#1447 Panta Rei / Panta Rei (1973)

 2013-03-22
1. Five Steps
2. White Bells
3. Five O'Clock Freak
4. The Knight
5. The Turk YouTube

Panta Rei

ハード・ロック? サイケデリック/アシッド・ロック? それともプログレッシヴ・ロック? 或いはジャズ・ロック? それともスペース・ロック? ジャケットを見ただけではなんだか全く内容が想像出来ない異国のロック・バンドが今宵の主役。名前はパンタ・レイ(Panta Rei)。北欧はスウェーデン出身のロック・バンドである。グーグルで検索するとギリシアのホテルの名前ばかりが引っかかってしまって、調べるのにも苦労してしまったが、このバンドは1970年代前半の一時期にひっそりと存在していたバンドである。意味のよく判らないバンド名なので、似た様な名前のバンドなんて彼ら以外にないだろうと思いきや、これが結構存在する。スペルは一文字違うが、1974年結成(1982年解散)のハンガリーのプログレッシヴ・ロック・バンド、Panta rei。ドイツにも Panta Rhei という名前のジャズ・ロック・バンドが存在していた(1973年にセルフ・タイトルの唯一作を発表)。1980年代にはオランダに Panta Rhei、それから1990年代のベルギーに、2000年代以降にはコロンビアやスロバキアに存在している。

私の様な学のない人間には全く馴染みのない、パンタ・レイ(Panta Rhei、今回のバンドは ”h” の抜けた Panta Rei であるが、、)という言葉であるが、この言葉にはちゃんとした意味がある。パンタ・レイとは[万物は流転する]、という意味だそうです。ギリシア語で書くと Τα Πάντα ῥεῖ (Ta Panta rhei)となるらしい。この言葉は、「暗い哲学者」「泣く哲学者」とも呼ばれる、紀元前540年頃 - 紀元前480年頃?のギリシアの哲学者ヘラクレイトスのものだそうだ。万物は流転している、自然界は絶えず変化している。物事は常に変化するという意味で、仏教の世界の『この世のあらゆるものはすべて移ろい行く』という諸行無常、はたまた平安時代末期から鎌倉時代にかけての日本の随筆家、鴨長明の有名な随筆『方丈記』にある、『ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし』といった言葉と同意語のようだ。プラトンが引用している事でも知られるパンタ・レイだが、実際にはヘラクレイトスの著作では触れていない可能性もあるのだという。まあ、どっちにせよ、哲学とは無縁の生活を送っている私のような人間には無縁の言葉でもある。
さて、パンタ・レイの結成は1970年、スウェーデン中部の都市でウプサラ県の県都ウプサラにて。ちなみに世界的な映画監督のイングマール・ベルイマンも、このウプサラの出身である。結成当初のメンバーは、Georg Trolin(ヴォーカル)、Thomas Arnesen(ギター)、Lennart Backwall(ギター)、Zeke Öhrn(ベース)、Anders Fransell(ドラムス)。まあ、月並みな感想だが、彼らも1960年代中盤以降の世界的なサイケデリック・ロック・ブーム、ヒッピー・カルチャーに刺激を受けた若者達によるバンドであった事は想像に難くない。当時の彼らの主戦場はスウェーデン最大の都市で、北欧を代表する世界都市でもあるストックホルム。アルバム発表以前の彼らの存在は当地では高く評価されていたらしい。若き青年達によるパンタ・レイはフィンランドへのツアー敢行、地元ウプサラで開催された音楽フェスへの参加などを経て、アルバム制作の為のセッションも行なった模様だが、当時の音源は日の目を見る事なくお蔵入りとなってしまったようだ。

最初の彼らのアルバム(と同時に彼らの唯一作)が発表されたのは1973年だが、発表当時、結成当初のメンバーでバンドに残っていたのはヴォーカリストとギタリストの Thomas Arnesen のみ。もう一人のギタリストは Leif Östman へと交代。また、ベーシストは元Renhjärta の Cary Wihma へ、そしてドラマーは Tomo Wihma へと、それぞれ交代している。また、 Göran Freese というサックス奏者(彼は1969年に発表された、G.L. Unit「Orangutang!」という企画アルバム?の録音に参加している)も途中からパンタ・レイに参加した模様だが、アルバム発表時点で脱退してしまったのか、デビュー作には正式メンバーとしてはクレジットされていない。また、正式メンバーではないが、Gunnar Lindqvist というフルート/サックス奏者も録音に参加している。1973年、王手EMIのサブ・レーベルとしても知られるハーヴェストから最初のアルバムが発表されるものの、結局1973年から1974年にかけての北欧ツアーを最後にパンタ・レイは解散してしまった。

■ Georg Trolin - Vocals, percussion
■ Thomas Arnesen - Guitar, Keyboard, Percussion
■ Leif Östman - Guitar, Percussion
■ Cary Wihma - Bass, Percussion
■ Tomo Wihma - Drums, Percussion

