#1436 The Fifth Avenue Band / The Fifth Avenue Band (1969)

 2013-01-27
01. Fast Freight YOUTUBE
02. One Way or the Other YOUTUBE
03. Good Lady of Toronto
04. Eden Rock YOUTUBE
05. Country Time Rhymes
06. Calamity Jane
07. Nice Folks
08. Cockeyed Shame
09. Faithful Be Fair
10. In Hollywood
11. Angel

THE FIFTH AVENUE BAND ザ・フィフス・アヴェニュー・バンド

大昔、好きだった女の子の影響で一時期、山下達郎なんて聴いていた時期を思い出す。時は1980年当時、カセットテープ(といっても今では既に死語かもしれませんが)が音楽記録メディアの主流だった頃、マクセル(当時の主流はマクセルかTDK)のカセットテープのTVCMに採用されたのが山下達郎の「RIDE ON TIME」。当時、日本ではこの曲が大ヒットを記録している。山下達郎の音楽はそれまでの日本の流行ソング、所謂歌謡曲とは一線を画す音楽で、アメリカナイズされた洗練されたサウンド・エッセンスを感じさせる心地よい音楽として、私の耳には聴こえたものだった。RCA ⁄ AIR時代の後期作品、MOON ⁄ WARNER時代の初期作品位まではCDを買って当時よく聴いていたものです。ところで、アメリカのポップスに多大なる影響を受けた山下達郎がプロ・デビューを飾ったのは1973年(1972年の自主制作盤を除く)。明治大学法学部中退後に自主制作盤制作時に知り合った仲間達と結成したシュガー・ベイブ(SUGAR BABE)と一員として、だった。

結成当初のメンバーは山下達郎、大貫妙子、村松邦男、鰐川己久男、野口明彦。1975年までに2人のメンバーが離脱して1975年からは寺尾次郎、上原裕、伊藤銀次の3人が加わった。凄いメンバーである。同バンドは1976年に解散するまでの間に「SONGS」というアルバムを発表している。当時の日本でのロック・シーンの現場の肌感覚なんて、私には判らないのであるが、1970年代前半の日本の所謂ニュー・ロックと呼ばれる人達の音楽の摸倣元がピンク・フロイドやディープ・パープルなどと言ったブリティッシュ・ロック勢や或いはジミ・ヘンドリックスやアート・ロック勢、それにブルース・ロック勢だった事を考えると、ラヴィン・スプーンフルやビーチ・ボーイズみたいな軟弱な音楽(注、これはあくまでも当時の尻の青いブリティッシュ・ロック・ファンからみた矮小な偏見)をお手本とするシュガー・ベイブみたいなバンドはリアル・タイムで正当に評価されたかどうかは非常に疑わしい。

(大袈裟ではなく)日本のポップスの歴史に燦然と輝く山下達郎、その山下達郎の起源とも言えるシュガー・ベイブ。そのシュガー・ベイブ結成の際に彼等が手本にしたアメリカのバンドと言えば、上で上げたラヴィン・スプーンフルやビーチ・ボーイズ、更にもう一つ、フィフス・アヴェニュー・バンド(The Fifth Avenue Band)というバンドの存在も見逃せない。だが商業的にも大成功を収めたラヴィン・スプーンフルやビーチ・ボーイズと異なり、このフィフス・アヴェニュー・バンドというバンドはお世辞にも商業的に成功したとは言えないバンドである。活動期間も短く、アルバムも僅か1枚(1969年)しか発表していない。実際には再結成を果たして1990年にもう1枚(雰囲気の異なる)アルバムを発表しているが、シングル・ヒットも存在しないし、メインストリームのロックしか聴かない洋楽ファンからすれば、ただの無名バンドの一つにしか過ぎない。ただ、彼等が残したアルバムはロックの歴史に名を残す名盤の数々にひけをとらぬ、優秀な内容なのである。

