#1430 Ana Popović ‎/ Unconditional (2011)

 2013-01-05
01. Fearless Blues YouTube
02. Count Me In
03. Unconditional
04. Reset Rewind
05. Slideshow
06. Business As Usual
07. Your Love Ain't Real
08. Work Song
09. Summer Rain
10. Voodoo Woman YouTube
11. One Room Country Shack YouTube
12. Soulful Dress

Ana Popovic / Unconditional

Ana Popović(現地語で Ана Поповић)と書いてアナ・ポポヴィッチと読むらしい。オンナだてらになんとブルース・ギタリスト。勿論、トラディショナルなギタリストではなくてホワイト・ブルース世代以降のロック・ファンの方にいかにも受けそうなコンテンポラリーな女性ギタリスト。ちなみに似た様な名前の女性ギタリストでアナ・ヴィドヴィチ(Ana Vidović)という人もいるが、こちらはクロアチア出身のクラシックギター奏者。当ブログでも過去、女性ギタリストの作品を何度か紹介してきたが、彼女は巷でも注目のミュージシャンだ。金髪でスタイルもなかなかの女性で、ステージ上ではミニスカートで演奏したりと、(アメリカ市場を意識してか)セックス・アピールを売り物にしたパフォーマンスを披露したりもする様だが、ブルース・ギタイリストとしては超一流。耳の肥えたロック・ファンの感性をも唸らせる才能を秘めたパフォーマーだ。むしろ紹介するのが遅すぎる位だが、顔はいかにも南東ヨーロッパの女性の顔、といった感じで私の好みじゃないんですが(失礼)。

アナ・ポポヴィッチは1976年、セルビア共和国(旧;ユーゴスラビア)の最大都市ベオグラードの生まれ。ブルースとギターに目覚めたのは父親からの影響から。15歳頃からギターを弾き始め、19歳(1995年)の頃に最初のR&Bバンド、ハッシュ(Hush)を結成する。メンバーは彼女の他、Rade Popović(ギター、ヴォーカル)、Milan Sarić(ベース)、Bojan Ivković(ドラムス)。ソウルやファンクの要素をも含むハッシュはユーゴやギリシャ、ハンガリーなどで数多くの武者修行を敢行。米ブルース・シーンの巨人ジュニア・ウェルズの前座を務めた事もあったのだとか。1998年にはなんと年間100を越えるギグを敢行、で、最初のアルバムが登場するのは1998年(発表は1999年?)。PGP-RTS から「Hometown」という作品を発表する。プロデュースは Aleksandar Radosavljević。メンバーだけでなくピアノ奏者やハーモニカ奏者などもゲストとして参加。だがこれはアナ・ポポヴィッチのソロ作品名義ではなく、あくまでもハッシュのアルバムとしてのリリースだった。
この時点でまだ彼女は20代前半だったが、ブルース一辺倒では駄目だとジャズ・ギターを習得するためにオランダに出向く。必然的にハッシュは解散。1999年、アムステルダムで彼女は自身の新バンドを再構築。メンバーは彼女の他、Bart Kamp(ベース)、Ronald Oor(ドラムス)、Rob Geboers(キーボード)。2000年にはジミ・ヘンドリックスのトリビュート・アルバム「Blue Haze: Songs of Jimi Hendrix」に参加。ちなみにこのアルバムには彼女の他、エリック・バードン、バディ・マイルズ、バーナード・アリソン、タジ・マハールらが参加している。2001年には待望のソロ第一弾「Hush」がルーサー・アリスンの為に1994年に設立されたというドイツ(テューリンゲン)のレーベル、Ruf Records から発表される(録音は米メンフィスにて)。アルバムには自作曲の他、トム・ウェイツやバディ・ガイの曲も取り上げられた他、コープランドの「Bring Your Fine Self Home」ではバーナード・アリソンとのデュエットも行なわれた。

