#1446 Improved Sound Limited / Improved Sound Limited (1971)

 2013-03-14
01. Doctor Bob Dylan
02. Pink Hawthorn
03. Johanna YouTube
04. If You Want To
05. Oedipus YouTube
06. Fudd McGorges
07. Thingamannalime
08. An Old Army Poem
09. Where Will The Salmon Spawn YouTube
10. To My Son
11. Shining Brightly In The Sun
12. It Is You (You Belong To Me)
13. Columbines, Violets And Daisies
14. I Am The Wolf
15. A Well-Respected Man
16. Drunken Mr. Hyde
17. A Soldier's Songbook  YouTube
18. ***

Improved Sound Limited

見るからにスター性皆無の暑苦しい野郎どもによるドイツ産ロック・バンド、インプルーヴド・サウンド・リミテッド(Improved Sound Limited)。1970年代前半に存在したロック・バンドらしい、寄せ鍋状態のごった煮ロック・バンドだ。音響改善株式会社などという、訳の判らない意味不明なバンド名だが、このような掴み所のないジャンル不明瞭なバンドが数多く存在していたのも1970年代前半当時のロック・シーンの特徴でもある。余程ジャーマン・ロックに詳しい人でもないと彼らの名前の名前にピンとこないだろうが、これでも結構長い期間、活動を展開していたバンドでもある。彼らの歴史を遡ると、(アマチュア・バンド時代からの計算だが)なんと1961年まで遡るというから驚きだ。1961年というと、ビートルズやローリング・ストーンズが大手レコード会社からデビューする前の話である。そんな息の長い(その割には知名度C級であるが)彼らの経歴を簡単に紹介してみたい。

結成は1961年、ドイツ連邦共和国バイエルン州のミッテルフランケン行政管区に属する郡独立市で、リヒャルト・ワーグナーの楽劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』の舞台としても知られるニュルンベルクにて。当地のヴィルシュテッター・スクールで結成された学生バンドで、当時のバンド名は Pyjamas Skiffle Group。バンド名にスキッフルとある事から大方判る通り、1950年代にイギリスでブームを巻き起こしたスキッフルを演奏するバンドであったとのこと。勿論、コピー元はロニー・ドネガンだ。ちなみに、スキッフルとはジャズやブルース、カントリー、フォークなどの音楽の影響を受けたアメリカ生まれの流行音楽の事で、1950年代中盤以降、イギリスで大きなブームを巻き起こしている。このブームの中から、アレクシス・コーナーが登場、更にビートルズやその後数多くのビート・グループが登場してきた事から、スキッフル・ブームなくして今のブリティッシュ・ロックは存在し得なかった、というのが一般的な定説でもある。

1964年から1966年までの間、彼らは今度はブリザーズ(Blizzards)と名乗って、ドイツのシュラガー歌手、ロイ・ブラック(本名は Gerhard Höllerich だが、当時の流行歌手ロイ・オービソンに肖ってロイと名乗って活動)のバック・バンドを務める仕事をこなしている。更に、1966年の秋から今度はインプルーヴド・サウンド・リミテッドと新たに改名して音楽活動を展開する。同年、最初のシングル「It Is You / We Are Alone」をポリドールで制作。次なるシングルは1969年のやはりポリドール盤「Sing Your Song / Marvin Is Dead」。この間、時間が空いているが、実は彼等はTV番組や映画の為のサウンド・トラック制作という仕事についている。ミヒャエル・ヘルホーファン監督が手掛けた番組などで、この時に彼らが手掛けた音楽の数々は1969年に Cornet ‎から発表されたサントラ盤「Engelchen Macht Weiter - Hoppe Hoppe Reiter」(2011年に Reel Time からCD化)で聴く事が出来る。事実上の彼らのデビュー作と言ってもいいだろう。

1970年も引き続きミヒャエル・ヘルホーファン監督の映画『o.k.』の為に曲を提供、TV番組のサントラ制作の傍ら、インプルーヴド・サウンド・リミテッドとしてもシングル「 Oedipus / Where Will The Salmon Spawn」をU.A. から発表する。1971年、やっと彼ら名義の初アルバムを発表する機会に恵まれた。それが「Improved Sound Limited」なるアルバムである。自由の女神のトレードマークで有名なリバティ・レコーズから発表された、このアルバムはなんと2枚組。デビュー作としては異例だが、1961年の学生バンド結成から10年が経過した事を考えると、自身のフル・アルバム発表に恵まれなかった不満や鬱積を本作制作の際にぶつけていった結果が、この2枚組という事なのだろうから、デビュー作で2枚組といってもなんら可笑しくはないのである。同年、BR Open Air Concert、German Pop Festival、Burg Herzberg Festival といった音楽祭にタンジェリン・ドリーム、バース・コントロール、フランピー、カン、アキム・ライヘル、エンブリオ、グル・グルらと共に出演。

