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#1444 Deuter / D (1971)

 2013-03-03
1. Babylon YouTube
i. Andantino
ii. Allegro 138 A
iii. Andante
iv. Allegro 138 B
2. Der Turm/Fluchtpunkt
3. Krishna Eating Fish And Chips
4. Atlantis
5. Gammastrahlen-Lamm

Deuter / D

Deuter と書いて、これをドイターを読むとドイツの登山用バックパックメーカーの事を指してしまうので、今宵は Deuter と書いて、これをデューターと読もう(本来ならドイターと読むのが正解なんだが)。1970年代前半から今日に至るまで音楽活動を継続しているジャーマン・ミュージック・シーンの陰の重鎮、デューター。ジャンル的にはニューエイジ、アヴァンギャルド、エレクトロニクス、エスニック・フュージョン、ヒーリング、アンビエント、リラクゼイション、エクスペリメンタル、インストゥルメンタル、ワールド・ミュージックなどの言葉で表現される現代メディテーション・ミュージックの第一人者だ。40年という、非常に長い経歴を持ちながら、ジャーマン・エレクトロニクス、あるいは近年のニューエイジ・ミュージックの好きな(しかもかなり好きな)人意外への認知度ほぼゼロと言ってもいい人でもある。1970年代、1980年代、1990年代、2000年代と絶え間なくアルバム制作を続けてきた人であるにも関わらず、悲しい程、名前を知られていない人と言っても良いでしょう。

デューターはドイツが第二次世界大戦に敗北した1945年、下町ファルケンハーゲンの生まれ。出世時の本名は「Georg Deuter」。ギター、ハーモニカ、フルートなどの楽器演奏を独学で習得。1970年に自動車事故に見舞われるというアクシデントを経て、1971年に最初のアルバムとなる「D」を発表する。リリースは1968年にエッカルト・ラーン(Eckart Rahn)という人物によりバイエルン州ミュンヘンにて設立された、カッコウのレーベル・マークで知られるプログレッシヴ系レーベルの Kuckuck Schallplatten。初期ポポル・ヴーの自然回帰主義にも通じる、東洋志向のアンビエント・サウンドでデビューを飾る。今でこそ、こうしたニュー・エイジ志向のサウンドは特段珍しくもなんともないだろうが、1971年の時点でこうしたアンビエント・エレクトロニクス・サウンドといえば、他のドイツ勢を見回してもポポル・ヴー位しか見当たらない。ある意味、時代を先取りしていた存在であるといえよう。
彼の音楽に東洋志向、特にインド音楽からの影響が強く見られるのも、彼がインドのアーシュラム(道場)である時期、生活をしていたという経験があったからなのだという。1972年には第二弾となる「Aum」を Kuckuck から発表。前作同様、東洋志向、自然回帰といったテーマが見え隠れする(今で言う所の音響派の)サウンドに仕上がった。効果音の挿入なども前作同様。この後もデューターは1970年代を通じて「Celebration」「Haleakala」「Soundtrack」「Ecstasy」「Kundalini Meditation Music」といったアルバムを発表していく。1970年代、そして1980年代と、彼は霊感による着想や創造力を追い求めてアジア各地を訪問、最終的にデカン高原に位置するインド・マハラシュトラ州で二番目に大きな都市プネーに暫くの間、住み着くようになった。アーシュラムに出入りして精神を鍛錬したのも、どうやらこの時期のようだ。1931年、インドのクチワダ生まれで宗教家、神秘思想家としても知られるバグワン・シュリ・ラジニーシ(Bhagwan Shree Rajneesh、別名和尚:Osho)に弟子入りし、Chaitanya Hari と名乗っていたのだというから本格的だ。

この体験を元に彼はメディテーション・ミュージックを追い求めていく。1980年の「Osho Nadabrahma Meditation」、この後も「Silence Is the Answer」「Cicada」「Nirvana Road」「San」「Call of the Unknown: Selected Pieces 1972-1986」「Phantasiereisen」「Land of Enchantment」「Sands of Time」といったニュー・エイジ/メディテーション・アルバムを連発していく。1960年代後半から1970年代初頭にかけて登場した同世代のプログレッシヴ・アーティストが時代の流行に遅れまいと、ブームに便乗したかの様な音楽を発表する中、意思強固な彼は意に介さず、と自分の道を突き進んで行く。また、1980年代の早い時期からCDをリリースしていたのも彼の特徴だ。まあ、正直言って彼の音楽がリアル・タイムで日本に紹介されていた訳ではないから、彼のアルバムをせっせと当時からコレクションしていた人はそれ程多くなかった筈だと思います。

1990年代の初頭まで、デビュー以来一環してデューターの作品を発表してきた Kuckuck だったが、ここにきて20年来に渡った蜜月の関係が終了、この後、デューターはニュー・アース・レコーズと新たな契約を結ぶ事になる。ちなみに、この会社は1990年に Bhikkhu Schober と Waduda Paradiso の2人により独ミュンヘンで設立された、ワールド・ミュージック/ニューエイジ・ミュージック専門レーベル。彼等2人の精神的指導者はデューターも敬愛する和尚ことバグワン・シュリ・ラジニーシ。本来は和尚の命名により、中国で生まれた老荘思想タオイズムから Tao Music として出発する筈だったが、似た様な社名の会社が独国内にあった事から、やむなくニュー・アース・レコーズとしてスタートを切ったという。デューターは新レーベルからも「Wind & Mountain」「Osho Dynamic Meditation」「Nada Himalaya」「Reiki: Hands of Light」「Sun Spirit」「Garden of the Gods」「Buddha Nature」「Sea & Silence」「Earth Blue」「Tibet: Nada Himalaya 2」「East of the Full Moon」「Koyasan: Reiki Sound Healing」「Spiritual Healing」「Atmospheres」「Eternity」と勢力的に作品を提供し続けている。