ピーターゴールウェイ、オハイオ・ノックス、ビーチ・ボーイズらと共に山下達郎がこよなく愛するフィフス・アヴェニュー・バンドの結成は1968年。米ニューヨーク出身のバンド。彼等のサウンドからして西海岸出身のバンドのようであるが彼等は東海岸出身のバンドである。当時のメンバーは1947年5月、米ニューヨーク州ロング・アイランド出身のピーター・ゴールウェイ、それにジョン・リンド、マレー・ウェインストック、ジェリー・バーナム、ケニー・アルトマン、ピート・ヘイウッド。ピーター・ゴールウェイとケニー・アルトマンは学生時代から友人同士で、この2人とジェリー・バーナムはストレンジャーズ(The Strangers)というバンドの出身。このバンドは1966年に「Land of Music / I Need Your Love Inside Me」というシングルを1枚残している。彼等にエイヴォン・ハーバーというバンドに在籍していたメンバーが合体、フィフス・アヴェニュー・バンドが誕生している。フォーク・サーキット畑からの登場だ。

グリニッジ・ヴィレッジというとSSWやフォークのジャンルをまず第一に想像してしまうが、1960年代も後半にもなると実際にはブルースやサイケデリック、ルーツ・ロックなど、多種多様なジャンルに属するミュージシャンが輩出されていた。彼等は一歩先を行く洗練されたサウンドを武器に登場してきたが、まず第一に彼等の登場は早すぎた。MORやAOR、フュージョン、アダルト・コンテンポラリー、クワイエット・ストーム、カントリー・ロック、フリー・ソウル、ソフト・ロック、ネオ・ソウル、 ジャズ・ポップ等々。彼等の音楽を評する際、まあ大体このような言葉を誰もが使うだろうが、彼等の登場は1969年、である。時代はウッドストックの時代である。まだ一般的には1960年代のサイケデリック・サウンドを引きずる音楽が幅を利かせてしまう時代である。その1969年に彼等は例えば1979年発表でもなんら不自然でない音楽を発表した。まさに10年早すぎた名盤である。

当然の事ながら彼等の音楽は当時正当に評価されなかった。彼等は1969年のアルバム「The Fifth Avenue Band」を最後に解散。本作以外にはワーナーのコンピ「October 10, 1969」(1969年)、「Schlagers!」「The Big Ball」(1970年)といったオムニバス盤に彼等の曲が取り上げられたのみ。解散後、ピーター・ゴールウェイは自分の音楽を正当に評価してくれるのは西海岸だろう、とばかりにロサンジェルスに移住、そこでダラス・テイラー、レイ・ナポリタンらとオハイオ・ノックス(Ohio Knox)を結成、1971年にシングル「Abigail Archer / That Lady」、アルバム「Ohio Knox」を残している。この翌1972年にソロ名義の「Peter Gallway」を発表している。母国での低評価をよそに日本市場でだけ愛されるアーティスト、ピーター・ゴールウェイはこの後も「On The Bandstand」(1977年)、「Tokyo to Kokomo」(1979年、前作の差し替え盤)を発表している。



■ Jon Lind - Lead Vocals
■ Kenny Altman - Lead Guitar, Bass
■ Peter Gallway - Rhythm Guitar, Lead Vocals
■ Jerry Burnham - Bass, Flute
■ Peter Heywood - Drums
■ Murray Weinstock - Keyboards

この後、1985年にはソロ「Proof」を発表、そしてフィフス・アヴェニュー・バンドの再結成へと繋がっていく。1990年の「Really」がそれだが、内容は良くも悪くも典型的なAOR。この手の音楽が好きな人にはたまらない人にはこれも良盤だろうけど。1990年代以降は、お洒落なソウル・ミュージックを指すフリー・ソウルと呼ばれるジャンル名が一般化していくに従い、フィフス・アヴェニュー・バンドやピーター・ゴールウェイの作品に対する評価が定まっていく。そうしたファンをバックにピーター・ゴールウェイは音楽活動を継続していく。なお、フィフス・アヴェニュー・バンドの他のメンバーも各シーンで引く手あまた。ハウディ・ムーン、ホワイト・ホース、マッケンドリー・スプリング、クイネイムス・バンド、ジョン・セバスチャン、ジュールズ・&ポーラー・ベアーズ、ラリー・リドレー、アース・ウィンド&ファイアー、マンハッタン・トランスファー、ランディ・ヴァンウォーマー、ニコル・ウィルス、ウッドストック・マウンテン・レヴューといったアーティスト達のアルバムで彼等の名前が見られる筈だ。

