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#1050 Juicy Lucy / Juicy Lucy (1969)

 2006-03-23
1.Mississippi Woman
2.Who Do You Love?
3.She's Mine/She's Yours
4.Just One Time
5.Chicago North-Western
6.Train
7.Nadine
8.Are You Satisfied

9.Walking Down The Highway(Bonus Track)

ジューシー・ルーシー(紙ジャケット仕様)

オランダの総合家電メーカーとして知られるフィリップス社のレコード部門フォノグラムが1969年に設立したレーベル、ヴァーティゴはブリティッシュ・ロック・ファンから永久に愛されるレーベルの一つだ。コロシアムの有名な1969年作品「Valentyne Suite」を基点として多くのアルバムが市場に送り出され、その多くがブリティッシュ・ロックの名盤・愛聴盤としてこれまで長らく親しまれてきた。これより以前、フォノグラムはブリティッシュ・ビートのブームに肖ってフォンタナというレーベルを英国内で設立しマンフレッド・マンやスペンサー・デイヴィス・グループなど幾つかの有名なバンドの作品を紹介してきた。コロシアムも「Valentyne Suite」以前にフォンタナでデビューを飾っており、ヴァーティゴ設立の際にフォンタナからヴァーティゴに移籍してきたのだった。マンフレッド・マンも実はフォンタナ→ヴァーティゴというコースを辿ってきたバンドだったのだが、彼等同様フォンタナ→ヴァーティゴというコースを辿ってヴァーティゴでアルバムを発表したバンドがあった。ジューシー・ルーシー(Juicy Lucy)という名前のバンドである。
実はジューシー・ルーシー名義でアルバムを発表したのはヴァーティゴが最初で移籍する前のフォンタナ時代には彼等はミスアンダーストゥッド(Misunderstood)と名乗って活動をしていたらしい。当初米国を活動の拠点(後に渡英)としていた彼等の作品はこれまで未入手だが、1960年代前半に結成された頃はローリング・ストーンズやアニマルズのようにブルースやR&Bをベースとしたサウンドで後にガレージ・サイケ調のサウンドへ変化していったようだ。コロシアム、マンフレッド・マン、ジューシー・ルーシー(ミスアンダーストゥッド)、更にユーライア・ヒープというバンドはヴァーティゴ発足当時ジェリー・ブロン率いるブロン・エージェントという会社とマネージメント契約を結んでいたが、この会社とヴァーティゴが提携関係を持った事でフォノグラム傘下のヴァーティゴと契約を結んだのが真相のようである。ちなみにジェリー・ブロンは後日自身の名前を捩ってブロンズ・レーベルという会社を設立している。ジューシー・ルーシーが3枚目の作品をブロンズ・レーベルから発表した訳もこんな理由からだった。

兎にも角にも彼等ジューシー・ルーシーは晴れて1969年にデビュー・アルバム「Juicy Lucy」を発表するに至った。ジューシー・ルーシー名義で最初のアルバムが発表される迄に彼等には幾つかのバンドのメンバーが入れ替わりしたようである。ミスアンダーストゥッドの元メンバーの他、ヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーター、ナイス、ブルースブレイカーズ、グレアム・ボンドといったバンドやアーティストの元で演奏活動を展開していた連中が集まってきたが、最終的に元ミスアンダーストゥッドの米国人ギタリストだったグレン・キャンベルの元には黒人歌手のレイ・オーウェン(ヴォーカル)、ニール・ハバード(ギター)、キース・エリス(ベース)、ピート・ドブソン(ドラムス)、クリス・マーサー(キーボード、サックス)といったメンバーが揃う事になる。しかしながらバンドは僅か1作で崩壊の危機を迎えてしまう。レイ・オーウェン、ニール・ハバード、ピート・ドブソンといった主要メンバー3人が一挙離脱してしまったからだ。脱退理由はそれぞれソロ活動、新たなバンド結成というものだったようだ。
グレン・キャンベルは新たに元ズート・マネー・ビック・ロール・バンドのポール・ウィリアムス(ヴォーカル)、後にホワイトスネイクに加入するミッキー・ムーディー(ギター)、後にスティラーズ・ホイールを経てストローブスに加入するロッド・クームス(ドラムス)といったメンバーを招き入れて再スターを切る事になる。ヴァーティゴにはもう1枚、「Lie Back And Enjoy It」という作品を1970年に発表するが、この後ジェリー・ブロンがアイランド・レコーズからの配給という形式でブロンズというレーベルを新たに設立した事を受けて彼等も同レーベルに移籍、1971年に通算3作目となる「Get A Whiff A This」を発表している。しかしながらブロンズから発表されたのは結局この1枚。この後グレン・キャンベルはバンドの建て直しを図り、新たなメンバーと共にポリドールから「Pieces」(1972年)という作品を発表するも、既にバンドは有名無実な存在となっていた。バンド解散後、ポール・ウィリアムスは元コロシアムのジョン・ハイズマンらと共にテンペストというハード・ロック・バンドを結成するも、1枚限りで脱退してしまった。

Pieces

■ Ray Owen - Lead Vocals
■ Glenn Ross Campbell - Steel Guitar, Mandolin, Marimba, Vocals
■ Neil Hubbard - Acoustic & Electric Guitar
■ Keith Ellis - Bass, Vocals
■ Pete Dobson - Percussion, Drums
■ Chris Mercer - Organ, Acoustic & Electric Piano, Sax