インプルーヴド・サウンド・リミテッドは1973年に通算2作目となる(サントラを含めると通算3枚目となる)「Catch A Singing Bird On The Road」をCBSから発表。カントリー・タッチのレイドバックしたアルバムに彼らの当時のアメリカ志向が見え隠れする。また、映画音楽やTV番組への楽曲提供の仕事も引き続きこなしており、ミヒャエル・ヘルホーファン、ジョルジ・ラベリ、クラウス・シュレッテといった人達の為に曲を提供している。1975年には次なる新作アルバム「Rathbone Hotel」の為のデモ音源の録音を敢行。だが当時彼らが契約していたCBSはインプルーヴド・サウンド・リミテッドの名前では最早アルバムを出せぬと彼らに進言、結局彼らはバンド名を新たにコンドル(Condor)と改名して1976年に「Rathbone Hotel」を発表する。但し、コンドル名義のアルバムはこれ1枚限り。この後も彼等は映画やTV番組の為の楽曲提供をこなしている模様だが、1979年頃を最後にどうやら解散してしまったらしい。

上記で紹介した以外のアルバムにも簡単に触れておく。2002年に Long Hair から発売されたインプルーヴド・サウンド・リミテッド名義のCD「Rathbone Hotel」はコンドル名義で発表された唯一作品のリマスター再発。また、「Road Trax」なるCDは『o.k.』(1970年)、『Im Lauf Der Zeit』(1976年のヴィム・ヴェンダース映画)、『Das Brot Des Bäckers』(1976年)、『So Weit Das Auge Reicht』(1979年)という映画の為に制作されたサントラ音源を収録したもの。2003年のCD「The Final Foreword」は初期のシングル、未発表曲、TV番組の為の楽曲、「Road Trax」に漏れた彼等の映画音楽などを収録した作品集。2004年のCD「The Ultimate Collection」は Long Hair から発売されたCD5タイトルに加え、未発表曲などを収録したボーナス・ディスクを加えた6枚組SBM Digital RemasterCD。今から買うのなら、この6枚組セット物がいいかも。

Engelchen Macht WeiterCatch a Singing BirdRathbone HotelRoad TraxFinal Foreword

■ Axel Linstädt - Guitar, Keyboards, Occasionally Vocals
■ Johnny Fickert - Vocals, Percussion, Flute, Alto Saxophone
■ Uli Ruppert - Bass
■ Rolf Gröschner - Drums
■ Bernd Linstädt - Lyrics

さて、今宵紹介するCD「Improved Sound Limited」は1971年に発表された2枚組デビュー・アルバム(1969年のサントラを除く)。CDは2001年に Long Hair から発売済み。SBM Digital Remaster。インプルーヴド・サウンド・リミテッドのメンバーは4人。それと Bernd Linstädt という人物がバンドの歌詞担当としてバンドをバックアップ。彼は演奏家ではないようだが、恐らく初期のキング・クリムゾンのピート・シンフィールドのように、バンドの活動に対して大きな影響を及ぼしていたのであろう。個別の曲にも簡単に触れてみよう。冒頭曲「Doctor Bob Dylan」はタイトルから判る通り、ボブ・ディランを謳った曲。フォークぽい、というよりもスワンプ・ロックと中期ビートルズ風のブリティッシュ・サイケが混在した様な国籍不明のサウンドが飛び出てくる。ヴォーカリストの歌い方はジョン・レノン風。「Pink Hawthorn」はドリーミーなフォーク・ロック。「Johanna」はタイト&ファンキーなリズムを基調とした、よれよれサイケデリック・ブルース・ロック。

続く「If You Want To」は濃霧の中から聴こえてくる様なフォーキーなナンバー。「Oedipus」は大袈裟なアレンジが特徴的なナンバー。欧州産ポップ・ソングらしい、くどいアレンジが特徴。アメリカに憧れを持っていたであろうインプルーヴド・サウンド・リミテッドだが、飛び出てくるサウンドはヨーロ産。このギャップがクセになる。「Fudd McGorges」は典型的なフォーク・ソング。メンバーの誰が好きだったかは知らないが、6曲目にしてようやくボブ・ディラン風のナンバーが飛び出てくるが、ヴォーカルは例によってビートルズのジョン・レノン風。続くタイトル「Thingamannalime」も同様。中期ビートルズに影響を受けたとおぼしきアレンジが飛び出てくる。畢竟するに、ジョン・レノンが好きなメンバーとボブ・ディランが好きなメンバーの間での葛藤も録音中にはあったに違いない。「An Old Army Poem」は1960年代後半のサイケデリック・ブルース・ロックからの影響も色濃いプリミティヴなナンバー。

