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#1052 Evie Sands / Any Way That You Want Me (1969)

 2006-04-04
1. Crazy Annie
2. But You Know I Love You
3. I'll Never Be Alone Again
4. Any Way That You Want Me
5. Close Your Eyes, Cross Your Fingers
6. It's This I Am
7. Shadow of the Evening
8. Take Me for a Little While
9. Until It's Time for You to Go
10. I'll Hold Out My Hand
11. Carolina in My Mind
12. One Fine Summer Morning

13. Maybe Tomorrow {From John & Mary} (Bonus Track)

Any Way That You Want Me エニィ・ウェイ・ザット・ユー・ウォント・ミー

店頭で偶然アルバムを手にするまで事前の予備知識が何もない状態でCDを購入する時が私にはよくある。一番多いのが決算投売りバーゲン品のワゴンの中から漁ってくる時で、ジャケット、参加メンバー、なんとなくひきつけるものがあった、とか兎に角インスピレーションに任せて購入してしまうのである。そうした購入方法は価格が安ければ安い程踏ん切りがつくのが特徴だ。だが価格が通常の物でも稀にそうした冒険を犯す事がある。所謂ジャケ買いという奴だが、これは私の昔からの病気なので今後も直る事はないと思われる。今回取り上げるアルバムは恥かしながら店頭で実際に実物を目にするまで全く知らなかった作品。ソフト・ロックやA&Mレーベルのファンの方なら先刻ご承知の作品なのかもしれないが私の感性になんとなく訴えるものを感じたので購入に踏み切った。日本盤帯に書かれた『ダスティ・スプリングフィールドを彷彿とさせる』という言葉や自転車に載る本人のジャケットがなんとなく気になったからである。

イーヴィ・サンズ(Evie Sands)。彼女は米NYはブルックリン出身の白人女性歌手だがローラ・ニーロやダスティ・スプリングフィールドのようにソウルのフィーリングを内包していたブルー=アイド・ソウル歌手。1960年代前半から音楽活動を開始していながら、これまで彼女が発表したアルバムは僅か4枚のみ。カーラ・ボノフもびっくりの寡作な音楽家だが、彼女の過去の作品はこれまで密かなブームとなっていたようだ。偶然とは言え、なかなか興味深いアーティストの作品に巡りあえたものだ。そんな彼女の足跡に少しばかり触れてみたい。母親が歌手だった影響もあってか幼くして音楽に興味を持つ事となったイーヴィ。幼い彼女の興味の対象はレコードやラジオから流れてくる音楽。フランク・シナトラ、コール・ポーター、ナット・キング・コール、エラ・フィッツジェラルド、ビリー・ホリデイ、サラ・ヴォーン、オスカー・ピーターソン、ダイナ・ワシントン、エロル・ガーナー、デューク・エリントン、アート・テイタム等々。

イーヴィはこうしたジャズやトラディショナル・ポップスを音楽好きな両親を通じて吸収していたようだ。こうした環境が彼女を音楽の道に進ませる事になる。やがてイーヴィはR&Bやブルースという、魂(ソウル)の込められた音楽を彼女なりに発見、彼女は先人達に習ってギターを手にして音楽の道に進もうと決断をするのだった。1963年に彼女は最初のシングルを発表、その後もレーベルを代えて数枚のシングルを発表するが残念ながら泣かず飛ばずだった。そんな彼女が脚光を浴びるキッカケとなったのがA&Mとの契約だった。1968年に同レーベルと契約を結んだ後に同レーベルから発表されたチップ・テイラー作によるシングル「Any Way That You Want Me」(ジュース・ニュートンやロニー・スペクター、元ランナウェイズのリタ・フォードもカバーした曲)が全米53位を記録するヒットとなる。それまで自分が吹き込んだ曲と同じ曲を他人が取り上げてヒットさせてしまったという苦い経験を持つ彼女にとっては最初の幸運な出来事だった。

彼女にとっての最初のフル・アルバムも発表された。プロとして音楽活動を開始した当初から彼女をバックアップしてきたアル・ゴーゴニとチップ・テイラーのプロデュースを受けて発表された「Any Way That You Want Me」がそれである。タイトルはシングル・ヒットを記念してシングルから起用された。順調に見せた歌手生活だが次の作品が発表されるまでは5年を要した。1974年に発表された「Estate of Mind」がそれで、ダンヒル・レコーズの仕事人デニス・ランバート&ブライアン・ポッターの手を借りて発表されたようである(2003年にCD化)。3作目はまたしても5年後の1979年。「Suspended Animation」というRCA作品がそれだが、次なる4作目発表にはなんと20年も要したのである。1999年に発表された「Women in Prison」がそれで盟友アル・ゴーゴニ&チップ・テイラーがバックで参加した作品のようである。これが今のところ最新作みたい。この作品を含め、イーヴィの作品に興味を持ったのでいずれ全て入手してみたい。

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■ Evie Sands - Lead Vocals, Guitar,
■ Al Gorgoni - Guitar, Arranger
■ Chip Taylor - Guitar

※ Guitar : Hugh McCracken, Sal DiTroia, Eddie Hinton, Trade Martin, Barney Kessel
※ Dobro : James Burton
※ Bass : Lou Morro, Joe Mack, Lyle Ritz
※ Piano : Paul Griffin, Ernie Hayes, Larry Knechtel
※ Organ : Paul Griffin
※ Harpsichord : Frank Owens
※ Drums : Al Rogers, Herb Lovelle, Paul Humphreys
※ Percussion : George Devens
※ Background Vocals : Toni Weine, Viki Mikey, Jeannie Thomas-Foxx
※ Sound Machine : Joe Foster, Nick Robbins