Osho Kundalini MeditationReiki Hands of LightEast of the Full MoonTibet: Nada Himalaya 2Dream Waves

■ Deuter – Flute, Guitar, Synthesizer, Production, Engineering
■ Sigrid Müller-Gunow – Photography, Art direction

さて、今回紹介するアルバム「D」は彼の記念すべきデビュー・アルバム。1970年代初頭から西暦21世紀の壁を超えるまで、一環してニューエイジ/メディテーション・ミュージックを提供し続けてきたデューターの原点が聴ける記念すべき作品だ。今日、ニューエイジ・ミュージックという言葉を聴いて多くの人が連想するのは、エンヤ、ジョージ・ウィンストン、マイケル・ナイマン、喜多郎、クラナドといった、心地よく美しいメロディが特徴的な癒しの音楽を連想すると思う。ただ、定義自体は非常に曖昧で、アンビエントやエレクトロニカ、ミニマル・ミュージック、ワールド・ミュージックなどの音楽と多くの共通点を持つのも特徴的。リラクゼーションや瞑想、音楽療法にも使用されるのも特徴で、事実、デューターの音楽も、その様な場面で多く使用される事も多々あるのだとか。ただ本来なら、1980年代以降、世界的に流行し始めた、上っ面の癒しの効果を求めたニューエイジ・ミュージックとブーム以前のドイツ勢の皆さんを一緒には(心情的に)語りたくない。

1970年代初頭、シンセサイザーという電子楽器を駆使して音楽シーンに登場してきたドイツ勢の内、多くのアーティストはシンセサイザーが奏でる未知のサウンドに宇宙のイメージをシンクロさせてコスミッシェ・ムジーク(コズミック・ミュージック)を完成させていったが、自然、特に神秘的な印象を電子楽器、すなわちシンセサイザーといった楽器を用いてアプローチしていった例も存在する。その頂点に立つのがフローリアン・フリッケ率いるポポル・ヴーだった。電子楽器を使う事は目的ではなく手段。だからこそ、電子楽器を使用しているにも関わらず、生の感触が伝わってくる。デューターの音楽、特にニューエイジ・ミュージックがブームとして世界的に広まる以前の彼の音楽もそれに準ずるだろう。神秘主義の国だからこそ登場した音楽、でも言おうか。さて、本作の紹介に戻る。発表は1971年。CD化は1980年代末の Kuckuck盤が最初。その後、Esoteric Recordings 傘下の英Reactiveから2010年にリマスターCD化された。今回取り上げるCDもそれである。ちなみに私は輸入の中古CDを安価で買いました。

デュターによる自作自演の一人芝居、「D」の幕開けは「Babylon」。4部構成による組曲形式の14分越えの大作から始まる。ニューエイジ・ミュージックの文脈で語られるデューターだが、21世紀に生きる現代人がニューエイジ・ミュージックという言葉から連想するイメージとは裏腹の神経を逆撫でする様なドローン系のエクスペリメンタル・ミュージックが展開される。一人多重録音による影響なのか、かなり実験色豊かな色彩だ。例えれば、今のタンジェリン・ドリームの作品を聴いて、ごく初期のタンジェリン・ドリームの作品を聴いて多くの人があっけにとられる印象と似た様な感覚を持つかもしれない。1960年代末から1970年代初頭にかけてのジャーマン・ロック勢のアルバムによく見られた、混沌とした演奏が本作にも感じられる。これを未整理と思ってマイナスと評価するか、カオス・ミュージックとしてプラスに評価するかは聴き手次第だろう。ニューエイジ・ミュージックも、元を辿ればヒッピー・ムーブメントの影響大なのだから、ある意味、アシッド感覚があるのは当時としては当り前の話という事だ。

「Der Turm/Fluchtpunkt」は4分超のナンバー。ラーガ・ミュージックとサイケデリック・ミュージックが混在したトリップ・サウンド。間違っても、ニューヨーク在住の金持ちビジネスマンの日曜の瞑想には使えそうにもない。続く「Krishna Eating Fish And Chips」はタイトルにヒンドゥー教におけるヴィシュヌ神の第8の化身クリシュナ(Kṛiṣṇa)の名前がある事から大方判る通り、インドの伝統的な音楽まっしぐらのエスニック・ミュージック。続くは「Atlantis」。古代ギリシアの哲学者プラトンが著書の中で記述したアトランティス大陸をテーマにした曲だろうか。ゼウスの怒りに触れて海中に沈められた、という伝説を持つ幻の大陸をテーマにした曲らしい、幻想的で壮大なイメージを感じさせる曲でもある。自然音を巧みに取り入れた緻密なサウンドは今日の音響派の先駆的存在とも言えるだろう。「Gammastrahlen-Lamm」はアルバムの最終曲。初期のタンジェリン・ドリームにも似た神秘的なカオス・サウンド。ある意味、今日のニューエイジ・ミュージックとは真逆のベクトルを持つサウンドだが、それがどうして、私には心地よく聴こえるのだ。それは彼の音楽の向うに、自然に対する敬愛の精神が宿っているからなのだろう。

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