(仏蘭西)Mathilda May / Mathilda May (1992)
マチルダ・メイ(Mathilda May)。この女優さんの名前を見てピンとくる人はさぞや映画秘宝的な男性に違いない。多分そうだ。では彼女がかつてアルバムを発表していた事実を知っている人はどれだけおられるだろうか。多分そう多くはいないだろう。彼女が出演した過去の映画(DVD)でさえ満足に日本では手に入らないのに、彼女のCDまで持っている人間はこの狭い人間、そんなに多くはいないだろう。ではその多くはない人間の1人、私が紹介します。おっとその前に彼女の略歴を簡単に紹介します。
マチルダ・メイは1965年2月、フランス・パリ出身。劇作家/俳優の父、元ダンサーの母を両親に持つ。幼い頃から音楽教育やバレエなどを学んでいた彼女はコンセルヴァトワールを首席で卒業するなど、なかなか頭脳明晰な女性だったようだ。映画デビューは1983年。『未来惑星ザルドス』のジョン・ブアマン製作による『ネモの不思議な旅』が最初だった。頭脳明晰、美貌と素晴らしい肢体。女優として成功する要素を持っていながら彼女が次なる作品として選らんだのがなんと『悪魔のいけにえ』のトビー・フーバー監督、『バタリアン』のダン・オバノン脚本によるSFホラー『スペースバンパイア』だった。
ここで彼女は宇宙から来た女スペースバンパイアを演じている。いや、演じているというよりは披露している。全裸を。この女スペースバンパイアは枯れ果ててしまうまで人間から精気を吸い取ってしまうという恐ろしいエイリアンだ。映画の最後でこのエイリアンはバンパイアらしき姿を晒すのだが、それまでこの女スペースバンパイアは全裸で夜の町並みを闊歩するのだった。この役をマチルダ・メイは堂々と演じてみせた。ちなみにセリフは一言もなかった。この時彼女は20歳。このボヨヨンな豊乳姿に私は大いに魅せられた。だが、直ぐに彼女の存在は忘れてしまった。ビガス・ルナ監督作品など一部の映画を除いて彼女の出演映画が日本で注目を浴びる事は殆どなかったのである。際物映画に全裸で出演する女優など、日本の映画配給会社が注目する筈もなかったのが原因だろう。
20年も前に全裸で出演した『スペースバンパイア』がいつまでもスポットライトを浴びる状況は女優マチルダ・メイにとってもさぞや苦々しい思いに違いないが、20歳であのような映画出演してしまう所から、彼女は何事にも前向きな好奇心旺盛な女性である事も想像がつく。そんな彼女も1990年代の前半に一時歌手としてアルバムを発表した事がある。だけれども女優さんが歌手として作品を発表するのはなにも珍しい事ではない。ジェニファー・ロペスやジェニファー・ラヴ・ヒューイットの例を挙げるまでもなく女優さんが歌手としてアルバムを発表してみたいと思うのは今も昔も同じようで、ずっと遡ればブリジット・バルドーやジャンヌ・モローだって歌手としてアルバムを発表している。そんなアルバムには隠れた名作として語り継がれている作品だってある位だからね。
ではマチルダ・メイはどうか。なにせ全裸バンパイアである。海外でいくら彼女が官能的な大人の女を演じられる演技派の女優としての評価が高くても、《腐っても鯛》《悪魔のいけにえ》1本で永久にトビー・フーパーを信仰する映画ファンの多い日本では、彼女は永久に全裸の女スペースバンパイアなのである。だが残念ながら音楽の方は、エロチックな作風を期待する映画秘宝的な男性ファンの心理を軽くいなしてしまうような、まるで軽めのファッショナブルなファンキー・ポップスだった。恐らくはアンテナとかバージアといったお洒落系サウンドに触発され、私も作っていたい、と当地のセッションマンをバックに歌ってみたのだろう。この時彼女は27歳。20代の記念にアルバムを残してみたかったのかも。セクシーな出演シーンをこれまでこなしてきた女優さんとは思えない、実に可愛らしいキュートな歌声が魅力だが、マチルダ・メイという名前がなければ買う必要もない、中古CDショップなどで捨て値で売られる類のレベル。彼女の熱心なファン以外には必要ない。
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