2003年には2作目の「Comfort to the Soul」が前作同様、Ruf Records から発売された。録音は前作に続き、米メンフィスにて。プロデュースは Jim Gaines。自作曲に混じり、Shannon Curfman、Susan Marshall といった次世代の女性ギタリスト達の名前もクレジットに記載されている。Michael Hill's Blues Mob のアルバムへの参加を経て、ライヴ盤「Ana! Live in Amsterdam」を発表(映像版として「Ana!」という作品も登場)。ここで Ruf Records との契約は終了。この後はブルースの本場、アメリカへの本格的な進出を目指す事になる。その第一弾が Delta Groove Music の傘下レーベル、Eclecto Groove Records と契約を結んで発表された「Still Making History」。ボーナス・トラック1曲を含めた全14曲。これまでのアルバムでは他人の曲を取り上げる事も多かったアナ・ポポヴィッチだが、本作では14曲中、自作曲が11曲と、《ソングライター・アナ・ポポヴィッチ》としての本気のアルバムとなった。

Hushスティル・メイキング・ヒストリーブラインド・フォー・ラブAn Evening at Trasimeno LakeComfort to the Soul

■ Ana Popovic - Acoustic & Electric Guitar, Slide Guitar, Vocals
■ Sonny Landreth - Slide Guitar
■ Calvin Turner - Bass
■ Doug Belote - Drums
■ Jon Cleary - Keyboards
■ David Torkanowski - Keyboards
■ Leon "Kid Chocolate" Brown - Trumpet
■ Tom Fitzpatrick - Saxophone
■ Jason Ricci - Harmonica
■ Avist Martin Mycartery "Scooter" Groce - Background Vocals
■ Jerome Alexander - Background Vocals

2009年には全米進出第二弾となる「Blind for Love」を発表。この作品は全米ブルース・チャートで最高3位を記録するなど、彼女にとって全米進出後、最高の成功を収める事になる。2010年、 Blues Company「O'Town Grooves」への参加、ライヴ映像「An Evening At Trasimeno Lake: Live From the Heart of Italy」発表を経て、2011年には米進出第三弾となるソロ作品「Unconditional」を発表する。本作も前作に引き続き全米ブルース・チャートの上位(7位)にランク・インするなど、商業的にも成功を収めている。ジャケットはギターで全身を隠すだけのあっと驚くヌード写真。R&Bやヒップホップ系の女性シンガーならこの手のジャケットはよくあるが、彼女の様なブルース畑のミュージシャンには珍しい。やらされたのか、自分からやりたがったのかはよく判らないが。収録は全12曲。クレジット面では8曲で彼女の名前が記載されている。個別の曲にも触れるが、内容はジャケットのイメージとは異なる、本格的なモダン・ブルース。

発売は Delta Groove Music より。録音はメンフィス、ではなくてニュー・オーリンズ(2011年2月)。ゲストにサニー・ランドレス、ジョン・クリアリー、ジェイソン・リッチら。プロデュースは過去、数多くのグラミー受賞作品を手掛けたジョン・ポーター。まさに本気印の米進出第三弾。ヨーロッパ圏では既に人気の女性ギタリストだが、ブルースの本場アメリカでも今後確固たる地位を築くであろう、と想像するに難くない力作。ブルース歌手、ソングライティング、ギタリスト、そして美貌(この辺は好みがあると思いますが)、どれを取っても一級品。では簡単に個別の曲紹介へ。「Fearless Blues」はアルバムの冒頭曲。導入部はまるでジョン・リー・フッカー。歌は女BBキングと言ってもいい位の魂の込められた歌いっぷり。仕事人プロデューサーの洗練された手腕ぶりも手伝って、1曲目から頭の固いブルース・ファンをKOする事必至。「Count Me In」も自作曲。ハーモニカ(Jason Ricci)も加わった、抑制の効いたスライド・ギター入りのハード・ブルース・ブギ。