「Where Will The Salmon Spawn」はスローなテンポのナンバーで、何処と無くプロコル・ハルム風の陰のあるナンバー。しかし彼らの曲は皆、時間が短い。映画音楽やTV番組の為の楽曲制作が本作制作の時点で既に板についていたのであろうか、自身のオリジナル作品制作にも、その影響が投影されている。「To My Son」は5分を越える落ち着いたテンポのバラード・ソング。ちなみに1970年代初頭のジャーマン・ロックらしいカルト風味は皆無。途中、ブリティッシュ・モダン・ポップみたいな凝ったアレンジも披露してくれる。「Shining Brightly In The Sun」はディスコ化する以前のビー・ジーズみたいな感傷的なナンバー。「It Is You (You Belong To Me)」は2分にも満たない軽快なポップ・ソング。イメージはもろ、モダン・ポップ・バンド風。「Columbines, Violets And Daisies」はフォーク・ブームの時代にこんな感じの曲あったんじゃないの、という印象を聴き手に植え付けさせる様なキュートなナンバー。「I Am The Wolf」は初期のザ・フーの様なビート・ソング。

歌い方はまるでジョン・レノン風のフォーク・ソング「A Well-Respected Man」、サイモン&ガーファンクル風の「Drunken Mr. Hyde」を経て、アルバムは「A Soldier's Songbook」という大作ナンバーに続いていく。2枚の大作でありながら、そしてプログレッシヴ・ロックの夜明けというべき時代に発表されていながら、ここまで長尺のナンバーが目立たなかったのですが、最後の最後にきて17分を越えるプログレッシヴ・ナンバーが飛び出てきた。これまでの16曲が余りに尺が短いものだから、ひょっとすると映画音楽やTV番組制作の際に使われなかった没テイクを再録したんじゃないか、とも思ってしまうようなアッサリとした演奏だったのですが、この大作ナンバーはそうした傾向の曲とは大きく異なる。緻密に構成された「A Soldier's Songbook」は1970年代初頭のプログレッシヴ・ロック・シーンに相応しい出来栄えの曲と言えよう。この後、アルバムは「***」というタイトルの1分にも満たないナンバーで幕を閉じる。

1971年に発表されたジャーマン・ロックなのだが、本作は当時の同世代のデュッセルドルフ派やベルリン派、或いはエスニック派とも異なる嗜好性を持ったアルバムでもある。次回作「Catch A Singin' Bird On The Road」で更にアメリカン・サウンドに近づく事から、彼らが当時目指していたスタイルはあきらか。但し、彼らの基礎は1960年代に登場したブリティッシュ勢と同様にスキッフルなのだから、随所で(英国勢と)似てきてしまう所も出てきてしまう。そこが興味深い。それと初期のドイツ勢バンドが大なり小なり抱えていた、垢抜けないセンスを彼らも抱えていたようである。まあ、仕方がない。サウンド的には1960年代のサイケデリック・ロック、アシッド・フォーク、ブルース・ロック、プログレシッヴ・ロック、ブリティッシュ・ポップからの影響も垣間見て取れるし、それに所謂”サージェント・ペッパーズ・シンドローム”の範疇で語る事の出来るアルバムでもある。映画やTV番組の仕事を頻繁に受けていた事から察するに、きっと器用な連中だったのだろう。本当なら、2分や3分の尺の曲を少しばかりアレンジを加えて、4分~5分程度の曲に纏めれば、もっとまともな体裁のアルバムになった筈である。

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コメント
Roy Black の事を書いてくださってありがとうございます。私はRoy Blackを日本で広めるために女性誌にエッセイを書いたり彼のことについての本を日独語で出版したりしているRoy ファンのおばさんです。ちなみに63年に彼の作ったバンドはCannonsといいます。64年にアウクスブルクの音楽祭で彼らは優勝してしまい、ポリドールレコードプロデユーサー、ハンス・ベルトラムにスカウトされロックを吹き込んだのですが失敗しました。66年に甘ったるい歌謡曲路線で一躍アイドルになった歌手です。惜しくも1991年にヘルデンシュタインの別荘で心臓麻痺のため48歳の若さで他界しました。とにかく貴サイトにてRoy Blackの事が書かれているので感謝感激です。これからも頑張ってください。ご活躍を祈ります。ありがとうございました。 木下秀子
【2015/01/10 21:30】 | 木下 秀子 #- | [edit]
コメントありがとうございます。今や廃墟化しつつある当ブログにお越し
頂き、まことに恐縮です。48歳で死去だなんて、さびしいですね。
【2015/01/12 23:50】 | Cottonwoodhill #- | [edit]












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