#1429 Raven / Raven (1969)

 2013-01-03
01. Feelin'Good
02. Neighbor, Neighbor
03. Green Mountain Dream
04. No Turning Back
05. Let's Eat
06. Howlin' for my Baby
07. Frumpy
08. None of your Jive
09. Bad News YOUTUBE

Raven 1969

トニー・ガラ(Tony Galla)。見た目や風貌、経歴からいってロック重視の当方のブログとは縁もゆかりもない様な人なんだが、今回取り上げるのはかつて、このラスベガスのホテルの金持ち向けショーに出てくる様なショー歌手、トニー・ガラが在籍していたロック・バンド、レイヴン(Raven)のアルバムだ。ちなみにレイヴンとはワタリガラスの事で日本ではオオガラス(大烏)の事。北欧神話にも登場するし、エドガー・アラン・ポーの詩にも登場するし、人気シリーズ『ハリー・ポッターシリーズ』にも使用された。日本にも同名のロック・バンドが存在するが、私の世代だと、なんと言ってもストラングラーズの人気アルバムの題名だ。全身真っ黒けのカラスと言えば不吉な存在として忌み嫌われる存在なのだが、時代や場所、慣習などによってはそうでもない場合もあるらしい。いずれにせよ、”Raven”という言葉には日本人が考える以上に西洋人にはかなりインパクトがあるようだ。

元はトニー・ガラという人はバンドのメンバーとしてではなく、ソロとしてまずは売り出された人。1966年に閉鎖間際のスワン・レコーズ(Swan Records、1957年に Bernie Binnick, Tony Mamarella らによって設立された米フィラデルフィアのレーベル)に吹き込んだトニー・ガラ&ザ・ライジング・サンズ名義のシングル「In Love / Guys Go for Girls」が彼の最初のレコードだった。ドアーズや米進出時のアニマルズを彷彿とさせる様な、当時の世相感じさせる、ちょいサイケデリックな展開のポップ・ソングだが、この曲がNYのディスク・ジョッキー、Joey Reynolds に見出された事で人気に火が付き、アメリカ本土だけでなくイギリスや欧州各地でもヒットを記録する事になる。そこで、このままソロ歌手としてスワンからアルバムを、という訳にはいかなかった。スワンが1967年に閉鎖してしまった為だ。心機一転、今度は新たにバンドを結成する事になる。ロック・バンド、をだ。
元来トニー・ガラはBBキングやレイ・チャールズの様なソウルフルな歌手が好きだった事もあってか、レイヴンの様な黒っぽいフィーリングを醸し出すバンド結成には抵抗がなかったようだ。結成は1967年。米NY州北西部エリー郡の都市バッファローにて。元はと言えば地元バッファローのバンドで Stan Szelest をリーダーとする Stan and the Ravens が1967年に解散した事を受けてのもの。このバンドに在籍していた Tom Calandra(ベース)、Gary Mallaber(ドラムス)の2人がトニー・ガラ&ザ・ライジング・サンズと接触、この接触により5人編成のバンドの屋台骨が出来上がる事になる。マメージャーはプロモーターの Marty Angelo。バンドはエレクトリック・サーカスやフィルモア・イーストといったナイトクラブを始めとして、デトロイトやシカゴまで足を伸ばしてツアーに明け暮れる日々を送るようになる。暫くはトニー・ガラ&ザ・ライジング・サンズのままだったらしいが、このままじゃ不味いだろう、と Stan Szelest の元バンド名を拝借してレイヴンと名乗る事に。

1968年に正式にレイヴンと名乗る事になったトニー・ガラ達はブルー・オイスター・カルトでのお仕事でも知られるデヴィッド・ルーカスのプロデュースを受けてNYで最初のレコーディングを敢行。この時に「Farmer's Daughter」「No Turning Back」「Howlin' for my Baby」といった曲を吹き込んだらしいが、今回取り上げるCDには収録されていない。このデモ音源は彼等がコロンビア・レコーズと契約を結ぶ際に使用さらのだという。余談だが、このレイヴンの事を調べているとジミ・ヘンドリックスとかジョージ・ハリソン、ジャニス・ジョプリンという有名人の名前が絡んでくる。レイヴンのコンサートを見た彼等が彼等の力量を褒めた、という話が残っているらしいから、当時としてはかなりの有望株だったのだろう。フィルモア・イーストではプロコル・ハルムやバーズと同じステージにも立ったそうだし、マンハッタン地区ではラスカルズやサヴォイ・ブラウン、ポール・バターフィールド・ブルースバンドらとも。同業他者からの支持もそれなりにあったのだろう。

■ Tony Galla - Vocals, Bass, Harmonica, Flute
■ John Weitz - Guitar
■ Thomas J. Calandra - Bass
■ Gary Mallaber - Drums
■ James Frank "Jimmy" Calire - Piano, Organ, Saxophone, Vocals

デモ音源の効果があったのか、1969年に晴れてコロンビアと契約。同年のウッドストック・フェスティバル参加への打診もあったそうだが、何故か彼等は断っている。前年の1968年にウッドストックで開催された音楽祭出演時にブーイングを浴びせられた事が原因だった。ちなみにこの時期、Jim Calire がビッグ・ブラザー&ホールディング・カンパニーの元を離れたジャニス・ジョプリンから新バンド、コズミック・ブルース・バンドへの参加を打診されているが断っている。この後も彼等はツアーに明け暮れた。また、当時ツアーの為に渡米したレッド・ツェッペリンやジェスロ・タルといった大物バンドからも好評価を得ていたようだ。で、最初のアルバム録音。「Raven」(1969年)がその最初の記念すべき作品である。プロデュースはジョン・ヒル。プロデューサーにもその実力を高く評価され、アルバム1枚分以上の録音も敢行する。翌1970年にはシングル「Children At Our Feet / Here Come A Truck」も発表。