本作「Any Way That You Want Me」はイーヴィ・サンズのデビュー・アルバム。これ以前に1963年の最初のシングルを初め数枚のシングルが複数のレーベルに跨って存在するようだが、彼女にとってのフル・アルバムはこれが最初だった。とはいえ、このアルバムが発表された時点でまだ彼女は10代後半か或いは20歳そこそこといった年齢。実際の年齢に似合わない大人びた歌声が充分に魅力的である。本作の収録曲は全部で12曲(ボーナス・トラック1曲)だが、そのうちイーヴィ・サンズ自身のオリジナルが1曲収録されている。そしてアル・ゴーゴニ&チップ・テイラーによる曲が3曲、彼等それぞれ単独による曲が4曲収録されている。「Take Me for a Little While」はイーヴィが1965年に吹き込んだシングルで本作の制作にあたって再録されている。録音は1968年夏と秋、1969年初夏、夏、秋とかなりバラバラだ。プロデュースは元ジャスト・アスのコンビだったアル・ゴーゴニとチップ・テイラーだが彼等2人が多忙だった事も影響したのだろうか。

1940年米NY生まれのチップ・テイラーはソロ・アーティスト/ギタリスト/ソングライター/プロデューサーとしての立場でニール・ダイヤモンド、B.J.トーマス、ジョン・デンヴァーといったアーティストの作品に関わってきた人物。自身も「Early Sunday Morning」というヒット・シングルを1970年代に放っている。対するアル・ゴーゴニもまたチップ・テイラー同様、演奏家や作曲家としての立場だけでなく多くのアーティストの作品制作に表から或いは裏から関与してきた人物。ジェームス・テイラー、ジャニス・イアン、メラニー、B.J.トーマス、ヴァン・モリソン、アル・クーパー、キャロル・ベイヤー・セイガー、エリック・アンダースンといったアーティストの作品に関わってきた。2人はイーヴィ・サンズのデビュー当初から彼女に曲を提供してきたのだが、歴史の巡り合わせが悪かったのか、シングル「Any Way That You Want Me」がヒットを記録するまでイーヴィをスターダムにのし上ける事には成功しなかった。

本作におけるプロデューサーの片割れアル・ゴーゴニの足跡を調べて気になる事と言えば1970年代前半のルーツ色の強いB.J.トーマスの諸作品にことごとく参加している事。この事実をまずは念頭に置いて聴いてみた方が本作を理解し易いかもしれない。ちなみにイーヴィの歌は確かにブルー=アイド・ソウル歌手という触れ込みに相応しいソウルフルな歌い方をするが黒人音楽の白人的解釈の域を大きく逸脱しているレベルではない。さらにA&Mらしいドラマティックなストリングスや耳に優しいソフトなアレンジはMOR(ミドル・オブ・ザ・ロード)的解釈やバロック・ポップ、ソフト・ロック/ポップス的な解釈も可能だろうが、それよりも個人的には一部の曲で感じられるゴスペルとカントリーの要素が入り混じった様な軽いフィーリングのアレンジがいたく気に入った。ちなみに冒頭の曲「Crazy Annie」はアメリカン・ニューシネマの名作映画『真夜中のカーボーイ』(1969年)に触発されたアル・ゴーゴニとチップ・テイラーが作った曲だという。

冒頭の曲に続いてカントリー・ポップな味付けがされた「But You Know I Love」を聴いてはたと気がついた。恐らく本作はアル・ゴーゴニとチップ・テイラーが当時のアメリカン・ニューシネマに多かれ少なかれ触発された音楽集ではないかと。当時のアメリカの若者の刹那的な生き方や考え方をゴーゴニ&テイラー流にアレンジしてみせた音楽ではないかと。CDの裏に写し出されたモノトーンの馬車や滑車、裸足でブランコに乗るイーヴィの姿など、『俺たちに明日はない』や『明日に向かって撃て!』当りを相当意識していた筈だ。ただ、デニス・ホッパーの映画『イージー・ライダー』を日皮肉混じりにパロってみせたかのようなジャケット写真から察するに、アメリカン・ニューシネマを斜めの視線から見ていた感もある。アルバムはブルース、ゴスペル、R&B、ノーザン・ソウル、カントリー、フォークなどの要素を内包しているが、アルバムに流れる万華鏡的な響きはイーヴィが持つ音楽性が現れたと言うよりはプロデューサーの手腕による所がかなり大きいと思われる。

自転車に乗る彼女の初々しい姿に見せられてなんの予備知識もなくジャケ買いに踏み切ったアルバムだったが、決断して本当によかった。ちなみに本アイテムを制作したのは英チェリー・レッド傘下の再発系レーベル、Rev-Ola。この復刻系レーベルは以前からなかなか興味深い作品を発表する事で定評がある。過去に取り上げたフェミニン・コンプレックスとかクリサリスなんかも同レーベルから発売されたものだ。そしてイーヴィの2作目のアルバム「Estate of Mind」のCDも同レーベルから発売されている模様である。

■過去の記事
Dusty Springfield / Dusty in Memphis (1969)
Feminine Complex / Livin' Love (1969)
Chrysalis / Definition (1968)


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