#1450 Randy Pie / Highway Driver + Fast/Forward (1974, 1977) (2007)

 2014-01-04
[Highway Driver] 1974
01.Microfilm
02.Super Sid YouTube
03.Highway Driver  YouTube
04.Winter Song
05.It's A (Civilised) World
06.Sophisticated
07.Time Machine

[Fast/Forward] 1977
08.Stand Up YouTube
09.Hijacked
10.Back Street Boy
11.Star Attraction
12.Name Of The Game
13.Work It Out
14.Hot Afternoon
15.Trust
16.Fast Forward

Highway Driver
(注:2作目のジャケのみ表示)

ドイツはハンブルグ出身のバンド、ランディ・パイ(Randy Pie)。初めて、このジャケットを見た時には、どうせドイツのバンド、それも1970年代前半デビュー組のバンドなのだから大方ドロドロやさぐれ系のよくあるジャーマン・ロック・バンドなのだろう、とタカを括っていたが、なんの事はない、ある意味でドイツらしからぬAOR風情のジャジーでファンキーなロック・バンドだった。日本のロック・ファンは1970年代前半のドイツのバンド、などと書くと熱心なユーロ・ロック・ファンに限ってアモン・デュールとかカンとかファウストとかノイとかクラスターといったバンドを安直に連想してしまいがちだが、実際にはそうしたバンドは少数派で実際には米英のチャートと然程変わらない様相であったらしい。なのでランディ・パイというバンドも(多分)当時は主流のバンドのひとつとして音楽シーンの中で動き回っていたのだと思う。それに彼らはシングル1枚やアルバム1枚で短命に終わった一発屋ではないのだ。1970年代に6枚、1980年代に再結成して1枚ものアルバムを発表しているのだから立派なバンドである。

彼らの結成は1972年だが、歴史を遡ると1960年代当時のドイツで活躍していたラットルズ(The Rattles)というバンドに起源を置く。ラトルズじゃないよ、ラットルズ。このバンド、日本では馴染みの薄いバンドだが、驚くなかれ、1960年に結成されて西暦21世紀を超えても尚、活動を継続しているバンドなのだ(今も現役かは不明)。更に結成当初のメンバーにサイケデリック/ドローン系の大家、アキム・ライヒェル(Achim Reichel)がいた事でも知られている。このラットルズはイギリスのビート・バンド・ブームに触発されたビート・グループで、「Sticks and Stones / Johnny Be Good」「Baby, That Is Rock'n Roll / Everybody Loves a Lover」「Do Wah Diddy Diddy / Betty Jean」「Memphis Tennessee / Twist and Shout」などのロックンロール・シングル(タイトルからして、あまりオリジナル志向のバンドではなかったようである)を多数発表した後、1960年代後半に解散。その後、1970年に再結成を果たし、「The Witch / Get Away」というシングルをフォンタナから発表した後、商業面で新たな成功を掴んだようだ。

改めて、ランディ・パイの結成は1972年、ドイツ・ハンブルグにて。結成当初のメンバーはディッキー・タルラッハ(Dicky Tarrach、ドラムス)、ティジー・ティエール(Tissy Thiers、ベース、ヴォーカル), ベルント・ヴィピッヒ(Bernd Wippich、ヴォーカル)、ヴェルナー・ベッカー(Werner Becker、キーボード)ら。当初はランディ・パイ&ファミリー(Randy, Pie & Family)と名乗っていた。このうち、 ディッキー・タルラッハは1963年から1967年までラットルズのメンバー、ティジー・ティエールはブレイン・レーベルから「A Young Man's Gash」というアルバムを発表した限りで解散したガッシュのメンバー。また、Herbert Hildebrandt(ギター)、 Bernd Schulz(キーボード)、Klaus-Georg Meyer(ベース)という元ラットルズのメンバーもランディ・パイ&ファミリー名義の頃に活動に関わっていた模様。彼らはアトランティックと契約、1972年にシングル「Queen of Dream / Train Goes On」を発表してデビューを飾る。この時はまだランディ・パイ&ファミリー名義。

