(DE) NEU! / Neu! '86 (2010)
![]() | ノイ!86 [紙ジャケット仕様] ノイ! 曲名リスト 1. イントロ(ハイデン・スローモ) 2. デンツィン 3. クレイジー 4. ドライヴ(グルントフンケン) 5. ラ・ボンバ(ストップ・アパルトヘイト・ワールドワイド!) 6. エラノイツァン 7. ウェイヴ・マザー 8. パラダイス・ウォーク 9. ユーフォリア 10. フィア 1/2 11. グッド・ライフ 12. ノーヴェンバー 13. KD Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ノイ!(NEU!)。なんとも意味不明な、摩訶不思議な名前です。昔の話で恐縮ですが、私がこのバンドの存在を初めて知ったのは渋谷陽一の番組だったか、或いは阿木譲の紹介だったか、或いは音楽雑誌の紹介記事だったか。私が最初に彼等のレコードを買ったのは1977年5月27日。地元のレコード店で「電子美学」という邦題のアルバムでした。当時の発売元はテイチクレコード。《B面が異常に聞こえる人のプレイヤー・システムは正常です。》だと。なんのこっちゃ。このアルバムは1973年に発表された彼等のアルバムですが、発表から4年を経過した1977年であっても、音楽は斬新というか奇抜というか、当時まだ青臭い高校生だった私にはまっくといっていい程、理解する事は出来ませんでした。
ロック・ミュージックと言えばヴォーカリストがいて、ギタリストがいて、ベース&ドラムのリズム隊がいて、そしてキーボードがいる。曲はまずイントロ、そしてヴォーカリストがリズムとメロディをバックに歌いだす。まあ、ロックと言えばこんなもの。それがどうだ。初めて聴いたノイ!の音楽にはそんな既定路線のスタイルがまるで見受けられない。当時、彼等の音楽を(特に2枚目)”塩化ビニールの無駄遣い”と評した音楽評論家もいたそうだが、その評論家の当時の感性を今の感性でバカにしてはいけない。なにせ、そんな音楽、今までなかったのだ。私が初めて聴いたのが2枚目だったのも問題。この2枚目は制作費が足りず、アルバム半分の曲しか録音出来なかった為、やむなく発表済のシングルを回転数を変えたり音を歪ませたりしてアルバムの残りを埋めたそうだ。
「?」「なんだこれは」。当時、正直言って彼等の音楽の良さが判らずに直ぐにレコードは売ってしまったのです。今にして思えばもったいない事をしました。で、肝心のノイ!ですが、彼等は一時期クラフトワークに在籍していたクラウス・ディンガーとミヒャエル・ローターによって1971年に結成された、旧西ドイツはデュッセルドルフ出身のバンド。最初のアルバムは1972年の「NEU!」。その後、「NEU! 2」「NEU! '75」と発表した後に音楽感の違いにより袂を別つ事になります。彼等の音楽はメカニカルなハンマー・ビートと呼ばれるエキスを大胆に用いて構成されるのが特徴。上に述べた様に、ブルースを基盤とした旧態依然のロック・サウンドのスタイルは全く踏襲していない。勿論、プログレとも違う。彼等の音楽は後のエレクトロ・ポップ勢やニュー・ウェーヴ勢に多大は影響を及ぼしたと言われています。
今回紹介する「Neu! '86」は一体なんぞや、と言うと、これは1980年代に再結成を目論んで、クラウス・ディンガーとミヒャエル・ローターが再びスタジオに入って録音した、幻の4枚目。録音は1985年10月から翌1986年4月まで。ノイ!崩壊後、クラウス・ディンガーはクラウスの弟トーマス・ディンガーらとラ・デュッセルドルフを結成して1976年から1981年までの間に3枚のアルバムを発表、一方、ミヒャエル・ローターもソロ・アーティストとして順調な活動を展開していたのですが、解散から10年を経て、再び両者は一緒に音楽を作ろうとした訳です。実はこの「Neu! '86」、1990年代半ばに一度「Neu! 4」のタイトルで発表済み。実はこのアルバム、クラウス・ディンガーがミヒャエル・ローターの許可を取らずに発表したもので、後にこの発表を巡ってクラウス・ディンガーが死去する迄、両者に深いしこりを残す事になってしまったという。
「Neu! '86」はクラウス・ディンガーの死去、ミヒャエル・ローターが「Neu! 4」をベースに曲名を変えたり曲順を変えたりして発表されたもの。内容は例によって、1970年代のノイ!の諸作品を発展させた、1980年代版ノイ!というべき内容。お得意のハンマー・ビートは勿論の事、ノイ!活動停止の間の10年の間に流行したエレクトロ・ポップ勢のニュアンス、そしてラ・デュッセルドルフやミヒャエル・ローターのソロ・ワークスの要素をも含めた新解釈ノイ!サウンドと言うべき内容に仕上がっています。1970年代のノイ!の作品に見られたエレクトロ・ビートは彼等以降のエレクトロ・ポップ勢やニュー・ウェーヴ、インダストリアル勢によって既に市民権を得ているせいからなのか、初めてノイ!の音楽を聴いた時の衝撃度は薄い(多くの人が初期3作を聴いた後に最後にこれを買うと思うが、)が、’80年代版ノイ!の音楽も実に子気味良い。初期3作を聴いたらこれも買って。
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