「Unconditional」はアルバムのタイトル曲。BBキングのアルバムによくあるそうな、ジャズ・ブルース。ハッシュとしてのデビュー以降、自らの音楽性にジャズの要素を加えようとオランダ入りを決断した事は無意味ではなかった、そう思わせる自然なナンバー。付け焼刃感は皆無、プロデューサーに無理やり押し付けられた感は皆無の本格的な展開。「Reset Rewind」は一転してガラリと雰囲気の変わった、まるでザ・バンド「The Weight」の様な、グッド・タイム・ミュージック。旧ユーゴ出身でオランダを根城としている女性歌手から、こんなにもアーシーでルーツ色の豊かなサウンドが(しかも違和感なく)飛び出てくる事に驚きを隠せない。英語歌詞にも違和感は感じないし、事前情報なく耳にすれば誰もがアメリカのブルース歌手だと勘違いするに違いない。「Slideshow」はタイトル通り。米ミシシッピ州カントン出身のギタリストで、米南部のルーツ音楽をこよなく愛する、ルイジアナ州を活動の拠点とするサニー・ランドレスとのスライド合戦が見事。

続く「Business As Usual」はタイトル曲と同傾向のジャズ・ブルース。Mark Van Meurs とアナとの共作名義。円熟期に達した熟練のギタリストのアルバムから流れてくるような、枯れた味わいのナンバーだが、ギターは豪快。ジミ・ヘンドリックスか或いはスティーヴィー・レイ・ヴォーンが憑依して弾いているかの様な錯覚にも陥ってしまう。「Your Love Ain't Real」はソウルなフィーリングが感じられる小気味良いナンバー。「Work Song」はいわずと知れた、コルネット奏者ナット・アダレイ(キャノンボール・アダレイの弟)が1960年に吹き込んだリヴァーサイド作品。ソウル・ジャズ/ハード・バップのジャズの名曲をファンクの解釈を用いて大胆にアレンジ。続く「Summer Rain」は「Business As Usual」と同様、Mark Van Meurs とアナとの共作。ギターの腕前披露は抑えた、彼女の歌とライト・ソウルなメロディにポイントを当てたキャッチーなナンバー。後半の色気のあるギターはまるでエリック・クラプトンが乗り移ったかのようだ、と書くと大袈裟か。

「Voodoo Woman」は彼女のオリジナル名義ではなくコラ・テイラーという人の名義。ファンク&ブギ、ファズの効いたギターはタイトルからして、ジミ・ヘンドリックスをどうしても連想してしまう。「One Room Country Shack」のオリジナルは古い。元歌はジャンプ・ブルース時代の Mercy Dee Walton の1953年の曲(ジャンプと言えばアップテンポのブルースの事だが、曲そのものはジャンプじゃありません)。オリジナル自体は聴いた事がないのだが、これまでバディ・ガイ、モーズ・アリソン、ジミー・バーンズ、アル・クーパーらが取り上げてきた名曲。アナはロックの世界の住人だから、アルのアレンジを参考? いやいやどうして、昨今のエリック・クラプトンのアルバムの雰囲気に似た、アダルト・コンテンポラリーな要素をちり混ぜた、ぐっとスロウなアレンジで聴かせてくれる。「Soulful Dress」はアルバムのエンディング曲。ホーン・セクションを導入したブルース・ナンバーで、個人的にはかつてのスタン・ウェプ率いるチキン・シャックを連想してしまった。

ロック、ブルース、ソウル、ファンク、ジャズ、等々。過去の偉大なギタリストの遺産をベースに新時代のアレンジで再構築した彼女の音楽はこれからブルースを聴こうという人にも最適だし、クラシック・ロック世代の人にも安心してお奨め出来る。ブルースを聴いていたいが、還暦を過ぎたおじいさんの音楽をこれから聴くのはどうも、と思う人は是非聴いて欲しい。アナ・ポポヴィッチやジョアン・ショウ・テイラー当りがブルース入門の切り口になれば良いのだ。かつての私達がブリティッシュ・インヴェイジョンを経由して聴いた様に。

Ana Popovic - The Official Site - Home

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    Ana Popovic - Unconditional (2011) Unconditional Ana!: Live in Amsterdam  ジャケット見て驚いたワケさ。誰だこれ?って名前見て、見覚えのある人だったので余計に驚いたワケさ。音を聴いてもう...
【2013/01/05 22:43】
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