この後、どんな理由かは分からないが分裂、ディッキー・タルラッハは新たなメンバーとランディ・パイ名義で再始動、1973年にメトロノーム系のハンブルグのサブ・レーベル、ゼブラ(Zebra)から記念すべき最初のアルバム「Randy Pie」を発表している(後に「Sightseeing Tour」の名前で再発)。上記の様なゴタゴタ故、正式なメンバーにギタリストはクレジットされていない(ゲストとしてフランピーのギタリストが参加)。ファンク・ロックやジャズ・ロックなどのスタイルを模倣した方向性からして、米英マーケットを多分に意識した音作り。1974年には英ツアーも敢行する。同年、元イカルスのヨッヘン・ペーテルゼン(Jochen Petersen、ギター、フルート、サックス)、そしてフランピーからオルガン奏者のジャン・ジャック・クラヴェッツ(Jean Jacques Kravetz)が参加して大所帯となったランディ・パイは続く新作”Sophisticated”の製作に取り掛かるものの、タイトルがそれじゃあ、とばかりに最終的にタイトルは「Highway Driver」と直されてポリドールから発表される事になる。ジャケットは泥臭くて、いかにもスワンプ・ロック、という風情なんだか。

ドゥービー・ブラザーズとスティーリー・ダンとスライ&ファミリー・ストーンが合体したらこうなった、というサウンドを武器に彼らは「Kitsch」(1975年)、「England England」(1976年)、「Fast/Forward」(1977年)というアルバムを発表し続けていくが、メンバーが次々と離脱していく事態に見舞われ、1977年を最後に解散。解散後も元メンバー達は音楽活動を継続していた模様だが、1980年代の中ごろに突如再結成、1986年に「Magic Ferry」というアルバムを独WEAから発表している。このアルバムにはかつてのメンバー、ディッキー・タルラッハ、ティジー・ティエール、 ベルント・ヴィピッヒ、ヴェルナー・ベッカーが参加した他、Nils Tuxen(ギター)、Claus-Robert Kruse(キーボード)も参加している。しかしながら、この再結成プロジェクトは1枚限り。どうやら同窓会的な意味合いの限定プロジェクトだったようだ。さて、今回紹介するCD、「Highway Driver + Fast/Forward」は2007年に Razor records(独)から発売された 2in1 CD。収録されているのは1974年の2作目「Highway Driver」と1977年の通算5作目「Fast/Forward」。

Highway DriverRandy Pie/KitschMagic Ferry

「Highway Driver」1974
■ Bernd Wippich - Lead Vocals, Lead Guitar, Acoustic Guitar, Percussion
■ Manfred Thiers - Bass, Percussion, Vocals
■ Dicky Tarrach - Drums, Percussion
■ Jean-Jacques Kravetz - Electric Piano [Fender Rhodes], Vocals, Clavinet, Strings [String Ensemble]
■ Jochen Petersen - Guitar, Vocals, Alto Saxophone, Percussion, Flute
■ Werner Becker - Grand Piano, Vocals, Electric Piano [Fender Rhodes], Organ [String], Piano

「Fast/Forward」1977
■ Peter French - Lead Vocals
■ Frank Diez- Guitar
■ Manfred Tissy Thiers - Bass, Backing Vocals
■ Dicky Tarrach - Drums
■ Jean-Jacques Kravetz - Clavinet, Synthesizer, Organ, Electric & Acoustic Piano

ちなみにデビュー作と「Kitsch」をカップリングした2in1 CD、ライヴ盤「England England」もCD化されているようなので、彼らの1970年代のアルバムをコレクションする事は可能。では簡単に個別の曲にも触れてみる。冒頭曲は「Microfilm」。ランディ・パイに対する事前の知識が購入前には殆どなかったので、この曲を初めて聴いた時には少々驚いた。とてもドイツのバンドとは思えない、ファンキーなジャズ・ロック・ナンバーだったからだ。テンポの良い、ノリのよいリズムは神秘主義の国とは無縁のカラっとした印象で、英語歌詞ということもあって、事前知識のない人にいきなり聴かせたら1970年代前半のアメリカのブラス・ロック・バンドかなにかと錯覚するだろう。続く「Super Sid」は7分超えのナンバー。ローズ・ピアノ、フルート、サックス、女性ヴォーカルのコーラス、そして粘っこいベースの絡み合いはまるっきりスティーリー・ダン。まさか1974年のジャーマン・ロック・シーンからスティーリー・ダンが飛び出てきようとは。ある意味、期待を裏切られたサウンドだが、とても良い響きだ。演奏技量も一級品。