さて本作。発表は Reprise Records(当時)。日本では1998年にワーナーミュージック・ジャパンから名盤探検隊のシリーズの一つとしてCD化された。2008年に再発。プロデュースは元マグワンプスのメンバーでラヴィン・スプーンフルにも在籍していたザル・ヤノスキー、そしてこちらもスプーンフル人脈からジェリー・イエスター、更にエリック・ヤコブセン。個別の曲にも簡単に触れてみる。冒頭曲「Fast Freight」はピーター・ゴールウェイの曲。ザ・バンドの雰囲気にも似たスワンプ・ロック風のナンバーからアルバムは始まる。「One Way or the Other」はケニー・アルトマンの曲。ラテン・テイストを盛り込んだ、ジャジーで軽い仕上がりのナンバー。このまま山下達郎が日本語の歌詞を付けて歌ってもなんら違和感を感じないナンバーである。「Good Lady of Toronto」はピーター・ゴールウェイの曲。東海岸出身のバンドだが、1970年代前半のウェストコースト・サウンドを彷彿とさせるカントリー・バラードだ。例えるなら、カーラ・ボノフがリンダ・ロンシュタットの為に提供した様な曲。

続く「Eden Rock」はピーター・ゴールウェイとケニー・アルトマンの共作。「One Way or the Other」同様、ジャジーな雰囲気を活かしたアダルト・コンテンポラリー・ナンバー。洗練されたメロディー・ラインが実に美しい。「Country Time Rhymes」はピーター・ゴールウェイの曲。スローなテンポの曲だが、落ち着いた旋律の中にも洒落たセンスが感じられる小曲だ。ジェームス・テイラーとドナルド・フェイゲンがデュオを組んで曲を作ったなら、と思わせる様なナンバーでもある。続く「Calamity Jane」もピーター・ゴールウェイの曲。冒頭の曲と対になる様な南部テイストを感じさせるルーツ・ロック。「Nice Folks」はケニー・アルトマンの曲。ビーチ・ボーイズ風の素晴らしいコーラス・ワークを活かした小気味良いナンバー。こうして改めて聴いてみると、ピーター・ゴールウェイの曲よりケニー・アルトマンの曲の方が後の山下達郎の音楽を連想しがちだ。

「Cockeyed Shame」はピーター・ゴールウェイの曲。スティー・リーダン・ミーツ・サザンコースト・サウンドといった雰囲気が実に楽しい。「Faithful Be Fair」はケニー・アルトマンの曲。西海岸ハリウッド録音であるのが信じられない洗練された都会的なサウンド。1969年という時代を完全に超越している。フィフス・アヴェニュー・バンドの事を知らない人に聴かせたたら、これを1969年録音だと当る人はそう多くいないだろう。「In Hollywood」はピーター・ゴールウェイの曲。リンダ・ホイルをフロントとするアフィニティの様なジャジーなフォーク・ナンバー。ピーター・ゴールウェイ提供曲としては本作の中では異色のナンバー。「Angel」はアルバムのエンディング曲。ここまで作詞/作曲の面で登場してきなかったジョン・リンドの曲。アレンジはマレー・ウェインストック。ビーチ・ボーイズ風の美しいコーラスとバーバンク・サウンド、シカゴもどきのブラス・ロックが一体となった、かなり大胆なナンバーだ。

これでアルバムはお終い。米東海岸と米西海岸、米南部の美味しい所だけを上手に盛り込んだ素晴らしく巧みな音楽集。粒揃いの曲や秀でた演奏能力、そしてプロデュースだけでなくアレンジ面にも拍手を送りたい。繰り返して書くが、初めて本作を聴いた時にはこれが1969年録音だとは信じられなかった。それだけ時代を先取りしていた画期的なアルバムであると言える。曲の提供者がピーター・ゴールウェイとケニー・アルトマンという、雰囲気の異なる曲を提供する人が2人いたのだが、結果として本作を一本調子なものとせずバラエティに富んだ内容に仕上げるのに成功した。R&B、ラテン、フォーク、ジャズ、ロック、ブルース、ソウル。こうしたジャンルの音楽がなんの違和感もなく溶け込んでいる様はまさに奇蹟と言ってもよい。正真正銘、これぞ傑作と断言出来る。ちなみに本作で山下達郎テイストを遺憾無く発揮していたケニー・アルトマンは後に山下達郎のソロ「CIRCUS TOWN」でのLA録音での際にベーシストとして参加している。

Peter Gallway

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