しかしながら2作目を発表する事なくバンドは解散。メンバーそれぞれがソロ活動を選択する事を重視した結果なのだという。関係者は解散を防ごうとカリスマへのレーベル移籍なども目論んだそうだが徒労に終わったようだ。ちなみに結成間もない1967年頃のライブ演奏の模様を捉えたアルバムに「Live At The Inferno」という作品がある。発表は1969年でコロンビアからのデビュー作品が世に登場した直後に発売されたものらしい。アナログは地元バッファローの Discovery Records。興味のある方はそちらも探してみて下さい。なお、レイヴンは1993年と1996年、2011年にそれぞれ再結成コンサートが行なわれている。ちなみに現況だが、ベース奏者の Thomas J. Calandra は1998年に死去。かつてジミー・ペイジからもその才能を高く評価された John Weitz も2012年に死去。トニー・ガラはソロとして「For All the Right Reasons」「A.S.A.P.」「From My Heart to You (Dal mio coure a te)」「An Evening in Italy With Tony Galla」「A Time for Love (Tempo d'Amar)」といったアルバムを発表しているが、どれも未聴。

さて、本作「Raven」は1969年の彼等唯一のスタジオ作品。イギリスでのツアー時、ビートルズのアップル・レコーズからのオファーを断ってまで発表したコロンビアからの記念すべきアルバムだ。プロデュースは上で書いた様にジョン・ヒルが担当。今回取り上げるCDは2004年プレスの Green Tree Records のもの。デジタル・リマスター盤。冒頭曲は「Feelin'Good」。「In Love」の時とはかなり印象の異なる、骨太のブルー=アイド・ソウルな歌声。同時代のスーパースター達が魅了されたのも頷ける逞しい歌声だ。短い曲だが、私はこの1曲だけでトニー・ガラの、そしてレイヴンの魅力に取り付かれてしまった。続く「Neighbor, Neighbor」でもブルージーな歌声が逞しい。フォリナーの初代ヴォーカリスト、ルー・グラムを更に骨太にした様な声と書けば判り易いか。デビュー作発表まで米大陸西から東まで、ツアーに明け暮れた経験が遺憾なく発揮された、腰の落ち着いた重心の低い安定した演奏も見事。「Green Mountain Dream」はアメリカのバンドらしい、レイドバックしたアーシーな歌。NY出身のバンドだが、米南部出身のバンドであるかと勘違いしてしまいそうなルーツ色豊かな響きが素晴らしい。

「No Turning Back」は軽妙なタッチのブルージーなポップ・ソング。「Let's Eat」はブッカー・T&ザ・MGズ・ミーツ・ブリティッシュ・ブルース・ロック・バンドといった雰囲気の豪快なR&B。それと割れた音はCD化の際のトラブルか、それともオリジナル・マスターに起因するものか、すこし気になる。「Howlin' for my Baby」はデヴィッド・ルーカスによるデモ音源録音の際にも演じられたナンバーでオリジナルはウィリー・ディクソンとハウリン・ウルフの競作。イメージとしては同時代のキャンド・ヒートの様な、重厚なアレンジが繰り広げられている。「Frumpy」は軽快なジャズ・ロック風のナンバー。John Weitz の手による抑制の効いたギターとジャニス・ジョプリンから新バンド参加を打診された経歴を持つ James Frank "Jimmy" Calire による踊る様なキーボード・フレーズに聴き応えあり。「None of your Jive」はスロー・バラード。「Bad News」は10分近い大作ナンバー。ジャズやブルースのエキスを盛り込んだエキセントリックなナンバーだ。

個人的な感想を言わせてもらえば、デジタル・リマスターをやり直して何処か別の復刻系レーベルから再発してほしい。内容は1作だけで花と散った雨後の筍系統のB級バンドとは一線を画す内容だけに、このデジタル・リマスターは頂けない。内容は本当に素晴らしい。米英の歴戦の兵達が一聴して高い実力を見抜いただけの事はある。米ブルース・ロック・シーンにおける隠れた秀作として評価したい。

Tony Galla | HOME
Jimmy Calire — Musician, Composer, Arranger & Teacher

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コメント
残念ながらオリジナルマスター起因じゃないかと。
レコード掘っててジャケットに惹かれて試聴、
思わずアナログプレーヤーのセッティングが悪いのかと、
試聴機チェンジしましたが同じ。
試聴したのはcolumbia cs9903の原盤。テキトーな録音(マスター?)だなあw

でも全員凄腕。内容最高。勿論購入しました。
【2017/09/02 21:27】 | 通りがかりのブルースロック好き #- | [edit]
> 残念ながらオリジナルマスター起因じゃないかと。
> レコード掘っててジャケットに惹かれて試聴、
> 思わずアナログプレーヤーのセッティングが悪いのかと、
> 試聴機チェンジしましたが同じ。
> 試聴したのはcolumbia cs9903の原盤。テキトーな録音(マスター?)だなあw
>
> でも全員凄腕。内容最高。勿論購入しました。

すっかり寂れたブログにコメントありがとうございます
【2017/10/29 22:08】 | Cottonwoodhill #- | [edit]












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