「Highway Driver」はタイトル・ソング。1970年代の所謂、ブラック・パワー・ムービーのサントラに似合いそうなファンキーなナンバー。「Winter Song」はキーボード奏者のヴェルナー・ベッカーがリード・ヴォーカルを担当した、スローなテンポの湿った雰囲気のナンバー。「It's A (Civilised) World That Keeps Folks Like Us Together」はエンジニア&プロデューサーの Volker Heintzen が特別参加したジャズ・ロック・ナンバー。これもひねりの効いたスティーリー・ダンもどきのジャズ・ロック(テクニカルな演奏だが、決してそれを前面に押し出さない洗練された大人嗜好のジャズ・ロック)が展開される。「Sophisticated」は本来ならばタイトル・ソングになるべきだった曲。ローズ・ピアノとグランド・ピアノと掛け合いが粋な雰囲気を醸し出す。「Time Machine」は「Highway Driver」のエンディング曲。ソウル、ジャズ、ファンクといった要素が絡みあうナンバー。それにしてもこのヴォーカル、本当にドナルド・フェイゲンに雰囲気そっくりだ。スティーリー・ダンは本作発表時点で、「Can't Buy A Thrill」「Countdown To Ecstasy」といったアルバムを発表済みだから、多分に意識していたであろう事は容易に想像がつく。

「Stand Up」からは1977年のアルバム「Fast/Forward」から。リード・ヴォーカリストの交代、そして3年という月日が流れているが、基本となるサウンドは変わらない。1977年という時代背景もあって、ディスコ調のアレンジも加味されている。メロディアスでファンキーなナンバーはその筋のファンにも喜ばれよう。「Hijacked」はファンキー&スワンピーな響きのナンバー。「Highway Driver」のヴォーカリストの方がスティーリー・ダン似だったが、「Fast/Forward」のヴォーカリストはサザン・ロック/スワンプ・ロック風の味わい。いずれにせよ、これがドイツのバンドなの?といった場違い路線は相変わらず。「Back Street Boy」はキャッチーなハード・ポップ。産業ロックという時代のキーワードを思い出した。「Star Attraction」は今でも現役、Frank Diez の手による曲。何処となく田園風情のプログレ・ナンバー。やっとヨーロパのバンドらしい世紀末的で耽美なナンバーが登場した。「Name Of The Game」は本来のランディ・パイらしいファンク・ロック・ソング。

「Work It Out」はフランピーからランディ・パイに参加したジャン・ジャック・クラヴェッツ提供曲。ソウル・フィーリング溢れるロック・ナンバー。このバンド、解散せずにフュージョン/AOR路線に突き進んでも成功したのではないか。続く「Hot Afternoon」はAOR風情のナンバー、「Trust Me」はファンク&ソウル路線のナンバー、そしてエンディング「Fast Forward」へと突き進んでいく。これで御しまい。アメリカの音楽シーンにおける流行を美味く取り入れていたバンドという印象を持った。スティーリー・ダン似の印象は「Highway Driver」の方が色濃いが、ジャズ、ファンク、ソウル、ディスコ、フュージョン、AORといった時代のエキスを上手に取り込んで違和感なく加工している様は見事。解散という憂き目に会わなければ、もっと長続きしたのではないだろうか。1970年代のドイツ産のバンドを紹介する際に定番となるキーワードは”B級ロック”だが、そんな言葉は彼らに相応しくない。所謂、ジャーマン・ロックのステレオ・タイプとは異なる為、正当に評価される機会は少ないだろうが、もっと高く知られていいバンドだと言えよう。

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