■ Loughty Amao - Percussion

純然たるジューシー・ルーシーの作品は4枚。本作は果物による女体盛が印象的な彼等のデビュー作(米国ではジャケが問題になり別のデザインに差し替えられた)。2006年1月に日本の復刻系レーベルであるエア・メイル・レコーディングスの「BRITISH LEGEND COLLECTION」シリーズの一環としてポリドール時代の作品を除く3作が一挙紙ジャケ化されたが、見開き3面ジャケが再現されるなど、CDとしてオリジナルに準じた形式で発売された事は大変喜ばしい限りである。1972年の「Pieces」を最後に活動を停止してしまったジューシー・ルーシーであるが、実は1990年代以降に元メンバーによってジューシー・ルーシーの名前が使用されている。首謀者のグレン・キャンベルは解散後は米国に帰国してしまったようだが、バンドに在籍した2人のヴォーカリストによってアルバムが発表されているのだ。何れも未入手だが、ポール・ウィリアムスによって「Blue Thunder」という作品が、更に初代ヴォーカリストのレイ・オーウェンによる「Here She Comes Again」 という作品がそれぞれ1990年代の後半にジューシー・ルーシー名義で発表されている。
米国人ギタリストのグレン・キャンベルあってのジューシー・ルーシーだと思うので、これら元ヴォーカリストによる暫定ジューシー・ルーシー名義の作品がジューシー・ルーシーの正当な新作とは到底思えないので、こうした作品はなかったものとして話を進めたい。さて、レーベルの枠を超えて一気に紙ジャケ化されたジューシー・ルーシーの3作品であるが、米国人が渡英して音楽活動を展開した、いわば米と英のエキスが入り混じったバンドであるだけにどの作品にも一筋ならぬ音楽性を秘めているのが彼等の特徴だ。そのゴッタ煮感覚がかえって彼等のB級感覚をクローズ・アップさせていると言えなくもないが、黒人歌手のレイ・オーウェンを始めとする初期の3人が脱退してイギリス人演奏家を中心とした新生ジューシー・ルーシーとなってからは、作品毎にアクの濃さや泥臭さが薄れていく。「Lie Back And Enjoy It」、そしてブロンズからの「Get A Whiff A This」当りになるとサウンドもかなり整理整頓され、当時の英ロック界のトレンドでもあったレイド・バックしたスワンピーなロック・サウンドを真骨頂とするバンドへと変貌を遂げている。

レイドバック感覚をふんだんに取り入れた2、3作目も優れた作品だと思うが、サウンドから滲み出る重量感という点ではデビュー作が一番。なにより楽曲が皆格好良い。それに白人演奏家をバックに歌う黒人ヴォーカリスト、というスタイルがとても興味を引いたし、なによりレイ・オーウェンの独特のコブシを効かした歌い方が妙に気になった(アルバムが進行するに従い何故か声質が変化している)。冒頭のナンバー「Mississippi Woman」はブルースを基調としたハード・ロック調のナンバーでレイ・オーウェンの痰が絡まったような変な歌い方がイキナリ炸裂する。サックスが唐突に挿入されたかと思うと、掻き毟るようなギターが変わって挿入されるなど、かなりアレンジが奇抜。「Who Do You Love?」は彼等のデビュー・シングルにもなった曲でボ・ディドリーのカバー。「She's Mine/She's Yours」は前曲よりもテンポを幾分落とした曲でコロシアム張りのブルージーな骨太ブギ・ロックだ。冒頭から3曲目まではかなりアグレッシヴなナンバーが揃っているが、幾分トリップ感覚も感じられる「Just One Time」でアルバムの総イメージが固定化されるのを防ぐ事になる。
「Chicago North-Western」はグレン・キャンベルのペンによる曲でリード・ヴォーカルも自身で担当した。米国出身の音楽家らしいレイド・バックしたスワンピーなサウンドだ。既に1枚目の段階でこうした傾向の曲が披露されている事が実に興味深い。「Train」はジミ・ヘンドリックスの影響であろうファズを効かせたギターが印象的な曲。アルバムの冒頭で痰が絡まったような変な歌い方を見せてくれたレイ・オーウェンであったが、この当りまでくると声質の印象が何故かかなり変わっている。クレジットにはないのだが、なんだか全く別の人のように聴こえるのだが、実際にはどうなんだろうか。エンディング曲は「Are You Satisfied」。歌のリードを取っているのはベーシストのキース・エリス。ハワイアン・ミュージックでもお馴染みスティール・ギターが活躍する楽曲だが、ニッティー・グリッティー・ダート・バンドがサイケに転じたような妙な味わいのある仕上がりとなっている。ボーナス・トラックは1曲。「Walking Down the Highway」は当時アルバム収録が見送られたシングルB面曲。ライノセロス風のブギ・スタイルなアレンジに彼等の才能を感じてしまった。
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コメント
…が、ヘヴィーなブルースロックを奏でるバンドで面白いっす。cottonさんの愛のあるレビューには到底敵いませんがトラバしました♪
【2006/04/09 20:18】 | フレ #- | [edit]
コメントありがとうございます。この時期のブリティッシュ・ロックって本当に面白いですよね。
【2006/04/09 22:01】 | Cottonwoodhill #- | [edit]












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  • Juicy Lucy - Juicy Lucy【ロック好きの行き着く先は…】
     英国ブルースロックB級バンドでエグいサウンドと言えばもうひとつ…ジューシー・ルーシーってのがある。英米混合バンドなのでなかなか純英国的泥臭さとは異なるんだけど、ま、ス
【2006/04/09 19:05】
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