVE TRAFFIC MAP
Myスカウター

スカウター : Cottonwoodhill 別別館

FC2検索

タグランキング

トラックワード
FC2 SEO リンク
FC2 アクセスランキング

TopHatenar

フィードメーター
フィードメーター - Cottonwoodhill 別別館
あわせて読みたいブログパーツ

ブログ通信簿

サイト価格ランキング


サイト売買のサイトストック

アクセスランキング
[ジャンルランキング]
音楽
100位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
洋楽
27位
アクセスランキングを見る>>

フリーエリア
  1. 無料アクセス解析