■ Göran Freese - Saxophone, Percussion
■ Gunnar Lindqvist - Flute

解散後、Gunnar Lindqvist は1974年結成のマルメのバンド、Storm に参加。このバンドは1974年から1977年までの間に3枚のアルバムを発表している。また、ドラマーの Tomo Wihma はウプサラのバンド、Kontinuerlig Drift に参加。こちらのバンドは1977年にセルフ・タイトルのアルバムを発表している。リーダー格の Thomas Arnesen は、1970年代にはオランダ生まれでスウェーデン育ちのフォーク歌手、Cornelis Vreeswijk のアルバムや、スウェーデンのSSW、Tomas Ledin のアルバムなどに参加。1980年代にも、Gösta Linderholm や Hasse Bruniusson らのアルバムに参加した他、1990年代以降には「Backwater Blues」「Tillbaks igen」「Later in the Evening」といった自身のソロ作品を発表している。さて、本作「Panta Rei」の紹介だ。この作品は1973年にハーヴェストから発表された彼らの唯一作。アナログ盤は2010年に Golden Pavilion Records から再発。CDは1998年に米 Timothy's Brain から最初の銀盤化。その後、2004年にギリシアを拠点とする、サイケデリック/プログレッシヴ・ロック専門の再発レーベルである、Acid Symposium から2度目のCD化。今回紹介するCDもその銀盤だ。

録音はストックホルムにあるEMIのスタジオにて。奇抜なジャケットのデザインはヴォーカリストの Georg Trolin によるもの。プロデュースは Gunnar Lindqvist。エンジニアは数々のスウェーデン産ジャズ・アルバムを手掛けた Gunnar Lööf が担当。さて、マハヴィシュヌ・オーケストラ、オールマン・ブラザース、ブライアン・オーガーズ・オブリビオン・エクスプレスなどのスタイルの異なるバンドのエキスが混沌と入り混じったパンタ・レイの個別の曲にも触れてみたい。冒頭の「Five Steps」は3分程度の曲。ソングライターとして Georg Trolin と共にサムラ・ママス・マンナの Lars Holmer の名前が刻まれている。なので、その手の音楽の好きな方なら、あの傾向のアヴァンギャルドなサウンドを連想するかもしれないが、曲はいたって普通の、というかアメリカのサザン・ロック・バンドの様なレイド・バックした泥臭いロックが披露されている。インパクト大のジャケットから連想されるフリーキーな先入観を覆す内容ではあるが。

2曲目は「White Bells」。Georg Trolin の手によるもの。瑞々しいアコースティック・ギターの音色が印象的なナンバーだ。プログレッシヴ・ロックぽくもあり、はたまたサザン・ロックぽくもあり。これぞ北欧ロックというイメージはあまり感じられない。続くは「Five O’Clock Freak」。結成当初からのオリジナル・メンバーである Thomas Arnesen 作。前2曲までは北欧のロックらしからぬ月並みなスタイルの曲が並んでいたが、ここから俄然北欧のロックらしい、個性的なアレンジが登場してくる。ジャズ、ブルース、フォーク、ロック等のエキスがスリリングかつエキセントリックなまでに繰り広げられている。表面上の類似性こそ違えど、ある意味初期のフランク・ザッパ当りの縦横無尽な猥雑さと比較しても面白い。曲の時間は10分近く。やはりこの位の時間がないと彼らの様なバンドは面白くない。続く13分超の「The Knight」は旧アナログ・レコードのB面冒頭曲。3部構成の組曲形式だ。Thomas Arnesen、Georg Trolin といったメンバーの名前に加え、クラシック=ロマン派のドイツの作曲家、ロベルト・シューマンの曲も引用されている。アレンジはパンタ・レイのメンバー名義。

総体的に言って、新人バンドらしい荒削りな部分はままあるが、北欧産のプログレッシヴ・ロック・バンドらしい自由自在な展開が繰り広げられている。ベースはジャズ・ロックだろうが、一言で語る事は難しい。アンダーグランドな骨太のアンサンブルは実に見事。一般的に言って、北欧のプログレッシヴ・ロック・シーンには演奏技量の高いバンドばかりがひしめきあっているのだが、彼らの技量も充分に水準以上。アルバム1枚限りで消えてしまったバンドだからと、彼らを舐めてはいけない。「The Turk」はアルバムのエンディング曲。1960年代後半のサイケデリック&アシッド・ロック・シーンを引きずるスペーシーなロック。途中から北欧のバンドならでは、といった民族音楽調の凝ったアレンジも登場。この辺の展開は北欧のロックを好む人にとっては定番のスタイルだろう。こういう展開がないとね。これで本編はお終い。時間にして僅か38分程度。3曲目以降から目まぐるしく展開が変わっていくので、あっという間にエンディングが訪れてしまう。

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